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日本初パブリックビューイング! 「LoL」国際大会「IWCA」レポート
日本オールスターチームの戦いぶりは? 4日間の戦いを総括!
(2015/11/30 13:55)
11月26日から29日にかけ、オンラインゲーム「League of Legends(以下「LoL」)」の国際大会「International Wild Card All-Star(以下IWCA)」がオーストラリア・メルボルンで開催された。本大会には日本代表として国内トップリーグ「League of Legends Japan League」の最強選手で構成されたオールスターチームが出場し、同じく6つの国と地域から集まった世界の代表チームたちとハイレベルな戦いを繰り広げた。
このイベントは11月14日に行なわれるThe 2015 All-Star Eventへの出場権獲得を争う、予選会的な位置づけの大会だ。出場した各チームは日本、ブラジル、ラテンアメリカ、CIS(旧ソ独立国家共同体)、トルコ、東南アジア、オセアニアという内訳で、それぞれ「LoL」界隈では強豪とみなされていない国・地域のリーグ代表だ。強豪国がひしめき合う頂上決戦に参加するためには、まずこの中でチャンピオンになる必要がある。
日本代表チームを構成するのは、LoLの国内リーグ「League of Legends Japan League」に参戦中の4チームからの6名。トップレーン(TOP)はImmortals 7th heavenのEvi選手、ジャングル(JUNGLE)はDetonatioN Rabbit FiveのRainbrain選手、ミドルレーン(MID)はDetonatioN Forcus MeのCeros選手、アタックダメージキャリー(ADC)はOzone RPGのMeron選手(怪我で欠場)、サポートは同じくOzone RPGのD4ra選手。そしてリザーブとしてmmortals 7th heavenのMueki選手(Meron選手にかわり、ADCを担当)。LJLを代表する日本チームとしては、この大会を突破し、世界最強国が集まるAll-Star Eventへ出場することが最大の目標だ。
そんな代表チームをを応援しようと、大会3日目の11月28日、日本で初めてのパブリックビューイングイベントが秋葉原で開催。Riot Gamesの日本法人であるライアットゲームズが主催し、「LoL」のプロチームDetonatioN Forcus Meののオフィシャルスポンサーとなっているロジクールが協賛して実現したパブリックビューイングには100人を超すファンが来場。、手狭な会場にひしめきあいつつ、大型モニターに映し出される選手たちの戦いぶりを熱心に見守った。本稿ではこの大会3日目、パブリックビューイングの模様から本大会の模様をお伝えしていこう。
メジャースポーツと変わらない!パブリックビューイングで楽しむe-Sports
IWCA会期3日目の11月28日、ライアットゲームズの粋なはからいで実現したパブリックビューイングは、サッカーや野球などのメジャースポーツにおけるものと同様に、試合観戦の楽しさをひときわ際立たせてくれた。
会場となったのは秋葉原・ラジオ会館にある多目的シアター「ビリビリ秋葉」。最大収容人数100名強ほどの小さな会場だが、e-Sportsの海外大会のパブリックビューイングというのは日本初の試みだ。午前10時の開場まもなく、メルボルン発の試合模様を伝える大型スクリーンの前は100人を越えるファンの姿で埋め尽くされた。
このときの日本代表は、大会初日からの2日間で4試合を消化しており、戦績は2勝2敗。総当りリーグの上位2チームが進出できる決勝戦には、この日行なわれる残り2試合を全勝すれば到達できる、という状況だ。そうして臨んだラテンアメリカ(LATAM)チームとの対戦が、この日最大のハイライトであったことは間違いない。
パブリックビューイングの会場では日本語による実況解説もリアルタイムで行なわれ、ごったがえす人々の熱気もあって、さながら大会会場そのもののようだ。選手たちは遠くメルボルンの会場で戦っているが、そのプレーぶりを全員が見守り、素晴らしいプレイが出れば大きな歓声と拍手、ピンチを招くような事態にはどよめきやため息がパブリックビューイングの会場を埋め尽くす。サッカー等のメジャースポーツでも、国際大会の際には各地でパブリックビューイングイベントが開催されることがよくあるが、それと全く同じ風景が「LoL」でも展開していたというわけだ。
特に「LoL」は情報量が多く、また、1プレイごとに状況が大きく変わっていくハイペースなゲームだ。各プレイの意図や効果のほどを友人同士で話しあったり、あるいは実況解説から勝負のポイントを掴んだりと、ひとりで見るのとは試合の理解度も全く違ってくる。それだけ試合にのめり込めば、チームの勝敗を決めるようなビッグプレイなどにもより強い興奮でもって見守れる。これこそ同じスポーツが好きな同士で集まり、一緒に試合を見ることで得られる楽しさ、そのものだ。
各試合の合間には、ライアットゲームズや協賛のロジクールから提供された「LoL」グッズやゲーミングデバイスを獲得できるじゃんけん大会も開催され、「LoL」ファンなら2度おいしいイベントになっていた。皆が見守った日本代表の試合そのものは残念な結果に終わったものの(後述)、e-Sportsを皆で一緒に見守る楽しさを体感できたのは大きな収穫だ。
アメリカや欧州ではスポーツバーならぬe-Sportsバーという業態が既に存在するというが、国内でも、このパブリックビューイングの試みを皮切りに、e-Sportsを見る楽しみを増幅させてくれるようなサービスや施設が出てくることになれば非常におもしろそうだ。
