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「ファイナルファンタジーXV」ディレクター田畑端氏インタビュー
「FFXV」1番の強みは「1人のために極上の体験を作っているということ」
(2016/2/1 00:00)
去る1月31日13時より放送された「ファイナルファンタジーXV アクティブ・タイム・レポート vol.7.0」。動画を見た方はご存じの通り、開発中のゲームの仕様や、最新のバトルシステムなどインパクトのある情報が多数公開された。
ちょうどこの放送が行なわれている間、台湾では「ファイナルファンタジーXV」ディレクター田畑端氏へのメディアインタビューが実施されていた。YouTubeで時間キッカリにATRがスタートする中、目の前では確かに田畑氏が喋っており、メディア席の最後列ではATR司会進行役の大藤昭夫氏が配信映像をチェックしているという、不思議な感覚に陥る中でのインタビューとなった。
――今まさに、「ファイナルファンタジーXV アクティブ・タイム・レポート vol.7.0」(ATR)が放送されていますが、内容は同じですか?
田畑氏:今回の取り組みはTaipei Game Showに「FFXV」チームとして情報発信する。その後に、世界の各地域がそれぞれの言語で楽しめるようにするという主旨で実施しています。3月の詳細についてはATRのほうが詳しいです。女性の竜騎士もそちらで触れています。
――「FFXV」のエンディングはマルチエンディングですか?
田畑氏:マルチではないです。物語はひとつの結末に向かって進んでいきます。
――今回は、リアルタイムで時間が経過していくということですが、時間帯によって違うモンスターと遭遇したり、ミッションの解決に繋がったりといったことはありますか?
田畑氏:今回は時間という要素が、基本的なゲームの進行を司っているので、あらゆる事に影響すします。そして物語のクライマックスへの向かい方において、時間の変化や朝、昼が来るという要素が活用されています。我々が意図しているのはプレーヤーの皆さんに、リアルな世界に限りなく近づけた世界観で、それでいて「FFXV」でしか体験できない驚きと感動を盛り込み、ストーリーやバトル、冒険を提供することです。
――今回のトレーラーにあったような基地でのステルスアクションは、いつも発動可能ですか、それとも特定の場所限定ですか?
田畑氏:特定の場所限定です。いくつかの基地を攻略するというシチュエーションがあって、その際にスニーキング要素があります。これは体験を制限するわけではなく、逆に、オープンワールドで自由に冒険しながら「FFXV」を楽しみつつ、それでいてPS4のテクノロジーでしか実現しないような、破壊して気持ちいい、アクションが楽しい要素も別にあったら楽しいだろうなと思って入れています。
――操作できるキャラクターはノクトだけですか? バトル時のリンクコマンドは、誰が操作するのですか?
田畑氏:プレーヤーが指示をし、そのキャラがコマンドを実行しているところをカメラが写しているというのが、さっきのストーリーです。プレーヤーがすべてのキャラを操作するより、主人公を操作しながら、仲間と共に戦った方がいいと考えてあのようなシステムにしています。その実現には仲間用の高度なAIやアニメーションシステムが必要なので、PS4ならではの要素のひとつと言えます。全キャラクターをプレイアブルにすること自体はPS3でもできた話なので、「FFXV」ではあえてそういうシステムを採用したと考えて下さい。
――魔法の環境との干渉について、ファイアを放ったら、どれぐらいまで広がるのか、またファイアの後に、ブリザドを撃ったらどうなりますか?
田畑氏:おもしろいことを考えますね(笑)。ファイアの延焼範囲はこの部屋(約100平米ぐらいの会議室)よりも広がっていきます。もちろん、処理能力には限界があるので描画負荷との兼ね合いになりますが、一面が火に包まれているというところまでは来ています。草原だとだいぶ広い範囲が火に包まれています。熱くて近づけず、モンスターも火を怖がって逃げていくというところは表現できています。
ブリザドは冷気の魔法なので、火に対して放つとどうなるのかという興味は僕も沸きました(笑)。私も正確なところはわからないので違うかもしれませんが、ファイアは火を付ける魔法なのに対して、ブリザドはその場の環境そのものを冷気に変化させる魔法として実装しています。ブリザドの環境下に兵士がおかれると、体は冷え、空気が薄くなって窒息していく、なのでファイアの火は消えていくのかなと思います(笑)。
――プログレスレポートでは小屋にファイアを撃っていたが、小屋の焼け跡は残ったままになるのですか?
