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【必見! エンタメ特報】映画「ピクセル」 1980年代アーケードブームへの賛歌

ゲーマーが「パックマン」らとリアルファイト。迫力の映像は必見!

9月12日 公開予定

 「パックマン」や「ドンキーコング」、「ギャラガ」といった1980年代を代表するゲームキャラクターが「侵略者」となって地球を襲う……。そんな飛躍した設定でゲームファンの心をくすぐる映画「ピクセル」が、9月12日に日本公開される。

 本作のベースは、2010年に公開された短編映像「PIXELS by Patrick JEAN」だ。この2分半ほどの映像ではニューヨークの街をスペースインベーダーやパックマン、テトリミノが襲い、地球をブロック状に変えていく様子が描かれていく。このコンセプト部分を膨らまして視覚効果を豪華にし、娯楽映画として仕立てあげたのが今回完成した映画「ピクセル」となる。

【PIXELS by Patrick JEAN】
【映画「ピクセル」予告編】

ユーモラスかつ楽しいイマジネーションに溢れたゲーム愛映画!

3D化したゲームキャラクターたちが地球を襲う!
こちらが地球を救う「アーケーダーズ」の面々

 事の発端は、1982年に遡る。NASAは地球外文明に向けた「友好のメッセージ」として、当時の数々のカルチャーを映像として宇宙へと打ち上げた。その中にはブームの全盛を迎えていたアーケードゲームの映像も含まれていたのだが、それから33年後、宇宙文明はこの映像を「宣戦布告」のメッセージと受け取ってしまう。

 宇宙に向けて“スペースインベーダー(宇宙侵略者)”を倒す映像を配信すれば、「侵略してきても倒しちゃうから」みたいな挑発メッセージに受け止められるのは確かに仕方ない。とにかく宇宙文明はその「挑発」に乗り、あえて映像にあったゲームキャラクターを使って地球の侵略、という名の勝負を開始する。

 彼らは攻撃したものを「キューブ化する」という特徴を持っており、ひとたび襲われれば人や建物はボロボロと崩壊していく。キューブはぼおっとした光を放っており、崩壊の様子は怖くもあり美しくもある不思議な表現となっている。

 さて、そんなゲームキャラクターに襲われた地球はてんやわんやである。圧倒的な攻撃の前にアメリカ空軍ですら対抗できないのだが、侵略者たちは必ずゲームのルールに則って攻撃してくることが判明する。そこで大統領は(たまたま友達の)かつてアーケードゲームで名を馳せたサム・ブレナー(アダム・サンドラー)に声をかけ、対抗チーム「アーケーダーズ」を結成させる。映画は、この「アーケーダーズ」とゲームたちの“リアルファイト”を描いていくこととなる。

 本作最大の見所はゲームキャラクターたちがゲーム画面を飛び出し、現実世界で動き出す描写で、本作は8bitゲームキャラクターをそのまま3D化するという表現に挑戦している。本作ではキャラクターたちを独特に光り輝かせており、キャラクターそれぞれを「未知の技術による兵器プログラム」といった感じに落とし込んでいるのは興味深い。アルカノイドがタージマハルを「ブロックくずし」したり、ワシントンDCの上に巨大ギャラガが出現したり、起きていることは凄惨なのだが、どこかユーモラスで、楽しいイマジネーションに溢れている。

 例えば、「センチピード」は直線の動きからクイッと直角に曲がる動きが特徴だが、3Dになっても2D同様のスピード感で迫ってくるし、胴体を銃撃するとブチッと2匹に分裂するなど細かい描写にこだわりが感じられる。3Dになることで2Dとは違う味わいも出てくるのが面白く、映像表現として興味深く視聴できる。

今回制作されたポスター。どれもとても良い仕上がり

 登場作品はメインどころだけでも「パックマン」、「ギャラガ」、「スペースインベーダー」、「ドンキーコング」とあり、ほかにも「フロッガー」、「Qバート」、「テトリス」などなど、20種類上のゲームからキャラクターが登場する。ディズニー映画「シュガー・ラッシュ」でもゲームキャラクターの豪華共演が話題の1つとなっていたが、本作はゲームの動きそのまま、実写として登場するという点でまた雰囲気が異なる。どの場面で誰が登場するのか、自信のある方は追いかけてみても面白いだろう。

