Taipei Game Show 2011レポート

台湾版コミックマーケット「Fancy Frontier 開拓動漫祭 17」レポート
台湾オタクのディープな世界をのぞき見。台湾Gamaniaが「DIVINA」を出展



2月19日~20日開催

会場:台湾大学総合体育館

入場料:無料(パンフレット200台湾ドル)


台湾Gamaniaのブースでは「DIVINA」の試遊が行なわれた

 Taipei Game Showの開催とちょうどタイミングを合わせて、2月19日と20日に台湾大学の体育館で同人誌即売会「Fancy Frontier 開拓動漫祭 17(以下、FF)」が開催された。「FF」は台湾のアニメ情報誌「月刊FRONTIER」と台湾動漫画推進協会が企画開催している台湾版のコミックマーケットとでもいうべき台湾最大の同人イベント。台湾のオタク界では「エフエフ」と言えばこのイベントを意味する。毎年と夏に2日間ずつ行なわれていて、今回で17回目を迎える。

 日本のコンテンツの人気が高い台湾では、日本の作品を元ネタにした二次創作が盛ん。「FF 17」のパンフレット表紙は、日本のイラストレーターCARNELIANさんが手掛けている。場内のステージでは日本からゲストを招いたトークショーやライブが開催される。今年は「ひぐらしの鳴く頃に」の作者竜騎士07氏や、イラストレーターの西又葵氏と深崎暮人氏、声優の杉田智和さん、宮田幸季さん、岸尾だいすけさんなどが招待された。

 驚いたのは、Taipei Game Showに出展してない台湾GamaniaがWindows用MMORPG「DIVINA」の試遊ブースを出展していたことだ。19日にはステージイベントも行なうなど、大々的なプロモーションを展開した。その他にもニコニコ動画による生放送や、メイド喫茶などまさにオタクの聖地というにふさわしい盛り上がりを見せた。ゲスト参加のステージイベントは撮影禁止だったため模様をお伝えできないが、同人誌即売会や企業ブース、コスプレ、すっかり恒例になった痛車の展示会など台湾オタク文化が集結したイベントの賑わいをレポートしたい。




■ 台湾サークルの1番人気はやっぱり「東方Project」

イベントのパンフレット(右)と企業ブース「緑林寮」のオリジナルグッズ
会場の台湾大学は台湾最高峰の大学。台北駅からタクシーで15分程度の場所にある

 「FF 17」の会場は台湾大学のキャンパス内にある台湾大学総合体育館。サークル数は約400で、パンフレットに載っているサークルの紹介文には日本のサークルであることを謳っているものもちらほらと見られる。企業ブースは約20社で、こちらも台湾企業と日本企業が半々くらい。企業ブースは次の章に置いて、まずはサークルと一般参加者の動向を紹介しよう。

 サークル参加は日本と同じように事前の申し込み制。一般入場者は200台湾ドル(約600円)のパンフレットについている入場チケットが必要なので、それが実質的な入場料になる。今年の入場者数は約2万程度を見越しているとのことだ。これは例年に比べると少なめの数。というのも、今年は開催初日の土曜日が旧正月への休日繰り越しのために平日となってしまったため、学生が来られなくなったからだ。

 とはいえ、日曜日にはホールも通路も人でいっぱいになっており、特にサークルの販売スペースは動けないほどの人でぎゅうぎゅう詰め。会場のキャパシティは限界に達している感がある。あるサークルの人によると、イベントの性質上、開催できる場所を見つけるのが大変らしい。この辺りの事情は日本よりも厳しいようだ。

 もう1つ、人が少ない原因になったのがTaipei Game Showと開催時期が重なったことだ。ある企業ブースの出展者は「今回はTaipei Game Showと開催時期がかぶったため、人の取り合いのようになっていますね」とも語ってくれた。冬の「FF」は毎年旧正月後のこの時期に開催されており、ゲームショーと時期が重なったのは偶然なのだそうだが、せっかくなら両方ともと考える人は多いようで午前中にこちらを見て、午後からはゲームショーとかけ持ちをしている人がおおかったようだ。

 人気のあるジャンルは男性向けは「東方Project」、女性向けは「ヘタリア」と、どちらも日本の作品。特にここ3年ほどは「東方Project」の人気が圧倒的で、いたるところにキャラクターのタペストリーやポスターが掲げられていた。日本のサブカルチャー界で流行っている「エルシャダイ」や「魔法少女まどか☆マギカ」が、日本と同じようなノリで楽しまれていたことには驚かされた。ニコニコ動画やPixivなどネットが二次創作の作品発表の場になったことで全くタイムラグなく日本と同じように楽しんでいるのがわかる。

 同人誌の価格は平均すると1冊が100~350台湾ドル(約300円~1,050円)程度。日本よりはやや安いが、台湾の水準からはかなりの高額だ。オリジナルの漫画や、アクセサリー、カンバッジなどが多かった。中にはカードゲームや自作の音楽を売っているサークルもあった。


同人誌の即売会場は日本とほとんど変わらない雰囲気雨の中、一般入場の行列がはるか先まで続く来場者のカバン。台湾でも「東方Project」は大人気
ブースの片隅にあった寄せ書きのコーナーフルカラーの気合いが入った同人誌もあちこちで売っていたウサギ年にちなんだウサギグッズの店




