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糸井重里氏降臨! 「MOTHERとほぼ日と糸井重里。」インタビュー

故・岩田聡氏への思いから“絶対ありえない「MOTHER4」”まで色々聞いてきた

11月21日〜12月6日 開催

場所:ヴィレッジヴァンガード下北沢店

ヴィレッジヴァンガード下北沢店の端から端、さらに外に飛び出すほど行列ができていた

 ほぼ日手帳2016「MOTHER2」シリーズ発売を記念したイベント「MOTHERとほぼ日と糸井重里。」が、ヴィレッジヴァンガード下北沢店で11月21日より開催されている。期間は12月6日まで。

 「MOTHERとほぼ日と糸井重里。」は、9月1日発売の「ほぼ日手帳2016」において、「MOTHER2 ギーグの逆襲」とコラボレーションした手帳カバーが発売されたことを記念して開催されたショップイベント。

 イベントではほぼ日手帳2016の「MOTHER2」シリーズのカバーとグッズが販売されているほか、昨年発売され、オンラインストア「ほぼ日ストア」では販売が終了しているカバー「Onett」がイベント限定で再販される。

 開催初日となった11月21日は開店直後より長蛇の列ができていて、販売コーナーに入れるまで、10時30分の時点で1時間待ちとなっているほどの人気ぶりで、どせいさんのケースとポーチは即売り切れ、「Onett」カバーも間もなく売り切れるなど、改めて「MOTHER」人気を実感させた。

 そして現場には、シリーズの生みの親である糸井重里氏が訪れ、メディア向けのインタビューにも応えてくれた。以下では、こちらのインタビューの模様をお伝えする。

懐かしきポスターとスターマン
記念撮影スポットもある。掛け声は「チーズ サンドイッチ!」
撮影時に持てるどせいさん、スターマン、そして黒電話
会場ではスタンプラリーも開催している

「MOTHER」は「冒険の中で1番使えるツール」

糸井重里氏降臨!

――イベントですが、すごい行列ですね!

糸井重里氏: こんな狭いところでやれば行列になるよね(笑)。

――さっそく売り切れも出ていて、すごい反響ですよね。

糸井氏: 最初は遠慮がちに、「MOTHER」で手帳のカバーを作ったら喜ぶ人がいるかもしれないし、ショウウインドーの中に混ざってたら面白いよね、と思っただけなんです。

 それが思った以上に反響を得て。じゃあ作らないとなと。言い出しっぺですが、後追いなんです。

――では次の展開も考えていますか?

糸井氏: 今は何も考えていません。ただ、前のがまたほしいという人もいるし、次なんですかとも聞かれるし、考えますよね。不思議だねえ。

――「MOTHER」がこんなにも人気が長く続く要因はなんでしょうか?

糸井氏: 今の暮らしや今の場所と地続きだからじゃないでしょうか。「ドラゴンクエスト」だと「早くご飯食べて!」と言われたら目が覚めてしまいますが、「MOTHER」だとそれがない。普段の生活と地続きだから、良かったと思いますね。

――第1作の「MOTHER」が発売されて26年が経ちました。ご感想はいかがでしょう。

糸井氏: 感慨だらけです。僕が忘れてもお客さんが忘れないですから。だから正直、「MOTHER」は僕のものだと思っていません。何でもそうなんですが、プレイした人たちが生きていることがすごい。その人たちのものでもありますからね。

 この間も500人くらいでホテルを借りきって「MOTHER」パーティーをやった方が取材に来て。24時間バンド演奏しまくって、「MOTHER」の演劇を観客参加型でやりながら、それにホテルの人たちも協力してパーティーをしたそうです。その人たちの「MOTHER」の方が、僕よりも濃いわけですよね。僕はそこに付いていくしかないですから。そういう種を蒔いたという意味では、良かったと思います。

――多くのキャリアがある中で、「MOTHER」シリーズはどのような位置づけでしょうか?

糸井重里氏: 僕の冒険の中で1番使えるツールを作ったと思います。「MOTHER」があるから人と会えるということもあるし、「MOTHER」があるからどういう人かわかってもらえることもあるし、「MOTHER」が好きな人なら「これが好きな人なんだ」と思いながら会ったり。

 他の仕事は代理人として仕事することが多かったですから、「MOTHER」が1番使い物になる道具です。作ってよかったな、と思いますね。

 だって外国の人と会うとなったら、「MOTHER」と言ったらラクですよ。この間もスタンフォード大学の先生と話をしていたら、「もちろんやってる」と。自分の本のサインなのに「良いゲームを作ってくれてありがとう」と書いてくれました(笑)。

――英訳版も、日本語の細かいニュアンスも残されているということなんでしょうかね。

糸井氏: そういうことですよね。

――ちなみに、英語版については関わってらっしゃるんでしょうか?

