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台湾Thermaltake、日本市場への再進出を正式発表
ゲーミングブランド「Tt eSPORTS」を含む全ブランドを日本展開
(2013/3/22 20:01)
台湾大手ペリフェラルメーカーのThermaltake(サーマルテイク)は3月22日、アスクと共同で記者会見を開き、2012年日本法人の解散によりストップしていた日本市場向けへの展開について、アスクを総代理店とする形でリスタートする方針を明らかにした。現在、アスクを通じて順次、Thermaltake製品の日本での取り扱いが再開されており、ラインナップの拡充や流通体制が整い次第、日本語キーボードなど、日本向けの製品にも力を入れていくとしている。
機能不全の日本法人を閉鎖し、今後はアスクと二人三脚で日本展開を図る
今回の発表会の趣旨は、Thermaltakeの日本語による公式サイトが存在し、日本のPCユーザーからのニーズがあるにも関わらず、なかなか購入できないという日本の状況に業を煮やしたThermaltake CEOのKenny Lin氏による日本展開の大胆な再建プランの発表となった。
具体的には、日本サーマルテイクの閉鎖と、3つのブランドをそれぞれ別々の代理店が展開していた流通をアスクに一本化し、日本ではアスクを総代理店として、Thermaltakeとして陰に陽に、より日本市場と日本のPCファンにコミットする形で、日本展開を行なっていくことなどが発表された。
3つのブランドとは、ケース、電源ユニット、クーラーなどを扱う自作派PCユーザー御用達のThermaltakeを筆頭に、PCゲーミングデバイスブランドのTt eSPORTS、Appleデバイスの周辺機器を取り扱うLUXA2となる。
発表会にはアスクの代表取締役社長の武藤和彦氏、Thermaltake CEOのKenny Lin氏、日本市場を担当するIan Hsieh氏、プロダクト担当のTony Liu氏などが出席し、日本展開に関する事業戦略を語った。
最初に登壇した武藤氏は、Lin氏を「非常にアグレッシブな人」と持ち上げながら、「Thermaltakeはこれまでマーケティングが機能していなかったが、アスクが総代理店になることで新生Thermaltakeになる。期待して欲しい」と抱負を述べ、アスクとしても非常に力を入れていることをアピールした。
Kenny氏は、武藤氏の紹介通りアグレッシブな語りで、フランクな英語を駆使して約1時間にわたってThermaltakeの事業内容と戦略について語り続けた。Thermaltakeは1999年に台湾で設立され、世界の従業員数は500人、支店が5つ、80の代理店とビジネスを展開している。売上は設立以来、リーマンショックの2009年以外は、右肩上がりを続け、2013年の売上は1億3,000万ドルを見込む。
Thermaltakeは、これまでにもPCゲーマーが好みそうなクレイジーでクールなガジェットを生み出し続けている。代表的なのが、BMW Designworks USAとのコラボレーションで生み出されたブランド「LEVEL10」で、従来のPC向けのインダストリアルデザインからはみ出したクレイジーで、クールで、それでいて快適に使えるアイテムになっている。
同社では2009年からこの取り組みを続けており、これまでにタワーケース、ゲーミングマウスが発売されており、現在第3弾としてヘッドセットの開発が進められている。このヘッドセットは170ドルから180ドルほどの価格帯で、夏期頃の発売を予定している。日本でも発売すると言うことだ。
もうひとつユニークなのが、CPUクーラーなどの冷却装置の企画設計を行なっている同社らしい、冷却系のデバイスだ。現在は、Tt eSPORTSのブランドでマウスとキーボードが発売されている。そのユニークさは見れば一目でわかる。マウスは本体とケーブルの付け根あたりに空冷ファンが取り付けられ、キーボードはゲームをする際のホームポジションとなるW、A、S、Dの上部に空冷ファンが取り付けられている。これにより、タフなゲームプレイ中の発汗を防ぎ、テンションを落とさずにプレイを続けられる。
極めつけは、LEVEL10ブランドのゲーミングマウス「LEVEL 10 M Mouse」で、マウスとパームレストを分離し、パームレストには冷却素材を採用。さらに同社独自の冷却技術によるエアスルーベンチレーションを取り入れるなど、“マウスを換気する”という同社ならではの発想に基づくユニークなゲーミングマウスとなっている。
こうした一種ガラパゴス的な進化は、プロゲーマーリーグが存在せず、PCゲーム市場もそれほど大きくない日本では「そこまでしなくても」と思ってしまうところだが、これらのデバイスは伊達や酔狂で作られたものではなく、Thermaltakeに所属するプロゲーマーチーム「APOLLOS」のメンバーたちのフィードバックを得て生み出されたものばかりだ。
