崑崙日本、「魔導学院エスペランサ」運営プロデューサーインタビュー

より快適なゲームプレイと、“学園”としての場の充実を提供


3月28日収録

4月10日オープンβテスト開始



 崑崙日本株式会社はWindows用MMORPG「魔導学院エスペランサ」のオープンβテストを4月10日14時より開始する。本作は基本プレイ無料のアイテム課金制の正式サービスを予定しており、こちらの開始日も近日公開予定だ。本稿では、テストに先がけ、日本運営を担当する崑崙日本GAME事業部運営課運営チームプロデューサーの駒形重紀氏にインタビューを行なった。

 「魔導学院エスペランサ」のクローズドβテストはどうだったか、オープンβテストでどのようなコンテンツが追加されるのか、正式サービスで登場する課金アイテムはどういったものになるのか。そして、日本運営にあたり、駒形氏は「エスペランサ」をどういった方向性を持つゲームにしたいのか? インタビューではこういった質問をぶつけてみた。





■ オープンβテストでは、レベルキャップが65に。新ペットや、新イベントも登場

崑崙日本GAME事業部運営課運営チームプロデューサーの駒形重紀氏
クローズドβテスト最終日の記念撮影イベント
オープンβテストから入る「宝探しシステム」。羅針盤を組み立てると、宝のありかがわかる

 最初に質問したのは、「魔導学院エスペランサ」のクローズドβテストの感触だ。駒形氏は、「かなり好感触だった」と語る。最初に公式ページや弊誌などゲームのニュースサイトで5,000人募集したのだが、好評なため、さらに追加で3,000人を募集した。駒形氏達運営チームは、昨今、MMORPGやブラウザゲームは、大作以外ではユーザーが集めにくい状況だと考えていたが、「エスペランサ」の人気はチームの予想を上回るものだったという。

 このため、3月23日のクローズドβ開始日にはユーザーが集中し、準備が足りなかったため、ログインしにくい状況になってしまった。駒形氏はこの状況に関して、「ここはネットワークのやりとりの部分に原因があり、4月10日のオープンβテストではこういった問題は改善される」と語った。

 人気を得た理由について駒形氏は、「キャラクターイラスト、ゲーム自体のデザインのかわいらしさ、『学園もの』というテーマが目を惹いたと思います。それに加え昨今では珍しくなったクリックタイプのMMORPGというのもユーザーのニーズに合っていたと思います。こういったところは、狙い通りでした」と語った。仕掛ける方向性としてはマッチしたが、実際の人気に対応できなかったという面があった。オープンβテストではネットワークに関しても準備をしていくとのことだ。

 クローズドβテストでは、GMがプレーヤーを集めゲーム内でのわかりにくいところ、説明が足りないところを取り上げた「初心者説明会」が好評だった。こういったイベントは昨今ではあまりなく、10年近く前のMMORPG初期には盛んに行なわれていた手法だ。駒形氏は、説明会のイベントを、ゲームのより幅広い楽しみ方をユーザーに考えてもらうために企画した。オープンβテストでも行なっていきたいという。「私達も先生と言うよりも、皆さんと学んでいく“教育実習生”くらいの気持です」と駒形氏はコメントした。“教育実習生”といった学校関連の言葉を、言葉遊びのようにゲーム内に入れていけるのも、“学園もの”ならではの魅力だと感じた。

 この他にもユーザーから好評だった要素に、「補習特訓システム」がある。このシステムは発動中は自動戦闘で狩りが行なえる。他のMMORPGでは禁止行為とされるプログラムによる自動戦闘を公式で取り入れている部分と、発動中は「ジャージ姿」になるというのがユーザーに受けた。このシステムは狩場でない街でも姿だけ変えることができるので、学院の前でジャージ姿になって記念写真を撮る人もいたとのこと。

 中には自動狩りを行なうことに気兼ねしてしまうユーザーもいるかもしれないが、本作ではオフィシャルのシステムのため、気兼ねなく使え、狩りがとても楽になるという声が多かった。さらに、クエストをクリックすると目的地に行けるなど、“全体的に楽だ”というところで本作を評価する声が多かったという。

