東京ゲームショウ2009レポート

台湾・北京パビリオンレポート
遊園地のような乗り物に乗れるMMORPG「Funtasy Online」、
TPSとRTSの2つのルールで対戦する「決地Online」など、注目タイトルをピックアップ


9月24日~27日 開催(24日、25日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料


 東京ゲームショウ2009の海外パビリオンは、台湾、オランダ、カナダ、北京(中国)が出展を行なっていた。本稿では台湾、北京パビリオンに出展されていたタイトルから数タイトルをピックアップしたい。

 台湾、中国のソフトメーカーはここ数年、急速に膨らむオンラインゲーム市場をメインターゲットに、多彩な作品を生み出している。バリエーションも広がっており、以前は三国志と武侠をテーマにした作品ばかりだったが、かわいらしいキャラクターが登場するファンタジー世界での冒険など様々なカラーの作品が出てきた。特に北京パビリオンは、FPSや第2次対戦もの、スポーツゲームなど多彩なラインナップが出展されていた。

 台湾・北京のブースの中で、特にユニークだったのが、北京パビリオンに出展していたCyWeeというメーカー。「CyWee Z」という無線型のゲームコントローラーを出展していたのだが、このコントローラはWiiのコントローラのように振り回したり、ポインティングデバイスとして使えるのだ。PC側にUSB型のセンサーを取り付け、アプリケーションで設定することでさまざまなゲームに対応できるという。

 コントローラは中心に斜めに回転する軸があり、回転させることでくの字型に変形する。通常の長い状態では、振り回してテニスラケットやゴルフクラブとしてプレイできる。くの字型に折り曲げると、人差し指が当たるところにトリガーがあり、銃のように構えることも、くの字の両端を両手に握ることでハンドルコントローラーとしても使える。

 CyWeeでもシューティングゲームやテニスゲームを発売しており、他にも「EA Sports Tiger Woods 08」や「Virtual Tennis 3」といったタイトルのデモプレイを行なっていた。基本的にはWiiに近いものを、というベクトルでとどまっており、ゲームの世界を変えるような衝撃はないが、変形により様々なデバイスになるというアイデアは面白かった。


台湾コーナーは「童話王国」を開発したLager Network Technologiesや「アンリミテッドハーツ」の開発元Winking Entertainment、「グランドファンタジア」のEASYFUN Entertainment といった日本でサービスされているタイトルを開発したメーカーの出展が多かった
北京ブースは多彩なアプローチの作品が多かったが、日本語を使えるスタッフがほとんどいないようで、自社のタイトルを担当者自身が遊んで、スタッフ同士が固まって話しているという風景も目立った。通訳スタッフを増やして、積極的にアピールすれば交流が深まるのにと感じた。
CyWeeというメーカーのコントローラー「CyWee Z」。自社タイトルだけでなく様々なタイトルでもプレイできることをアピールしていた。「中国ではこういうデバイスを売っているのか」と伝わってくる



■ 仙道にフォーカスを当てた「Xenjo Online」、太平洋戦争の戦艦のぶつかり合いを描く「海戦伝奇」など個性的なタイトル

● 「Funtasy Online」

パステル調の色づかいと、かわいらしいキャラクター。ほのぼのとした雰囲気が伝わってくる
イメージキャラクターの5人の女の子と悪役の男。ストーリーにも注目したい

 「Funtasy Online」は、日本でもサービスされている「童話王国」と世界観を同じにするかわいいキャラクター達が活躍するMMORPGだ。開発は台湾のLager Network Technologies。スタッフはあえて「童話王国2」ではなく、新しいタイトルのつもりでこの名前を付けたという。今回はムービーのみの出展で、サービス時期は未定だ。

 「Funtasy Online」は童話の世界を3Dグラフィックスで再現したMMORPGで、「童話王国」から100年後の世界を舞台にしている。人間、ドワーフ、エルフの3種族が選択可能だが、どのキャラクターも頭が大きく目の大きな、かわいらしいデザインだ。「遊園地のような楽しさを提供したい」というのが本作の基本コンセプトとのことだ。

 本作はターン性のバトルシステムを採用し、5人までのパーティーを組んで冒険が可能。敵を捕獲してペットにし、ペットにえさをあげたり他のペットと掛け合わせることでより強力なペットに成長させられる。スキルを連携させることで特殊攻撃が可能といったシステムが盛り込まれている。