■ 物販だけじゃない。ゲームからニコ生まで多彩な企業ブース

台湾Gamaniaのブース。日本の声優を使っていることが大々的に押し出されていた
試遊すると、紙のバッグと、クラリスの風船がもらえた

 企業ブースの注目は、今年が初出展の台湾Gamaniaだ。GamaniaはMMORPG「DIVINA」の試遊台を出展し、ノベルティを配ったりステージイベントを行なうなど活発なプロモーションで集まった人たちにゲームをアピールした。なぜTaipei Game Showではなくこちらに出展しているのかという疑問を解くためのキーワードは「声優」だ。

 「DIVINA」はご存じのように日本と香港ではすでに正式サービス中だが、お膝元の台湾ではまだβテスト中で、今年の第2四半期のサービスインが予定されている。「DIVINA」は堀江由衣さんや釘宮理恵さんなど日本でも人気のある声優が声を当てているが、他の地域でもローカライズはせずにすべて日本の声優ボイスのままでサービスすることを売りにしている。

 台湾のオタク層には日本の声優の熱狂的ファンが多いため、その層が集まる「Fancy Frontier」へブースを出した方がより効果的だろうという判断があったのだろうということは想像に難くない。実際ブースの外には入りきれない大勢の人が行列を作り、次々に序盤のプレイを体験していた。

 また、「Taipei Game Show 2011」にも出展しているゲーム専門学校の巨匠電脳はゲームショウと同様に現地説明会を行なっていた。今回が初参加だという、日本のマルチメディア専門学校ECCコンピュータ専門学校は模擬授業の形で日本への留学を案内していた。また「ニコニコ動画」はスタジオを作って、自作の音楽を発表しているアマチュアアーティストによるライブを生放送した。

 物販では、ホワイトキャンバスやとらのあななどアキバ系のグッズショップが台湾オリジナルの福袋などを販売。企業ブースでもやはり「東方Project」が人気で、ホワイトキャンバスのブースで流れていたプレイ動画には大勢の人垣ができていた。メイドカフェ「珈琲・可思客」のブースではメイドさんがその場で焼いた焼きそばを「お帰りなさい」と日本語で書かれたパッケージに入れて販売していた。他にも5pb.やnavelなどのゲームブランドもブースを出展していた。

 台湾の企業ではコスプレ雑誌やライトノベル、マンガ雑誌を出版している台中の出版社Min-Hsien Cultural Enterpriseや、台北の同人ショップ「緑林寮」、「FF」を主宰している「月刊FRONTIER」などがオリジナルグッズや自社出版の小説や漫画を販売していた。ステージショーは企業ブースの中央に作られたミニステージで行なわれ、開場からずっと陣取っているファンが登場した声優やイラストレーターに熱い声援を送っていた。


台湾の専門学校Gamaniaブースにあった立て看板企業ブースの中央にあるステージ
Min-Hsien Cultural Enterpriseの「1/2王子」フィギュア台湾の同人ショップ「緑林寮」のブース日本の美少女ゲームブランドNavelのブース
ホワイトキャンバスの紹介文店員さんは台湾の人。写真を頼むとポーズをとってくれた今回の目玉商品の1つ。「エルシャダイ」ジーンズ
「珈琲・可思客」のメイドカフェ見た目よりもおいしかった焼きそばパンは50台湾ドル(約150円)ニコニコ生放送では、アマチュアバンドのライブが放送された




■ 台湾産のキャラクターコスプレも。育ちつつある国産コンテンツ

「Minecraft」のコスプレ

 同人イベントには欠かせないコスプレは、コミックマーケットのように決まった場所があるわけではなく、あちこちに集まって自由に楽しむという形だ。2日目はあいにくの雨だったため、会場正面の天井がある広場が撮影会場になっていた。初音ミクや、「東方Project」のキャラクターとともに、台湾でいま人気のある軽小説と呼ばれるライトノベルの登場人物に扮している人が多かった。特に「特殊伝説」という少女向けの小説が人気のようだ。台湾ではコスプレ人気も高く専門誌もある。5月にはコスプレでマラソンをするというイベントがあるようで、会場内で参加希望を募っていた。

 もう1つ「FF」でおなじみの光景なのが、キャラクターの絵で車やバイクをラッピングした「痛車」の展示だ。日本でも大きなイベントには登場するが、台湾では登録をして展示するスペースがあり、品評会のように並べられている。スクーターが重要な足となっている台湾らしく、出展作の大半はスクーター。20台以上の力作が並んでいた。

 台湾は日本のサブカルチャーとの親和性が高く、日本人と同じようにアニメやゲームを楽しんでいるが、これまで自国のオリジナルコンテンツを生み出す力が弱いという側面があった。しかし「DIVINA」や「特殊伝説」、「1/2王子」など、多くのファンを獲得できるコンテンツが生まれてきているのは、ここ数年の大きな変化だろう。今年、角川書店から台湾産の少女向けライトノベルが翻訳出版された。一方通行ではなく相互にコンテンツを提供し合う場が広がれば、さらに発展していく可能性があるだろう。


「ハーフライフ 2」パッケージそっくりの力作「魔法少女まどか☆マギカ」の魔女台湾のライトノベル「特殊伝説」の式青というキャラクター
アリスとウサギ鏡音リン「東方Project」の主役2人
コスプレマラソンの告知「痛車」の展示コーナー気合いの入ったスクーターを展示
「ブラックロックシューター」「ストライクウィッチーズ」「東方Project」の八雲紫

(2011年 2月 22日)

[Reported by 石井聡]