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クリエイター内田明理氏の「ユークス入社記者会見」が開催

“ウチダラボ”設立!「面白いを実験」し新しいエンタメを

6月10日 発表

場所:ユークス社内

 ユークスは、フリーのゲームデザイナーとして活動していた内田明理氏の入社記者会見を実施した。内田明理氏は今年3月にKONAMIを退職、その後フリーに転身。そこから本日のユークス入社記者会見となった。

 内田明理氏はKONAMI在籍時代に昨今の作品だと3DS「ラブプラス」シリーズで知られるプロデューサーだが、その前の2005年頃にはXbox 360本格派プロレス格闘アクションゲーム「ランブルローズ」シリーズのプロデューサーも務めており、この「ランブルローズ」の開発を行なっていたのがユークスという繋がりがある。

記者会見には、内田明理氏(写真中央)、ユークス代表取締役の谷口行規氏(写真右)、シニアクリエイティブディレクターの千早拓氏(写真左)が登壇した

 内田氏は、「皆様としては『こんなものを作るのかな? あんなものを作るのかな?……もしかして、マッチョな人が告白するようなゲームかな!』とか、いろいろお考えになったかもしれませんが(笑)。私は『自由にやらせて頂ける』という言葉を谷口社長に頂いています」と挨拶。

 そして、「そこで、こういった部書を立ち上げさせて頂きました。『Uchida lab(ウチダラボ)』です」とロゴを披露した。

ユークス内の新部門になる「Uchida lab(ウチダラボ)」立ち上げを発表

 「ご覧の通り『ウ』と書いてあります(笑)。自分の得意なことを活かしつつ、新しい発想を組み込んで。もしかしてゲームという枠も飛び出してしまうようなコンテンツも出てくるかもしれません。内容にとらわれず自由に取り組んでいきたいと考えています」と、これまでのイメージにとらわれず新しいチャレンジに挑んでいく気持ちを語った。

ユークス代表取締役の谷口行規氏。内田氏に自由にいろいろとチャレンジしてもらいたいと語った

 ユークス代表取締役である谷口氏は「当社ユークスは内田明理さんをプロデューサーとしてお迎えすることになりました。内田さんは2005年に格闘アクションゲームの開発でお仕事をご一緒させて頂きました。発想が豊かで、こだわりのハードルも高い人です。ユークスにとっても内田さんとの仕事はチャレンジングで楽しいプロジェクトでした。それが今回のご縁に繋がっています」と、以前の仕事での関わりから今回の入社へと繋がったことを紹介。

 さらに「ユークスは社員がやりたいことを実現するための環境を、クリエイターに提供するのが目的の会社。内田さんにはジャンルにとらわれず、内田さんの世界を発信して欲しい。それはエンターテインメント業界全体を活性化してくれるものだと考えています」と、自由にエンタメを模索して欲しい想いを語った。

シニアクリエイティブディレクターの千早拓氏は、以前に内田氏と一緒に仕事をしたときのエピソードを披露しつつ、これからの展開を楽しみにしている気持ちを語った

 シニアクリエイティブディレクターの千早氏は、もともと2005年の格闘アクションゲームの開発で内田氏と深く関わった仲。内田氏について「内田さんとの仕事は楽しいんです。内田さんは完成形のビジョンを持っている人。キャラクターにおいても『かっこいい』や『カワイイ』を具体的に示してくれる。」と、クリエイターとして頼れる存在に感じていることを語った。

 その一方で、「でも開発が大詰めでも『すっごい面白いこと思いついちゃった! てへ!』なんて言ってくることもあって。日常会話のなかで本当に『てへ!』を使う人を初めて見ました」と、お茶目な一面もあるというエピソードも。

 また、内田氏の語る「くだらないモノを真剣に作りましょう」という言葉に千早氏自身が楽しみにしているという気持ちも語った。

内田氏への質疑応答。謎めいた「ウチダラボ」の中身だが、キーワードは「キャラクター」、「ゲームでもゲームでなくても」、「ショービジネスでもいいような」……?

メディア陣からはなかなか答えづらそうな質問も飛んでいたのだが、終始、笑顔でお答え頂いた

 会見後には、内田氏への質疑応答も行なわれた。質問と回答は以下のとおり。まだまだ謎めいている「ウチダラボ」だが、その一端が垣間見えるような回答もあるので、ぜひ読み解いて頂きたい。

Q:「ウチダラボ」の役割や組織体というのはどのようなものになりますか?

A:これから作っていくところではあるのですが。ユークスさんは開発技術を持っていて、特にモーションや3Dモデルですね。そこには注目しています。私は今アイディアを持ち寄っているところで、それを実現するためにどういう組織にしようか……と考えているところです。

Q:「ラボ」という研究所の名称ですが、技術や遊びの研究をするという意図があるのでしょうか? 将来的にはゲーム開発も行なっていくのですか?

