スクエニ、2010年3月期決算を発表。過去最高益を更新

質疑応答では「ファイナルファンタジーXIV」からTwitterまでコメント


5月18日 発表



「ドラゴンクエストIX」、「ファイナルファンタジーXIII」、「バットマン アーカム・アサイラム」などAAAタイトルの投入が相次ぎ、過去最高益を更新した

 株式会社スクウェア・エニックスは2010年3月期決算を発表した。今期の連結経営成績は、売上高は前年比41.7%増の1,922億7,700万円、営業利益が282億3,500万円で130%増、経常利益は278億2,200万円で50.1%増、純利益は95億900万円で50.1%増となっている。

 スクウェア・エニックス・グループとしては2003年4月発足時から最高の売上高、営業利益、経常利益を記録し、剰余金の増配も同時に発表された。なんと言っても大きかったのはゲーム事業で、「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」、「ファイナルファンタジーXIII」、「バットマン アーカム・アサイラム」を含む5本のミリオンセラータイトルが全世界で発売され、今期の販売本数は2,666万本となった。

 この他、出版事業、モバイル・コンテンツ事業、ライツ・プロパティ事業共にプラスとなったが、アミューズメント事業はマイナスとなっている。同社の和田洋一代表取締役社長は「まだまだ厳しい中でイーブンだった」とし、今期の間はまだ厳しいとの見方を示した。

 ちなみに今期のゲームタイトルの販売について世界的なパーセンテージで見ると、日本が44%、北米が28%、欧州が27%、その他1%となっている。和田氏は「『ドラクエ』が発売された年は、(パーセンテージが)日本に強烈に片寄る。しかし今年は各地域が拮抗してきた。バランスよくなってきた」と説明。2011年度についても同様の傾向を目指すとしており、「市場規模にあったバランス」を目指したいとしている。そのグローバル化だが、和田氏によれば組織的な統合は終わり、開発プロジェクト単位での協働も開始され、「80点」を付けることができる出来だとしている。ただ問題点も指摘しており、その1つとして上げた中国展開については「どこかと組まないとできない。どこと組むかはまだ白紙」と語った。

 和田氏はスクウェア・エニックスが第3ステージに脱皮するために必要なものとして、これまでから「グローバル化」、「ネットワーク化」、「自社IP強化」を挙げている。「ネットワーク化」に関しては、今期はまだ「部品を積み上げている段階」として厳しい見方を示した。

 最も注目の「ファイナルファンタジーXIV」に関しては「当年度にやる」と明言。また「いくつかの大型タイトルも作っているが、今年度はムリ」とリリースはされないまでも、他にも数ラインの大型のオンラインタイトルが控えていることをほのめかした。この他にもSNSタイトル、ブラウザゲームなども開発中で年内に何本かはリリースされるという。

 SNSゲームについて意見を求められた和田氏は「語弊があるかもしれないが、我々『パッケージ屋』さんは、(SNSゲームにおいて)どうしてもツボが微妙に外れている。だんだん照準が合ってきた。ユーザーがどういう動機でどう行動するかわかってなかった」と語り、当初はパッケージタイトルをそのまま持って行くなどの手法だったが、だんだんSNSゲームとしての完成度が増していっていると語った。

 「ファイナルファンタジーXIV」に関しては説明会においても何度か話題にあがったが、決定的な発表はなかった。アイテム課金について問われた和田氏は「アイテム課金は会社としては普通にやる。ゲームの特性によって決まる」とコメント。では「ファイナルファンタジーXIV」の「ビジネスモデルは?」と問われたことに対しては「最終的なことは言えない」と言いながらも「どちらかと言えばサブスクリプション(定額課金など)かな」と語っている。

 この他、和田氏との質疑応答でゲームファンにとっても面白い話題をフォローすると、立体視ゲームに関する話題もあがった。「立体視ゲームで市場は活性化するか?」との問いに和田氏は「活性化してくれれば嬉しいが、話題にはなるでしょうが市場ができるとは思っていない」とコメント。理由として上げたのは「裸眼なのかメガネなのかなど、仕様が安定していない」こと。さらに「立体視と言うことで、2倍レンダリングしなければならないのが面倒くさいくらい。それだけマシンスペックがいるので、それだけのマシンを皆が買うかというとわからない」と、価格的な点でも疑問符を投げかけた。ただ、キャッチアップはしており以前から実験はしていると言い、「3Dゲームにおいてはカメラのシステムを変えることくらいでコストはそれほど掛からない」とした。

 また、「ファイナルファンタジー ヴェルサスXIII」についても質問が飛んだ。海外で「ファイナルファンタジーXIII」の販売本数が伸びたのはXbox 360版が発売されたからではないかとの質問があり、実際、同程度販売されたとのコメントがあった。その流れで「『ファイナルファンタジー ヴェルサスXIII』は現在プレイステーション 3のみだが、Xbox 360とのマルチプラットフォームで出した方がいいのではないか?」との質問には「社内で正式な発表ギリギリまで検討している」とコメントするにとどまった。

 最後に、和田氏はTwitterでかなり活発に呟いているが、この件について問われた和田氏は「それ決算に関係ありますかね (笑)。広報効果については全く考えていません。どうやってカルチャーを変えるかということについて、いろんな軸で考えていかなくてはならないと思っていて、その1つですね。ようするにネットに対してどう向かうか? 販売スタッフやクリエイターがどう考えるかということを一緒になって考えて欲しいなと言うことです」とコメントを残している。

決算説明会で、今後の展望も含め説明を行なった和田洋一代表取締役社長2010年3月期の決算説明を行なった松田洋祐取締役

事業セグメント別実績。今期はやはりゲームが売れまくった。一方、アミューズメントはまだ厳しい状態が続いている。和田氏は「今期ももう少し厳しい状況は続く」と語った同社の「第3ステージに脱皮するためのKFS」と題した中の1つ目が「グローバル化」。販売的には北米の販売が弱いなど弱点があるとしながらも、かなり進行しており、和田氏は「80点」を付けていた。AAA(世界で200万本以上販売したタイトル)タイトルも今期は多かった
2つめはネットワーク化。オンラインゲームを発表するだけでなく、販売チャネルなど多岐にわたる。和田氏は「まだ部品を積み上げているところ」として、「50点」としたそして3つめが「自社IP強化」。各社のIPがズラリと並んだ形だが、このところ発売されていないタイトルも出ている。今後、様々な新作が登場する可能性もある2011年3月期の目標として上げられた点。ネットワーク化では「『FFXIV』の投入」と明記され、和田氏も「売れる物は出していく」と語っていた
2011年3月期の販売本数計画。さすがに今期よりは落ちているが、なかなかの本数。和田氏は「(世界の販売割合は)市場規模にあったものにしていく。これはチャレンジング」とコメント今後の主なラインナップとして上げられたタイトルちなみに今期のゲームの販売本数は過去最高。和田氏は「ドラクエが出た年は日本に片寄るが、ほぼまんべんなく売れたのが大きい」と評価している

(2010年 5月 18日)

[Reported by 船津稔]