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【特別企画】スルガ銀行の「鉄道模型ローン」とは一体何なのか!?

“趣味の時代”に合わせて生まれた「新しい選択肢」に要注目!

【鉄道模型ローン】

2012年10月発売開始

 スルガ銀行は、2012年の10月に鉄道模型の購入を目的としたユニークなローン「鉄道模型ローン」を発売している。このローンの年利は7%、利用限度額は10~500万円となっており、銀行窓口へ行くことなくWebや、電話から申し込みできる。

 弊誌ではニュースとして、このローンの情報を取り上げたところ、お堅いイメージのある銀行のユニークな試みに、読者から大きな反応があった。趣味に特化したローンの誕生、というところに興味を惹かれた人が多かったようだ。スルガ銀行は静岡を拠点とした地方銀行のひとつなので、地方在住者にはこのニュースで初めて知ったという人もいるかもしれない。そこで弊誌では、この「鉄道模型ローン」の担当者であるスルガ銀行パーソナルファイナンス部の原田正樹氏に話を聞いた。

 スルガ銀行は、他にも「一眼レフ購入ローン」や「ロードバイク購入ローン」など“趣味”にフォーカスしたローンも展開している。スルガ銀行のこうした取り組みは、趣味のためのローンを組み、利用している人がいるということを現わしていると思う。ローンの具体的な利用風景や、ローンを活用するユーザー像といったところも質問してみた。

“リボ払い”から借り換えなど利率も魅力。口コミで広がっていった趣味系ローン

「鉄道模型ローン」の担当者であるスルガ銀行パーソナルファイナンス部の原田正樹氏
2012年10月26日から始まった「鉄道模型ローン」
3年前に発売した「ロードバイク購入ローン」。現在一番反響のある趣味系ローンだという

 「鉄道模型ローン」は冒頭でもお伝えしたように、2012年10月26日より始まったばかりの比較的新しいローン商品だ。告知はTwitterを介して行ない、イベントへの出展も2012年10月に蒲田で開催された「2012年第33回日本鉄道模型ショウ」で、パンフレットの配布などを行なうに留め、実は今に至るまでマスへのアピールは行なっていないという実にマニアックな商品だ。

 その後、鉄道模型メーカーのカツミや天賞堂といったメーカー直営店舗でのローンの告知を行なっていくにつれ、Twitterを中心に口コミで広がり、インターネットメディアが取り上げ認知度が上がっていった。現在は、アンテナの高い鉄道模型ユーザーが「鉄道模型ローン」を利用し始めているとのことだ。

 ただ、このスルガ銀行のユニークな趣味系ローンは「鉄道模型ローン」だけではない。第1弾となったのは3年前に発売した「ロードバイク購入ローン」だ。ロードバイクは舗装路を高速で走行することを目的とした自転車で、様々なメーカーが新素材や最新技術を盛り込み進化し続けている。本体のみならず、タイヤやパーツなども含め、凝り始めれば“3桁”が見えてくるお金の掛かる趣味と言える。

 スルガ銀行は「ロードバイク購入ローン」を展開する際に、社内にロードバイクを趣味とするクラブを作り、チームとして大会に参加することで、ロードバイクを趣味とする人達との繋がりを持ち、ローンの存在を知ってもらい認知度を高めていったという。

 現在ではこの「ロードバイク購入ローン」を中心に、「ダイビング」、「サーフィン」、「一眼レフカメラ」、「楽器」など様々な趣味に特化したローンを商品化している。これらのローンは“年利7%、利用限度額は10~500万円”と基本的な形は変わらない。販売の仕方についても共通で、それぞれの専門店等にパンフレットを置いてもらい、店舗でローンの紹介をして貰っている。

 ローンの中身が同じなら、もっともっと対象を多彩にした企画を打ち出してもいいように思うが、原田氏は「簡単にラインナップは増やせない」という。「新たなローンを実現するにはその業界を詳しく知ることが必要であり、本当に銀行としてお役に立てるのか見極めたうえで商品化していく必要がある」と原田氏は答えた。「鉄道模型ローン」も企画から市場調査を繰り返し、商品化するまでには1年かかったという。

 現在「鉄道模型ローン」はTwitterなどからの反響も良く、利用ユーザーも増加しているというだが、多くの利用者は数十万程度の借り入れで繰り上げ返済を行ない短期で返済を済ます人が多いという。中には、数百万にもなる真鍮製のビンテージ車両を含む、今までクレジットカードのリボ払いで購入したローンをまとめて借り換えた人もいたようだ。

 原田氏は「鉄道模型ローン」の利点の1つとして“借り換え”を上げる。「鉄道模型ローン」は鉄道模型の車両や設備、ジオラマなどの購入時に、これまでカードのリボ払いで行なっていた支払いを、ローンを利用することで一般的なカード金利に比べ、低めでの借り換えが実現できる。

 リボ払いの支払いは年利が15%となる場合も多く、手軽である反面、利息は高額となる。年利が7%で、繰り上げ返済も可能な「鉄道模型ローン」の方が比較的長期の返済でも最終的な支払いは少なくて済むケースが多い。「購入する商品を悩んでいる段階でローンの申し込みを行ない、審査通過後に購入商品を確定する方も多くいらっしゃいます」と原田氏は語った。

 先述したようにスルガ銀行は鉄道模型専門店などにパンフレットを置き、ローンの存在をアピールしている。このローンは販売店を介することなく、ユーザーと銀行間で契約が行なわれる点で、販売店の負担も少ない。PCや家電を購入する場合、販売店が「ボーナス一括払い」などカードによる支払いでも、様々な支払い方法を用意している場合があるが、ホビー業界ではまだ少ない。現在の状況に変化をもたらす可能性のあるローンといえる。

「鉄道模型ローン」は変化していく時代が生む、新たなビジネスモデルとなるか?

