PS3ゲームレビュー

低価格なダウンロード専用タイトルながら
アクションの魅力が詰め込まれた意欲作

「マリシアス」

  • ジャンル:アクション
  • 発売元:株式会社アルヴィオン
  • 価格:800円
  • プラットフォーム:プレイステーション 3(ダウンロード専用)
  • 発売日:配信中(10月27日 配信)
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:B(12歳以上対象)


 「マリシアス」はPlayStation Networkで配信されているプレイステーション 3用ながらダウンロード専用というタイトル。価格が抑えめの800円という低価格。低価格なDL専用タイトルというと、「手軽ながら手触りはそれなりのものだろう」とイメージしてしまいがちだが(移植等ではなく新作だとなおさら)、「マリシアス」はそのイメージにはちょっと当てはまらなった。歯ごたえのあるボスとのバトル、多彩な攻撃スタイルとコンボの組み合わせ、幻想的な世界観……と、いずれも先入観を吹き飛ばす、枠には当てはまらないクオリティの高いアクションゲームだった。

 パブリッシャーである株式会社アルヴィオンは、これまで開発会社としてゲーム開発を行なってきた会社で、「マリシアス」はPS3で初のタイトル。それだけに、アルヴィオンという名前を知ってもらう意味でも「マリシアス」を低価格に設定したということだ。そうした背景もあっての、低価格な新進気鋭のタイトル「マリシアス」。本作がどんな手触りのゲームなのかをお伝えしていこう。



― Story ―

預言者によって「討伐者」として、
この世界に呼び出されたプレーヤー。

プレーヤーはまもなく訪れる
災厄「マリシアス」の討伐を依頼される。




■ 異なる個性を持つボスとの戦い、多彩なコンボ、爽快感重視なアクションを、スピーディーに楽しめる!

シーンを繋ぐ「白の間」から、挑むシーンを選択する。白の間でも自由に動けるので、各種アクションの確認ができる
シーンのボスと一緒に多数の雑魚敵が襲い掛かってくる。討伐者は、身につけたマント「灰の外套」の力で対抗する

 プレーヤーは預言者によって呼び出された「討伐者」であり、プレーヤー自身の精神をマリシアスの世界に留めるための人型をした“魂の器”だ。世界にまもなく訪れる災厄「マリシアス」を討伐するのが目的となるが、“魂の器”には本来の力がまだ組み込まれていない。先の討伐者である狂王とその臣下達がその力を保持したままのためだ。彼ら力の保持者を打ち倒し、力を手に入れて災厄「マリシアス」を打ち倒す。

 プレーヤーキャラクターの討伐者は、ゲームスタート時に男女を選択可能。武器は「灰の外套」という、いわゆるマントだ。このマントは様々な形状に変化するのが特徴で、巨大な「拳」、「剣」、「槍」、「魔弾」といった攻撃方法や、マントを広げて「盾」として使う防御、さらには「翼」にして空を飛ぶこともできる。

 プレイ開始直後は力を取り戻していないため攻撃方法は拳か魔弾のみだが、ボスを倒すことで新たな能力を獲得できる。最初に選択できるシーンは5種類で、どこから挑むかは自由。だが、後半に選んだステージほど難易度が高まるようになっていて、どんな順番でシーンに挑むか、手に入れた能力によって戦い方が変わってくる設計になっている。

 シーンはいずれも広い空間の中でボスと戦うというシンプルな構成。ボス以外にも多数の雑魚敵が討伐者を狙って襲い掛かってくる。雑魚敵をなぎ倒してオーラを溜め、ボス敵にぶつけるというのが基本的な戦術になる。

 フィールドは上下にも広がっていて自由に動き回れる。ジャンプが初期段階だと3回まで、能力を手に入れれば6回まで可能なほか、壁を滑るようにして昇っていくこともできる。翼の能力を手に入れれば空を飛びまわることもできる。

 フィールドもボス敵も、シーンによってテイストが大きく異なる。広い平原のような場所で巨大な兵器を相手にすることもあれば、図書館で動きの素早い獣のようなボスもいる。大型のボスばかりでなく、討伐者とほぼ同じサイズの狂王との戦いもある。


【各シーンに待ち受けるボスは、それぞれに個性が異なる】
シーンごとにタイプの違うボスが登場するので、プレイの感触、戦いの感触もだいぶ異なってくる。フィールドは画像右下のように広く、雑魚敵も多数出現する


