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夏の盛は水上レースでさらにヒートアップ!
爽快無比のスピード感とトリックを楽しめ

「Hydro Thunder Hurricane」

  • 開発元:Vector Unit
  • 発売元:マイクロソフト
  • プラットフォーム:Xbox 360
  • レーティング:CERO:A (全年齢対象)
  • 価格:1,200 マイクロソフトポイント
  • 発売日:7月28日(発売中)

 マイクロソフトから4週連続でXbox LIVEアーケードゲームの秀作をリリースするシリーズの第2弾は本作「Hydro Thuner Hurricane」。沢山の仕掛けが隠された水上コースを超高速ボートで駆け抜ける、熱い夏にぴったりのレースゲームだ。

 本作、元はというと1999年にMidwayがアーケード向けに開発した「Hydro Thunder」がオリジナル。アーケード譲りのシンプルかつトリッキーなゲーム性は、まさにXbox LIVEアーケードでリリースされるにふさわしい内容だ。開発元のVector Unitはまだ無名のスタジオだが、水上レースという題材を非常にうまく料理して、爽快で楽しい、しかも手応えのあるゲームに仕上げている。


【Hydro Thunder Hurricane】
  • ジャンル:水上レース
  • ボリューム:6~10時間
  • サイズ:459MB
  • 実績:200ポイント
  • オススメ度:★★★★☆
  • ゲーム性はシンプルだがトリッキー。水上ならではの上下動やドリフト感を極めれば、爽快なプレイ感覚を楽しめる。各コースに隠されたショートカットルートの配置は絶妙で、研究と攻略を繰り返す楽しさが深められている。リプレイやゴースト機能など、さらなるやり込みを支援する機能がやや欠けてる点が残念


■ うねる波濤をすべり抜ける! 高速レースをピリっと味付ける3つのテクニック

ドラフト効果で速度を稼ぐ
ブースト発動!
ブーストジャンプを使えば隠されたルートに飛び込める

 水上レースをテーマとする本作は、プレーヤーが操縦するボートと攻略するべきコースの両面で新鮮な印象を与えてくれる作品だ。基本操作はステアリングとアクセルとブレーキでとってもシンプル。「ザババッ」と水面を切り裂きながら進んでいく感覚は一種ラリー系のドライビングにも近く、常にドリフトを効かせた動きとなるのが特徴だ。これに加えて、水上ならではの特性を生かした3つのテクニックがレース展開をピリッと引き締めてくれる。

 テクニックのひとつは「ドラフト」。先行するライバルボートが作る航跡の中を推進することにより抵抗を減らし、より高いスピードを達成する技だ。ライバルに近づけば近づくほどにドラフティングの効果が高まり、強烈な加速効果を生み出す。ここぞという時にオーバーテイクを狙うために大いに活用できる技だ。

 ふたつめのテクニックは「ブースト」。コース上に配置された燃料ビン状の「ブーストパワーアップ」を取得することにより「ブーストゲージ」を溜め、Aボタンを押して発動する加速装置だ。強力な推進力で一気に加速したり、パワー任せのコーナーリングが可能になる。またこれは3つめのテクニック「ブーストジャンプ」のためにも必要な要素となっている。

 「ブーストジャンプ」は、ブースト発動中にXボタンを押すことで発動するジャンプ技。これにより障害物やライバルボートを乗り越えたり、各コースに隠されたショートカットルートを利用するための入り口にアクセスすることができる。どれくらいジャンプするかは水面のうねり具合やボートのスピードにも影響され、コース上の仕組みと相まって本作で最も奥深い技のひとつだ。

 「ドラフト」、「ブースト」、「ブーストジャンプ」はそれぞれに影響しあう側面もあり、高難度のレースに勝利するためには繊細なテクニックと同時に周到な計画性も必要だ。例えば「ブーストジャンプ」が必要な局面のために「ブーストゲージ」を節約するため、わざとライバルの後方に陣取って「ドラフト」を徹底利用して加速するような感覚。これを踏まえて各種のコースは設計されており、驚くほど多彩な仕掛けがレース展開の戦略性を深めてくれている。