 これらのゲームキャラクターについては動きも忠実に再現しており、パックマンの口の開閉の頻度、移動スピードは厳密に模倣し、ドンキーコングの動きは「スプライト」のテイストを大事にしているという。ちなみに予告編でも印象的なドンキーコングとの対決では、高さ21メートルの構造物を作り上げて、「ドンキーコング」の足場を再現しての撮影が実施されている。ここでは、「ドンキーコング」の世界に人間が入り込んでいるようなシーン作りとなっていて、他の場面とは印象も違うので、その点でも注目しておきたい。

参考:作品登場タイトル一覧

タイトル旧メーカー現メーカー
Asteroid-Atari
Breakout-Atari
Centipede-Atari
Missile Command-Atari
Outlaw-Atari
Canyon Bomber-Atari
PaperBoy-Atari
Smurf-Atari
PAC-MANナムコバンダイナムコエンターテインメント
Galagaナムコバンダイナムコエンターテインメント
Dig Dugナムコバンダイナムコエンターテインメント
Donkey Kong-任天堂
Duck Hunt-任天堂
Space Invaders-タイトー
Arkanoid-タイトー
Frogger-KONAMI
DefenderWiliamsWarner Bros. Interactive
JoustWiliamsWarner Bros. Interactive
Robotron 2084WiliamsWarner Bros. Interactive
Wizard of WorMidwayWarner Bros. Interactive
Q-bertGottliebSony Computer Entertainment
BurgerTimeData EastG-Mode
Tetris-The Tetris Company
立場逆転パックマン。パックマンの生みの親である岩谷徹氏(演じるのはデニス秋山氏)もこのシーンの前後に登場
威厳たっぷりのドンキーコング。アニメーションにこだわったという動きに注目

右にいるのがQバート。良い奴として登場。なおこちら、左に少年がプレイする「The Last of Us」に「おじさん付いていけない……」という場面
岩谷徹氏本人も、ちらっと登場している
最強女性テニスプレーヤー、セリーナ・ウィリアムズがなぜかキャスティング。なぜ……?

 なおストーリーについてはあってないようなもので、あくまでゲームキャラクターが地球を襲い、そのゲームをどのように「攻略」するか、がメインとなる。特に「パックマン」との対決ではアーケーダーズは車を走らせてゴースト側にまわるので、この状況はなかなか珍しいし、カーアクションとしても迫力ある映像になっている。

 ただ気になるのは、ゲーム対決以外の描写も多分に含んでいることで、この部分は基本的にアダム・サンドラーがコメディとしてのストーリーを引っ張っていく。アダム・サンドラーといえば、「アダルト・ボーイズ/青春白書」など精神年齢の低い大人が活躍するB級コメディをホームポジションとする俳優で、その良くも悪くもピュアな雰囲気が感動的な作品を生み出したりするのだが、今作に限って言えば、アダム・サンドラー時間が長すぎたように思う。

 今作の役どころは元凄腕ゲーマーの冴えないオヤジとなっており、アダム・サンドラーが好んで演じる人物に近いほか、大統領役のケヴィン・ジェームズはサンドラーと「アダルト・ボーイズ/青春白書」などで多数共演している馴染みの俳優だ。

 そのためか「ダメな大人たちのお遊び」路線がところどころで顔をのぞかせていて、笑えるギャグもあるのだが、その路線が本作良い作用を引き起こしているかは疑問が残る。主要テーマと関係ない恋愛要素もあり、これが蛇足のように感じられて(「レディ・リサ」との恋愛は夢があって良い!)、締りのない印象も部分的にだが受けてしまった。本作での主役はあくまでゲームキャラクターであるので、もっと激しくゲームキャラクターで遊んでも良かったように思う。

 ほかにも、いくらゲームが上手くても、自分の身体を使った立体版がいきなり上手いとは思えない、ゲーマー仲間の幼なじみが大統領になっているという設定、ゲーム上のチートはそれほど簡単にできるものではないなど、色々無理があるのだが、そこは気にしても仕方がない。

 本作ではゲームに関する細かい小ネタが随所に挟まれるので、ゲームの知識があるほど楽しめる作品だ。特に「センチピード」、かわいさをふりまく「Qバート」あたりは知らない場合、予習しておいた方が良いだろう。本作は1980年代にアメリカで起こったアーケードゲームブームへの賛歌にもなっているので、ゲームファンはぜひ押さえておきたい1作だ。

キャラクターの表現だけでなく、街が崩壊していく様子も不思議なビジュアル。肩の力を抜いて楽しみたい娯楽作品だ

(安田俊亮)