「オーラ」というシステムが特徴的で、雑魚敵を倒してオーラを稼ぎ、それを開放してボスに大ダメージを与えるのが基本になる
「灰の外套」は様々な武器に変化する。画像は「拳」の状態。初期から使用できるスタンダードな攻撃手段だ

 操作は左アナログスティックで移動、右アナログスティックで視点操作、方向キーで武器の切替、□ボタンでアクション(攻撃)、△ボタンでパワーアクション(強攻撃)、×ボタンでジャンプ、○ボタンでガード、○ボタンとアナログスティックを同時に入れれば回避、L1ボタンでオーラ(L1+攻撃でオーラ攻撃、L1+×でオーラ開放、L1+○で修復)、R1ボタンで注視(ロックオン)で1回押せば近くの敵に、2回押せばステージボスにロックオンされる。

 特徴的なシステムとして、「オーラ」という要素がある。オーラは画面左上に数値で表示されていて、雑魚敵を倒したり、ジャストガード(攻撃をタイミングよくガード)すると溜まっていく。オーラを開放しながら攻撃することでより威力の高い攻撃ができるほか、オーラ攻撃で雑魚敵をまとめて倒せば「チェーン」になって一気にオーラを稼ぐこともできる。いかにオーラを溜め、ボスにぶつけられるかが戦い方のポイントだ。

 武器によって攻撃スタイルが異なっていて、多彩なコンボが繰り出せるのがひとつのポイントだ。「拳」なら、□、□、△といったような連続コンボで敵をなぎ倒せる。最初から使える能力だけに最も使い勝手がいい。ボスを倒して能力を開放すればコンボがさらに多彩になる。

 「魔弾」はロックオンした敵に弾を撃ち出す遠距離攻撃。□ボタンで連射できるほか、△ボタンで多数の敵にロックオンさせて一気に撃ち出す攻撃もできる。多数の敵を一気にロックオンしている時の「シュババババッ」という音が気持ちいい。大きく稼ぐのは難しいが安全にオーラを稼ぐ手段としても有効だ。

 シーンのボスを倒すことで新たな能力が手にはいる。攻撃方法としては槍と剣が増えるのだが、槍は前方への突進力に優れており、剣は重量感があって攻撃の出が遅めだが威力が高くて周囲に振り回す攻撃ができる。


【「灰の外套」の攻撃形態、「剣」、「槍」、「魔弾」】
「灰の外套」の攻撃形態。左から順に、「槍」、「剣」、「魔弾」だ。槍と剣はあるシーンのボスを倒すことで使えるようになる。手に入れた能力次第で戦い方も変わってくるので、シーンの攻略順もポイントになる


 武器を単独で使うだけでなく、コンボ中に武器切替を入れることで、より多彩な攻撃が可能だ。例えば「拳□、□、□、方向キー左」と入れれば、パンチ3発から剣を1回転するように振るというコンボになって、周りに群がっている雑魚を一掃できる。ボスを攻撃しつつ、背後に寄ってきた雑魚を倒す、みたいな戦い方に使える。

 この他にも多数の武器切替コンボが可能で、「拳□、△、△、左」で、前方に回転する剣を投げ出したり、「拳□、△、左、右」で、剣、槍と連続して直線的な攻撃を繰り出すような繋ぎ方もある。例えば拳だけのコンボでがんばっていると前方しか攻撃できず周囲の雑魚の処理に苦労したりするのだが、切替コンボを使いこなせるようになってくると対処が楽になる。やりこんで使い勝手のいいコンボが頭に入ってくれば、戦い方がより広がってくる。


【コンボに武器切替の操作を組み込むことで、より多彩に】
コンボに武器切替の操作を織り交ぜることで、より多彩なコンボが繰り出せる。画像は、「拳で□、□、□、方向キー左」のコンボで、パンチ3発のあと剣に切り替え、巨大な剣を1回転するようにして周囲をなぎ倒す。威力も高く、使い勝手がいい


 「翼」の能力を手に入れると、ハイスピードに飛行して移動できるようになる。×ボタンで羽ばたいて上空を飛びまわることも可能だ。上空を飛びまわりながらロックオンした敵に魔弾攻撃を放つ様子はまるでシューティングゲームのようで、地上でコンボを繰り出している時とはまた違った感覚の戦いが楽しめる。