 さらに本作のゲーム性を多彩なものとしているのが、各ボートの性能差だ。本作ではシングルプレーヤーゲーム、マルチプレーヤーゲームの双方で勝利することで得られる「クレジット」を蓄積することで新たなボートをアンロックする仕組みになっており、「アマチュア」、「プロ」、「エキスパート」の3クラスにそれぞれ3種類ずつのボートが用意されている。ボートには「平底型」、「多胴型」、「V字型」のボディタイプがあって、水上でのグリップ力や制御性、空中での操作性が大きく異なり、コース攻略の戦略や、プレイスタイルのバリエーションを豊かにしている。


「アマチュア」クラスのボートは、性能が限られているかわりに制御しやすく、本作のプレイ感覚を学ぶためにうってつけだ
「プロ」クラスから、各ボートの個性が際立ってくる。特に違いが出るのがコーナリングと空中制御。飛行機型のボートは空中で大きくコースを変えることが可能で、トリッキーなコース攻略を可能にする
「エキスパート」クラスのボートは凄まじいスピード感で、そのパワーとは裏腹に繊細なテクニックが求められる。各ボートそれぞれに全く異なる操作特性を持ち、それをどう活かすかがレースに勝利するための鍵だ


■ ダイナミズム溢れるコースを制覇せよ! 研究と攻略の面白さが際立つゲーム性

広大なコースをトップスピードで駆け抜ける
狭いショートカットに飛び込み、タイムを短縮!
周回するたびにコース形状が変化する「モンスター島」。海獣が暴れて水面が大きくうねる

 本作には全8種類のコースが収録されており、上述した「クレジット」を獲得することで新たなコースがアンロックされる仕組みとなっている。競技の種類は全16艘のボートが参加する「レース」に加えて、クリアタイムを競う「タイムアタック」、定められたウェイポイントを巡る「リングマスター」、そのすべての競技でシリーズポイントを競う「チャンピオンシップ」の4種類が用意されている。

 コースの構成は水上レースならではのものだ。基本的にコース幅は非常に広く、コースどりの自由度は非常に高い。このため各コースとも単にゴールするだけなら簡単なのだが、単にわかりやすいルートを道なりに走るだけでトップを取れるほど甘くもない。「ブーストパワーアップ」の配置や、各所のショートカットの存在によって、要所でのコース取りは繊細を極める世界となっているからだ。

 例えば第1のコースである「パウエル湖」。メインとなる川下りのルートの脇には、いくつもの小さな水路がショートカット的に配置されている。かなり注意深くプレイしないと気づかないような場所であることもそうだが、大抵、ショートカットの入り口は非常に狭かったり、正確なブーストジャンプを必要とすることが多く、完璧なタイムでコースを終えるためにはワンランク上のテクニックが必要となる。

 第3のコース「モンスター島」は輪をかけてトリッキー。本作では少数派に属する周回タイプのコースとなっているが、1周する毎にコース上の水かさが減っていき、そのたびに異なるコースを通ることになるのだ。このため全てのショートカットや「ブーストパワーアップ」の取り方を見つけるためには、かなりのコース研究が必要。逆に言えば、プレイするたびに新たな発見があるというのが面白いところだ。

 それでもある程度ゲームを進めていくと、後半に登場するコースは輪をかけた難しさでプレーヤーの前に立ちはだかる。第7コースの「ソウルストリーム」はその点で極めて周到に設計されたコースで、まず普通にプレイしては3位入賞すらおぼつかないレベル。繰り返しプレイして、ショートカットをひとつ発見するたびに順位を縮めていく。重要なショートカットは「ちょっとしたズレ」で大クラッシュするような難物だが、それを乗り越えて完璧なレースを展開できれば、痛快極まる達成感だ。

