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コーエーテクモ、PS4「仁王」α体験版プレイレポート
α版とは思えない完成度。噛めば噛むほどのスルメゲー!
(2016/5/11 00:00)
コーエーテクモゲームスは4月26日、プレイステーション 4用ダーク戦国アクションRPG「仁王」の体験版「仁王 α体験版」をPlayStation Storeにて、4月26日~5月5日までの期間限定で配信した。ここではα体験版のプレイレポートをお届けする。
「仁王」は、妖怪たちがうごめく戦国世界を舞台に、難易度の高いミッションに挑むダーク戦国アクションRPG。α体験版は、主人公「ウィリアム」が豊後臼杵の黒島に小船で乗りつけたところから始まる。歴史に詳しい人はもう気づかれたかと思われるが、ウィリアムスは歴史上の実在人物、徳川家康に仕えたイングランド人の航海士「三浦按針」こと「ウィリアム・アダムス」がモデルだ。
α体験版ゆえか、導入部は簡素。漂着したウィリアムの装備は、シャツ、ズボン、ブーツと着の身着のままで、アイテムは体力を少し回復できる「仙薬」が3つだけ。目前で金色に光っている死体を調べると、武器の刀をゲット。先々こうして道中で光っている死体を調べると、テキストのチュートリアル情報が伝達されたり、武器、防具、アイテムなどが拾えたりする。
少し先に進むと、直近の死体メッセージとともに「社」が見つかる。社を詣でると、体力が全回復。また、経験値「アムリタ」を消費して能力を伸ばしキャラクターを強化する「能力開花」、守護霊の呼び戻しや憑けかえ、不要になった武器や防具などをアムリタに変える「奉納」、オンラインでCO-OPを希望する他プレーヤーを呼び出す「まれびと召喚」といったメニューが出現。また、先々ゲームを進めていくと新メニュー「木霊の加護」、「術支度」が追加される。
社の周辺を歩くと、禍々しい真っ赤なエフェクトとともに刀が地面に突き立った「血刀塚」が散見される。α体験版はPlayStation Networkへの接続が必須で、他プレーヤーが殺された場所と死因などが「血刀塚」として他プレーヤーに配信される。○ボタン長押しで「屍狂い」と戦えるが、レベルや装備によっては中ボス並に屈強。なかには、擬似PKとばかり社の前でわざと死んだと思われる高レベル「血刀塚」もチラホラ。ただ、ちゃんと社にアタリをつけた状態で○ボタンを長押しすれば、こうしたイタズラはきちんと避けられるようになっていた。
かがり火が炊かれているほうに足を向けると、死体の間近に敵らしき兵を発見。近寄ると、当然のように刀を構えてこちらに斬りかかってくる。ファーストプレイでまず驚かされるのが、こうした雑魚の強さ。一撃のダメージがハンパではなく、こちらも刀をブンブン振っていると突然「ぜぇ、ぜぇ」と息が切れて短い時間だが操作不能に陥る。ここで画面左上を見ると「体力ゲージ」の下に「気力ゲージ」があることがわかる。息切れは気力ゲージが底を突くと発生。何も考えず刀を振り回していたため発生したもので、完全無防備な状況は文字どおり死に直結する。立ち回りは気力ゲージの管理がとても重要だ。
ここでα体験版の戦闘システムについて触れておこう。攻撃は□ボタンが弱、△ボタンが強、×ボタンが回避で長押しするとダッシュ。ガードはL1ボタン。敵のロックオンはR3で、デフォルトがオフのためR3で頻繁にロックオンすることになる。
武器は近接用の「刀」、「槍」、「斧」と、遠距離用の「弓」が存在。近接用は、R1を押しながら△ボタンで「上段」、□ボタンで「中段」、×ボタンで「下段」にそれぞれ「構え」が変化。使い勝手は武器と構えで大きく変化するが、上段はモーションが長めだが高威力で主に縦方向、中段はそこそこの攻撃力で横方向、下段は威力こそ低めだが出が早く手数が多いといったテイストが基本になっているようだ。
