PS4/Xbox One/PCゲームレビュー「F1(TM) 2016」

F1 2016

極限のスピード、テクニック、興奮をとことんリアルに!

ジャンル:
  • レース
発売元:
  • ユービーアイソフト
開発元:
  • Codemasters
プラットフォーム:
  • PS4
  • Xbox One
  • Windows PC
価格:
パッケージ版:7,980円(税別)/ダウンロード版:7,100円(税別)
発売日:
2016年9月8日
F1マシンによる究極のバトルを再現
全21戦の各国サーキットも緻密に再現されている

 圧倒的パワーウェイトレシオと強力なダウンフォースを誇る究極のマシンで戦う、究極のモータースポーツ。F1世界選手権の公式ゲーム「F1(TM) 2016」が、今年も鈴鹿グランプリの開催時期に合わせて9月8日に発売された。

 毎年恒例となっているこのシリーズ、開発は引き続きレースゲームの老舗デベロッパーであるCodemasters。国内コンソール版は昨年からユービーアイソフトからの発売となったものの、ゲームの中身は変わらず、骨太のF1シミュレーションゲームになっている。なおPC版については日本語を含むマルチリンガル対応版がSteamにて配信中だ。

 リアルのほうの今シーズンのF1は、史上最年少のチャンピオン(マックス・フェルスタッペン)誕生や、トップレーサーの相次ぐクラッシュなど、波乱万丈のドラマが続出という印象。こういった、F1ならではのドラマチックなレースを、限りなくドライバーたちの視点で楽しめるのがこの「F1(TM) 2016」だ。

極端に狭い路地で展開する市街地コースでは今年からウルトラソフトタイヤの使用が可能になった

ドラマチックなシーズンを追体験する、大幅強化されたキャリアモード

専属のエージェントが様々なアドバイスをくれる「キャリア」モード
中位コンストラクターで上位を目指すのが面白い
チームエンジニアと協力しながらシーズンを戦う

 昨年発売された「F1(TM) 2015」では、PS4世代のゲーム環境に特化した新ゲームエンジンの投入がメインとなり、ゲーム内容のほうはかなりアッサリまとめられた印象があった。そこが今年の「F1(TM) 2016」における大きな改善点だ。今作では全21戦にわたるF1のシーズン戦をより濃密に体験できるよう、「キャリア」モードが大幅に強化されている。

 キャリアモードは本作におけるメインコンテンツという位置づけで、プレーヤーは期待の新人ドライバーとして2016年のF1世界選手権に参戦。ゲームスタート時には任意のコンストラクター(チーム)を選択することができるが、シーズン中にはそのチームレベルにあったレース結果を出すことを求められる。上位コンストラクターでポール・トゥ・ウィンを狙ってもいいし、中位・下位のコンストラクターで期待以上の順位を目指すといった方向でも面白さを得られる。

 本作においてより面白みがありそうなのは、どちらかというと後者だ。というのも、本作のキャリアモードには、全21戦で構成されるシーズンを通じて、マシン性能をアップグレードしていく「R&D」(研究開発)というシステムがあり、これを活かすことで中位・下位のチームで上位チームを脅かすことに大きな楽しさがあるためだ。

 現実のF1でも、シーズン序盤のマシンは未完成で、終盤に近づくにつれてエアロやパワーユニットの改良が行なわれ、より速いマシンがドライバーの手にわたるというプロセスが採られていく。本作のキャリアモードではさらに、プレーヤーの意思と能力に応じてマシン性能がアップグレードできるというのが面白いところだ。

 R&Dシステムでアップグレードできるのはエンジンやシャーシまわりの5項目で、それぞれ最大5段階にアップグレードすることができる。それぞれの項目をアップグレードするには「リソースポイント」とよばれる数値が必要になることがポイントだ。リソースポイントは毎回のレースでの練習セッションや予選・決勝での達成度に応じて得られ、たくさんのリソースポイントを獲得するほど、より強力なマシンにアップグレードできるという寸法だ。

5種のパーツを1戦ごとにアップグレード。より上位と戦えるマシンを構築していく
「コース順応」ではコースの完全マスターを求められる
今作ではチュートリアルムービーが導入され、新ルールがすぐ把握できるようになっている
練習セッションが雨天となることも。余計にマシンコントロールが難しくなる