季節で利用者が増える「ダイバーズローン」
「楽器ローン」はビンテージ商品などで使う人がいるという人気だ

 「鉄道模型ローン」の魅力は、従来はローンの用途として敬遠されがちな“趣味”に対して大きく門戸を開いたことだ。窓口にホビーショップとした点も賢いところで、ホビーショップを介して、“趣味に対するお金の使い方”を提示するという方法は、今後ビジネスとして有用ではないかと感じた。

 もちろん、「趣味に借金をするのはどうなのか」という意見があるのも事実だし、筆者自身もそう思う。やはり、こうした意見は世間的には多いようでスルガ銀行に対して、“ローンをあまり強調して欲しくない、趣味でお金の話はしたくない”という人の声も大きいと原田氏は語った。

 こういった声を受けて、スルガ銀行もあえて大きな広告展開を行なわず、趣味の場での広報活動は考えながら行なっているという。ユーザー間で“1つの選択肢”という形で口コミで広まっていって欲しいという思いもあるとのことだ。まだまだ“趣味とローン”の関係は距離があるのかもしれない。

 スルガ銀行の趣味のローンに関しては、現在はロードバイクが最も好評で、次いでダイビングのローンの反響が大きいとのこと。ロードバイクは新車を買ったりするし、ダイビングは装備をそろえる上で大きな金額がかかることがあるようだ。また、「楽器ローン」に関しては、ビンテージの楽器を購入するという形で利用する人がいるという。

 今回の場合は、鉄道模型の場合は初期投資や、新しい車両やそれに合わせた施設などをまとめて購入する場合もあるとのこと。趣味の枠を“新しく拡げる”ときに比較的まとまったお金が必要になるという状況は想像できる。

 この他、ローンが有用な状況というのは、“限定品”や旅先での遭遇など、その時しか手に入らない商品の購入だろう。たまたま来店したときに特別な品に出会ってしまったら……。その時、「月々で分割して購入できる」というプランを紹介してもらえれば利用する、というユーザーはでてくると思う。昨今はネット販売で予約がすぐに埋まってしまうというホビー商品も多い。この時高額商品を分割で購入できれば、という点でもローンを利用したいというユーザーは多いかもしれない。「あのとき購入できていれば……」という思いを抱いている人も少なくないのではないだろうか。

 昨今、日本では“趣味”に関して入門のハードルが下がり、そして選択肢も広がっている。例えば一眼レフカメラもデジタル一眼により持つ人が増え、低価格な製品も出てきた。ロードバイクのユーザー数なども増えている。飛ばすことすら難しかったヘリコプターのラジコンは、おもちゃ的な低価格商品が多数登場している。趣味が多様化していく中で、入門用から本格派まであらゆる商品が生まれており、そのビジネスモデルは拡大している。スルガ銀行の「趣味系ローン」が生まれたのはこうした趣味の多様化の1つの事象という見方もできると思う。

 また、“支払い”に対しての意識に目を向ければ、例えば、現在ゲーム関連ではオンラインゲームなどの支払いやアマゾンや楽天からの購入で、クレジットカードを利用している人も多くなった。「携帯電話料金でゲーム代を払う」といったビジネスモデルもここ数年でポピュラーになった。ゲーム関連では、この15年で特にゲーム関連のビジネスモデルは大きく変化している。人の価値観やビジネスモデルというのは、どんどん変化している。

 スルガ銀行の「趣味系ローン」に対し、“ローンをあまり強調して欲しくない、趣味でお金の話はしたくない”という人の声があるというのは、共感できるところもある。ただ、変化の過渡期なのかもしれない、という気持ちもある。今後スルガ銀行などの金融機関、そしてユーザーが「趣味系ローン」というものに対し、どんな変化をしていくか注目していきたいと思う。

 最後に読者へのメッセージとして原田氏は「鉄道模型ローンはこれからも利用者に更に便利に利用していただけるよう進化していきます。資金面も含め欲しかった鉄道模型を諦めていた方に利用していただき、少しでも夢の実現のお手伝いができれば幸いです。また鉄道模型だけでなくホビーをこよなく愛するユーザーへのさらなるアピールの1つとしてGAME Watchと新たなコラボレーション商品も考えていきたいです」と意欲的に語った。スルガ銀行では今後も「趣味系ローン」に力を入れていく予定で、「ラジコン購入のためのローン」という新しい商品の販売も検討しているという。

 「鉄道模型や楽器購入のためのローン」という明確に趣味を応援する商品は、時代の求めるものであると思う。ニーズにいち早く対応したスルガ銀行の挑戦心は評価したいし、応援したい。このスルガ銀行の新しいビジネスが今後趣味を楽しむ人達にどう受け入れられ、結果趣味のビジネスそのものがはどう変化していくのか、注目したい。

この他にもスルガ銀行は様々な趣味系ローンを展開している

(勝田哲也)