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ゲーミングPCレビュー「NEXTGEAR i830BA9-GW」
高速起動・読み込みのGAME Watch特別快速モデル
(2013/5/27 00:00)
少し前、筆者がGAME Watch編集部を訪れた際、編集長から「ゲーミングPCの企画アイデアが欲しい」と問われた。筆者は自身のこだわりと願望を込めて、「高速起動のゲーミングPCが欲しい。Fast BootとSSD Raid 0で、OSやゲームの起動が最高に速い奴を!」と答えた。
PCゲームを遊ぶ際には、まずPCの電源を入れる。OSが立ち上がり、各種常駐ソフトが起動し終わり、HDDのカリカリという音が消えて安定するまで、下手をすると分単位の時間がかかる。さらにゲームソフトを起動すると、重いゲームではまた結構待たされることになる。
「ゲームを遊びたいだけなのに、なぜこんなに待たされるのか!」。短気な筆者はこの待ち時間を短縮すべく、長年ハード・ソフトの両面で様々な改善を図ってきた。その甲斐あって今はとても快適なのだが、たまに出先で他人のPCを触ると、あまりの遅さに驚く。今ならさほどお金をかけず、快適な速さを実現できるのに――。
――と提案したら、本当にそんなPCが完成してしまった。マウスコンピューターのゲーミングPCブランド「G-Tune」の「NEXTGEAR i830」シリーズのカスタムモデル、「NEXTGEAR i830BA9-GW」だ。価格は129,990円で、BTOにも対応する。どんなPCに仕上がったのか、実物を見ながらご紹介したい。
【スペック】 | |
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CPU | Core i7-3820 |
マザーボード | インテル X79 Expressチップセット |
メインメモリ | 8GB(PC3-12800 4GB×2) |
ビデオカード | NVIDIA GeForce GTX 650 1GB |
SSD | Intel 520シリーズ 120GB×2(Raid 0) |
光学ドライブ | DVD±R 2層書き込み対応 22倍速DVDスーパーマルチ |
電源 | ATX 700W |
ケース | NEXTGEARシリーズ オリジナル |
OS | Windows 8 64bit OEM |
付属品 | G-Tune Accurate Keyboard、光学式マウス |
※ モニターは別売り
Fast Bootとは?
PC本体の話をする前に、今回の肝であるFast BootとSSD Raid 0の説明をしておきたい。まずFast Bootは読んで字のごとく、PCを高速に起動させるための仕組みだ。PCの起動時には、接続されたハードウェアの認識や、OSのデータ読み込みなど、様々なことが行なわれている。そこを最適化、あるいは一部を省略することで、より高速な起動を実現する。
ただしFast Bootを利用するには、いくつかの条件がある。
1. マザーボードがUEFIに準拠していること
UEFIとは、Unified Extensible Firmware Interfaceの略で、ハードウェアとOSの橋渡し役のような存在。従来はBIOSがその役目を果たしていたが、もはや古くなって現在のPCに合わなくなってきたため、現代的で多機能なUEFIへの置き換えが進んでいる。UEFIによる恩恵はいくつかあり、その中の1つがFast Bootだ。
2. ビデオカードがUEFIに準拠していること
ゲーミングPCではビデオカードを別途搭載するのが基本だが、このビデオカードもUEFI準拠である必要がある。より具体的には、ビデオカードのBIOSがGOP(Graphic Output Protocol)をサポートしていることが条件となる。
3. OSがWindows 8 64bitであること
厳密には、Windows 8 64bitをUEFI環境でインストールする必要がある。Windows 7でも僅かに高速化はされるようだが、Windows 8環境と比べると起動時間の差は大きく、高速起動を期待するならWindows 8 64bitは必須と言っていい。
以上の3つを満たした環境で、Fast Bootを利用できる。もちろん本製品は、これらの条件を満たしたものだ。
SSD Raid 0とは?
