「Xbox 360 E312 Media Briefing」レポートその1

あらゆる端末からXbox 360へのアクセスを可能にする「Xbox SmartGlass」を正式発表


6月4日開催(現地時間)

会場:Galen Center



 米Microsoftは現地時間の6月4日、E3に先駆けて実施されるゲームメーカー各社のプレスカンファレンスのトップバッターとして「Xbox 360 E312 Media Briefing」を開催した。「Xbox 360 E312 Media Briefing」では既報のように、「Halo 4」(343 Industries)を筆頭に、「Gears of War Judgment」(Epic Games)、「Splinter Cell Black List」(Ubisoft)、「バイオハザード6」(カプコン)といった数多くのキラータイトルが発表されたほか、Xbox 360の機能を拡張する新規サービスとして「Xbox SmartGlass」を2012年中に投入することを正式発表した。

 本稿では取り急ぎ、「Xbox 360 E312 Media Briefing」から見えてきたMicrosoftのエンターテインメント戦略とファーストパーティータイトルをレポートしたい。サードパーティータイトルについては別稿にて詳しくお伝えするつもりだ。





■ 「Xbox SmartGlass」によってXbox 360はエンターテインメントの黄金期に入る!

ドン・マトリック氏(President of the Interactive Entertainment Business at Microsoft)
正式発表された「Xbox SmartGlass」
Xbox 360、PC、タブレット、スマートフォンで同一のコンテンツを利用することができる
Windows 8からXbox 360を見る。ハードウェアの垣根がどんどん無くなっていく
「Xbox Music」。Xboxと付いてはいるが、Microsoftがリーチしている全プラットフォームに向けた音楽配信サービスとなる

 Microsoftは、良い意味で例年通り、予想通りの発表内容だった。世界最大規模の出荷台数を誇るゲーム専用機Xbox 360を土台に、周辺機器としては異例の2,000万台規模の大ヒットを記録したXbox 360 Kinect、そして自宅のTVをスマートTV化してくれる、ゲームから音楽、映画、スポーツ映像まで何でもありのXbox LIVEと、非常に強力かつ機能性に優れたデバイスやサービスが存在するため、わざわざ“新型機”という大ばくちを仕掛ける必要がまったくないためだ。

 このため、各種サービスを正統深化させるだけでノンゲーマー層も巻き込む形で、どんどんXbox 360を手に取る人が増えていくというゲームプラットフォームとして理想的な循環が生まれている。Microsoftエンターテインメント事業の“ドン”であるドン・マトリック氏(President of the Interactive Entertainment Business at Microsoft)は、今回の発表を総括して「Xboxはエンターテインメントの黄金期に入る」と自信たっぷりに語ったが、さもありなんという印象だ。

 今回唯一のサプライズと言えそうなのは、スマートフォンやタブレットからXboxを操作できる「Xbox SmartGlass」ぐらいだが、同社のWindows PhoneやWindows 8における各種連携の取り組みを見ていれば十分予想できたサービスで、エンターテインメント端末であるXbox 360と他のデバイスとの実用的な連携が可能となる。

 Xbox SmartGlassは、Microsoftが展開しているXbox 360、PC、スマートフォン、タブレットといった各種デバイスに対して、横断的かつシームレスなエンターテインメントサービスを提供するためのソフトウェアサービスで、いわゆるWindowsプラットフォームのみならず、iOSやAndroidにも対応するところが最大の特徴となる。

 Xbox SmartGlassを介することで、たとえばWindows 8搭載タブレットで途中まで見た映画を、帰宅後に自宅のXbox 360で続きを見たり、「Halo 4」のようなXbox 360タイトルの情報の一部をタブレットに表示させたり、タブレット側で直接ゲームを操作することも可能となるようだ。発想としてはまさに任天堂の新型ゲーム機Wii Uに近いところがあり、しかもそれを追加投資不要の手持ちの端末で実現するところが大きなアピールポイントとなる。

 そしてXbox 360をスマートTV化するための最高のツールがXbox 360版IE「Internet Explorer for Xbox」だ。Xbox 360版IEは、Kinectによる音声入力と、Xbox SmartGlassのタブレット操作を前提としたカスタム版のIEで、リビングでリラックスした姿勢から、Kinectを介した音声入力やタブレットによるタッチ操作で、簡単にWebブラウズを楽しむことができる。

