中国でPS VitaやKinectが発売開始!? 露骨なパクリが横行する中国ゲーム機事情

摩奇の携帯型マシン「MUCH」などChinaJoyで見られた新型ゲーム機を一挙紹介


7月26日~29日開催(現地時間)

会場:上海新国際博覧中心(Shanghai New International Expo Centre)



 今回ChinaJoy会場を回っていて驚いたのは、中国ではゲーム機が販売できないはずなのに、いたるところでゲーム機を見られたことだ。それらは我々が日本で目にする既存のゲーム機に形状からコンセプトから遊び方までそっくりで、要するにパクリ製品ばかりだった。

 リーガル的には完全にアウトなので、日本に上陸することはまずなさそうだが、それらパクリハードのビジネスモデルを見ていると、彼らなりの創意工夫や、中国におけるコンシューマーゲーム市場のトレンドが透けて見えてきておもしろい。さっそく紹介したい。



■ PS Vitaのボディを完コピした摩奇のAndroid端末「MUCH」

摩奇ブースにあった巨大な「MUCH」
摩奇の携帯型ゲーム機「MUCH」。手に持った感触はPS Vitaそのままだ
「MUCH」試遊コーナー。リラックスしてゲームが楽しめる環境が整えられていた
中国のプロゲーマー「“人皇”SKY」がゲストとして登場し、「MUCH」をプレイするイベントが開催された

 ブースを回りながら、「えっ!?」と二度見してしまったのが摩奇の新型ゲーム機「MUCH」だ。摩奇ブースの入り口には巨大な「MUCH」のモックが鎮座し、パッと見には6月に日本やアジアでリリースされたPS Vitaホワイトモデルにしか見えない。本体形状は優美な楕円形のデザインや十字キー、4つボタン、LRボタン、左右2箇所のアナログスティックまで完全にコピーされており、ストラップを装着できる左右下部の穴まで見事に再現されている。

 液晶こそソニーが誇る960×544ドットの有機ELではなかったが、800×480ドット表示の高精細タッチパネル液晶を搭載し、HDMI端子、カメラ(前面、背面)、ステレオスピーカー、マイク、3G通信機能まで搭載されており、コピー品の最高級である「1対1」と称してPS Vitaとして売ってもおかしくないほどのクオリティを実現している。

 CPUはサムスンのS5PV210 ARM Cortex-A8、GPUはPowerVR SGX540、521MB DDR2メモリ、16GBのストレージなどを搭載。意外にも外部ストレージ用のスロットは用意されておらず、内蔵の16GBだけでやりくりする形になる。3G回線を使った通信機能は従量制で、400MB200元(約2,600円)、1GB500元(約6,500円)、2GB800元(10,400円)の3段階が用意されている。

 OSはAndroid2.3.4で、タッチパネルを使ってゲームを含む各種Androidアプリが利用できるほか、摩奇独自のアプリストアから「MUCH」専用アプリも楽しむことができる。もちろん、各種エミュレータも動かし放題なのだろうなと思って、ブースのデモ機のアプリリストを見てみたら、ファミコンやGBAのエミュレータが、ROMデータ入りで入っていた。そういう遊び方をするハードということだろう。

 気になる価格は1,599元(約21,000円)で、上海市内のPS Vita(WiFiモデル)の並行輸入品が1,500元(約20,000円)であることを比較してもかなり高い値段設定となっている。ただし、16GBのストレージ、3G通信機能が付いている点はPS Vitaと比較して大きなアドバンテージであり、2,500元(約33,000円)程度してしまう3G/WiFiモデルより安いしエミュレータも動くのでお得、という売り方をしているのだろう。

 すでにSCE Asiaでは「MUCH」の存在を把握しており、法務的なアプローチで対策に乗り出しているということだが、この「MUCH」がなかなか強気なのは、携帯型ゲーム機(掌机、掌上遊戯机)と宣言して売っていることだ。

 中国では国の方針でゲーム専用機の販売が認められていない。このため、デジタルメディア端末だったり、後述するKinectのパクリ製品「i-Move」などのように健康器具というアプローチで販売しているのが現状だ。たとえば、ニンテンドーは現地代理店のiQueを通じて正規でニンテンドーDSiを中国で販売しているが、あくまでゲーム機ではなく、デジタルメディア端末として販売している。摩奇がこの点をどう突破しているのかは不明だが、中国で堂々と売ってる数少ない携帯型ゲーム機のひとつと言えるかも知れない。

 「MUCH」は摩奇のオンラインショッピングサイトで購入することができる。今購入すれば、400MB/月の制限で1年間使えるSIMを特典として付けるという、売り方までPS Vitaとそっくりで、この商魂たくましさには怒るよりも笑ってしまう。もうひとつおまけに「MUCH」の電源アダプタはUSB接続になっており、標準同梱のAC/USBアダプタがiPadに同梱されているキューブ型のそれにそっくりだったりする。

 もちろん、こうした製品が登場する背景には、正規のゲーム機ビジネスが存在しないことに加え、タッチパネル端末としてPS Vitaが中国で高い評価を受けていることが挙げられる。つまり、完コピハードの登場は高い潜在需要の裏返しでもある。より多くの中国のゲームファンにクオリティの高いゲームを届けるためにも、一刻も早い中国での市場開放が求められるところだ。

【MUCH】
意外にも外部ストレージ用のスロットはない。上部のスロットは、左から順にSIMカードスロット、USBポート、HDMIポート

【ソフトウェア】
アプリメニュー。一般的な中国向けのAndroidと同じ構成になっている。ゲームアプリにはエミュレータ系が揃っている

【ゲームアプリ】
「MUCH」にインストールされていたゲームアプリ。基本的には「MUCH」専用アプリ、Androidアプリ、そしてエミュレータとなる。下段2つはどちらもエミュレータを起動した画面となる



【Shanghai Motion Technology「i-Move」】
Shanghai Motion Technologyの「i-Move」は、PCベースの独自ランチャーを搭載したセットトップボックスと、Kinectタイプの体感型デバイスをセットにした商品。2012年10月発売予定で、価格は2,900元(約38,000円)。モーションデバイス単体でも発売予定で、単体価格は約7,000円。ブースではサッカーや陸上競技、それから画面に表示されるワクの形に、体を動かすものなど、シンプルなゲームが何種類か遊べたが、反応が悪く、来場者の反応はいまひとつだった

【Eedoo「緑動机」】
China Telecomブースで出展していたEedooの「緑動机」は、セットトップボックス+Kinect風デバイスがセットになっている点は上記「i-Move」と同じだが、「緑動机」はゲーム系ではなく、フィットネス系が充実しているのが特徴となる。カンフーやダンス、ヨガ、太極拳などのアトラクションがプリインストールされている。2012年5月に発売済みで、価格は3,800元(約50,000円)。Xbox 360+Kinectよりも遙かに高い

(2012年 7月 29日)

[Reported by 中村聖司]