SSDとは、Solid State Driveの略で、フラッシュメモリを使った記憶装置のこと。SDカードのすごい奴、と思ってもらえばいい。従来はHDDが使われていたが、SSDはそれより高速にデータをやり取りできるのが特徴。ただし価格はHDDより高価だ。ただ高価とは言っても、最近はかなり安くなっており、今回採用された120GBのSSDは、市価で約13,000円。2基積んでもそれほど驚く価格にはならない。
Raid 0というのは、複数台のHDDやSSDを使ってデータのアクセス速度を向上させる技術だ。Raidは本来、データを複数のドライブに重複して保存することで、故障時にデータを守るものだった。しかしRaid 0では、データを重複することなく分散して保存する。このため1台でも故障すれば全データが失われるデメリットがある代わりに、理論上は2台なら2倍、3台なら3倍のアクセス速度を得られる。
SSDの故障率については、HDDと比べるとモーターなどの可動部分がないという利点と、フラッシュメモリの書き換え回数限度という欠点がある。しかし後者の欠点については、一般的な用途であれば、10年使っても全く問題にならない程度の余裕がある。それ以外には機械的・電気的な故障はありえるが、それはHDDでも同様だ。信頼できるメーカーのSSDであれば、Raid 0でも故障のリスクは十分に低いと筆者は考えている。
つまり本製品は、単品でもHDDより高速なSSDを2基使って、Raid 0でさらに倍の高速化を図ったスペシャル仕様、というわけだ。
本体の各パーツをチェック
では本体を見ていこう。各パーツについても見ていくが、実際の製品では使用するパーツのメーカーまでは指定されていないので、実際の製品とは異なる場合があるのでご注意いただきたい。
ケースはG-TuneのNEXTGEARシリーズで使われているミドルタワー型。ブラックの筐体に、兜のような意匠のフロントパネル。パネルを開くと光学ドライブにアクセスできる。また上部の前面にはくぼみがあり、マルチカードリーダーやUSB 3.0ポートなどを備えている。こちらはパネルを開くことなくアクセスできるので便利だ。
CPUはCore i7-3820。Sandy Bridge-EのCPUで設計は前世代のものだが、プラットフォームは現在も最上位のLGA2011でパフォーマンスは文句なし。CPUファンはCooler Master製のものを採用していた。マザーボードはインテル X79 Expressチップセット搭載のGIGABYTE製、GA-X79-UP4。
メインメモリはPC3-12800の4GBが2枚。メーカーは不明だが、チップにはKingstonと書かれていた。X79チップセットはクアッドチャネルメモリ対応なので、BTOでメモリを4枚組のものにすれば、パフォーマンスの向上が期待できる。容量的には8GBあれば十分なのでお好みで。
SSDはIntel 520シリーズ 120GB×2をRaid 0で搭載。これは機種まで指定されている。CPUメーカーとして知られるインテル製で、SSDでも最高級の信頼性を持っている。
ビデオカードはNVIDIA GeForce GTX 650 1GB。今回はMSI製のものを採用していた。ミドルクラスの製品だが、その分ファンの騒音も控えめで、オフィスワークなどにも対応できそう。
電源はATXの700W品。今回は高効率の80PLUS GOLDを取得し、Active PFCも搭載する、FSP製のFSP700-80EGNが使われていた。現状では十分余裕のある製品で、将来的なビデオカードの拡張にも対応できる。
周辺機器では、キーボードのG-Tune Accurate Keyboardもなかなか優秀なもの。PS/2接続を採用することで、FPSなどでよく使うキーを中心に、最大11キーの同時押しに対応する。またゲーム中に不意にWindowsキーを押してゲームが中断してしまうのを防ぐため、Windowsキーを無効化するWindows Lockキーを用意している。
各種ベンチマーク
続いては各種ベンチマークのスコアを見ていく。3Dグラフィックスのベンチマークは、ミドルクラスのGPUであるGeForce GTX 650に相応の性能となる。ほとんどのゲームは問題ないスコアだが、最近の3Dゲームを最高画質でプレイしようとすると少々荷が重いので、必要に応じてビデオカードを強化するといいだろう。
それよりも本製品で強調したいのは、SSD Raid 0のストレージの威力だ。こちらもCrystalDiskMarkによるベンチマーク結果で見ていただこう。本製品にはHDDは非搭載なので、一般的なHDDの性能として、筆者が普段使っているPCのHDDのベンチマーク結果も載せておく。HDDは旧型だが、最新型でもこの2倍速いというほどにはならない。
ざっくり言うと、本製品のSSD Raid 0だと、一般的なHDDの5~10倍速い。先の各種3Dベンチマークソフトの起動も非常に速く、HDDの環境とはまさに異次元。さらに一般的な単体SSD環境と比べても違いが体感できる。
そして気になるFast Bootの効果は、実際に起動時の様子を撮影した動画をご覧いただきたい。こちらは各種ベンチマーク等を試した後の環境となるが、特にチューニングしたわけではなく、購入したままの状態でこの速さだ。なお今回のレビューに使った本体は、発売前に急遽ご用意いただいたため、これでもまだ設定が詰め切れていない状態だそうだ。
このPCが、イマドキの標準になることを願って
最近のPCパーツで性能の伸びが最も劇的なのは、間違いなくSSDだ。数年前に登場したSSDは、いわゆるプチフリ問題を抱えていたり、信頼性に難があったりしたが、現在はそういった問題も解決している。
また最近のPCの話題と言えば、Windows 8は外せない。世間ではタッチパネル対応に注目が集まったが、Windows 7に比べて高速に起動するというのも地味ながら大きなメリットだ。Fast Bootを使えれば、さらにその差が広がる。
PCのトレンドであるこの2つを1度に体感できるのが、本製品の最大のメリットだ。ゲーミングPCとして提供されるが、CPUも高速なので、マルチに使って幸せな1台になっている。この快速っぷりを、ゲーマーだけでなく幅広い方に体感していただきたい。発案者としては、「イマドキのPCはこんなに速いんだ」ということを知っていただければ、とても嬉しい。