 TVや他のゲームプラットフォームに搭載されているWebブラウザは、Microsoftの表現を借りれば“遅すぎて使い物にならなかった”が、今回発表されたXbox版IEは、Xbox 360に特化した描画エンジンで、Xbox 360のレンダリングパワーをフルに活かして描画が行なわれるため、非常にキビキビとした機敏な動作が印象的だった。

 Xbox SmartGlassを魅力的にするためには、魅力的なコンテンツが必要不可欠だが、この点においても抜かりはない。脇を固めるコンテンツとしては、3,000万曲をカバーするというMicrosoft版iTune Store「Xbox Music」、そしてUFC(総合格闘技)、MLB(メジャーリーグ)に加えて、MBA(バスケットボール)、NHL(アイスホッケー)、ESPN(スポーツチャンネル)4局を加えたスポーツチャンネルのほか、実に35の新パートナーとの提携が発表となった。

 こうしたコンテンツの爆発的な増加に合わせてBingを使ったサーチ機能も強化され、新たにジャンルサーチにも対応する。デモでは「Xbox Bing Action」と言うことによってアクションジャンルの映画がスッと表示された。これは複数の映像配信サービスをまたがって検索可能ということで、入会しさえしておけば、常に複数の映像配信サービスから自分に最適なコンテンツを探し出すことができるようだ。

 これらのサービスのどの程度までが日本にやってくるかは現時点では不明だが、「Xbox SmartGlass」はXbox事業というよりは、Microsoftのエンターテインメント事業そのものであり、かなり確度で日本でもサービスされると考えて良いだろう。非常に楽しみな新サービスだ。


【「Xbox SmartGlass」が実現する未来】
Xbox 360、スマートフォン、タブレットにそれぞれ同じコンテンツの別の情報を表示させる映画鑑賞中に、映画の舞台の地図を参照するタブレットでゲームの操作をする

【「Halo 4」の「Xbox SmartGlass」連動機能】
「Halo 4」ではタブレットから「Halo Waypoint」にアクセスし、データのアンロックができるというデモが披露された。これまでいちいち画面を遷移させる必要があったりしたが、その辺をタブレットでできるのはありがたい

【Xbox 360版「Internet Explorer」】
要望が多かったというXbox 360版IEがついに実装される。KinectとXbox SmartGlassを駆使することで快適な使い心地を実現するようだ

【コンテンツもさらに充実】
特に拡充されたのはスポーツチャンネル。NBA、NHL、ESPNと一気に充実した




■ 「Halo 4」から幕を開けた「Xbox 360 E312 Media Briefing」

Microsoft Studios Presidentのフィル・スペンサー氏は、Xbox 360の中心はゲームであることを強調
「Xbox 360 E312 Media Briefing」の幕開けは「Halo 4」だった
会場周辺を走行していた「Forza Horizon」カー
イベントとしてのハイライトはパフォーマーのUsher氏による「Dance Central 3」とリンクしたダンス。Xbox 360はまさに全盛期といった印象だ

 「Xbox 360 E312 Media Briefing」のオープニングは「Halo 4」から幕を開けた。ここ数年は、「Call of Duty: Modern Warfare 3」や「The Beatles: Rock Band」など、サードパーティーに開幕を任せてきたMicrosoftだが、今年ばかりはXbox最大のフランチャイズである「Halo 4」を開幕に持ってきた。

 SF感たっぷりのハイクオリティのトレーラーから始まり、シームレスにインタラクティブデモに移っていく。「Halo」シリーズは、「Halo 4」から開発元がBungie Studiosから343 Industriesに変わったことでゲームがどのように変化するのが注目されていたが、目の前に映し出されている映像は紛れもなく「Halo」だ。むしろ爆発や消滅、もや、煙、HUDの特殊表現、光の差し込める表現など各種エフェクトはよりリッチになっており、空気感まで表現されたゲーム画面は非常に美しかった。E3会場での取材が非常に楽しみだ。

 さて、ここ数年Xbox 360はノンゲーム向けのサービスが爆発的に拡充されている印象が強いが、「Xbox 360の中心となるのはゲームだ」と語ったのは、Microsoftのゲーム部門Microsoft Studiosのトップ フィル・スペンサー氏。スペンサー氏は、「我々は最高のゲームのみを提供する。今年は過去最大のラインナップになる」と力強く語り、自慢のファーストパーティーラインナップを見せつけてくれた。

