★Wiiゲームファーストインプレッション★

純ファンタジー世界を駆ける冒険者となる!
滅びを感じさせる独特な世界観が魅力のアクションRPG

「ヴァルハラナイツ エルダールサーガ」

  • ジャンル:アクションRPG
  • 発売元:株式会社マーベラスエンターテイメント
  • 価格:7,140円
  • プラットフォーム:Wii
  • 発売日:発売中(10月8日)
  • プレイ人数:1人(Wi-Fi通信時2人)
  • CEROレーティング:B(12歳以上対象)

 緩やかな滅びを感じさせる世界。世界に生きるヒューマン、エルフ、ドワーフ、ホビットたち。遙か昔に起こった魔物達と同盟軍の戦い。そして今プレーヤーこと冒険者の手によって、新たな歴史が誕生していく。

 本作は「指輪物語」的な、良い意味で古風な純ファンタジー世界が魅力のアクションRPGだ。街を中心に様々なクエストに挑んでいくシンプルなプレイの流れ、様々な種族との確執から始まっていくドラマ、キャラクター育成や連れて行く仲間など全体に自由度の高い作りをしていて、やり込み要素の豊富さも魅力となっている。

 「ヴァルハラナイツ」はこれまでPSP用ソフトとして3作品が発売されたシリーズだ。Wiiにプラットフォームを移し、Wi-Fi通信による2人プレイにも対応。新たに制作された新作となっている。今回は発売前に評価用ロム(製品版とほぼ同等)をお借りしたので、ファーストインプレッションとして本作がどんなゲームなのかをお伝えしていこう。



■ 2章立てで描かれる魔物達との戦い。ファンタジー定番の種族との出会いが待つ

―― プロローグ ――
悠久の地「エルダール」の悲劇

遠い昔
大規模な流星群が確認されたという。
それは、災厄の予兆だったのだろうか。

かつて滅びたと伝えられていた魔物達の突然の復活。
地上は混乱に陥り、多くの命が犠牲となった。

だが、地上で生きる者達は抵抗した。
ヒューマン、エルフ、ドワーフ、ホビットの四種族は
同盟を結成し、魔物達と戦った。
同盟軍は進撃を続け、魔物達を大陸の西端、
エルダール地方に押し留めるに至った。


本作は1章と2章の2本立てで構成される。世代交代を含めた長い物語となっている
1章では自分のキャラクターがヒューマンの男性に固定される。職業は5種類より選択。2章になるとさらに性別、種族の選択肢が増える

 本作の物語は「1章 星のカケラ」と「2章 最後の勝利者」の2章立てだ。1章で選べる主人公はヒューマン種族のみだが、1章でドワーフ、エルフ、ホビットといった種族と知り合っていくことで、2章では別の種族でプレイも可能になっている。

 本作の舞台である大陸の西端の地“エルダール地方”は、魔物がはびこる荒廃した世界だ。滅びの定めを受け入れたかのような世界で、街中の様子にもそうした空気が感じられる。主人公ことプレーヤーはこの地で様々な依頼を受けて報酬を稼ぐ傭兵として活動する。

 キャラクターメイキングは顔、髪、声を自由に選択して作成できる。ただし1章では性別は選べず男性のみとなる。能力や戦闘のスタイルを左右する職業の概念もあって、1章で選択できる職業は、直接攻撃を得意とする“ファイター”、回避能力に優れアイテム収集を得意とする“シーフ”、回復魔法を習得できる“プリースト”、攻撃魔法を習得できる“メイジ”、ハーブを奏でてサポートする“バード”の5種類となる。2章からはさらに新しい職業が増えるほか、ギルドでお金を払うことでいつでも転職できる。

 本作のおおまかなプレイの流れは、街で装備やアイテムを整えギルドでクエストを請け負う、クエストの目的地へ移動し依頼を達成する、というシンプルなものだ。特定のクエストではイベントが発生してメインストーリーが進んだり、ボス敵が待ち受けていたりする。多数のクエストをたっぷりこなして装備やレベルを充実させるもよし、メインストーリーをどんどん進めようとするもよし。このあたりも自由な作りだ。

 メインストーリーのクエストでは、ある依頼から主人公がエルダール地方をすみずみまで冒険することとなる。魔物を封じ込めるのに必要な星のカケラを探し、今は交流が途絶えているドワーフ、エルフ、ホビットといった種族の村へと訪れていく。その先々で様々な種族間の確執や出会いが待ち受けている。


【ヒューマンの街 ヴェストリア】
主な拠点となる、ヒューマンの街「ヴェストリア」。幼なじみのペネロペをはじめ、道具屋や鍛冶屋、クエストを扱うギルドなどが並ぶ。全体に荒廃した雰囲気を漂わせる街だ
【魔物を封じるカギを握る“星のカケラ”を探す旅へ】
主人公はヴェストリア郊外にある館の主、アドルから「星のカケラ」と呼ばれる石を探して欲しいという依頼を受ける。石を求め、エルダール地方を巡ることとなる
【拠点でクエストを受け報酬を得るのがゲームの流れ】
ゲームの基本的な流れは、街で装備やアイテム等の準備を整え、ギルドでクエストを受け出発するというもの。クエストにはメインストーリーに関わるものから、ちょっとユニークで簡単なものまで、様々な種類がある
【様々な種族との出会い、確執】
石を求め、交流が無くなってしまった他種族の村を訪れる。画面はドワーフ族の村を訪れている様子。ヒューマンへの風当たりは強い
こちらは森深くに住むエルフたち。ドワーフ族同様、よそものの種族を基本的には受け入れない
ヒューマンの半分ほどしか身長のないホビット族。温厚な種族で他種族と比べると警戒心は低く、ヒューマンの大きさを見て驚いている