 ここから駒形氏は、オープンβテストの要素を説明していった。オープンβテストでは、クローズドβテストで指摘があった部分に手を加えていくという。ユーザーから指摘が多かったのは「乗り物に乗ってない状態での移動速度の遅さ」だ。こちらに関してはオープンβでスピードアップする予定だ。また、右ドラッグでの視点移動も“遅い”という指摘があり、速度を変更できるオプションを追加する予定。キャラクターに“声”が欲しいというのは、4月2日に発表されているように声優のボイスが選べる様になる。男女5種類用意される予定で、職業での違いはない。

 また、レベル17~20、レベル22~23に関しては、クエストを単純に進めているだけではレベルが上がりにくくなる。これまでのように提示されていたクエストをこなしていただけでは、ゲームの進行が止まってしまうのだ。これはサブクエストに挑戦すれば良いのだが、そこまではシステムにより快適に進んでいただけに、戸惑うユーザーがいたという。このため、クエストのハードルを下げ、報酬を増やすバランス調整を行なう。

 そして、オープンβテストで追加される新コンテンツとしては、「学院イベント」が挙げられる。「エスペランサ」は決められた時間に開催される学院イベントがセールスポイントとなっている。基本は全て対戦型のイベントであるが、フィールドに現われる宝箱を集める「トレジャーハント」など、レベル差があっても楽しめるイベントもある。

 新たに追加されるイベントは2つで、1つ目は、「魔源争奪戦」。各学院に分かれ、ポイントを競う競技で、先に特定のポイントを獲得した学院の勝利となる。マップ内の10箇所に「魔源のかけら」が出現するので、これを自陣に待ち帰るとポイント獲得となる。各学院の最低 5人でスタートでき、最大各20人参加できる。

 2つ目が「最終防衛線」。このイベントは参加制限がなく、全参加者と協力して、モンスターから守護物を護り切るのが目的だ。このイベントでは各学院ごと「学院ポイント」が集計される。学院ポイントは、モンスターの討伐、負傷者(NPC)を救う、マップ上の火を消火する、爆弾解除など、様々なポイント獲得方法がある学院ポイントが一定値に達するとBOSSが登場する。

 そのほかの新要素としては、レベルキャップが65になり、新地域が実装される。またインスタンスダンジョンである「アドバンスマップ」も新たに4つ追加されるようになるという。レベル30以上を対象にしたアドバンスマップは「封魔結界」、レベル40を対象にしたマップは「雨林遺跡」となる。これらのマップの詳細は現在検証作業中だという。

 この他「宝探しシステム」という新システムが追加される。モンスターがドロップするアイテムを集めると、「羅針盤」を作ることができ、その羅針盤はマップ上の特定の場所を指し示す。プレーヤーがそこに行くと、強力なアイテムなどの“宝”が入手できるというものだ。羅針盤は“指針パーツ”や“底盤パーツ”という複数の部品アイテムを入手できなければ完成しない。パーツはどのモンスターからも出現する可能性があるが、その出現率は低い上に、羅針盤は数種類あって、それぞれ部品が違う。ユーザー間の取引もできないため、羅針盤を完成させるのはとても難しいが、だからこそ揃えたときに入手するアイテムは、一攫千金が狙えるものとなるという。

 こういった新要素に加え、駒形氏は、オープンβテストプレーヤーへのアドバイスとして、「レベル40以上のマップに関しては、“属性”がとても大事になってくる」と語った。どの敵にどういったスキルを当てていくかを考えていく事で戦いでの難易度が変わってくると言う。キャラクター育成でのこだわりや、苦手な敵を倒すための協力プレイなど、徐々に深いゲーム性を見せてくると言うことだ。