 そこでこれまで以上に重要となったのが、本番レース前に行なわれる全3回の練習セッションである。従来作では単に規定以上のタイムを出して満足していた練習セッションだが、本作では「コース順応」、「タイヤ・マネージメント」、「予選ペース」、「チーム目標」という4つのチャレンジ項目を達成することで追加のリソースポイントを獲得できるという、重要な機会になっているのだ。

 「予選ペース」は規定以上のタイムを出せばよく、「チーム目標」も、他のチャレンジをそつなくこなせばパーフェクトを得られるのだが、特に手強いのが「コース順応」と「タイヤ・マネージメント」の2つである。

 「コース順応」では、コース中のコーナー各所にもうけられたチェックポイントを正確かつ高速に通過することを求められる。チェックポイントは理想ラインの上にあり、たとえ良いタイムで周回できたとしても雑なラインでコーナーを刻んでいるとたくさんのチェックポイントを逃すハメになる。かといってゆっくり走ってチェックポイントを通過してもダメだ。通過時のスピードも要求されるので、コーナーの入口から出口まで理想ラインをしっかりと踏みつつ、しかも減速・加速のタイミングや力加減も完璧にこなさなければパーフェクトは取れない。

 「タイヤ・マネージメント」ではさらに丁寧なマシンコントロールを要求される。このチャレンジではコースをレーススピードで1周する間にどれだけタイヤを大事にできるかが3段階で評価され、4周の合計がスコアとなる。パーフェクトを取るためにはほとんどタイヤを滑らせず、負荷をかけずに周回する必要があるが、同時にかなり速いラップタイムを記録しなければ「データが取れなかった」と言われて0点評価になってしまうのが手強い。

 この2つのチャレンジは本シリーズをプレイし続けてきたプレーヤーにとってもかなり難しいもので、パーフェクトを取るためには何度も何度も再チャレンジが必要になる。途中で挫けそうになるが、やればやるほどうまくなるのがこういったレースゲームのよいところで、上達を実感するうちについつい、全パーフェクトを取るまで練習してしまうものだ。そうこうしているうちに、以前よりも良いタイムで、しかも安定してコースを走れるようになった自分に気がつくことができる。こうして、しっかりとコースをマスターした上で予選と決勝に臨めるという、よくできたシステムになっているのだ。

 こうして充実の練習セッションを過ごし、リソースポイントを獲得。貴重なポイントを何に使うかはプレーヤー次第だ。自分の走りの特性や、ライバルチームとのパフォーマンス差を考えてマシンを少しづつアップグレードしていく。アップグレードパーツが実際に装着されるのは次のレースでとなるため、それを楽しみにしつつ、まずは目の前の決勝レースを好成績で戦いぬく……。という有意義な循環が、21戦もの間繰り返されていくわけだ。

 こういう形で、本作のキャリアモードはレースでの短期的な判断・決定と、レースをまたいでシーズン全体を睨む判断・決定との、複合的な戦略的チョイスがうまく組み合わされている。次のレースではもっと良い走りを目指せるというのは、じつにプレーヤーのやる気をそそるものだ。チームエンジニアとともにマシンを改良していくリアルのF1ドライバーも、シーズンを通じてこのような気持ちを体験しているのかもしれない。

全てのチャレンジをこなせば多くのリソースポイントを獲得し、マシンアップグレードを加速できる

レースシミュレーションの本格具合もさらに強化。リアル志向に応える

練習と予選を終えて、決勝レースに参戦
荒れたレースではセーフティカーが導入されることも
レース開始前のフォーメーションラップでしっかりとタイヤを温める

 キャリアモードにおける長期的な楽しみの強化に加えて、本作ではレース中のF1レギュレーションの再現もさらに強化している。前作では省かれていたセーフティカーの強化再導入や、決勝レースにおけるフォーメーションラップの再現、そしてレーススタート時のマニュアルスタートといった要素の導入だ。

 セーフティカーはリアルのF1でも悪天候時や大荒れのレースとなったときによく見るもので、コース上の安全が確認されるまでの間、ながければ数ラップにわたってコースを先導していく。その間の追い抜きや速度超過はご法度で、結果的にセーフティカーを先頭に大量のマシンが数珠つなぎにコースを巡回していくことになるのだが、レーサーにとっては上位車両との差を縮め、レース再開後の逆転を狙う大きなチャンスでもある。そのために誰かの大クラッシュを期待するのもアレだが、本作のレースでは悪天候時によくどこかでクラッシュが発生してセーフティカーが導入されることがあるので、中位・下位スタートとなったレースでの戦略に組み込んでおくこともアリだ。