田畑氏:そのままだと環境にとって優しくないので、不思議な星の力でもとに戻しています。ダスカでも、召喚獣を呼び出すと辺り一面黒焦げになっていたが、しばらく経つと星の力で浄化されていたがそれと同じです。重要なのは、つい魔法を使ってみたくなるとか、ここでブリザドを使ったらどうなるんだろうと、自分の思いつくまま、自由に遊んでみるということを実戦して貰うためにそういうシステムにしています。そのままだといずれ遊び場がなくなってしまうので、一定期間で戻して、好きに遊べるようにしています。
――魔法の仕組みについて、もう少し詳しく教えて欲しい。魔法の成長、ファイア、ファイガとか成長する仕組みはありますか。魔法は武器にセットするのか、それともキャラクターに装備するものなのですか?
田畑氏:前者は3月の情報公開以降、マス向けの情報を公開する。そこでシステムの紹介をするつもりです。ただ、そういうシステムはあります。ただ、魔法が成長するわけではなく、魔法の上位版は存在するということです。魔法の使い方は、ATRでも詳しく触れていますが、武器に装備するのではなく、プレーヤーの武器スロットに装備する形を取ります。
――「FFXIII」は3部作でしたが、「FFXV」もそうなりますか?
田畑氏:それは考えていません。1作しっかり完結させる。まずはそこから。「to be continued……」で終わることは絶対ないです。クリアがもったいないと思いながらクリアして感動して貰う、それが目標です。
――1日は何時間ですか? メインストーリーのイベントが発生する日時が過ぎたらどうなりますか?
田畑氏:まず、リアル時間のゲーム時間の1日はリンクしてません。また、ゲーム内の何日進行しようともメインストーリーには影響しないように作っています。なので好きなだけ冒険できますし、ストーリーも楽しめます。
――今日のステージイベントはアジア向けになっていたが、ゲームデザイン的にオリエンタル、アジア向けの要素を取り入れることはありますか? 過去のシリーズだと侍や忍者が登場しましたが、最近は西洋風の要素が多いように思います。
田畑氏:それを意識してゲーム要素を決めているということはありません。日本を含めてアジアで重視される“親と子”ということをテーマにすることで、一番深く楽しんで貰えるのではないかと思っています。「FFXV」は旅をするゲームですが、旅をする上で、キャンプやレストランで食事をする際に、色んな食べ物が登場します。そこではアジアの食文化をふんだんに取り入れている。たとえば、小籠包とか。あ、まだ確定してないね(笑)。でも、美味しいし、入れたいね、ちょっと考えます(笑)。
――2016年、同時発売ということだが、すでに中文ローカライズに入っているのですか?
田畑氏:まず同日発売かどうかは、各販売地域の状況によりますので、場合によっては数日ズレることもあるかもしれません。ローカライズの着手についてはイエスです。具体的にはヨーロッパの言語は、日本語から英語になおし、英語をヨーロッパ諸国の言語にするのですが、中文繁体字は日本語から直に翻訳するケースが多いので、今回はSCETさんのTaipeiオフィスにお願いする予定で、すでにワークフローも確立しています。アジアの中では、中国本土もターゲットにしていますが、まだ現時点では正式に展開するということは言えず、現在も協議中です。
――アジアでは9つのパートナーと「FFXV」を開発しているということですが、彼らからフィードバックはありますか?
田畑氏:あります。正確に説明すると、「FFXV」に関連するプロジェクトがあって、それも含めて9社とお付き合いしています。現地に適したゲーム体験は何かというフィードバックは随時いただいている。アジアの開発会社から一番感じるのは、日本の開発会社は、長いゲームの歴史があるので、いろんなノウハウを貯めている会社が多いです。その多くは日本独自のノウハウで、日本向けの開発ノウハウになっている。ベテランが多く揃っていて、緻密な物作りを特異とする会社が多いです。
一方、台湾などアジアの開発会社は、総じて若い、文化に対して柔軟、マルチカルチャーの考え方を持っている人が多いです。ひとつのものを研ぎ澄ますのが日本の強さなのに対してアジアはいろんなものを取り入れて作るのが得意という印象を持っています。実際は、アジアで「アンチャーテッド」の開発、「Call of Duty」の開発、そして「FFXV」の開発が行なわれていて、こんな経験のある日本人の開発者はいないので、それはアジアのスタジオの財産だと思います。
アジアの取り組みについてですが、台湾もそうですが、アジアの販売ランキングを見てると、オンラインマルチプレイが多いですよね。マルチプレイゲームはおもしろいし、僕も好きです。だけど「FFXV」で一番ユーザーに体験して貰える最高のものは何かというと、1人が遊ぶ、1人のために極上の体験を作っているというところ。しかもPS4じゃないと作ることができない最新の体験を提供したいと思っています。そこをひとりでも多くの人に知って貰いたいので、ぜひそこを書いて欲しいです。