 また、飛行中は魔弾で攻撃できるほか、体当たりで雑魚敵にダメージを与えられるので、フィールドを低空飛行で駆け抜け、雑魚敵を次々になぎ倒すという戦い方もできる。ハイスピードな飛行を制御するのは慣れないうちは苦労するが、その爽快感は抜群にいい。


【ハイスピード飛行で敵をなぎ倒せる「翼」】
「翼」の能力を手に入れれば、画像のように飛行しての高速移動ができるようになる。体当たりと魔弾攻撃でダメージを与えられるほか、羽ばたいて上空を飛ぶこともできる。爽快感抜群だ


 いわゆるヒットポイントのような体力ゲージはないが、魂の器の破損という形で残り体力が表現される。攻撃をたくさん喰らうと「パリィーン!」と画面が割れたようなエフェクトが入り、魂の器が1カ所壊されてしまう。最初は左腕が、次に右足、左足、さらに胴体と、4段階に破壊され、最後には全体が破壊されゲームオーバーになってしまう。

 破壊された箇所はオーラを消費することで修復できるが、修復箇所が多いほどオーラが多く必要になり修復時間も長くなる。こまめに修復するのがポイントだ。修復された箇所は手足は戻るものの服は元には戻らないところが芸が細かい。

 操作は多彩でこの他にも新たな能力を手に入れることで操作が増えていく。基本的な操作は触りながらでも問題ないと思うが、オーラなどの特殊なシステムについて、メニューにある「マニュアル」を先に見ておくのがオススメ。


【ダメージは魂の器の破壊で表現】
敵の攻撃を多く喰らうと、魂の器が破壊されてしまう。オーラで修復できるが、破損箇所が多いとオーラのコストが高くなり、修復時間も増えてしまう


ボスによって戦闘の印象は大きく変わってくる。画像の獣のようなボスは、野生の獣のように素早く飛びまわって攻撃してくる
重要テクニックのひとつ「ジャストガード」。敵の攻撃が当たる瞬間にタイミングよくガードすればオーラがプラスされる。強烈な攻撃ほどジャストガードで得られるオーラが多い

 雑魚敵の数はかなり多く、ワラワラと群がってくる。オーラ稼ぎが目的にはなるが、そうした多数の雑魚敵をコンボで一気になぎ倒すのも爽快だ。オーラがある程度溜まったら、L1+×を長押ししてオーラを開放。開放中はオーラが時間と共に消費されていくが、攻撃力と防御力が高まるのでボスに一気にダメージを与えるチャンスになる。ここぞという場面でリスクを背負っての攻撃を狙っていくという展開には、テンションが高まる。

 ボス敵は前述のようにシーンによって様々で、それぞれに戦い方というかアクションのタイプが異なる。図書館に出現する獣のようなボスは、まさしく生物を相手にするような動きを見せるし、決戦場の巨大な建築物のような敵は、敵兵士が乗り込んでいるスペースを破壊できたりと部位破壊の要素も見られる。人間サイズの狂王との戦いは対人戦のような印象の戦いになる。

 どう戦うかはプレーヤー次第。例えば狂王を相手に拳で戦うなら、パワーアクションで狂王をよろめかして隙を突いたりするが、槍の能力を先に手に入れていれば、槍のパワーアクションの突進で、周囲の雑魚を巻き込みながら狂王を貫くことで、多量のオーラを手に入れながらダメージを狙っていける。

 上達してくると、「ジャストガード」の重要性も増してくる。ジャストガードを成功させればボーナスとしてオーラが手にはいるので、ボスをアグレッシブに攻撃しつつ、反撃をジャストガードしてオーラを稼ぎつつそのまま攻撃し続けるという戦い方もできる。ジャストガード直後にL3(左アナログスティック押し込み)を押せば、シールドバッシュで相手の体勢を崩すこともできるので、それも効果的だ。

 ボスの攻撃に対して、「カウンターアタック」を決めるのもポイントだ。ボスが強烈な攻撃を繰り出そうとしているときに特定の武器を使っていると、画面に「△+○」という表示が出る。素早く△+○を押せれば攻撃に対して特殊アクションで反撃を決められる。成功すれば、迫り来る巨大な拳を剣で切り裂いたり、鞭のように伸ばしてきた剣の中心を槍の突進で突き崩したりと、いずれもかっこいいアクションが展開される。こうしたアクションのかっこよさも大きな魅力だ。