 また、プレーヤーの大きなモチベーションとなる、「学院イベント」は現在のところ「個人ランキング」しか登録されていないが、今後「学院ランキング」を提示していきたいという。「エスペランサ」には現在3つの学院がある。レベル30以上からは他の学院に行くクエストなどもあり、自分の所属学院を意識する機会が増える。所属している学院が1位ならば、恩恵が与えるなどで、学院生として他の学院と競う要素も今後強調していく方向性だということだ。学院対抗は、オープンβ以降の今後の目標となるとのこと。


「エスペランサ」では毎日イベントが用意されている。右は「補習特訓システム」。行動を選んでおくと、自動で狩りを行なう。自動の間はジャージ姿となる
オープンβテストで追加される新フィールドのスクリーンショット。高レベル向けの場所は“属性”が大事になるという




■ 正式サービスも近日開始予定、アバターなどが登場。今後目指すのは“学園らしさ”

レンタルできるようになるアバター「メイド服」。最初は定番のものが実装されるとのこと
学院は実はまだ中には入れない。教室の実装を望む人も多いという

 ここからは、オープンβテスト以降の予定を聞いた。現在まだ日にちは発表されていないが、オープンβテストから早いタイミングで正式サービスに移行する予定だという。「エスペランサ」は基本プレイ無料、アイテム課金制のビジネスモデルを採用しており、正式サービスからは課金アイテムが発売される。

 課金アイテムのラインナップは経験値増加や、ドロップ率アップ、さらに本作には「活動ポイント」というステータスがあり、戦闘し続けるとこのポイントが減少してしまい、0になると経験値が入らなくなってしまう。この活動ポイントを回復させるアイテムも用意されている。

 さらに、魔導ペットや、魔導ペットをカスタマイズできるアクセサリーなどが販売される。プレーヤー用のアバターに関しては、メイド服や、ゴスロリの服、コック服や忍者服などが初期のラインナップとして用意される。アバターはレンタルで、頭と服の2パーツ構成されており、それぞれ7日間で100円、30日で300円くらいの値段を予定している。ガチャも予定しており、ペットや色違いのアバターなどが入手できる。本作は正式サービス後も、1カ月に1度のペースでゲームシステムのアップデートをしていくのを目標としているという。この際アバターアイテムも追加していきたいとのこと。

 「エスペランサ」ではゲーム内の通貨「GC(ゴールドコイン)」、課金通貨「EC(エスペランスコイン)」以外にも、課金通貨購入時にその値段の10%分得られる「SP(スペシャルポイント)」、ゲームのクエストを進めることで得られる「BC(ボーナスコイン)」があり、それぞれに対応した商品が用意されている。BCでも、課金アイテムに性能は劣るものの、同じ機能のアイテムも用意されており、ゲーム内通貨のみでもゲームを進めていくことも可能だという。

 新要素の説明を受けた後、筆者がクローズドβテストで感じた疑問をぶつけてみた。まずペットだが、いつ永続的に使える騎乗用ペットはいつ手に入るかがわからなかった。ゲーム序盤で騎乗用のペットを貸し与えられるが、制限時間が24時間なため、集中してプレイできない人はあまり恩恵が得られないないのだ。駒形氏によれば、永続的なペットはレベル25のクエストで入手できるという。ただし、クローズドβテストで「ペットの入手のハードルが高い」という声が上がっており、このバランスに関しては、まずペットに乗らない状態でもキャラクターの足の速さを上げ、さらに入手レベルを引き下げる様にするとのこと。貸与期間に関しても検討中とのことだ。

 もう1つ疑問に感じたのは、「このゲームにパーティプレイは必要なのか?」ということだ。レベル20くらいまでは、クエストを進め、レベルを上げていくだけならばパーティプレイの必要性はほとんど感じられなかったのだ。駒形氏は、クローズドβテストの場合、アドバンスマップの高難易度を攻略するために積極的にパーティプレイを行なっていたと語った。高難易度ではより強力な装備アイテムが入手できるため、このアイテムを狙ってパーティプレイをする人が多かったとのこと。よりよいアイテムを求めるときに、パーティプレイが必要になるというバランスのようだ。募集は学院内チャットを通じて行なわれたという。

