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VRコントローラー「Oculus Touch」発表!OculusプレE3カンファレンス詳報
ハードウェア、コンテンツ、マーケット。揃い踏みで製品化の準備完了!
(2015/6/12 08:04)
米Oculus VRは米国時間の6月11日にプレE3カンファレンスを開催し、「Oculus Rift」製品版についての各種発表を行なった。「Oculus Rift」本体は2016年第1四半期の発売予定が改めて確認されたほか、専用のVRコントローラー「Oculus Touch」も初披露。正式対応する8つのゲームタイトルについても情報が公開された。本稿ではそこで得られた新情報を総ざらいしてお届けしよう。
軽量ボディ、IPD調整ダイヤル、新型トラッキングセンサーのほか、Oneコン同梱が明らかに
カンファレンスの冒頭ではOculus VRのCEO Brian Iribe氏が登壇し、「Oculus Rift」製品版(以下『Consumer Version 1 : CV1』)の実機を披露した。
それによれば、CV1はボディ素材に合成繊維を採用し、最終プロトタイプ「Crescent Bay」からの大幅な軽量化を果たした。Iribe氏は「野球帽のようにかぶれる」という手軽さと快適さをアピールしている。また、メガネとの併用とも可能だという。
Iribe氏がいう「専用設計のディスプレイ光学システム」の表示パネルには、2つのOLED(有機EL)ディスプレイを採用。「非常に高い映像品質」と「広大な視野角」を実現するという。
また、パネルをセパレート型としたことで、IPD(Interpupillary Distance:瞳孔間距離)調整ダイヤルの実装も果たした。Iribe氏の瞳孔間距離は64mmで、Oculus VR創設者のPalmer Luckey氏は72mmだそうだが、その両方にきちんと対応できるとのことだ。
これに加えて、初のお披露目となったのが新型のトラッキングセンサーだ。これはスタンドから生えたポールの先に筒状の装置が搭載されているという形状で、この筒状の部分に赤外線カメラが収められているとみられる。独特の形状の理由は不明だが、すくなくとも「DK2」など従来のシステムとは違い、テレビやモニターの横に置いて使用するスタイルのようだ。
HMD側には赤外線LEDと思しき発光体が多数内蔵されており、トラッキングの仕組みそのものは過去のプロトタイプモデルのものを踏襲しているとみられるが、新型デザインのセンサーを用いることにより検出の範囲や精度など、性能面にどのような違いが出るかについては今回のカンファレンスでは触れられなかった。
また、CV1には取り外し可能なヘッドフォンが付属する。HMDに統合されたオーディオシステムにより、VR空間の全ての音響を立体的に再現し、ユーザーが「本当にそこにいるかのような存在感」をオーディオ面でも提供する。
その上でサプライズとなったのは、標準付属するコントローラーについてだ。ユーザー体験、ゲーム開発の双方において「標準のゲームコントローラーを同梱することは非常に重要である」と語ったIribe氏は、CV1付属コントローラーとしてXbox Oneコントローラーを紹介。これに続いてMicrosoftのPhill Spencer氏が登壇し、WindowsプラットフォームとOculus VRのパートナーシップを明らかにしている。
それによれば、MicrosoftはWindows 10で最高のVR体験を作り出すため、Oculus VRとパートナーシップを締結。Xbox OneコントローラーをOculus公式コントローラーとするほか、Xbox One本体があれば、Windows 10マシンへのストリーミングプレイをOculus Rift上のバーチャルシアターで楽しめることも明らかになった。
公式対応8タイトルがラインナップ。1,000万ドルのインディー支援プログラムも
Oculusではコンテンツ面の準備も整えつつある。ステージにはCCP GamesのHilmar Veigar Petursson氏をはじめ、各ゲームデベロッパーの責任者が登壇。CV1公式タイトルとなるゲーム各タイトルが次々に紹介された。
ここでは、宇宙戦闘機のパイロットとなる「EVE Valkyrie」(CCP Games)、ミステリアスなダンジョンを探索する「Chronos」(Gunfire Games)、極寒の世界を探検する「Edge of Nowhere」(Insomniac)といった作品が目玉タイトルとして紹介。いずれのゲームもVR専用に開発されてきたことがアピールされている。