弓はL2ボタンでTPSモードの狙撃状態になり、R2で射撃。TPSモードにせずR2で撃つことも可能だが、α体験版のシチュエーションではヘッドショット狙いか敵の釣り出しでしか使わず、ほぼTPSモード専用といった印象。このほか「石」、「手裏剣」、「火薬玉」、「焙烙玉」といった消費アイテムでも敵にダメージを与えられる。
キャラクターをレベルアップさせると、獲得したポイントで「武器スキル(刀、槍、斧)」と「術スキル(忍者、陰陽)」をそれぞれ伸ばせる。攻撃力や気力ゲージ関連はもちろん、受け流しや相手の背後を取るなどの特殊行動も可能になる。格闘ゲームのようなコマンド入力技もあったが、イマイチ使いどころがなくα体験版以降でどうなるか気になるところ。
術スキルは、手裏剣、マキビシ、毒、符術などが使えたり強化されるほか、獲得アムリタや気力ゲージ消費の低減など、いわゆる「パッシブ」効果も用意されている。武器スキルも同様だが、同じ項目を段階的に強化できたりと、α体験版ながら相当やりがいのあるものになっていた。
防具は「頭、体、腕、腰、足」の5部位があり、それぞれレベル、防御力、耐久度、重さ、装備に必要とされる能力値が存在。同じ防具でも、レベルが高いと軽くて丈夫などかなりの差がある。最初はとにかく防御性を重視しがちだが、装備が重過ぎると敏捷性が下がるうえに気力ゲージの消耗が激しくなる。α体験版に限らないだろうが、敵の攻撃力が凄まじいため、よほどの手練以外は一定の敏捷力の確保がセオリーになりそうだ。
武器と防具は敵からランダムドロップされ、基本的には強い敵を倒すほどいいものが出る確率が高い。守護霊や木霊の加護、武器の特殊効果でドロップ率が挙げられるため、いい武器、防具、アイテムを求めてひたすら敵と戦うトレハン要素が、テクニカルな操作性とあいまって実にいいスルメ具合となっている。
■ 気力ゲージ損耗を低減し攻めを豊かにする「残心」システム
さて……先ほどの息切れでも触れたが、α体験版は気力ゲージの管理が本当に大切というか「マスト」といっても過言ではない。気力ゲージは攻撃すればそのぶん減るし、ガードボタンを押しっぱなしの状態だと、何もしない状態に比べてゲージの回復量に雲泥の差がある。よって、α体験版には攻撃を多彩かつ効率化するためのシステム「残心」が用意されている。
α体験版では、攻撃などのアクションを起こすと消費されたぶんゲージ幅が赤くなるが、直後にスッと白色で回復していく様子がうかがえる。赤くなったゲージの右端に到達すると使ったぶん気力が失われるが、このときに白ゲージが右端に到達する前に「R1」ボタンを押すと、そのぶん気力ゲージが回復する「残心」効果が得られる。ひらたくいえば、攻撃した直後にゲージの白回復にあわせてR1ボタンを押すと、そのぶん気力ゲージを失わなくて済む、というわけだ。
ゲージの回復量は、R1ボタンを押した瞬間のゲージ幅に相当。攻撃ボタンを押した直後にR1ボタン連打でも残心は成功するが、それだと回復するゲージ量がわずか。可能であれば、回復ゲージ幅めいっぱいギリギリのタイミングでR1ボタンを押したいが、失敗すると回復ゼロ。正確に測ったわけではないが、いち攻撃あたり最大8割くらいは取り戻せている印象。逆にいえば、残心を使わないとそれだけ無駄に気力を消費しているということでもある。
気力ゲージの回復は、残心と同じタイミングで構えを変更、さらには下段構え中から同様に回避でも成立する。構え変更により気力ゲージを回復する武器スキルが用意されているなど、残心に関するシステム回りはα体験版ながら相当詰められている印象を受ける。
