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ブラウザRPG「幻想三国志WEB」開発プロデューサー黄郁方氏インタビュー

台湾RPGヒットシリーズをオンライン化、日本向けにコミュニティを強化

5月取材



 ライオンズフィルムは5月、メディアを台湾に招き運営タイトルの開発元を訪ねるプレスツアーを開催した。ブラウザRPG「幻想三国志WEB」では、USERJOYの開発チームから開発の背景や、今後の予定などを聞いた。

 「幻想三国志WEB」はUSERJOYが2003年からPCパッケージで展開しているRPGシリーズの「幻想三国誌」をオンラインゲームとしたものだ。「幻想三国誌」は外伝も含めて5作が発売され、台湾や中国でも人気を集め、日本でもシリーズの1、2作目が日本ファルコムから発売された。今回は、「幻想三国志WEB」のプロデューサーを務める黄郁方氏にインタビューを行なった。

【幻想三国誌シリーズ】
台湾USERJOYは、オンラインゲームが流行する前からゲーム開発を行なっていた老舗のゲームメーカーだ。「幻想三国誌」シリーズは人気が高く、台湾では多くの賞を受賞しており、ファンも多い。日本でも日本ファルコムから発売された

シリーズのストーリーの補完など、熱意のあるファン達と作り上げたストーリーが魅力

「幻想三国志WEB」のプロデューサーを務める台湾USERJOY黄郁方氏
日本でも近日実装される「天若の塔」
2つにわかれて戦う勢力戦

 「幻想三国誌」シリーズは、「三国志」の世界をベースに、オリジナルキャラクターが三国志の英雄とドラマを繰り広げるRPGシリーズだ。美しいイラストで描き起こされたキャラクター達は、ゲーム画面ではSDキャラクターとなって動き回る。

 シリーズは時系列で並んでいるのではなく、過去のエピソードを語るものもある。ゲーム内では10年の時が流れており、濃密で熱いドラマが展開した。オフィシャルの小説が作られただけでなく、ファンの間では「○○と○○は男同士だが、愛しあっている」といった同人誌的盛り上がりもあった。メーカーでは、その“カップリング”を意識したパッケージも作ったという。ちなみに女性と男性ファンが4:6くらいで、女性のファンがかなり多いとのことだ。

 「幻想三国志WEB」はシリーズのパッケージゲームで展開したストーリーをきちんと盛り込んでいる。シリーズで培ったストーリーテリングの手法を積極的に取り入れており、プレーヤーキャラクターはシリーズに登場した様々なキャラクターや、三国志の英雄と出会っていく。パッケージ同様、展開するストーリーこそが本作の醍醐味だと黄氏は語った。

 「幻想三国志WEB」の基本的な時間軸は「幻想三国誌3」と、「4」の間になっている。しかしゲームでは「時の神」といった存在が登場し、過去の時代を旅し、パッケージ版で展開したストーリーを追体験できる要素もある。さらに、「このエピソードと、このエピソードの間にはこんな展開が」、「この人物の真意はこうだったのか」、「このエピソードの結末はこうだったのか」というような、パッケージ版を補完する要素もあり、シリーズのファンにも好評だという。

 「幻想三国志WEB」の開発に当たっては、過去にシリーズを手がけたスタッフの協力も大きい。開発スタッフが過去作を研究するだけでなく、社内にいるシリーズを手がけたスタッフに話を聞き、キャラクターの解釈や、エピソードの意味なども掘り下げ、シリーズのファンにも納得できるストーリー展開を心がけた。もちろん、「幻想三国志WEB」がシリーズで初めてという人や、何作かだけ遊んだという人にもストーリーがわかる工夫にも力を入れている。

 台湾では2013年9月からサービスされている。台湾ユーザーは「幻想三国誌」シリーズのファンと、本作が初めてというファンにはっきり分かれている。既存のファンは作品に対する愛情が深く、様々な考察もしているので、シナリオやキャラクター解釈に対しての意見も多い。開発者とコミュニティで議論することもある。シナリオに関して彼らの意見を参考にすることもあるという。

