東京ゲームショウ 2011レポート

idが放つ超大作FPS「Rage」クリエイターインタビュー
「Rage」でidの実力を証明、idの次回作「DOOM 4」の話題も


9月15日~18日 開催(15日、16日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料


 今年も東京ゲームショウへの出展を果たしたゼニマックス・アジア。フラッグシップタイトルとなるのは、先に取り上げた「The Elder Scrolls V: Skyrim」となるが、「Skyrim」に勝るとも劣らない大作タイトルが「Rage」だ。日本では10月6日発売予定で、価格は7,980円。

 「Rage」は、id Softwareという老舗デベロッパーの新規IPということで、リリースすれば1,000万本クラスのヒットが見込める「The Elder Scrolls」シリーズ最新作である「Skyrim」の陰に残念ながら隠れてしまっている印象が強いが、まず間違いなく今年リリースされるFPSの中でも3本の指に入る傑作だ。

 メガテクスチャと呼ばれる独自技法で実現されたパターンのないフォトリアルな世界観、それを全編60fpsでぬるぬる動かす確かなテクノロジー、未だかつて見たことないようなキャラクターの動き、そして充実しすぎて迷ってしまうほどの武器やタレット、ガジェットなどの攻撃手段など、どれを取ってもFPSとして素晴らしいものを備えている。ぜひこの素晴らしさ東京ゲームショウの日本マイクロソフトブースもしくはスクウェア・エニックスブースで体験してもらいたい。

 本稿では東京ゲームショウに合わせて来日したid Softwareの「Rage」開発者2人に、ついに完成を迎えた「Rage」について、開発秘話や今後の展開について話を伺った。「Rage」についてはBFG 2011でのプレビュー開発者インタビューなどで詳しく取り上げているので、そちらも合わせてお楽しみいただければと思う。

【「Rage」プロモーション映像】

【「Rage」最新トレーラー】



■ 「Rage」がついに完成! 「まずはユーザーのフィードバックを!」

左が「Rage」デザインディレクターのMatthew Hooper氏、右が「Rage」シニアプロデューサーのJason Kim氏
会場近くのホテルを使ってほぼマスター版相当のものが試遊できた

編: 今回「Rage」を改めてプレイしてみましたがは非常に良いゲームですね。「Wolfenstein」の秘密の部屋はファンには嬉しい要素ですが、こういうお遊びはほかにもあるのですか?

Hooper氏: あと「DOOM」、「QUAKE」の部屋もあります。あとはデベロッパールームというものもあり、そこにはクリエイターのサインなどもおいてあります。そういうものが世界のあちこちにあります。

編: 「Fallout 3」のPipboyのようなコレクタブル要素はありますか?

Hooper氏: ミニゲームに使うカードゲームのカードがそうですね。ゲーム内に登場するキャラクターが描かれたカードで、全部で52枚あります。集めるとカードゲームが遊べるようになります。レアなカードであるほどわかりにくい場所に落ちています。

編: そのカードはどういったところに落ちているのですか?

Hooper氏: ホントにいろんなところです。ゲームを進めていくと徐々に見つけることができると思います。先ほど遭遇したダン・ヘイガーは彼の部屋に箱があってその中にカードが入っています。

編: 発表当初はMac版もアナウンスしていたと思うのですが、発売はしないのですか?

Hooper氏: 確かにそういう発表をしましたが、今はもしかしたら出すかもしれないという感じです。個人的にやりたいという気持ちは持っているが、まだ何も決まっていません。

編: PC版はMODツールはサポート予定は?

Hooper氏: 我々はidなのである程度まではサポートする予定はある。MODツールが完成次第リリースします。ただしリリース時期は未定です。

編: ダウンロードコンテンツについて話せることは?

Hooper氏: まだ何もありません。まずは本編をプレイしてそのフィードバックを聞きたいです。

編: たとえば、FFAやチームデスマッチといった対戦モードがほしいという要望が多かったら開発して実装しますか?