その他、FPS「Damaged Core」、スポーツ「VR Sports Challenge」、パズルアドベンチャー「ESPER」、RTS「AirMech VR」、アクション・アドベンチャー「Luckey's Tale」といった、それぞれ異なったジャンルの5作品についても映像が披露された。
コンテンツ面の紹介のため登壇したOculus Studio責任者のJason Ruben氏によれば、Oculus VRでは16以上のトップデベロッパーとパートナーシップを結んでおり、上記で紹介した以外にも本格的なVRゲームタイトルが続々登場していく見込みだ。なお提携企業のラインナップにはスクウェア・エニックスも含まれている。
続いて登壇した開発者戦略責任者のAnna Sweet氏は、無数のインディーゲームデベロッパーに対する手厚い支援プログラムを公表。このために総額で1,000万ドル(約12億円)のぼる予算を用意しているという。いわゆるインディー的な野良アプリからOculus公式アプリになっていく成功例が、この支援プログラムによって多数生まれてくるはずだ。
そして、これらの公式的なVRコンテンツを共通のプラットフォームで楽しめるようにするのが、今回始めて発表されたVRダッシュボード「Oculus Home」だ。
これはプレイステーション 4やXbox OneにもあるようなダッシュボードインターフェースのVR版で、公式VRコンテンツの購入ができるストア/マーケット機能を軸に、フレンドのゲームへの参加・招待といったソーシャル機能など、現代的なゲームUIとしてひと通りの機能を備える模様だ。またこの「Oculus Home」にはデスクトップ版もあり、VR版と同様の機能を2Dスクリーン上でも利用できる。
ついに披露されたVR専用コントローラー「Oculus Touch」
本カンファレンスで最大のサプライズを持ってきたのは、最後に登壇したOculus VR設立者のPalmer Luckey氏だ。
自身がゲーマーでもあるLuckey氏は、VRゲームには適切な入力装置が絶対に必要とし、標準付属するXbox Oneコントローラーはどんなゲームにも対応でき、ゲーム開発者やゲームユーザーも長く親しんできた蓄積のあるコントローラーだとしつつも、やはり、それ以上のVR体験には「VR空間の中に直接的に触れるものが必要になる」と語った。
そして、それを実現するVR専用コントローラーとして「Oculus Touch」が初披露された。開発コードネームは“Halfmoon”。確かに半月を思わせるような、独特の形状をもつデバイスだ。
「Oculus Touch」は2つ1セットを、手に持って使うワイヤレスコントローラーで、それぞれにレガシーなアナログスティックとアナログトリガー、2つのボタンを搭載。トラッキングシステムも備えており、ハンドトラッキングやジェスチャー検出が可能であるという。また、フォースフィードバック機能により触覚の再現も可能と見られる。
これは機能的にはPlayStation MoveやSteamVRコントローラーと似ているが、「より小型で、扱いやすく、心理的抵抗も少ない」とLuckey氏は語る。どこまで細かくハンドジェスチャーを検出してくれるのか、詳細な技術仕様が気になるところだが、今回はざっくりとその形状と使い方が紹介されるにとどまった。
また、Oculus VRでは「Oculus Touch」の使い勝手を確かめるための標準アプリとして「TOYBOX」というものを用意しているという。VR空間内の様々なオブジェクトを手で動かしたり、操作するもののようだが、マルチプレーヤーセッションにも対応するとのことで、ハンドジェスチャーを使ったコミュニケーションなども注目点になりそうだ。
Xbox Oneコントローラーに加えて「Oculus Touch」と、標準的なコントローラーを2系統も用意したことで、Oculus VRがゲーミングにコミットする姿勢はますます明確になってきた。今回のカンファレンスでは製品の価格や正確な発売日、スペックの数字的な部分などは明らかにされなかったものの、ヘッドセット、コントローラー、ダッシュボード・ストア機能と、Oculus VRが今後VRプラットフォーマーとして展開していく上で必須となる構成要素がひととおり揃ったことは大いに歓迎したい。
来週に迫るE3 2016では、今回発表されたものが全て展示ブースで体験できるという。その模様は改めて、現地取材を通じてレポートしていきたい。