 「タイムアタック」モードは、レースで勝てるようになればその技を応用することで問題なく攻略することができる美味しい種目だ。しかしウェイポイントを巡る「リングマスター」は、アマチュアクラスでは簡単すぎてあくびが出るほどだが、「プロ」クラス以上はレースで1位を狙うよりもずっと繊細な技が要求されるという難物。

 なにしろ通過箇所を示す「リング」が、「プロ」、「エキスパート」では非常に小さい上に、難しいショートカットの中や、空中に配置されているのだ。わずかのズレでリングを逃し、タイムペナルティを食らって、惨憺たるタイムでクリアしつつ、徐々にプレイ精度を上げていくしかない。

 こうして各コース、各種目を攻略する中で、しっかりとした上達の手応えを感じられるのが本作の良いところだ。シンプルだが奥深いという路線のゲームとして、本作は「やり込み派」ゲーマーが求めるものにしっかりと答えてくれる。


「ソウルストリーム」は筆者お気に入りとなったコースのひとつ。走行経路ががいくつも用意されており、各所のショートカットを活用するためには非常に正確なコントロールが必要となる。ライン取り、ブーストの使用タイミング、正確な空中制御。完璧に走りきれたら思わず「良し!」と声が出る
「タイムアタック」ではコース上のあちらこちらに爆発性のドラム缶が浮いている。ラインが少しでもずれたら即大クラッシュ
「リングマスター」は、「アマチュア」、「プロ」、「エキスパート」とクラスを駆け上がる毎に別のゲームへと変貌する。「エキスパート」クラスではコースを熟知した上で針の穴を通すような精密操作が求められるのだ


■ マルチプレイはやや大味。気分転換にサクッとプレイするのが幸せのかたち?

画面分割で複数人がXbox LIVE対戦に参加することも可能。フレンドと遊んでみたい

 本作のマルチプレイモードは、Xbox LIVEとスプリットスクリーンの2タイプに対応している。スプリットスクリーンでは最大4人まで、Xbox LIVEでは最大8人で対戦することができ、スプリットスクリーンで複数人のプレーヤーが一緒にXbox LIVEセッションに参加することも可能だ。

 やりこみ度がクリアタイムに直結するゲーム性であるため、オンライン対戦には充分な練習を積んでから参戦したいところだが(何しろ3位以下ではクレジットがもらえない)、シングルプレイの「エキスパート」クラスのレースで勝てるくらいの腕があるなら、世界のツワモノたちと激しいデッドヒートを楽しめる。

 マルチプレイレースでは基本的に、ライバルにぶつかってコース取りがずれることが多いため、早い段階でトップに立つか、もしくは相手の動きに合わせたコース取りを心がけることも重要な戦略となってくる。クラッシュ上等でプレイするプレーヤーが多いセッションでは2番手以下の集団が大破炎上しまくる大味な展開にもなりがちだが、それもご愛嬌。オンライン対戦ならではの「意外な展開」を生み出す仕掛けが豊富なコースばかりなので、どのレースも楽しい内容が期待できる。

 とはいえちょっとしたことで大きくレースが崩れてしまうというゲーム性でもあるため、1位ばかりを狙ってあまりストイックにプレイするとイライラが募るということにもなりかねない。そこは本作は接触上等のタフなレースゲームということで、気分転換がてらにサクッとプレイするような気安さで付き合うのがオススメと言えそう。

 フルプライスのレースゲームならまず間違いなく完備しているリプレイモードやゴーストカーなど、やりこみをさらに促進する要素が欠けている点は少々残念だが、それでも繰り返しプレイする楽しさは充分にあり、この暑い夏を彩るゲームの1本として、1,200マイクロソフトポイントの価値は大いにある。ぜひお試しいただきたい。



(C) 2010 Microsoft Corporation.

(2010年 7月 30日)

[Reported by 佐藤カフジ ]