 各種能力と武器切替コンボ、ジャストガードを駆使できるぐらい上達してくると、ハイスピードな展開の中、各種テクニックを次々に織り交ぜるような戦い方ができるようになり、気持ちよさが一体化してくる。ボスにコンボを浴びせ、群がってきた雑魚を武器切替コンボで的確になぎ倒しつつ、反撃をジャストガード。攻撃によって武器を変えて「カウンターアタック」も狙いつつ、溜まったオーラを開放して一気にボスの殲滅を狙っていく。


【戦い方次第でシーン攻略は大幅に変わってくる】
どの武器でどんな風に戦うのか、戦い方次第で攻略の難易度は大きく変わってくる。画像は狂王のシーンで槍のパワーアクションでオーラ攻撃を駆使しているところ。群がる雑魚敵を巻き込み、一気に7チェイン稼いでオーラをゲット!


【部位を破壊できるボスも存在】
決戦場の建築物のような敵は、敵兵士が乗り込んでいるスペースの部位を破壊できる


【ボスの攻撃をはねのけろ!「カウンターアタック」】
狂王の剣を鞭のように振るってくる攻撃にカウンターアタック!槍で一気に突き抜ける!
天井近くの上空から飛びかかってくる獣へ、カウンターパンチ!
迫り来る巨大な拳を剣で一閃!さらに相手の開いた手を斬りさく!!


 プレイしていて気になった部分もある。ひとつは敵や障害物と密着しているときのカメラアングルで、障害物にひっかかった状態で画面がアップになってしまい、身動きが取れなくなってしまうこともあった。巨大なボスに対して密着したときも、視点が見づらくなってしまった。

 上方向や下方向にロックオンしているのに対して、拳の攻撃が水平方向に繰り出されるのも、もう一工夫欲しかったところだ。体の向きごと上向き、下向きになってくれれば、より操作しやすかったように感じた。

 操作面では硬直時間中に武器切替の入力を受け付けない時間が多めにあったのも辛いところで、的確にコンボ入力できているときはいいのだが、一端崩れてしまうと操作のリズムが大幅に壊れてしまう。また、攻撃を喰らってダウンしてしまったときのダウン状態が多少長めに感じられるのも、全体のテンポの速さからするとストレスに感じるところがあった。

 こうした面からすると荒削りな印象はぬぐえないところがあって、プレイが上手い人は気持ちよさを十分に堪能できるものの、そうでない人は荒削りな部分に悩まされてしまうところがある。こうした幅のあるアクションではありがちなのだが、上手い下手でプレイの印象は大きく変わってくるところがある。もう少し荒削りな部分にフォローが欲しかったところだ。もしそこがフォローされていたら、より圧倒的に高く評価されるタイトルだったのは間違いない。


■ 荒削りなところはあるが、爽快感重視の手触りはハイクオリティ! 価格以上の魅力がある

油絵のようなテイストのグラフィックスとマッチした音楽、幅広いアクションの魅力を多数詰め込んだ手触り、幻想的で少しダークな世界観と、いずれも良質

 多数の雑魚敵をコンボでなぎ倒す気持ちよさ、武器切替コンボを探求して華麗に戦う気持ちよさ、オーラを開放して一気に大ダメージをボスに与える、リスクを背負いつつの爽快感、ハイスピードに飛行する爽快感など、色んなタイプのアクションの良さがまとまっている。ゲームモードこそはシンプルだが、楽しみ方の幅が広いのが魅力だ。

 透明感のあるテーマ曲をはじめ、音楽のテイストも良質で、幻想的な世界観がよくまとまっている。カウンターアタックをはじめ、各種モーションのかっこよさにも、ある種日本的なセンスの良さを感じるところがあった。800円という低価格でこれだけの新規タイトルを楽しめるのは相当なもの。

 さすがにストーリーモードのボリュームなどは物足りなさがないわけではないが、爽快感重視のアクションを楽しめ、プレイ開始から即ボス戦という手軽さもあり、気軽にプレイできる点がいいバランスに感じる。そして、プレイするごとに、新しい発見や上達する楽しみも感じられるはずだ。指摘してきたような荒削りな部分も見られたものの、全体的には充実したプレイ体験ができる内容だ。ぜひプレイして頂きたい。

(C)2010 ALVION Inc.

(2010年11月2日)

[Reported by山村智美 ]