 スペンサー氏は、Microsoft Studiosの最新ラインナップとして、「Fable The Journey」、「Gears of War Judgment」、「Forza Horizon」の3タイトルのトレーラーを見せてくれた。「Fable The Journey」は、巨匠ピーター・モリニュー氏の「Fable」シリーズ最新作。モリニュー氏は残念ながらMicrosoftおよびLionhead Studiosを退社してしまったようだが、「Fable The Journey」は2012年のホリデーシーズンに無事発売されるようだ。「Gears of War Judgment」は、People Can Flyが開発している「Gears of War」の外伝的エピソード。「Gears of War」シリーズ3部作の前のエピソードを描くという。発売は2013年を予定。

 そして個人的に注目したいのは「Forza」シリーズ最新作「Forza Horizon」。「Forza」のリアルシミュレーションをベースに、アクションレースの楽しさとオープンロードの自由度を加えたレースゲーム。開発元のPlayground Gamesは、「Project Gotham Racing(PGR)」シリーズの開発元として知られるBizarre Creationsのスタッフが在籍しており、実質的に「Forza」シリーズに形を変えての「PGR」シリーズの復活となるようだ。

 「Xbox 360 E312 Media Briefing」ではトレーラーの紹介のみで、プロデューサーによる解説などもなかったが、夜間走行やダート走行など「Forza」になかった要素が満載でレースゲームファンには楽しみな新フランチャイズとなっている。シミュレーションエンジンや車の挙動、ゲームモードなどがどうなるのか気になるところで、これらについてはE3取材であらためてレポートしたい。

 今回、変わり種としては、ナイキとのコラボレーションタイトルとなる「Nike+ Kinect Training」が挙げられる。これまでKinectを使ったフィットネスソフトはいくつか存在するが、「Nike+ Kinect Training」は、いわゆる“ガチ”のトレーニングソフトウェアで、NikeのStefan Olander氏は「世界でもっともパーソナル化されたデジタルトレーニングが受けられる」と説明。

 Kinectを使ってゲーム内のトレーナーと共にトレーニングができるだけでなく、プロ選手と同じように身体を鍛えるためのテクニカルなフィードバックを受けることができる。ビジネスモデルは発表されなかったが、プロの担当者からテクニカルなフィードバックを4週間後とに受け取ることができ、その内容はスマートフォン等でも管理できるという。純粋なゲーマーは思わず腰が引けてしまいそうなプロダクトだが、真面目にトレーニングをしたいスポーツ選手や愛好家にはウケそうなサービスだ。

 ファーストパーティータイトルとしてトリを飾ったのは、Kinect最大のフランチャイズ「Dance Central」シリーズ最新作となる「Dance Central 3」。パフォーマーのUsher Raymond氏が映像出演し、「Dance Central 3」に参画したことを語って終わりと思いきや、画面無いから飛び出してくるような演出で、「Dance Central 3」の映像とリンクして複数のダンサー達とハイテンションなダンスを見せつけてくれた。

 「Dance Central 3」はUsherをはじめ、Cobra Starship、Gloria Gaynor、50 Centといったアーティストの合計40曲の新曲を収録しているほか、最大8人によるマルチプレイモードを搭載。「Dance Central」や「Dance Central 2」の楽曲のインポートにも対応している。

 そのほかにもXbox LIVEタイトルなどの紹介も行なわれたが、いずれもトレーラーのみで若干消化不良気味だったのが残念だった。サードパーティータイトルについては後ほど詳しくお伝えするのでお楽しみに。

【Fable The Journey】
初のKinect専用の「Fable」となる「Fable The Journey」。手のひらに気功のようなものを貯めるイメージで、敵に魔法をぶちあてていく。北米では10月9日発売予定

【Forza Horizon】
公道レースをモチーフにした「Forza Horizon」。「Forza」シリーズ初のアクションレースとなっている。北米では10月23日発売予定

【Gears of War Judgment】
「Gears of War」3部作以前の物語が描かれる「Gears of War Judgment」。北米では2013年前半の発売が予定されている

【Nike+ Kinect Training】
「Nike+ Kinect Training」は遊びの要素を一切排除した真面目なトレーニングソフト。北米では今年のホリデーシーズンの発売が予定されている

【Dance Central 3】
早くも続編の登場となる「Dance Central」シリーズ最新作「Dance Central 3」。新モードや新楽曲を搭載して今秋発売予定

(2012年 6月 5日)

[Reported by 中村聖司]