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【必見! エンタメ特報】「アーロと少年」怖がり恐竜の王道成長ストーリー
映画的名シーンもあり。恐竜&人間コンビが繰り広げる大自然の冒険
2016年3月12日 00:00
とあるアパトサウルス一家の末っ子として生まれたアーロは、他の兄弟と比べて体が小さく、性格も極度の怖がりだった。一家はトウモロコシを耕作することで冬に備えているが、アーロはその怖がりの性格から、やるべき仕事を上手くこなせない。
そんな中、蓄えていたトウモロコシが荒らされる事件が起こる。アーロは犯人だった人間の少年を捕まえることに成功するが、その優しさから痛めつけることはせず、そのまま逃がしてしまう。だがその判断が、アーロの運命を大きく変えることとなる……。
恐竜と人間の少年という組み合わせ、さらにテレビCMなどで強調されている「2人の友情」という情報から、本作を鑑賞する前は、映画「ドラえもん のび太の恐竜」におけるのび太とピー助的な感涙ストーリーかと思っていたのだが、これがぜんぜん違っていた。
本作全体を通したテーマは、主人公アーロの冒険と成長である。アーロはある事故から家族と遠く離れてしまうのだが、家族のもとに戻る旅路の中で様々な経験をする。道中では少年「スポット」との再会や牛追いTレックス一家との出会い、また危険な恐竜たちとの対峙などがあり、これらを通して気弱な少年がたくましい青年になっていく様子が描かれていく。
アーロの心に深く根ざす恐怖心や、映画冒頭で背負うトラウマに近い悲しみをいかに乗り越え、克服していくかも映画のポイントとなっており、これが精緻に表現された大自然の雄大さと相まって、王道感のある映画となっていた。
ではスポットは? というと、アーロのペット的な扱いとなっている。仕草は犬そのもの、また喋らないので人間と犬の関係がそのまま当てはめられており、スポットが人間だと思っているとちょっと印象が異なる。
だがこのスポット、かなり複雑なキャラクターで、最初は野生剥き出しでトウモロコシを食べているだけだし、そればかりかアーロ一家にさらなる打撃を与える引き金ともなっているので、むしろ怒りたくなるようなキャラクターとして描かれる。
それなのに、窮地に陥ったアーロにはどこまでも付いて行くし、アーロがピンチに陥れば助けようとさえする。その真意が言葉で説明されることはないのだが、スポットが自分の気持ちを吐露するシーンがあり、ここで初めてスポットがアーロ以上の孤独を抱えていたことがわかる。スポットは言葉では語らないが、行動1つでスポットの心情がわかり、さらに涙も誘い、アーロとの絆が深まったことがはっきりとわかる、実に映画的な名シーンだ。
2015年度のアカデミー長編アニメーション賞を獲得した「インサイド・ヘッド」に比べるとやや小粒な印象だが、兄弟の中でも落ちこぼれだったアーロが試練を通して勇敢さを獲得していく過程を見事に描き切っている。ピクサー印の確かなクオリティの1作である。
(C)2016 DISNEY / PIXAR.