Hooper氏: 技術的には十分可能で対応する可能性はあります。まずはユーザーからのフィードバックを得たいです。「Rage」はシングルプレイヤーキャンペーンにフォーカスを当てた作品ですので、マルチプレイはCO-OPとバギーレースにとどめています。

編: idのゲームというとマルチプレイという印象が強いが、「Rage」はなぜシングルプレイにこだわったのか?

Hooper氏: 「DOOM」、「QUAKE」はマルチプレイに特化しているのでシングルプレイは短い設計してある。時間にして4時間から長くても8時間ぐらい。「Rage」はクリアするのに15時間から25時間掛かるゲームになっているし、いろいろ新しい試みにチャレンジしたので、いろんな遊びを試してもらいたいと思ってます。

編: 「Rage」はシングルプレイだけで遊ぶには贅沢すぎるほどに広大な世界観を提示したわけですが、この「Rage」フランチャイズは今後どのような進化を遂げるのでしょうか?

Hooper氏: 「Rage」はゲーム内にたくさん新しい試みを取り入れているので、まずはユーザーのフィードバックを得たいです。それを受けてから次にユーザーに届けるものを決めます。

【「Wolfenstein」の秘密の部屋】
とあるエリアの壁をクリックすると、「Wolfenstein」の秘密の部屋が現われる。しかも当時のドット絵で。中にはアイテムが落ちており、コレクションしたり、売って軍資金にすることもできる。「Rage」ではこういう遊びが各所に隠されているようだ



■ お気に入り要素はキャラクターの動きやウェポンシステム

Hooper氏は繰り返し、フィードバックを受けたいと語っていた
これがクロスボウ。多彩なボルトを駆使して難局を切り抜ける

編: 「Rage」の長期にわたる開発が節目を迎え、現在どのような気持ちですか?

Hooper氏: 「Rage」は新しいことをたくさんやったので楽しかったです。アクロバティックな動きをするゴーストや、ジャッカルの動きだったり、キャラクターごとに動きも違えば、音楽も違う。ゲームを進めていくと次々と新しい武器が出てくる。すべてがこれまでのidのゲームと違う感覚で遊べる。こういったゲームを作れたことはとても嬉しいです。

編: Hooperさんのお気に入りは、登場キャラクターたちの豊かな動き以外に何かありますか?

Hooper氏: ウェポンシステムです。今まで見たこと無いようなウェポンシステムを導入できました。クロスボウならエレクトロニックボルト、ダイナマイトボルト、マインボルトといった具合に、武器と弾薬に様々なバリエーションを持たせています。エンジニアリングで新たに生み出したり、タレットを使ったりなど、様々な戦術でゲームを楽しむことができます。

編: 逆に、ここは不満だという要素は何かありますか?

Hooper氏: 開発者としてはもっとゲームを磨いたり、アイテムを追加したいという気持ちはあるし、マルチプレイでデスマッチモードを入れられなかったことも残念だと思っている。ただ、「Rage」はそれ以外の要素をたっぷり詰め込んでおり、それらを遊ぶだけでも払ったお金の分だけは十分に楽しむことができると考えています。

編: 1人のidファンとして、「QUAKE」ファンとして正直に言うと、「Rage」にデスマッチやチームデスマッチがないのは残念ですね。

Hooper氏: ぜひ「QUAKE」を遊んでください(笑)。「Rage」ではまったく新しいことをやりたかったし、ニーズがあるからといって単純にデスマッチモードを入れることもあえてしませんでした。我々がデスマッチモードを入れるとしたら、また別のタイトルで全力で取り組みたいですね。

編: 「Rage」で期待している販売本数は?

Kim氏: 数字は出していませんが、それはもう多ければ多いほどいい(笑)。「Rage」は他のタイトルと比べて競争力のあるタイトルだと確信しているし、新規IPではあるが、人気フランチャイズに負けない力があると思っている。

編: idでは「QUAKE」、「DOOM」の続編を作っているという噂があるが、マルチプレイはそちらで革新的なモノを導入するという戦略なのでしょうか?