辛くも敗退した日本代表。1v1トーナメントではCeros選手ベスト8。世界の壁はまだまだ厚い
さて、試合の模様に目を移そう。日本代表として出場したLJLオールスターチームが決勝に残れるかどうか、その命運を分けたのは3日目の第1試合、ラテンアメリカチームとの一戦だった。
前述のとおり、それまでの戦績を2勝2敗としていた日本代表は、この試合と、続くCIS代表との試合の両方に勝利することが決勝進出の条件となっていた。絶対に落とすことができないこの試合、序盤はトップレーンで初キルを獲得するなど順調に進むように見えた。実際、中盤までの20分はキル数でリードした状態で推移した。
しかし、キルは取りつつも、試合全体を通じて獲得ゴールドが微妙に追いつけない。対人では互角かそれ以上でも、ファーミングの効率で遅れを取っているという格好だ。特にそれが現れていたのは両チームのジャングラー。ラテンアメリカ側のジャングラーがキャラクターレベルにして1~2のリードを維持したまま、ゲームが続く。
ジャングラーの育ち加減に差が出ることで影響が出たのがレーンの維持だ。ラテンアメリカは早々に各レーンのタワー破壊に成功し、ジャングルでの行動可能範囲を広げる。そうしつつ、日本代表が仕掛けようとする集団戦を巧妙に避けながら、ジャングルの支配を活かしてドラゴンキルを達成。それまで日本代表はキル数でリードしていたものの、このあたりから差が逆転しはじめた。
日本代表の仕掛けをいなしつつ、集団戦を受けて立っても致命傷は避けるという立ち回りのラテンアメリカ。あきらかにファーミングを優先しており、ドラゴンに続き、バロンもキル。ここで両チームのレベル差が平均2程にまで開き、ドラゴンとバロンによるバフの効果もあって集団戦の趨勢が完全に逆転。積極攻勢に出たラテンアメリカに対し、日本代表はもう止める術もなく、あえなく敗北を喫してしまった。両チームのキル数は15対7と、対人戦の数字が非常に低調(キル数の多い試合ではこの倍以上になる)だったのは、ラテンアメリカが意図的に集団戦を避けたためだろう。日本代表はその狙いにはまり、ファーミングの差で敗北する流れとなってしまったようだ。無念。
こうして決勝進出の目が途絶えた日本代表は、続くCISとの試合ではさらに差をつけられて敗北している。敗因として最も大きかったのは、ミドルレーンを担当するエースのCeros選手が序盤早々にキルを取られ、ミドルレーンのタワーを破壊されてしまったことだろう。その他の点では実力伯仲に見えた両チームだったが、この序盤の差がジワジワと傷口を広げる形でレベル差、装備差がつき、最後は一方的なCISの攻勢にて試合終了。しかしCeros選手を責めることはできない。マッチアップしたCISのミドルレーン担当のKira選手は、今大会出場選手の中で最強の、1対1戦闘の猛者だったのだ。
本大会は総当り制のグループリーグに加えて、平行して開催される1v1トーナメントの結果によってチームポイントを加算、合計ポイントが最も大きいチームがAll-Star Event出場権獲得というフォーマットをとっていた。確実な勝ち抜けを目指すためにはここでも優勝することが必要になってくるのだが、日本のエースであるCeros選手は序盤のラウンドでブラジルのLOOP選手を破り、ベスト8に進出。
ベスト4をかけて迎えたラウンド4、相手となったのは東南アジアチームのOptimus選手だ。相手に戦法を研究させないため試合ごとに使用キャラを変えていくというCeros選手、この試合では防御に優れたキャラで確実なラストヒットをとりつつ、攻撃力特化タイプのキャラを選んだOptimus選手のファーミングを的確に邪魔していく戦法でリード。Optimus選手は攻撃力の高い大技を仕掛けるが、これを小刻みな移動操作で巧みに避けて確実に反撃していくCeros選手だ。
中盤以降にさしかかってレベル差は1以上に開き、Ceros選手の勝利は確実かと思われた終盤。うっかり深追いしたか、Ceros選手はOptimus選手の高ダメージスキルをモロに食らってしまう。すぐさま防御スキルを発動して離脱を試みるも、あと1歩というところで最後のヒットポイントを削りきられてしまった。まさかの敗北。いくらリードしていようとも一瞬のミスが命運を分けてしまう、1対1の面白さと怖さがよく現われた試合だった。
そしてこの1v1トーナメントで圧倒的な強さを見せて優勝したのが、日本代表対CISの試合でCeros選手をミドルレーンで打ちとったKira選手である。Kira選手の所属するCISは決勝戦に進出し、同じく決勝に進出したトルコ代表チームと対戦。CISは4連戦を1勝3敗と負け越してしまったが、1v1トーナメントにおけるKira選手の優勝ポイントが最終的な差となり、CISが本大会のチャンピオンとなった。
決勝戦ではトルコ代表チームが圧倒的な強さを見せ、第2戦ではペンタキル(一人で相手チーム5人全員を倒す)まで見せるという差のつきようだっただけに、それを食らったCISが(1v1トーナメントのポイント差によって)勝ち抜けたというのは少々腑に落ちない所。実際、このあたりは公式フォーラムでも多数の物言いが付いているようで、今後の大会フォーマットに影響してくるかもしれない。
いずれにしても、決勝に進出したトルコ、CISといったチームは、傍目からみても我らが日本代表に比べてひとまわり優秀なタレントと、チーム力を持っているように見えた。この差を縮め、覆すためには、わずかなスキを捉えてトドメを刺す能力、すんでのところで攻撃を避け、わずかなヒットポイントでもギリギリで生き残る技術などの洗練が必要かと思える。このあたりをさらに磨くためには、大会と同じような低レーテンシーの環境でプレイすることが絶対条件だろう。そのためにも、ライアットゲームズによる「LoL」日本サーバーの開設が早期に実現されることを希望したい。