 より小さなトラブルが発生した場合に「バーチャルセーフティーカー」の導入が行なわれることもある。これは実際にセーフティーカーがコース上に出てくる代わりに、各ドライバーに一定の速度制限を加えるものだ。レース再開までの間、ある程度抑えたペースでコースを周回しなければならないが、タイミングが合えばピットインをするチャンス。各マシンのペースが抑えられているので、ピット作業によるタイムロスの悪影響を低く抑えることができるからだ。

 なりきり派のプレーヤーにとってはレーススタート前に行なわれるフォーメーションラップの導入も嬉しいポイントだ。レースグリッドに並ぶ前に1周行なわれるフォーメーションラップでは、コースの状況やマシンの調子を確認するだけでなく、タイヤを温めるための貴重な機会でもある。適宜蛇行してタイヤ温度を高めておけば、スタート時により良い状況でレースを始められるという寸法だ。こういった細かな要素も含めて、本作ではF1シーンをしっかりと追体験させようという意欲がたっぷりである。

レース開始直後の第1コーナーは特に大きな危険地帯
レース終盤に無理な追い越しをしかけてクラッシュすることも
マニュアルスタートでは、半クラッチで8,000~10,000回転を維持
良いスタートが切れれば開幕から数台を抜きされる
高速なF1ではちょっとしたミスが命取り

 そしてテクニック的にも重要となるのが、レーススタート時のマニュアルスタートシステムである。リアルのF1ではたまにスタートに失敗してゴボウ抜きにされる車があったりするが、あの風景が本作でも再現される。

 本作ではデフォルトでONになっているこのシステムでは、スタート直前にエンジンの回転数を適切な値に維持し、スタートシグナルが点灯した瞬間にクラッチを繋いでスタートするという、実際同様の操作が要求される。シグナルの点灯タイミングはランダムになっているため、1、2、3、ゴー!とタイミングを合わせてドンということはできず、実際にシグナルが全点灯する瞬間を目で確認してから反射的にクラッチを繋ぐ必要があるというのがポイントだ。完璧なスタートを切るのはかなり難しいが、上達すれば、スタート時に3~4台をいきなり交わすことも可能。面倒くさければオプションで自動化することもできるが、それだと平均的なスタートしかできず、せっかくの勝負どころが1つ減ってしまうのでもったいない。

 このように多くの面でリアルのF1シーンを再現しようとしている本作だが、ドライビングモデルもやはり、かなりの本格派だ。アシスト機能を全オフした状態ではまっすぐ走ることすら難しい。マシンのトルクが非常に高く、エンジンの反応も極めてクイックなため、強く加速するだけで簡単にタイヤがスピンしてしまうためだ。コーナリングが組み合わされば尚更、横方向の負荷と、加速による縦方向の負荷の合計は簡単にタイヤの限界を超える。その負荷が限界ギリギリに留まるよう、最大のパフォーマンスを引き出すのが腕の見せどころだ。

 とはいえ、アンチロックブレーキシステムや、トラクションコントロールシステムといったアシスト機能をフルに入れればパッド操作でも簡単に良い走りを楽しめる。さらにオートブレーキアシストをフルに入れれば、アクセルベタ踏みでも簡単にコースを周回できるので、初心者でもF1のスピード感を存分に楽しめるという寸法だ。

 各アシスト機能はオフ、ミディアム、フルといった3段階でそれぞれ調整できるので、腕前に合わせ、1番快適に走れる設定を見つけよう。各自の好みに合わせて楽しめるのが本シリーズのいいところだ。

フルアシストではレースゲーム初心者でも簡単にF1の迫力を楽しめる
ハンコン装備のレースゲームファンならアシスト全オフでの走行にチャレンジしたい

マルチプレイセッションがおもしろい!

