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インベーダー最強プレーヤー決定戦「スペースインベーダーチャンピオンシップ」開催
稼動38年目の公式大会が実現。少年時代に熱中した猛者たちがスゴ腕を披露!
(2016/2/15 13:05)
埼玉県とデジタルSKIPステーションは、昨年10月から行なっている懐かしのゲームを多数展示したイベント「遊ぶ!ゲーム展」の企画の一環として、「スペースインベーダー」を使用したゲーム大会「スペースインベーダーチャンピオンシップ」を、埼玉県川口市にあるSKIPシティ彩の国ビジュアルプラザにて2月14日に開催した。
本大会は、「遊ぶ!ゲーム展」と同じく主催は埼玉県で企画・運営はデジタルSKIPステーションだが、発売元であるタイトー協賛によるれっきとした公認イベント。また大会中に使用した筐体は、東京・秋葉原にあるレトロゲームに特化したゲームセンター「ナツゲーミュージアム」の提供による、なんとタイトー純正のテーブル型筐体を使用するというこだわりぶり。かつて一大ブームを巻き起こした傑作中の傑作とはいえ、まさか1978年に発売されたゲームが21世紀をとっくに迎えた現代に実現するとは誰しもが想像できなかったことだろう。
大会の司会はゲームライターのローリング内沢氏が担当し、ゲストには「遊ぶ!ゲーム展」を監修した東京大学大学院情報学環教授の馬場章氏と、「スペースインベーダー」の生みの親である現タイトーアドバイザーの西角友宏氏が登場。さらにスペシャルゲストとして、「モモーイ」ことシンガーソングライターの桃井はるこさんも出演した。
300点UFO撃破にナゴヤ撃ち……衰え知らずの超絶技巧の競演に会場は大盛り上がり!
本大会のルールは、事前の応募によって選ばれた21名の中から当日の午前中に行なわれた予選を勝ち抜いた上位8人が出場し、2人ずつが対戦するトーナメント方式。筐体を2台使用して2人が同時にプレイし、ベスト8と準決勝は3分間で獲得したスコアを、決勝戦は5分間での合計スコアが高いほうが勝者となり、途中でゲームオーバーになった場合はその時点で負けとなる形式で行なわれた。
正直に話すと筆者は当初、古くて内容がとてもシンプルなゲームでのイベントがはたして盛り上がるのか、かなり疑問を持っていた。ところがどうして、いざ対戦が始まるとスゴ腕プレーヤーたちが往年のテクニックを披露すると場内からは歓声が次々と沸き起こったので、いい意味で裏切られた。空前のインベーダーブームとなった1978年当時に確立された、ステージごとのインベーダーたちを撃つ順番や、UFOを最高得点の300点できっちり破壊するなどの攻略パターンを実践するプレーヤーたちの姿は、今見ても実に美しいものであった。
ちなみに8人の選手たちはいずれも40歳代の男性で、少年時代に「スペースインベーダー」に興じた経験があるとのこと。どの試合も僅差での勝負となり、なおかつ一発勝負の大舞台でありながら、かつてプレーヤー間で有名になったレインボー(※)の裏技をあえて狙って成功させるツワモノも2人いたことには本当に驚かされた。その度胸と衰え知らずの腕前には来場者だけでなく、ニコニコ生放送の視聴者たちもかなりびっくりした様子で、画面をチェックしていた桃井さんが「みんな見入っちゃってるみたいで、コメントが全然流れてこないんですよ……」と語っていた。
[※筆者注]
画面内に最後の1機として残った敵のインベーダーが、左右に動くたびに残像のような痕跡を残す現象のこと。比較的倒しやすい、最前列または前から2列目のインベーダーを最後に残すことが必要なため、狙って出すのは意外と難しい
ベスト8の4試合の終了後には、ゲストの馬場氏と桃井さんによるエキシビジョンマッチも開催された。3分間勝負で、敗者はそれぞれ持参したグッズを来場者にプレゼントするというルールで行なわれ、桃井さんはUFOをしっかり狙い撃ちして得点を稼ぐなど、序盤から見事にリードを奪うことに成功し、勝負あったかと思いきや途中で痛恨の連続ミスをしてまさかのゲームオーバーに……。なお、桃井さんが持参したサイン色紙とチョコレートは、来場者全員でのジャンケン大会を制した小学生の男の子が見事にゲットした。当日は2月14日ということもあり、これ以上ないバレンタインデーの贈り物となったことだろう。
そして迎えた決勝戦では、初戦から正確無比なプレイでギャラリーを圧倒したfukkokuya選手と、3人のお子様を連れてやってきたスタン斑点選手が激突した。緊張からなのか、途中で1ミスを喫してしまったスタン斑点選手に対して、すべてのUFOを300点で撃破しただけでなく、ボーナス得点とは無関係のレインボーをも出すという離れ業を成功させ、6,990点を稼いたfukkokuya選手が文句なしの優勝。見事なプレイぶりを目の当たりにした西角氏は、「あ然としましたね。私なんて2面しかクリアできなかったのに……」と驚きを隠せない様子だった。また、ゲームの生みの親の眼前でマイクを向けられたfukkokuya選手は「子どもの頃からの夢がかないました……」と感慨深げにコメントしていた。
今大会の出場選手は働き盛りのオジサンばかりということもあり、前述のスタン斑点選手以外にも多くの選手が子ども同伴で会場入りしていた。トーナメント戦の終了後、桃井さんは「今日のパパはとてもカッコよかったですよね」とコメントしていたが、まさに仰るとおり。子どもたちは真剣勝負に挑むパパに向けて何度も甲高い声援を送り続け、勝てば大喜びする一方、負けるとその現実を受け入れられずに泣き出すお子様もいたのが何よりの証拠だ。
表彰式を終えると、西角氏が「40年近く経った今でも可愛がってもらえて、本当に作ってよかったなあと思います」と、短い言葉の中にも万感の思いが込められたコメントで本大会を締めくくった。稼働開始から38年が過ぎた古いゲームであっても、やり方次第では今でもイベントが盛り上がるという大きな発見につながった本大会は、今月28日で開催を終了する「遊ぶ!ゲーム展」のトリを飾るにふさわしいものとなった。