 「Funtasy Online」で目を引く要素はやはりアバター要素だろう。制服や着ぐるみ、鎧、ひらひらしたスカートや、天使の羽、眼帯など様々なパーツがある。装備と外見だけを変えるアイテムなど基本的なトレンドは網羅している印象だ。エモーションを組み合わせたり、ペットの飾り立てられたりと、要素そのものはオーソドックスではあるが、そのデザインのセンスとボリュームに期待させられる。

 ユニークなシステムとしては「乗り物」がある。「Funtasy Online」は中心に街があり、そこから様々な世界へ旅立つ。この時、汽車やペガサスがひく馬車に乗って移動するのだが、この乗り物が遊園地の乗り物のような装飾でとてもかわいらしい。また恋人となったキャラクターと一緒に乗れる白鳥型の船など、特別な乗り物もあるという。乗り物には複数のプレーヤーが同時に乗れるようで、乗り物に乗りながらおしゃべりを楽しむというのも面白そうだ。ちなみに、恋人とはキスや膝枕など専用のエモーションも用意されるという。

 「Funtasy Online」ではゲームのイメージキャラクターとして5人の女の子と、シルクハットをかぶった男が登場する。男はなにやら悪事をたくらんでいるらしく、ムービーでは巨大ロボットを操って街をおそっていた。5人の女の子は戦隊ヒーローのような姿となって立ち向かうストーリーだったが、こういったヒーロー要素も考えているとのことだ。5人の女の子はこの世界ではアイドルという設定で、ゲーム内でもNPCとして登場するという。


スクリーンショット。クジラ型の山や、着ぐるみ、ペットなど、歩いているだけで楽しそうだ。たくさんのプレーヤー達が参加することで、おもちゃばこをひっくりかえしたようなにぎやかな風景になりそうである
プロモーションムービーからの撮影。天馬にひかれた馬車や、汽車といった乗り物が登場する。戦闘はペットや仲間と力を合わせて戦う。連携要素も入るという

● 「Xenjo Online」

硬派な雰囲気の「Xenjo Online」。試練をくぐり抜け仙人の道を目指すというストーリーに注目したい

 台湾SoftWorldの子会社のZealot Digital Internationalは、台湾だけでなく、シンガポール、ベトナム、マレーシア、スペインや米国といった人材が集まる国際色豊かな開発会社だ。今回は台湾で人気のネット小説を原作にした「Xenjo Online」など3本のタイトルをムービーで出展していた。

 「Xenjo Online」は2010年第1四半期に台湾でサービス予定のMMORPGで、プレーヤーは7つの門派で様々な仙術を学び、キャラクターを育て上げていく。プレーヤーは仙術を極めていくことで空を飛べる乗り物に乗れるようになったり、強力な術が使えるようになっていく。最終的には仙術を極めて仙人を目指す。

 仙人になるためにはいくつかの段階があり、7つの門派それぞれに課題がある、段階を踏み高みを目指すというのは仙人になるための道「仙道」のセオリーをきちんとゲームに盛り込んでいくという。「Xenjo Online」は見た目から「武侠もの」というジャンルにカテゴライズされがちだが、コンセプトとしてより「仙道」にフォーカスを当てた作品となるという。

 もう1つ、特徴的な点としては「巨大ボスとの戦い」がある。プロモーションムービーでは、敵の攻撃モーションを見て距離をとるなど、足を止めてただ殴っているだけでない、アクション性を持った駆け引きが楽しめそうだ。ムービーでは竜や巨大亀などいくつもの巨大ボスが登場していた。「Xenjo Online」は小説を原作にしているだけなにストーリー要素も高く、インスタントダンジョンなども多く実装されるという。インスタントダンジョンで巨大ボスと対決できるのか、楽しみである。


ムービーからは武器で戦う「武侠もの」のイメージが伝わってくるが、ここに仙道がどう関わってくるかは興味深い。様々な巨大ボスが登場するのもセールスポイントで、ゲーム的なアプローチも期待だ

【大越伝奇】
Zealot Digital International開発の「大越伝奇」。ベトナムの伝説・神話を題材にしたユニークな作品である。ベトナムス人タッフが多数在籍するZealotならではの作品だという。オンラインゲーム市場が急速に発展しているというベトナムでの反応も楽しみだ