A:今持っているイメージだと、まずは「どんなことをすると面白いのか?」を考えたくて。デジタルコンテンツ全体に枠を広げて、それこそゲームに関わらず、含めてでもありますが、研究して比較していく。開発チームもその中に一緒に入れるかどうかは、これから検討していくことになりますね。

Q:今後、開発として例えば他社から開発を依頼されることもあるかもしれません。それこそKONAMIからユークスへと「ときめきメモリアル GirlsSide」や「ラブプラス」の新作を作って欲しいと依頼されたら、検討されるのでしょうか?

A:私はもうウェルカムですね。そういうお話があればぜひやらせて頂きたいです。私見ですが、かつてテレビ業界や映画業界がそうだったように、IPとクリエイターのマッチングやコラボレーションは、メーカーやパブリッシャーの枠を越えて、良い形で行なわれていくのがいいと考えています。ですので、もしそういうお話が頂ければ、ぜひやらせて頂きたいと思います。

Q:本日は入社会見ですが、入社日も本日になるのですか?

A:実際の正式入社は10月となっております。「ウチダラボ」が実際に動き出すのもそうなるかと思いますけれども。ただ、既にいろいろと検討は始めています。

Q:ユークスというとプロレスのイメージが非常に強いですが、内田さんのキャラクター性とプロレスが結びつくのか、それとも全く違う方向性になるのでしょうか?

A:やりたいアイディアはいろいろとあるのですが……。申し訳ないですが、ここでは具体的には話せないです。ただ、僕はユークスさんの3Dモデルや表現には興味を持っています。皆さんはどうなんでしょうね。「あれを作って欲しい、これを作って欲しい」というリクエストもユーザーさんからたくさん頂きますので。最初に何を発表するかで「なんだよ!」と思われることもあるかもしれない。ただ、僕のゲームで遊んでくれた人には「楽しい」と思われるタイトルにしたいです。とりあえずジャンルには縛られずにお待ち頂ければ。

Q:例えば「ランブルローズ」のようなゲームを2015年の今の技術で作ると、すごいものができるのではとも思うのですが。

A:そうですね、そうだとは思うのですが(笑)。

Q:美少女キャラとユークスとの繋がりで1番浮かぶのは「レッスルエンジェルス」シリーズなのですが、あのシリーズの権利は今もユークスが保有しているのでしょうか?

A:それは僕はまだ入社前ですし……(笑)。それはまた個別にユークスさんにお問い合わせください。

Q:KONAMIを退職後、しばらくフリーということで。各社からお声がけもあったかと思うのですが、そのなかでユークスにした決めてはなんでしょうか?

A:以前ユークスさんとお仕事させて頂いた時にチームの皆さんと一心同体でやれましたし。谷口社長からもお話がありましたが、いろいろご相談にものって頂いていて、私の考えていることを発信していきたいという気持ちを伝えて頂きまして。ぜひお願いしますとなりました。あとは、私の自宅から(ユークスが)非常に近いというのもありますね(笑)。

Q:退職後、独立するというお考えはありませんでしたか?

A:そういうことも考えておりました。ちょっと難しいのですが、また追って何か発表できるかも……。ただ、独立というのもいいなと考えたことはあります。デジタルコンテンツ、キャラクターは昔のようにメディアのパワーを使って、または大きな会社のスケールメリットを使って、ブワッと成功させられるかというと、そういう時代ではなくなっていて。

 私としてもいろんな形、いろんな立場で……何から何までをゲームと言っていいかは難しいですが、いろんなエンターテインメントでキャラクターを提供できると思っています。そのときはもしかすると、小さな単位のほうが動きやすいかもしれない。それは引き続き検討していきたいところです。

Q:その考えとしても、ユークスさんの受け入れ体勢は魅力でしたか?

A:そうですね。こんなに「なんでもやっていいよ!」と言って頂いていいのかなと思います。

A:Q:以前のインタビューで、「エンタメはユーザーが体験して楽しむコンテンツになっていく」という言葉がありましたが、これから「ウチダラボ」でもそういう体験型のゲームなりコンテンツなりを開発していかれるのでしょうか?

A:大変ありがたい質問で。私はリアルとバーチャルの垣根を取り払ったり、曖昧にしたり。それが今後も私の作るもののテーマだと思います。そういった面でもいろいろ実験したいことがあります。新しいエンターテインメント、新しいビジュアルを探求できればと画策しています。

Q:「ウチダラボ」では今後人材を求めていくのだと思うのですが、どんな人を求めていますか?

A:千早さんからもありましたが、「無茶なことを言ってもあんまり怒らない人」がいいです(笑)。それはさておき、滅私奉公というと封建時代的ですが、それは私ではなくお客さんにですよね。めちゃくちゃ辛くて倒れてしまいそうだけど、「あと一歩ここをがんばると喜んでもらえるはずだ」と、一踏ん張りできる人と、仕事をしたいですね。開発陣とぶつかることも多いのですが、そういう人と作ったものが最終的にいい作品になりました。ユーザーさんを見ている人というのが一緒にやる条件かなと思います。

Q:それは基本的にはゲーム開発経験者など、ゲーム関連の人材が中心になりますか?