気力ゲージは、自分だけではなく敵にも設定されている。これが「仁王」の面白いところで、空振りを誘うのは「気力ゲージ切れ」を兼ねたセオリー。一見すると滅法強い鎧武者なども、コンボを見切ることでがぜん倒しやすくなる。また、スキルの蹴りなどはダメージではなく気力ゲージを奪う効果が非常に高いなど、戦いのバリエーションに幅を持たせるつくりとなっている。
ただ……このようにとても重要な気力ゲージに関するシステムが、ある程度の敵としばらく戦った後に、調べた死体からテキストメッセージで淡白に説明されるだけというのが、なんというか……残念な気がする。下手をすると、流し読みで見落とすか素通りして「なんだこのクッソムズイだけのゲーム!」となってしまう人も想定され、もしそれですぐ辞めてしまった人がいるなら「なんてもったいない!」と思ってしまう。もう少し丁寧に説明されていればなと感じた。
戦いはタイマンが鉄則 ~1対多は可能な限り避けるべし~
これはα体験版だけでなく製品版も同様かと思われるが、本作は雑魚レベルから相当手強く、物陰からの不意打ち上等、さらには1対多になりやすい“罠”としかいいようがないシチュエーションが続出し、プレーヤーを大いに悩ませる。基本的には、いわゆる“死に覚えゲー”というやつで、その配慮からか殺されてからのゲーム復帰(ローディング)が驚くほど早い。
本作に限らないが、死に覚えゲーの鉄則はマップと敵の配置を頭に叩き込むこと。特に重要なのは、前述のとおりアンブッシュと1対多になりがちなポイント。前者は覚えればいいが、後者はどうするか……1番手堅いのは鉄板手法の“釣り出し”。アイテムの石、手裏剣、弓などでひとりずつおびき寄せ始末していく。場所とタイミングによっては敵が連鎖反応するため、そのあたりも下調べが重要となる。
もし複数以上が相手となったら、1番無難なのは×ボタン長押しのダッシュでひたすら引き離すこと。本作の敵は非常に執念ぶかく、ちょっと間合いをとった程度では追跡をあきらめてくれない。ダッシュは気力ゲージを消費するため、万が一の戦略的撤退を確実なものにするためにも、前述の残心システムはとても重要。立ち回りの最中に新たな敵を誘発してしまった際などは、そのありがたみが痛み(死)を伴う、これ以上ない教訓となるだろう。
アレに似てると思われた方も多そうですが、全然違うものです
即死上等の難易度、重厚かつ不気味なグラフィックスと世界観……α体験版をプレイした人は、恐らく誰もが“アレ”を連想したはず。アレとは、近年このジャンルで定番作品となった「ダークソウル」シリーズや「ブラッドボーン」のことだ。いずれも大ヒットしたシリーズや作品だけに、多くの人はそうした“強烈な先入観”を抱いたまま「仁王」α体験版と比較してしまったのではないだろうか。
3月にシリーズ最新作「ダークソウルIII」が発売されたこともあるが、実は筆者も最初のうちは「敵の強さとか配置とか『ダークソウル』っぽいけど、やたらめったら難しいし、なんだかなぁ」と思ってしまったクチだ。強烈な先入観は、アレに比べてコレがない、アレでできていたことがコレではできない、だからつまらない、などといった「引き算」を誘発する。
だが、そうした先入観や思い込みを振り払ってα体験版をプレイすると、ゲームへの理解度が進むにつれて「ああ、これが『仁王』なんだな」と思えるようになり、2面突入後はそれが確信へと変わる。
なかには「どこがだよ。どっちも似たようなものでしょ」という人もいまだにいそうだが、筆者にいわせれば両者はスキーとスノーボード、ラーメンの豚骨と味噌、ガンプラなら1/144と1/100または1/60スケール、関節技ならアキレス腱固めとビクトル膝十字固めくらい違う。
