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【スマホアプリ今日の1本】「Lifeline」これはデジタル版ADVゲームブックだ!
未知の惑星を探索するタイラーと通信し、彼が生き残るための手段を示せ!
(2015/12/25 00:00)
「Lifeline」の3大ポイント
・見知らぬ誰かとの通信という引き込まれるストーリー
・プレーヤーをあえて待たせることで発生するリアリティ
・ときには待ち時間がもどかしく感じることも……
今月に入ってから、「Lara Croft GO」、「ぷよぷよ!!タッチ」、「Brain Dots」といった、素晴らしいアイデアを活かし、高いゲーム性を実現したスマホアプリを紹介してきた。本日ご紹介するのも、そんなアイデアを重視したソフトの1つ。3 Minute Gamesより配信されている、2015年度のGooglePlayベストゲームにも選ばれた異色のサバイバルAVG「Lifeline」である。なお続編である「Lifeline 2」(iOS、税込360円)も配信中となっている。
読者諸兄は、アドベンチャーゲームブックというものをご存知だろうか。筆者が若かりし1980年代に一世を風靡した、本形式でAVGやRPGを楽しめる小説とゲームが合体したような作品だ。書内の文章は数百個の段落に分けられおり、各段落には通し番号が付いている。読者は番号順に本文を読むのではなく、段落の最後にある選択肢のいずれかを選び、選択肢に記載された番号の段落へと読んでいく。つぎに進むべき段落が別ページに書かれているため、進んだ先に何があるのか・何が起こるのかがわからない。ゲームと同じように、ワクワクしながら冒険できるのである。
本作は、そのアドベンチャーゲームブックのデジタル化とでも言うべき内容。とはいえ、プレーヤーが主人公として冒険するわけではない。ある日、プレーヤーのもとに未知の惑星に墜落した宇宙船の生き残り・タイラーからの通信が入る。彼と通信をかわし、彼にlifeline(生きるための手段)を示すことでゲームが進んでいくのだ。
ゲームは、タイラーから送られてくるメッセージを読んで、それに対する返信を選ぶだけのシンプルな作り。あえて言えばスーパーファミコンの「弟切草」や「かまいたちの夜」に通じるものがあるが、本作はテキストのみでグラフィックスはいっさい表示されない。が、しかし、それが逆に臨場感を高める一因になっている。あまりにも唐突に始まるストーリーは、ついついゲームに引き込まれてしまうこと間違いなしと言えよう。
そして本作には、臨場感を高めるための工夫がもう1つ施されている。それがリアルタイム制だ。一例をあげると、タイラーがA地点からB地点まで移動するシーンがある。そのさい、「到着したら連絡する」という言葉を残して、それ以降はメッセージが届かなくなってしまう。タイラーが移動中であり通信を行なえないことを示す演出だが、これはかなり秀逸なアイデアと言える。この手法により、プレーヤーにあたかもタイラーが「実際に移動している」かのような錯覚に陥らせることができるのだから。GooglePlayベストゲームに選ばれたのは、個人的にはこの演出が評価されたのではないかと思っている。
しかし、この演出は諸刃の剣にもなりかねない。タイラーが移動を終えるまでのあいだ、言うまでもなくプレーヤーはただ待つだけである。休日にゲーム三昧の時間を過ごしたい人にとっては、もどかしい時間になるであろうことは想像に難くない。実際、筆者にも「早くストーリーが知りたいのに、まだ着かないのかよ!」と思いながらプレイしたシーンがあった(先を知りたくなるのも、秀逸なストーリーがあればこそだが)。
そのため、ゲーム専用の時間を取り、集中してやり込むようなプレイ方法は不向き。むしろ、昼休みや電車の待ち時間、ベットに入ってから寝るまでのちょっとした合間など、短い時間に小説を読むように楽しむのが良いのではないかと思う。有料とはいえAndroidで122円(iOSなら120円)、その金額で何度もワクワクするストーリーを楽しめるのだから、名作小説を買ったと思えば安いものではないか。