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24(ぷよ)周年を迎えた「ぷよぷよ」IPの“攻めるチャレンジ”
小説やカフェ、舞台まで。最新作の認知とファン獲得のために続く挑戦
(2015/8/29 13:39)
「CEDEC 2015」の2日目となる8月27日、セガゲームス コンシューマ・オンラインカンパニー 第二CS研究開発部のプロデューサー細山田水紀氏による講演「ぷよぷよIPのチャレンジと管理について」が開催された。
「ぷよぷよ」は1作目が登場してから今年で24(ぷよ)周年という節目の年を迎えた。日本人なら誰もが知っている国民的パズルゲームと言っても過言ではない存在だが、そのIPを預かるセガと、チームを率いる細山田氏は、今もIPを守るのではなく、攻めのチャレンジ精神を持って管理しているという。
細山田氏による講演は昨年も行なわれたが、今年はその情報がさらにアップデートされ、この1年で何があったのか、また「ぷよぷよ」チームがIPで何をしようとしているのかが語られている。
IP管理は守るだけでなく攻めも必要
「ぷよぷよ」は元々コンパイルのタイトルだったが、2001年にセガに版権が移行された。移行のタイミングでは資料やデータがほぼなく、メガドライブ版などで関わっていた経験者が社内にいる程度だったという。そのため社内で「ぷよぷよ」を再定義した。対戦型のパズルゲームで、簡単操作で、同じ色を4つ以上繋げて消す……といった定義を1から作るのは大変な作業だが、「ぷよぷよ」を見直す機会としてプラスになったという。
「ぷよぷよ」のタイトルを開発する部署は、アーケードやモバイルなど各所にあるが、IPを監修するのは「ぷよぷよ」チームのみ。他の関連チームとの情報共有のため、クロス・ファンクショナル・チームを作って定例ミーティングを実施し、多展開できる体制を強化している。
IP管理においては、ライセンスアウトなどの営業に使用する資料がなかったため、新たに制作。シンプルなゲームながら、キャラクターのカラーリングや、既に展開しているグッズなどの話を加えていき、50ページを超える資料が作られた。
IPは管理しているだけでは、守っているだけだと思われる。状況によってスタイルガイドにないものも作らねばならないこともあり、新規でぷよを書き下ろしたりもしている。最近だとHD化が進んで成立しなくなったものもあるので、必要に応じて作る、守るところは守るという棲み分けが重要になる。
「ぷよぷよ」IPのチャレンジとしては、ゲームでは時代やタイミングに合わせた変化を続けてきた。プレイステーション 4やXbox Oneといった最新機種でリリースすることや、アーケードで基本プレイ無料、スマートフォン連動という新たな試みにも挑戦している。細山田氏は、「ぷよぷよのファンは結構いるが、新しいファンも獲得せねば母数が増えない」という点を強調した。
ゲームのPRや売り上げに繋がることも手掛けている。プレイ動画規約の用意や、ぷよの日(2月4日)イベントの企画、他社のイベントでの使用依頼などがある。ゲームイベント「Red Bull 5G」に採用されており、「ぷよぷよ」のプレーヤーのコミュニティが厚いという点で評価されているという。
さらに、「やったことないことをやろう」という挑戦もある。最近の施策では、ドラマCDを発売。ゲームではできない展開で、売れなかったら終わりという話でやっていたが、数千枚を売り上げて継続する企画になった。続いて小説も展開している。ターゲットは小中学生の女の子で、ゲームをやらない層をひっぱってくるために物語から入るという狙い。こちらもかなり順調に売れていて驚いたという。
コラボカフェは現在3期目の開催中。「ぷよぷよクエスト」の施策の一環として行なっているもので、約3カ月という長期間で展開している。現地をロケし、チームのデザイナーが1からデザインしたこだわりのカフェになっている。
そして注目は、舞台化。こちらはやはり賛否両論あったそうだ。細山田氏は、「芝居は咳払いするのもためらわれる空気感がある。芝居の面白さはゲームではできないので、それを体験しながら、2.5次元的にキャラクターを見てほしい」という。ただセガとしては、「サクラ大戦」などで舞台のノウハウがあるのでうまくできたそうだ。また舞台は2時間で終わるので、普段ゲームをやらない人にも知るきっかけになるという狙いもあるそうだ。
「ぷよぷよ」は24年間続いてきたことで、プレーヤーの世代が広い。「違う見せ方で新しいチャレンジを」と細山田氏は言う。また10年前は動画配信というものがなかったように、今はできなくても10年後ならできそうなこともある。30周年、40周年と続けばあるかもしれない、とアイデアを貯めておく。
こうしたチャレンジを、なぜネームバリューのある「ぷよぷよ」がするのか。アンケートを取ると、9割以上の人が知っているが、最新作は知られておらず、過去のものという認識があるという。細山田氏は、「『ぷよぷよ』IPを長く続けるには、その時代の『ぷよぷよ』を楽しんでもらうことが大事。『昔はよかった』でもいいが、今のものを否定されると終わってしまう。攻めてやっと現状維持ができる」と語った。
続ける秘訣は「愛をもって稼ぐこと」
細山田氏が「ぷよぷよ」をプロデュースする中で感じたこととして、「長く続くIPにはこういう人がいる」という例を示した。
1つは、優秀なデザイナー。「定義は難しいが、即決で話をしてくれる人が必ずチームにいる」というのが大事だという。次に、攻めと守りの管理や判断ができる監修者。攻守のタイミング、判断を間違えるとIPは続かない。
物を作れる人がチーム内にいる、ということも重要。「許諾だけだと成立しなくなる。内部でIPを使って稼ごうという人がいないとうまくいかない」という。そして最後に、IPに愛がある人。細山田氏は「愛がないとだめだし、稼がないと終わってしまう」と語る。
ではIP管理を学ぶにはどうすればいいのか。逆説的だが「IP管理担当者になる」というのが1つ。あるいは社内で管理がしっかりしているIPから、その担当者の話を聞くのが重要だという。もう1つは、プロジェクト成功事例に関わること。細山田氏は「『ソニック』はずっと作っている人もいて、作り始めから終わりまでしっかりしている。そこに関わっていなかったら『ぷよぷよ』はできなかった」という。
そんな「ぷよぷよ」は、外部からは「監修が厳しい」と言われることがあるという。「ぷよぷよ」においては、エログロ系や、黒いゲームデザイン(曖昧な表現だが、管理側にはイメージがあるようだ)は絶対にNG。それ以外についても色々とあるわけだが、細山田氏は「NGなものにははっきりとNGを出す、そしてストレートに話す」ということを意識しているという。「ダメなものはすぐダメだと断らないと、契約直前までずるずるいってしまうことがある。そういうことはないようにする」と述べた。
ただ最近は監修要件を緩めて、24周年、そして来年の25周年を機に、各種の商品化を多数進めたいとしている。「ゲームを1本作るのは工数もかかる。商品化で面を取りたい」というのが狙い。具体的な線引きについては「聞いてください」だそう。ここは細山田氏氏のポリシーとして、「会って話すのが大事。特にコラボの件は、会わないと話が進まないこともある」というのがあるのだそうだ。
元々はセガのIPではなく版権移行されたものだとはいえ、その後のバリエーションを見れば、セガの「ぷよぷよ」に対する努力と挑戦は称賛に値する。筆者は長年のファンだが、今までIPを絶やさず発展させ、いつでも新しい「ぷよぷよ」に触れられる機会を作ってくれていることに感謝したい。1ユーザーとして、24周年、25周年の展開が楽しみだ。