A:そうですね……ただ、僕の得意技としてはやはりキャラクターコンテンツでして。シナリオやビジュアルの人も欲しいような……。なんか人材募集みたいになってきましたが(笑)。僕もシナリオを書かせて頂くのですが、ネタ切れですので(笑)。僕のリテイクに耐えてくれる人がいてくれたらいいなあと思います。シナリオ、絵、企画などなどですね。

Q:3月にKONAMIを退職され、ユークスへの入社は10月1日付けで入社、「ウチダラボ」の設立も10月1日ということでよろしいですか(はい、そうなりますという返答)。10月までは数カ月ありますが、その間にはフリーとして何か動かれるのでしょうか?

A:フリーで……というよりも、今後にやっていくことの構想を練りたいと思っています。あとは……家事・育児に専念したいと(笑)。

Q:ユークスに入社する動機として、「チャレンジしたい気持ちを受け止めてくれた」というものがありましたが、前の会社さんではそれが実現しづらかった?

A:なかなか難しい質問ですが……(苦笑)。そんなことはなかったんですよ。ただ、これを言うと谷口社長がどうかと思われるかもしれませんが、「お金になるかどうかもわからないような実験」を次々とスピード感を持って試していきたいというのがあって。それをさせてくれる会社は普通はないと思います。それを谷口社長が「いろいろやってみてよ」と言ってくださったので。本当は1人でいろいろ試していこうかなと思っていたぐらいなんです。

Q:そのために以前の会社を思い切って辞め、自分の力でお金を集めやってみようとしていた。でもユークスさんが「ぜひうちで」と言ってくれたということでいいですか?

A:はい結構です。厚生年金も続きますのでね(笑)。

Q:ファンからすると長年盟友であるミノ☆タローさんとのタッグもまた見たいなと思いますが。そのお気持ちはありますか?

A:それはもちろん、やってみたいと思います。今でも定期的に連絡を取っていますが、ミノさん大人気なので。LINEが既読になっていてもなかなか反応が来ないことも(笑)。ちょっと寂しい思いをしています(笑)。でも、何かあればいつでも声をかけてと言ってもらえているので。可能性はあります。

Q:「ウチダラボ」のロゴですが、どなたがお作りになったのでしょう? また、ロゴには何か意味は込められているのですか?

A:これはユークスのデザイナーさんが考えてくれました。意味は……「ウ」としかないですね今のところは(笑)。すいません、何か考えておけばよかった。

 ただシンプルなものがいいなぁというのはあって。配色によっては「あ、マッチョなものを作りそうだ」とか、「男向けだな」、「女向けだな」とか、いろんな憶測を呼んでしまうかもしれないと思いまして。なるべくニュートラルな、ユニバーサルデザインというんですかね、そういうものにしてもらいました。

Q:実験をしたいというお話なのですが、それはゲームのお話なのですか? それとももっと広いカテゴリーなのでしょうか? もう少し何か教えてもらえませんでしょうか?

A:ゲームに発展させてもいいし、ゲームとして展開せずにエンターテインメント……ショービジネス的な展開もできるんじゃないかなというような……。ここがギリギリ精一杯ですね。

Q:「ときめきメモリアル GirlsSide」など乙女系のゲームというものも、期待してもいいのでしょうか? 可能性はありますか?

A:僕がIPを持っているものでないので勝手なことは言えないのですが。もしご依頼頂ければ、ぜひやらせてくださいと言いますので。可能性がないわけではない、と思います。

Q:10月から始動ということですが、個人的な目標としていつまでに何をしたいというのはありますか?

A:あくまで個人的な想いとして聞いて頂きたいのですが……早ければ年内に何かご報告したいと思います。

Q:最後に一言お願いいたします。

A:いろいろやりたいことがあります。その中でいろんなジャンルに可能性がありますし、僕としてはこれまで僕の作ったものを「楽しい」と言ってくれた人に満足してもらうにはどうすればいいのかを、常に考えてモノを作っていきます。もちろん新しい人にも知ってもらいたいです。

 いろいろな形のゲームやデジタルコンテンツがあって、必ずしも昔のようにまとまった1つのコンテンツに没頭してもらえるという時代ではないかな、と思います。そんな時代のなかでもなんとか、遊んだら楽しい経験を残していけるものを、10年、20年後にまた引っ張り出して触りたくなるようなものを。そこだけは外さないようにやっていきたいと思います。

 今日は抽象的なお話ばかりで申し訳ないのですが、私がどんなことをするのか。今後もご期待頂ければと思います。ありがとうございました。

(山村智美)