Hooper氏: 「QUAKE 5」や「DOOM 4」が出ることがあるかもしれないが、いますぐどうこうということは考えていない。各フランチャイズにとって何が重要なのかはいつも話し合っていることです。「Rage」は新規要素とシングルプレイ、「QUAKE」、「DOOM」はご指摘の通りマルチプレイです。

【キャピタルプライム】
今回のデモでは完成版ということで、ラストステージとなるオーソリティーの本拠「キャピタルプライム」をプレイできた



■ ジョン・カーマック氏のこだわりは全プラットフォームでの60fpsプレイの実現

バギーについて深く語ってくれたKim氏
これがバギー。バギー自体にも複数の種類が用意されており、ゲームを進めていくごとにガレージに追加されていくことになるようだ

編: ゲームのストーリーは完全にオリジナルですか?

Hooper氏: 完全にオリジナルですし、ゲームから派生した小説も存在します。“ポストアプカリプス”という基本的な世界観に関してはすでに世の中に一般的に知られているので、そこにディテールを肉付けしていきました。

編: 影響を受けた映画、ゲーム、アニメーションなどはありますか?

Hooper氏: 直接影響を受けたものは存在しないが、それでも多くの作品からインスピレーションを受けている。おそらく一番近いと言われるのは「マッドマックス」だと思います。世界観、乗り物、ストーリーなどは直接ではないですが、インスピレーションを受けているのは事実です。

編: 「Rage」のステージ数は?

Hooper氏: ステージという区分けではないが、大きなウェイストランドと東ウェイストランドの中に13から15のエリアがあります。

編: 東ウェイストランドとは?

Hooper氏: ウェイストランドのひとつですが、ストーリーがある程度進行すると行けるようになるエリアです。オーソリティの拠点キャピタルプライムも東ウェイストランドの近くにあります。序盤では近づくことはできません。

編: 「Rage」はバギーカーの存在も魅力のひとつですが、何種類ぐらいあり、どういったカスタマイズが可能なのですか?

Kim氏: 非常に細かいカスタマイズが可能です。色を変えたり、ブースト時間を長くしたり、ホイールを変えたり、ホイールにトゲを着けたり実に様々なカスタマイズが可能です。ただ、「Rage」は「グランツーリスモ」ではないので、挙動はリアルにシミュレーションしているわけではなく、「マリオカート」のようにカジュアルな動きになっています。基本はシューターなので、強力な武器を買って、それを強化して車に搭載して戦うことがメインになります。車もアップグレードすることができるだけでなく、レースに勝つと新しい車をもらえたりします。

編: ゲームの序盤からバギーには乗ることができますが、バギーはゲームの最後まで利用することになるのですか?

Hooper氏: もちろんです。途中でより大型のATV(四輪バギー)も手に入りますし、バギーを使わずに徒歩で移動することも可能です。ただし、すぐ殺されてしまうと思いますが(笑)。このゲームの重要な要素は、すべてにおいて複数の選択肢からチョイスすることができるということです。

編: 車に搭載できる武器はどのようなものがありますか?

Hooper氏: レーザーはありませんが、高いグレードの車にはプラズマガンのようなものも搭載することができます。

編: idといえばジョン・カーマックですが、「Rage」において彼がもっともこだわっている要素はなんですか?

Hooper氏: 彼がこだわったことはすべてのプラットフォームにおいて60fpsを実現し、しかも美しいグラフィックスでなめらかに動くことです。

編: 開発に携わったメンバーの数は?

Hooper氏: スタート時で20人。最大で75人ぐらい。これはエンジンやサービスも含めた人員です。コアメンバーは50人ぐらいでしょうか。

編: 開発期間はどれぐらいになりましたか?

Hooper氏: 非常に長くなった(笑)。プロジェクト自体は「DOOM 3」の頃(2004年)に始まり、テクノロジーの準備に3年ぐらいかけながら、さらに3年かけてゲームを開発した。

【ジャッカル谷】
こちらも本邦初公開のジャッカル谷。ジャッカルクライムと呼ばれる敵の拠点となっている



■ 「Rage」はidの実力の証明。次のプロジェクトは「DOOM 4」

id Tech5による継ぎ目のない美しいグラフィックス。これが60fpsで動作する

編: 「Rage」がゲームファンに伝えたいメッセージとは何ですか?