セッションリストで簡単にオンラインレースに参戦できる
厳しい戦いとなる悪天候のレース。長丁場の設定になるほど達成感も高い
適切なピットインのタイミングを見極めるのが勝負の鍵だ

 本作では上述の「キャリア」モードのほか、R&D機能等の遊び要素無しの設定でシーズンに参戦する「チャンピオンシップ・シーズン」、任意のコースでレースを行なう「クイックレース」、任意のコースでひたすらアタックを行なう「タイムトライアル」といったゲームモードを搭載するほか、最大22人でレースを行なえる「マルチプレイヤー」モードも搭載している。

 マルチプレイヤーモードは、本作で特に遊びやすく進化したモードのひとつだ。今作のマルチプレイヤーセッションでは、本作における全てのレース設定(レースの長さ、アシスト設定、練習セッションの有無や数、予選セッションの有無や構成、コース構成)を任意に調整して、簡単にオンライン・チャンピオンシップ・シーズンを開催できるようになったのだ。前作まではここまで多彩な設定ができなかったため、非常に大きな進化といえる。

 マルチプレイモードでは世界中でプレイされているセッションリストを表示して簡単に参戦できるため、手軽でもある。そしてやはり、人間相手のレースはAIを相手にするよりもずっと面白く、やりがいがある。

 特に筆者が気に入ったのが、ワンショット予選・レース長25%といったフォーマットで複数コースを連戦するモードだ。1周限りのクイックな予選で参戦相手の実力をはかり、目標順位とレース戦略を定める。現実の25%の長さ(およそ30数分)で行なわれるレースではコースの長さによるが12~18周のバトルが展開するため、途中で最低1度のピットインが必要だ。このピットイン戦略が人によって大きく違ってくるのが面白いし、多くの場合途中で天候が変化することもあるのが特に大きな勝負どころだ。

 晴天でのレースでは、最も速いラップを刻めるウルトラソフトタイヤをスタート時から4~6周程度使ってから寿命の長いスーパーソフトもしくはソフトタイヤに切り替える戦略を取ることが多いが、タイヤ消耗を抑える走りが得意な人はウルトラソフトタイヤで10周近くも走ることがある。ただ、同じタイヤを引っ張りすぎるのは突然のグリップ低下によるクラッシュという危険や、クラッシュしなくても余計にタイムが出なくなるといったこともあるため諸刃の剣だ。そのリスクをどこまで負うかも勝負どころのひとつである。

 あるいはレース途中で天候が急変する場合。本作ではドライコンディションでスタートしたレースが大雨で終わることもよくあることで、そんなときは、いつドライ用のタイヤからウェット用のタイヤに切り替えるかが勝負どころである。小雨用のインターメディエイトでよかろうと思ってピットインしたものの、数周で土砂降りとなってウェットタイヤが必要になってしまうケースもあるし、逆に、突然雨が上がって最後はウルトラソフトタイヤを履いたマシンが圧勝しました、なんてこともある。単純なドライビングテクニックだけでなく、分単位の読みと判断が勝負を分けるおもしろさが本作のマルチプレイモードにはあるのだ。

マルチプレイ特有の厳しすぎる寄せで悲惨なクラッシュに発展することも。オーバーテイクの瞬間はドキドキだ
腕の拮抗した相手と抜きつ抜かれつとやるのは本当に楽しい

 もちろん、マルチプレイではリアルのF1よりも下品な戦いが展開することもある。先行車両に追いすがってDRSによる加速で抜き去るつもりが、相手が車体をぶつけて妨害してきたり、コーナリング時に後ろから追突気味にコースから押し出そうとする相手がいたりと、さながら戦場なみの雰囲気である。もちろんそれらの行為にはタイムペナルティがかせられる違反行為なのだが、それでも相手より今の順位が高いほうがいいと考える荒くれ者が大勢いるのである……。

 そんなスリリングな戦いが展開するのもマルチプレイセッションのいいところ。常にハラハラドキドキのレースが展開し、30分にわたるバトルを期待以上の順位で終えた時にはその達成感もひとしおである。そもそもクラッシュせずにコースを1周するだけでも神経をすり減らすのがF1というものだ。それ以上の緊張感を長時間にわたって強いられるオンラインレース。このスリルと興奮に、ついついハマってしまうのである。

 というわけで本作「F1(TM) 2016」は、「キャリア」モードをはじめとする1人用の遊び、「マルチプレイヤー」モードにおける多人数の遊びの両面がうまく強化されていて、F1ならではのスピードと迫力、緊張感を非常に充実した形で楽しめる製品になっている。F1ファンはもちろん、スリリングな刺激を求めるレースファンやゲームファンの多くにオススメできる1本だ。

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