1番わかりやすい特徴として「仁王」は“プレーヤーキャラクターの操作”によりフォーカスしている点があげられる。残心と気力ゲージを軸に、武器と構えの使いわけ、ガード、回避など、戦いには終始テクニカルな要素がつきまとう。この点、「ダークソウル」シリーズもテクニカルではあるが「仁王」とは質が異なる。「ダークソウル」シリーズはレベルデザイン込みのアクションゲームとして高い完成度を誇っており、キャラクター操作はそれにあわせたシンプルな方向性。それが高難易度ながらも、遊びやすさや楽しさに寄与している。
一方で「仁王」はキャラクター操作をよりフィーチャー。やや乱暴な言い方だが「格闘ゲーム」寄りともいえ、1戦ごとの負荷が大きいぶん、レベルデザインも「ダークソウル」シリーズより局地的なものになっているように感じられる。ファーストプレイは極度に緊張していたこともあり「次の社はどこなの? まだ先なの? 嘘でしょ?」と冗長に思えたものが、2面クリア後に本稿の撮影用に新規プレイを開始したところ「最初長いと思ったけど、これくらいで全然丁度いいわ」となってしまった。仮に「ダークソウル」シリーズのレベルデザインに「仁王」の戦闘システムを持ち込んだとしたら、多くの人はステージクリア前に精魂尽き果ててしまうだろう。
ぶっちゃけてしまうと(あくまでも筆者の個人的見解として)前述のとおり“とっつき”はあまり良くなかった。だが、ゲームへの理解度、操作が指になじむにつれ、ヤミツキ度は急上昇。当初「回復薬って3つしかないのに全然ドロップしないじゃん」と辟易していたものが、奉納の副産物(?)で補充できたりなど、ファーストプレイで眉をしかめた要素のことごとくが「あぁ、俺がわかってなかっただけで、α体験版といいつつ全部ちゃんとしてたんだな」とキレイに覆っていった。
ゲームは嗜好品だから、万人の誰もが好むといったものはほぼありえない。特にアクションやシューティングなどは“手触り”が重要で、生理的な意味でも個人差が大きいジャンル。さらには「いいものを作れば必ず理解してもらえる」という考えが通用しないのは、悲しいかな歴史が証明している。それらを踏まえ……ソーシャルメディア全盛、脊髄反射的に0か100で物事を判断し発信する人々が世界中にあふれるなか、「仁王」のような作風は結構なリスクを伴っていると思う。だからこそ、「仁王」のような作品を世に送り出す姿勢は、本当に頼もしいし、また嬉しい。α体験版ということで、今後どうなるか未知数な部分も多々あるが……とりあえず筆者個人としては、現時点で「仁王」ロスかなと自分が心配になるほど再びプレイしたくて仕方がない。
α体験版だから、次はβ体験版なのだろうか? E3でアナウンスがあるのか? それとも東京ゲームショウ以降になってしまうのか。2016年発売予定というざっくりとした期間が、これほど恨めしい響きを伴うとは。「なんだよその鉄球攻撃! 痛すぎるだろ!」とキレかけた1面ボス。「その噛み付き絶対に避けられないって! ふざけんな!」と夜中に絶叫させられた2面ボス。5月6日00時00分以降、今はその何もかもが愛おしい。
最後に、これは決して私利私欲ではなく……なにせ難しかったし、1面クリアの制覇の証が取れなかった人も多いと思うわけですよ。そこでα体験版の近日再配信とか……いや別に自分がやりたいからいってるわけじゃないですよ。だって5日ギリとはいえ一応2面クリアしましたし、だから私欲ではないとわかっていただけますよね?。とりあえず、どうでしょうか。ぜひぜひご検討くださいませ。
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