● 「海戦伝奇」

 北京のKingworld Technologyは軍事系のゲームを得意とするゲームメーカーである。WEBブラウザでプレイできるゲームが中心だが、今回出展を行なった「海戦伝奇」第2次世界大戦の「海戦」を当てたMOタイプの海戦アクションゲームである。2009年12月に中国でオープンβテストが実施される予定だ。

 プレーヤーは最大64人で参加できるルームに入り、戦艦を操作して敵と艦隊戦を繰り広げる。ユニークなのがロビー画面が街になっていて、街の中を歩けるほか、MMORPGのキャラクターを思わせるアバター要素を持っているところだ。現在は米国と日本の2国が実装されていて、試遊台では日本のマップを見ることができたが、プレーヤーキャラクターは丈の短い着物を着た女性で、重い街の雰囲気とのギャップが面白かった。

 街は全体に薄暗く、軍事工場か港のような感じで重厚な感じだ。港には巨大な戦艦が停泊しているのが見える。プレーヤーは戦闘で得たポイントで艦船のアップグレードを行なう。船のアップグレードはツリー形式になっていて、目指す戦艦にフォーカスしながら新しい船を選んでいくことになる。

 この街からルームを選ぶことで戦場に参加できる。双眼鏡画面で敵の位置を確認、敵の進路を予想しながら船を動かし、マウスで左クリックで砲を撃つ。船の操作はWで前進、AとDで左右に舵を切り、Sで減速、マウスで視点移動と攻撃方向の決定だ。ルールそのものはシンプルだが、広い海で他のプレーヤー達とどう動き戦っていくかの駆け引きは面白そうである。

 「海戦伝奇」は現在は米国と日本の2国だけだが、オープンβ時にはドイツ、イギリス、さらに今後はイタリアやソ連、フランスといった国も選べるようになるという。この他に「爆撃機」を操作するシステムも今後実装予定とのことだ。


クライアントの設定時間が夜だったためか、かなり薄暗い風景だが、軍事基地のような重たい雰囲気の街に裾の短い着物を着た女の子が走り回っている姿が面白い。戦艦の表現は雰囲気たっぷりで、白熱の戦いが楽しめそうである

● 「決地Online」

 北京GameWorldは「決地Online」を出展していた。「決地Online」は2006年のChinaJoyでも紹介されていたタイトルで、2010年1月に中国でのサービスを目指して開発が進められている。異星人との戦いをテーマに、TPSとRTSの要素を併せ持つユニークなアプローチの作品だ。

 「決地Online」は基本的な対戦システムが3vs1になる。3人側はTPS視点で1人のキャラクタを操作して敵陣に切り込んでいく。対する1人は「StarCraft」のようなRTS画面でキャラクターを配置し、3人のプレーヤーを迎え撃つ。GameWorldはこのゲームに対してMMO-RSS(Massive Multiplayer Online - Realtime Strategy Shoot)という新しいジャンルを名付けた。

 プレイヤーは勝敗によるポイントを得て、これを消費することで成長できる。TPS側でポイントを稼いでRTS向けの強化をするということも可能なようだ。対戦ルールとしてはそれぞれの陣営の参加人数を倍にした6vs2、さらに3人のTPSプレーヤーをRTSプレーヤーがバックアップするという3+1vs3+1、さらに6+2vs6+2という戦い方も可能だという。

 異星人達との戦いを描く世界観も魅力で、中国のみならず北米やヨーロッパも展開予定とのこと。また、GameWorldはこのシステムを使って、中世の様々な国の兵士達がぶつかる戦いを描く「乱世兵鋒」といった作品も開発中だという。

 東アジアのオンラインゲーム、特にMMORPGは他社がシステムを提案し人気を博したら他の会社も次のアップデートで盛り込む、というように個性が薄いと感じられる作品が多い。そのなかで、「決地Online」は個性的で、かつ挑戦的なアプローチだと感じた。今回の試遊台はTPS側1人、RTS側1人だったために実際のプレイと同じ環境の体験ができなかったのが残念だ。実際どんな戦いが展開するのか見てみたい作品だ。


上段がTPS、下段がRTS画面。それぞれのテクニックを研いていくことで激しい戦いが展開しそうである。また、3+1vs3+1といったバックアップがいる状態での戦いというのも面白そうだ



(2009年 9月 27日)

[Reported by 勝田哲也]