Kim氏: 「Rage」をリリースするまでに、社内で様々な紆余曲折があった。最終的に「Rage」に与えられた役割はidという会社のクラシックなイメージを一新し、我々は新しいこともできるんだということを証明したかった。たとえば、idはPCから始まったメーカーだが、今回はPS3やXbox 360でも60fpsを実現しているし、すべてのプラットフォームに最高のものを提供することができた。我々にとっては「DOOM 3」以来のビッグタイトルとなるので、我々の力を見せたかったのです。

編: 同じZenimaxグループのBethesda Softworksには、「Rage」と同じポストアポカリプス世界を描いた「Fallout」シリーズがありますが、やりにくさや情報共有などはあったのですか?

Hooper氏: 「Fallout」と「Rage」は世界観は似ていますが、それ以外の部分はかなり違います。「Rage」はシューターですが、「Fallout」は探検をテーマにしたRPGですよね。似ているようで似てないという感じです。情報共有に関しては、Zenimaxにグループ入りしたのは2年前なので、「Rage」はそれ以前から開発が行なわれていたので、直接的な交流はほとんどありません。お互い偶然にポストアポカリプスをテーマにしたゲームを作っていたというわけです。

編: 「Rage」を作り上げたidは次のゴールは何ですか?

Hooper氏: 「DOOM 4」です。1つのスタジオの中に2つのチームがあって、もうひとつが「DOOM 4」を開発しています。我々はこのまま「Rage」の開発を続けるかもしれないし、「DOOM 4」の開発に移行するかもしれない。それはまだわかりません。

編: それはつまり、idの中には現在「Rage」チームと、「DOOM 4」チームが存在するということですか?

Hooper氏: チームとしてはその2つがありますが、エンジンは完全に共通ですし、両方のプロジェクトに携わっている人員も多いです。

編: 「Rage」チームの次というと、「Rage 2」ですか?

Hooper氏: 何人かは「DOOM 4」に引っ張られる予定ですが、ダウンロードコンテンツもありますし、「Rage」がヒットしたら「Rage 2」にという話になるかもしれません。

Kim氏: idとしては常に革新を進めていきたいです。「DOOM 4」や「Rage 2」があるとすればさらに新しいことにチャレンジしていきたいですね。

編: 「Rage」は非常に自由度の高いゲームですが、開発者としてどのように遊んでみたいと思っていますか?

Hooper氏: 自分で選んで自由に遊んでもらえればと思います。遊びは提供するし、遊び方も教えるが、どう遊ぶかはユーザーに選んでもらいます。私自身はショットガンを持ってガジェットを置いてガンガン遊んでほしいと思ってます。

Kim氏: 私はできればいろんなことを試してみてほしいですね。その中で自分なりの遊び方を見つけていただければと思います。

編: idは往年のゲームファンなら誰でも知っている黄金のブランドですが、若い世代のゲームファンは「idって何?」という人もいるかもしれません。そうした新旧のユーザーに対してメッセージをお願いします。

Hooper氏: idのFPSとして期待してくださっている方もいるかと思いますが、「Rage」はスピード感や操作感などシューターとして皆さんの期待に応えるだけのFPSではありません。ストーリー、キャラクター、多様性のある世界観など、いろんな新しい要素があってそれらがすべておもしろいと思います。ぜひ楽しんでください。

Kim氏: これは私だけでなくてすべての開発者が思うことですが、ゲームの感想の善し悪しに関わらず、フィードバックを返してほしいです。フィードバックはすべて目を通すし、社内で検討した上で、次の開発に役立てていきます。もちろん、アップデートで改善することもできます。ぜひいっぱい遊んで、いっぱいコメントしてください。

編: ありがとうございました。


【スクリーンショット】

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(2011年 9月 17日)

[Reported by 中村聖司]