■ 自由度の高い成長要素や仲間を連れて行ける傭兵雇用は魅力。戦闘は好みがわかれるところ

戦闘はアクション操作。だがアクション性は高くはなく、もう少しアクション操作ならではの魅力が欲しかったところ
攻撃のモーションがもったりとしていて硬直も長め。そのため回避などのアクション的な動きがしづらいのが気になった

 本作の戦闘はシームレスなアクションRPG。フィールドに徘徊している魔物はこちらに気がつくと襲い掛かってくる。戦闘は、武器を使った弱攻撃、強攻撃、発動スキル、回復アイテム等を駆使するシステム。防御や回避といったアクション操作はなく、もう少しアクション性が欲しいなと感じたところがあった。

 敵と距離を離して攻撃を回避するといった動きができるにはできるが、ほとんどの場合は敵と接近して攻撃を連打し、互いにダメージを与え合う応酬になってしまう。そうした展開の中、死にそうになったらショートカットにセットしておいた回復アイテムを使うといった動きになりがちだった。特にボス戦では攻撃ボタンを押し続けながら回復アイテムをひたすらに使いまくるという、ごり押しになってしまうことが多かった。

 そうした動きになりがちな大きな理由が、攻撃モーションの遅さと大きさ。攻撃ボタンを押してからの予備動作が多く、発生までに時間がかかるほか、攻撃後にポーズを取ったりといった硬直も長い。また、1度攻撃ボタンを押すとモーションをキャンセルできないため、敵の攻撃を移動してかわす動きとうまく織り交ぜるのも難しい。敵をロックオンすることもできるが、ロックオンすると動きが慎重になって移動速度が大幅に低下してしまうため、なおさらその傾向が高まる。結果、敵と向かい合って攻撃しあい、回復アイテム連打でカバーする動きになってしまうわけだ。

 装備やレベル、魔法やアイテムによる回復の残量といった要素で勝敗が分かれてくるところがあり、操作はアクション風ではあるが、中身はRPGの要素で戦っているという感触だった。例えば盾を装備していたらボタンで防御の姿勢が取れるとか、もう一歩アクション要素が欲しい(盾はパラメータによるランダム発動で時々ダメージを防いでくれる要素になっている)。

 また、HPは立ち止まっていると時間経過によって自然回復していくのだが、これがかなり時間がかかる。自然回復の速度はスキルによって変わってはくるものの、瀕死に近い状態からは5分ほど放置しないと完全回復しない。後述する仲間の傭兵についても自然回復がメインになるため、回復時間はどうしても必要になってくる。プレイのリズムがばっさりと途切れてしまうため、できれば専用の回復モーションを用意するなどして、もう少し早く回復するようにして欲しかった。


攻撃のモーションひとつひとつが長めで、それでいて敵が動き回るため、ロックオンしないと攻撃を当てづらい。ロックオンすると移動がかなり遅くなるため、その場で立ちつくして攻撃しあうという遊び方になりがちだった
成長要素の自由度が高いのは魅力的。ステータスアップはボーナスポイントを自分で割り振る方式だ
スキルもステータス同様に自分でポイントを振って取得、強化していく

 成長要素はレベルアップで獲得したボーナスポイントを自分で割り振るスタイル。基本ステータスには、攻撃力やHPに関わる「STR」、防御力やHPに関わる「VIT」、魔法攻撃力やMPに関わる「INT」、魔法防御力やMPに関わる「RES」、回避や行動速度に関わる「SPD」、命中率に関わる「DEX」、様々な事に影響し特に強打率に関わる「LCK」の項目がある。

 職業別にあるスキルも、獲得したボーナスポイントを割り振るスタイルだ。スキルには手動で発動させて効果を得るアクティブスキルと、スキルをセットしておけば常に効果が得られるパッシブスキルがある。

 アクティブスキルは、シーフなら敵からアイテムを盗む“ビッグポケット”、戦士なら敵に囲まれても回避力が下がらなくなる“サードアイ”といったように、職業に特化した様々なものがある。時間経過で上昇していくTPというゲージを消費して発動する方式だ。スキルはメインに2つ、サブに2つをセットしておける。

 パッシブスキルには、職業ごとの得意武器をよりうまく扱えるようにするものや、回復力の上昇など、能力の底上げをするものが多い。こちらは常に効果を得られるが、スキルセットにセットしておかなければならず、セットできるのは4つまでとなっている。