糸井氏: 間に立ってくれている人が色々教えてくれて、翻訳した本人も会ってますよ。ここが大変だとか、ここはこう考えてこうしたとか話して。

どせいさんのamiibo、iPhoneケースは登場する?

――個人的なことで恐縮ですが……妻がどせいさんの大ファンなので、いくつか質問させてください。どせいさんに何かモデルはあるのでしょうか?

糸井氏: いい奥さんをお持ちになられましたね(笑)。モデルはありませんが、幼児や子供ということです。無垢であって、でも天才。マンガの「情熱のペンギンごはん」のペンギンもそういう存在で、無垢で凶暴で、すごい知性を持っている。そういうのが好きなんですね。どせいさんは、そこから凶暴を抜いたような感じです。

――どせいさんファンとしては、どせいさんのamiiboやiPhoneケースが特に欲しいそうです。発売される可能性はあるのでしょうか?

糸井氏: どせいさんのamiibo、あったら良さそうですね。実は、任天堂に何かせっついたことはないんです。岩田(聡)さんが友達だからこそ言わなかったというのもあるんですが、毎回、向こうで思いついたら「いいですか」と言われるような感じで。可能性はあるのではないでしょうか。

 iPhoneケースは、懲りてるからなあ。あれ、すぐ形変わっちゃうから(笑)。作る側としたら、「何だよ」となる。

――どせいさんについては最後の質問です。どせいさん語を話すコツを教えてください。

糸井氏: 降りて来るのを待つ(笑)。優しさだとか、あの社会に対してあまり参加していない感じを心得えて、「できるます」などと言う。あとはあの「文字」を身に付けることでしょうか。

――シリーズの中で、特に印象深いのが「MOTHER2」のラストバトルでの「いのる」を使った演出です。この演出の狙いと背景はなんでしょうか?

糸井氏: 数字の分量でどちらが勝ちというのがゲーム上の絶対ですから、大きな数字を乗り越えるようなことがしたかったのです。「いのる」は、どちらが大きいということではないですから。これは、強くない人たちの夢でもありますよね。同時に、逃げ場でもありますが。

――バトル中にフラッシュバックのように場面が切り替わる演出も驚きました。

糸井氏: あれは妄想みたいなものですが、映画だったらやりかねないものですよね。

 あまり深く考えたわけではなくて、わりと素直に作ってああなりました。違うことをやりたかったというよりは、違うことをやりたくてはじめたものだから。

 主人公が「ただの少年」というのがすでに変ですから。いわゆる貴種流離譚というものではないわけで、スタートから変なものを作ろうとしたのです。だから、ここまで長持ちしたのかもしれないですね。

――「MOTHER」シリーズの中で、1番好きなキャラクターは何でしょうか? ちなみに私は「あのあれ」なんですが……。

糸井氏: そんな細かいところ突っ込んじゃダメだよ(笑)。僕はやっぱりポーキーです。ポーキーは1番情報量が多くて、あそこに込められたものの分量はネスより多いんですから。ネスの情報はプレーヤーが乗せるものですしね。

 ポーキーは「ぜったいあんぜんカプセル」の中に入って、絶対出てこないはずなんだけど、もし「出たらどうなるんだろう」、そもそも「何で出てくるんだろう」みたいなことを今考えても面白いですよ。

「MOTHER4」、制作の可能性は……?

――「MOTHER3」の発売当時、強く否定してらっしゃいましたが、「MOTHER4」についてはいかがでしょうか?

糸井氏: 息を止めて走り切る競技には出たいと思ってはいますが、それにしても「MOTHER4」はありえないことです。アメリカ系の人はずっと「『4』が作られつつある」と言ってますが、嘘に決まっているじゃないかと(笑)。もう、どれだけ大変かと。端々だけ見せて作られているように見せかけるのは、散々「MOTHER2」でやりましたけど(笑)。「3」でもね。

――「3」から9年経って、今はどうお考えでしょう?