同社では、プロゲーマーを正社員として雇用しており、彼らは日々の練習を仕事とし、週末はプロリーグや各種大会に出場し、Thermaltakeのブランド確立に一役買っている。のみならず、Tt eSPORTSの商品設計に関して、1カ月単位の長期で試用し、プロダクトチームにフィードバックを返すという、他社ではなかなかできないことを日常的に行なっており、これがゲーミングデバイスブランドTt eSPORTSの好調の要因となっている。
Tt eSPORTSは2010年に設立されたばかりの新参ブランドながら、すでに台湾と中国に直営店を5つも構え、所属プロゲーマーが設計したゲーミングマウスなども生み出されているなど、停滞気味の自作PC市場と違って右肩上がりの成長を続けており、今後の展開が大いに注目されるところだ。
基本的に日本でも全ブランド全デバイスを取り扱うように。プロゲーマーチーム育成計画も明らかに
続いて登壇したHsieh氏は、台湾人ながら日本在住期間が長く、流ちょうな日本語を操りながら、日本展開について語った。
Hsieh氏は開口一番、日本市場にコミットする証として、台湾のAPOLLOSのように、日本にもプロゲーミングチームを作りたいと語った。日本には台湾のようにプロリーグもなければ、プロゲーマーが食べていけるような活躍の場もないが、基本的な考え方としては、今後、アスクと相談しながら人選やゲームのチョイスを行ない、海外に活躍の場を求める形で、ゲームファンの目標となれるようなプロゲーマーを育成したいということだ。
この考えを支持しているのがLin氏だ。Lin氏は、「プロ野球リーグに比べれば、ずっと安い」と言い切り、自社製品のブランディングとして非常に有用であると同時に、ゲーミングデバイスを取り扱うメーカーとして、彼らゲーマーの生態を知ることは、新製品製作の何よりの助けになるという。ちなみにThermaltakeは、勤務中にPCゲームを遊ぶことを認められているどころか、全社員がPCゲームを遊ぶことを義務づけられているというからおもしろい。
Hsieh氏は、具体的な取り扱い商品について話を移し、「最近の若者はDIY(PCの自作)をやりたくないという人が増えてきた」と口火を切り、「難しいけどおもしろいじゃもうダメで、格好いいけど簡単、格好良くて他とはちょっと違う」でなければならないと説明。同社によれば、DIYの中心層は40才過ぎまで年齢層が上がってしまっているようだ。
まず、「Thermaltake」が扱うケースは、従来のゲーマー向けChaserシリーズのほかに、シンプルなノルディック風デザインのUrbanシリーズを新設して投入していく。CPUクーラーはNICシリーズと呼ばれる、同社独自のブレードを装着した風圧が高く、カラフルなモデルを投入する。これまであまり取り扱っていなかった電源ユニットについては、「今後は日本でもしっかりやっていく」と明言し、PC使用中に電源ユニットの使用状況がわかるようなアプリを開発/提供することでより管理しやすいパーツにしていきたいと抱負を語った。
Appleデバイスの周辺機器を扱う「LUXA2」については、「本当は高級感のあるケースなども提供したいがAppleについていけない」と、ペリフェラルメーカーとしてキャッチアップが追いつかない事情を明かし、今後はモバイルバッテリーやヘッドセット、ホルダー、そして未知のガジェットなど、ケース以外のプロダクトのラインナップを拡充させていくことを名言。モバイルバッテリーについては、独自の特許技術を使ったワイヤレスタイプのものを今後投入していく予定だという。また、ホルダーについては、日本のユーザーからの希望が多く、世界でもっとも安い価格設定で提供することに決めたということで、ぜひ手にとって見て欲しいという。
最後のTt eSPORTSについては、マウス、キーボード、そしてヘッドセットの3種に絞り、まずは現行のラインナップを日本でも提供しながら、今後、マウスについては、アジア圏のサイズにあったひとまわり小ぶりのモデル、キーボードについては日本語が表記された日本語キーボードの発売などをやっていきたいという。
そして目下、力を入れて開発されているのがBMWとの共同プロジェクト「LEVEL 10」ブランドのヘッドセット「LEVEL 10 Gaming Headset」だ。CEBITで初公開され、今回が2度目の御披露目となる。こちらの説明はTony Liu氏が担当した。
「LEVEL 10 M Gaming Headset」は、非常にデザイン性の高いアルミニウム製のヘッドセットで、現在はまだ設定途上の段階にあるという。現在、7月から8月に向けての発売に向けてチューニングを繰り返しており、Thermaltakeが求めるクレイジーなデザインを突き詰めつつ、快適に使えるかどうかを、全パーツを対象に調整を加えているという。先述したように、こちらは日本発売も予定されており、近年稀に見る意欲的なゲーミングヘッドセットとして発売が注目されるところだ。