 スキルは職業ごとに取得し強化できるほか、他の職業のスキルを使うこともできる。スキルの組み合わせによって自分だけのキャラクターに仕上げていくことができる。またスキル自体も最初から全部が見えているわけでなく、特定のスキルにポイントを振ると出現する派生スキルがある。転職して職業ごとにスキルの組み合わせを考えたりといった遊び方ができる。


スキルは自分で発動させるアクティブスキルと、常に効果を発揮するパッシブスキルの2種類がある。どちらも使用するスキルとしてセットしておかなければならない。他の職業で習得したスキルも使えるため、組み合わせをいろいろと試すのも面白い
クエストで出会った人物の中には、その後仲間の傭兵として雇えるようになる人もいる

 クエスト中に知り合った冒険者たちを、傭兵として雇うことができる。契約時にお金が必要だが、一緒に戦ってくれる貴重な戦力だ。職業の異なる何人かがいて、1章ではそのうち1人を連れて行けるようになっていた。傭兵も主人公キャラ同様にレベルアップしてスキルを習得していくほか、装備をあげて強化することもできる。

 また、バトル時の攻撃を武器重視か魔法重視にするか、連携を取るかといった行動の思考も設定可能。作成した思考を十字ボタンに割り振っておいて指示を出せる。そのほか十字ボタンは、Wi-Fi通信時にコミュニケーションを取るエモートなどにも使用する。エモートは吹き出し型のアイコンで、上下左右斜めで8種類が用意されている。

 傭兵の動きにもちょっと難がある。フィールドには高低差が多くついていて段差もあるのだが、主人公の後ろを付いてくる傭兵が段差にひっかかってしまうシーンに何度も遭遇した。例えば階段状に2個の段差があったとして、素早く2段上がってしまうと、傭兵は主人公の方向に走ったまま1段目を登れずひっかかってしまう。1段下りて誘導してあげないと傭兵は登ってこれない。本作は全体的に“惜しい”部分が目立ち、もう少し作りこんで欲しかったと感じた。


性格や外見、職業の異なる様々な傭兵がいる。傭兵となったあとにも彼らにまつわるクエストがあるようだ。傭兵は主人公同様に戦いレベルアップすることで強くなっていくほか、装備を変更することもできる。戦闘時の思考も設定可能だ
ファンタジーの定番的な装備から、ちょっとユニークなものまで、武器防具は非常に多彩

 戦闘の報酬はモンスターが落とすドロップアイテムだ。アイテムは“盾”や“剣”といったように、鑑定するまではカテゴリーだけの名前になっていて、街の道具屋や武器屋で鑑定してもらうと詳細がわかる。それらを売り払ってお金を得るというわけだ。

 装備も武器では剣、両手剣、斧、短剣、突剣、弓矢やクロスボウなど多彩で、防具も布系から金属鎧系などファンタジーの定番的なものが多数ある。武器の組み合わせはスタンダードな剣と盾のスタイルから、両手に武器を構える二刀流など、こちらも自由度が高い。ただ、防具も合わせて装備できる総重量(CP=キャパシティ)が決まっており、重い武器を持てば、防具は布系の軽いものにするなどの制約はある。

 武器や防具は同じ種類の物であっても性能が異なる物があり、中でもソケットがあるかないかは大きい。ソケットとはレアアイテムのジュエルをはめ込む穴のことで、ジュエルをつけると特殊能力を付与できる。強化の幅があるというわけだ。レアな性能のドロップアイテムを求めてバトルに明け暮れるというのも、本作のやりこみプレイのひとつになっている。


モンスターが落としたアイテムは、“剣”や“服”といったようにカテゴリー名だけで詳細がわからない。お店で鑑定してもらうことで詳細がわかるようになる


■ 世界観や雰囲気、グラフィックスの色彩は○。だが、作り込みの甘さはかなり厳しい

世界観や雰囲気は非常にいいだけに、作り込みの甘さがもったいないと強く感じてしまった

 ドロップアイテムの仕組みや成長システムから感じられると思うが、本作は「ウィザードリィ」を彷彿とさせるゲームシステムになっている(フィールドで呼び出すメニュー画面を“キャンプメニュー”という名前にしているあたりからもそれが感じられる)。世界観は「指輪物語」系のファンタジー、育成や報酬のシステムはウィザードリィ、それらを3D空間のアクションRPGに仕立てている。

 世界観や雰囲気は非常に優れていて、昨今だと減少している純ファンタジーの世界に心惹かれる人は多いだろう(ただし、今回は1章をプレイした段階でこのインプレッションを書いているが、もう少し物語や描写にオリジナリティが欲しかったところもある)。私もそんな1人なのだが、実際にゲームプレイに入るとどうしても細かい部分に“惜しい”と思う部分が見えるのが本音だ。

 特にプレイし始めの序盤でそうした荒削りな部分を見てしまい、プレイ意欲を削がれてしまうと厳しい。それでも、そうした荒削りな部分に慣れて乗り越えてしまえば、独特な魅力があるのも確か。方向性や素材は魅力的であることは確かなので、今後に期待したいところだ。



(C)2009 Marvelous Entertainment Inc.

(2009年 10月 8日)

[Reported by 山村智美 ]