糸井氏: 愛人との間に知らぬ間に出来た子供がいたとして、そいつがヒョイッと現われて、利発そうでイケメンで、「お父さん、こういうのがあるんだ」とやってきて、「急にお父さんなんて呼ぶなよ」と言いながらそれ面白いじゃないかとなって、何か心臓が激しく動き始めたら、それはやろうかというようなことはあるかも知れない。

――最近はアプリゲームもありますが、それはいかがですか。

糸井氏: やはりそれは、愛人との間の子供がヒョイッと現われて、すごくイケメンで、持ってきた企画書が「いいじゃない!」となったら……(笑)。

 まず愛人がいないんだけど(笑)。オレ子供作れないよ!

――わかったようなわからないような……。

糸井氏: 大丈夫。心配すんな(笑)。

――「3」まで作って、「4」はありえないと言い切るのには何か理由があるのでしょうか?

糸井氏: ああいうことをやる遊びは終わった、ということですね。これからやろうとすると、捻り出すことになるんです。それは、ケツの穴に悪い(笑)。

 「3」の時は、できると思ったからできたのですが、それにしてもよくあれだけできた、なんとかなったと思ったので、もう「4」は絶対ありえない。

 大スターの歌手で、10枚アルバムを出していたら、4枚目からはあまり良い曲作っていないですよね。売れはしますけど、みんなコンサートで聞きたいのは最初の3枚の曲だよ、みたいな。

 ゲームが仕事じゃないというのが良かったです。仕事だったら、「4」も「5」も作ったと思います。たまにはこういうのがいた方がいいんですよ(笑)。

岩田さんの話を、もう1回今年中に

お客さんのリクエストにお茶目に応える糸井氏

――聞きづらいことではあるのですが、今年7月に亡くなった岩田さんについて、今の心境はいかがでしょうか。

糸井氏: 先程も、「この場合、岩田さんだったらこう言うね」とスタッフと話していました。あらゆる場所に岩田さんが欲しいよねという話で、今の野球界にも岩田さんが必要だねと(笑)。僕が岩田さんの口真似をするんです。

 もうすぐ岩田さんの誕生日なんですが、みんなと共有できる岩田さんの話を、もう1回今年中にやっておかないととは思っています。そうしないと、みなさんのあれだけの哀悼の気持ちが宙に浮いている気がするので。

 岩田さんにちょっとこちら側に寄ってもらって、みんなと話し合うような日があってもいいのかなと。だって、亡くなったのまだ今年だよ? いまだにとんでもなく悲しいです。家族でもこういうことはないですね。

――ここ最近で、何か気になっているゲームや、ゲームクリエイターはいますか?

糸井氏: 最近ゲームやらないからなあ。この間「スーパーマリオメーカー」は触りました。「スーパーマリオメーカー」や「ピクミン」など、宮本(茂)さんが何をしたいのかは横目で見ていたいというか、気にしてはいます。

 あとスマートフォンのアプリ系は、プレイしてもすぐ止めますね。

――ゲームから離れてしまった原因は何でしょうか?

糸井氏: 難しくて本気にならないとできないものと、ずっと「テトリス」のバリエーションでしかないんじゃないのというもの。この2種類は僕にはいらないんですよね。

 掛け合いがやりたいんですよ。面白いものが来て、それならこちらも面白いものを返そう、みたいなコミュニケーションですよね。そういうことをさせてくれるものがない。

 「ピクミン」は最初はいいんですが、だんだん囲碁みたいになってきて。「これオレ他のことやってないといけないんだよね」となって脱落しますし、スマホは「何でやらなきゃならないの」となるし。

――今現在進行中のプロジェクトで、何かゲームに近しいものありますか?

糸井氏: 考えの中に、ゲームをやっていた人が面白がるかもね、というのは常に意識にあります。僕自身もやりたいし、楽しみたいですから。きっとあるはずの「面白いゲーム」は誰かに作ってもらうとして、デジタルな情報と戯れるということについては、止めてないですよ。

――具体的にはいかがでしょう?

糸井氏: 1つは、イヌやネコのアプリを作っています。αバージョンくらいまでできていますが、これはイヌやネコの写真をみんなが載せていくアプリで、要はFacebookのイヌネコ版ですね。

 そこでは野良の情報も載せるようにして、最終的には世界中のイヌネコの情報を載せようと。それで、迷子が出たらその地域の人が探してくれるような。このアプリは、どこかでゲームに隣接するところがあるとは思います。

――それでは最後に、これからイベントに訪れる方に一言お願いします。

糸井氏: ご苦労様。

――ありがとうございました!

(安田俊亮)