 さらに「現在の学院は入手できる制服の色が違う程度で、違いがない。差別化をした方が良いのではないか?」という質問をしてみたが、駒形氏は「差別化すると、プレーヤーが学校の選択において、偏りが出てしまいそうで、迷っている」と答えた。現在はまず差別化はしない方向で、3つのほとんど違いのない学院が存在する世界として行くという。

 この他、筆者が気になった点としては、「補習特訓システムは自動で戦闘を繰り返すシステムで、セットしておけばずっと狩りができるものの、“1日置いておけば、レベルがドンドン上がる”というものではないな」というものがあった。ゲームのバランスはクエストドリブンなので、プレーヤー自らが操作してクエストを進めた方がずっとレベルが上がるのだ。この点に関して駒形氏は、自動戦闘は、「モンスターを10匹倒せ」というクエストをクリアするために狩場でスイッチを入れ、数分自動で狩り、条件をクリアした後、次のクエストに向かう、といった使い方が良いようなバランスになっていると説明した。。

 そして、ここから「エスペランサ」における将来的なビジョンについて聞いてみた。駒形氏や日本運営が求めていくのは「学園」要素だ。筆者は、小説やコミックスの「学園もの」はエキセントリックなキャラクター達によるによるストーリー展開、というイメージがあった。「エスペランサ」もオリジナルキャラクターと、ストーリークエストを足していくのかと思ったのだが、そういった展開にはせず、「学園としての場所」を充実させていくつもりだという。

 具体的には、柔道部や野球部など部活動的なアバターアイテムを追加していく。各クラスで座ることができる教室を入れるのもいいとは考えているのだが、これをどうゲームに落とし込むのかなどを検討している。ストーリーよりもより学校らしいフィールドと、それを使ったゲーム要素を考えている。先輩後輩というシステムなど、アイデアはたくさん出るのだが、ゲームとしての落としどころを検討している。運動会的な要素はゲームに落とし込みやすいが、「学園もの」を求めるユーザーに応えられるのか、企画を練っている。

 様々なアイデアを考えていく中で、駒形氏が大事に考えているのが、「快適で間口の広いゲーム性とバランス」だという。現在最も注力しているのは快適なゲームバランスとゲームシステム。そこから「学園らしさ」をどう足していくのかを今後検討していく予定だ。見た目と、学校らしいゲームシステム、学校という「舞台」を充実させていくという。

 最後に駒形氏は、ユーザーへのメッセージとして「『エスペランサ』は簡単シンプルに作られており、序盤から快適に進められます。“学園”や“MMORPG”、“かわいらしいキャラクター”など、どこかに興味を感じたら、遊んでみてください。従来のMMORPGより楽ちんに作られており、自動戦闘で、何かをしながらも進められるゲームです。今後も色々な意見をいただき、『日本最強の学園MMORPG』を目指していきます」と語った。

 インタビューで様々な質問をしてみて、駒形氏の言う“日本最強の学園MMORPG”というのは最初はわからなかったのだが、“場”が作りたいのだな、ということがわかって、改めて納得する部分があった。ストーリーやNPCなどで「学園ドラマ」を展開するのではなく、教室や、部活動のユニフォーム、学校の施設などを揃えて、学校のようなフィールドを作り、そこでプレーヤー達がどのように遊ぶか、ユーザーが“ロールプレイ”をする場を作りたいという考えを持っているのだ。

 MMORPGでは、劇場があれば、そこで定期的に演奏会や演劇を楽しむ人達がいる。与えられたコンテンツだけでなく、自分たちでゲームの楽しみ方を模索する人達も決して少なくない。「エスペランサ」の方向性は、そういった仲間と共に積極的に楽しさを作り出すユーザーにとって魅力的な作品になりそうである。学園という遊び場が与えられたユーザーが、自分たちでどんなドラマを繰り広げて行くのか、ユーザー間の“ノリ”に特に注目していきたい作品だ。


衣装やペットなど、今後実装される新要素。右下はこちらもオープンβテストで実装される新フィールドだ

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(2012年 4月 9日)

[Reported by 勝田哲也]