 一方、シリーズが初めてという人は、簡単な操作性や、シンプルな戦闘システムが好評だ。「幻想三国志WEB」ではあらかじめ「陣形」を決めておけば、戦闘はオートで進行する。キャラクターは7人まで持つことが可能で、最大5人の陣形を編成して戦っていく。決められた期間に開催され、プレーヤー達が力を合わせて攻略するボスバトルや、ギルドで挑戦する「ギルドボスバトル」といった要素も用意されている。

 たくさんのキャラクターを仲間にできるのも本作のウリだ。仲間との親密度を上げることで、仲間キャラクターは成長し、技の威力がアップしたり、仲間全体がパワーアップする。仲間が代わりに攻撃を受けてくれたり、代わりに攻撃してくれたりもするし、連係攻撃もある。シリーズのファンはお気に入りのキャラクターを集めるのも楽しいし、三国志の英雄達を集める楽しさもある。仲間キャラクターからクエストの形式で、「依頼」という形でクエストが来て、クリアすることで親密度が上がる要素もある。

 4月よりスタートした日本版「幻想三国志WEB」は、台湾バージョンのおよそ30%のコンテンツが実装されており、今後続々と新コンテンツが追加される。じっくりコンテンツを楽しみ、バグや不具合を嫌う日本のユーザーに対し、台湾ユーザーは「とにかく早く新しいコンテンツを追加して欲しい」という傾向があるという。

 日本ではまだ実装されていないが、現在台湾で人気の高い目玉コンテンツとして黄氏は2つを挙げた。1つは「天若の塔」というダンジョン。ソロ向けのコンテンツで、プレーヤーはフロアの敵を討伐しながらひたすら上に上っていく。上の階に行くほど報酬が魅力的になる。こちらは日本でもまもなく実装されるとという。

 もう1つが、「勢力戦」。プレーヤーは2つの勢力のどちらかに所属し、相手チームを攻める。プレーヤーは敵勢力のプレーヤーに対しターゲットを指定して攻撃を行ない、攻撃に成功すれば攻撃側のポイントで、敵を撃退できれば防御側のポイントとなる。攻撃された側は味方に対して“かばう”ことも可能で、かばって敵を撃退できれば、そのかばったプレーヤーがポイントを得られる。この戦いは一定期間で行なわれ、勢力全体のポイントの集計で勝敗が決する。台湾ユーザーは積極的に参加しているとのことだ。

 日本のユーザー向けに台湾版にはないコンテンツも今後実装されていく。1つが「ペーパードールアバター」。プレーヤーキャラクターが背負う形のアバターで、キャラクターの雰囲気が大きく変わる。アバター要素を重視する日本ユーザー向けのコンテンツになるという。

 日本側からはユーザー間のコミュニティをもっと活発にするための施策を求められているという。もっとコミュニケーションをとってもらえるためにギルド機能の強化を考えている。ギルドを成長させることでギルドメンバーのみが使える「ギルドスキル」が解放されるなど、繋がりのはっきりしたメリットを検討している。

 また、もっと色々なNPCを使って欲しいということで、キャラクターの「パッシブスキル」も考えている。多彩なNPCキャラクターにさらにパッシブスキルを追加することで、パーティ編成の楽しさ、キャラクターへの魅力を増していくことも考えている。これらは今後の課題として、日本側と話し合っているという。

 黄氏は「『幻想三国志WEB』は、台湾ではユーザー間のコミュニティも活発で、ゲーム内の繋がりから、実際の友達つきあいに発展するケースも少なくありません。『結婚しました』という報告などもあり、こういったメッセージに関して、運営側は、ゲーム内でお祝いのプレゼントするといったこともしています。日本でも現実にまで繋がりが広がるような応援をしていきたいとも考えています。ユーザーと親密な関係を築けることを目指していますので、よろしくお願いします」と、日本ユーザーへメッセージを送った。

【スクリーンショット】
天若の塔は次々と出てくる敵を撃破していく
勢力戦は大規模PvPコンテンツと言える

(勝田哲也)