ニュース
「FFXIVファンフェス」開発パネル Part2 鈴木健夫氏が語る“忍者ができるまで”
開発過程の貴重な映像を交えながら、新ジョブの始まりから実装までを紹介
(2014/12/21 21:08)
「ファイナルファンタジーXIV ファンフェスティバル 2014 東京」イベント2日目も、「第19回プロデューサーレターLIVE」をはじめ、様々なステージイベントが実施された。本稿では、「開発パネル Part2」と、「エオルゼア横断アルテマクイズ」の模様をお届けしたい。
「開発パネル Part2」のゲストはリードデザイナーの鈴木健夫氏と、アシスタントディレクターの高井浩氏。両名ともスクウェア時代からタイトルの開発に携わっており、熟練のコアメンバーだ。司会進行役はコミュニティチームの“もっちー”こと望月一善氏。
今回のテーマは、パッチ2.4の目玉コンテンツとして導入された新ジョブ「忍者」について。忍者が吉田氏から発注されてどのような工程を経てゲームに実装されるのか。アートパートの一連の作業が公開された。鈴木氏が開発資料を交えながら内容を説明しながら、高井氏が随時解説を加えるというスタイルで進められた。
いきなり驚かせてくれたのは、その制作開始時期だ。忍者の開発スタート時期はなんと2013年7月、まだ新生前で、βテストを行なっていた時期だ。吉田氏からまだ新生していないにも関わらず、新クラス/新ジョブをパッチで足したいという話が出て、アートチームではそれに対応するためにまずはラフ作成からスタートした。
高井氏によると、今回の忍者のようなキャラクターに限らず、新規コンテンツを制作する場合はイメージから入ることが多いということで、忍者AF、レリック、PvP装備のデザインから着手したという。ここで鈴木氏は、当時作成された忍者AFのラフスケッチを公開。いずれも実装されたものから大きく外れたデザインはなかったが、男女とも露出が高かったり、背に日本刀を背負っていたり、武器が手裏剣だったりなど、様々なバリエーションが存在していた。
高井氏によると、これらのイラストが日の目を見て良かったと笑いを取りながら、「新生FFXIV」はアートの数が半端なく多く、特にAFのような重要な装備は沢山書くためアートチームの負担が大きいという。
アートが決まった後はレギュレーションを決めていく。レギュレーションとは、ジョブの設定のことで、持った武器が体に刺さったりしないように武器は何なのか、どのように走るのかを決める。それによって武器や装備を含めたキャラクターの限界点が確定する。その上で、アート班には、その限界点を示した上で、デザインを作って行って貰う。
高井氏によると、後ろから見ていると、何の装備かよくわからない装備で動作チェックをしていることが多いそうで、実は地道な作業が大半を占める。「こういうアイテムが欲しい」という何気ない要望にイラっとしているのが、彼らデザイナーであり、簡単な話ではないようだ。
レギュレーション確定後は、基本動作を付けていく。ここでプロトタイプの動画が疲労されたが、ひとまず作って見て動きのイメージを固めていく。この路線で行けるだろうと目算が付いたところで、それに合わせて武器を量産していく体制に入る。ここまでで2013年10月ぐらい。約3カ月ぐらいで大筋は確定していたことになる。
その後は、バトル班やシナリオ班などと他の部門と協力しながらコンテンツとして煮詰めていくフェイズに入る。高井氏によると、アクションなどはバトル班が作って、その指示を受けて対応する形になるが、実際にはバトル班でネタが固まるのは時間が掛かり、それを待っていると物理的に間に合わなくなるので、アート班で先行して動けるものはネタレベルでもどんどん進めていくのだという。
アート班では忍者だから忍術だろうとか、分身したり、手裏剣やまきびしを使ったりするのだろうと予測を立てて準備を進めていったという。この過程で、完全にボツになったネタとしては「兵糧丸」があるという。兵糧丸は、現在の十字を切るモーションの代わりとして準備されていたリキャストをリセットさせるアクションで、実際に作って見たところ、非常に地味で、シャクっとリンゴをかじっているようにしか見えなかったためボツにしたという。
他部署との調整を経たあと、だいたい道筋が見えてきたら、本格的な制作に入るために、MC(モーションキャプチャー)の収録に入る。スクエニでは歩いたりする程度なら社員が行なうこともあるというが、忍者のような軽業が主体のアクションはプロのアクターに依頼する。ちなみに鈴木氏はアニメーター時代、「バウンサー」と「FFXII」でモーションキャプチャーを自らが行なった経験があるようだ。収録したデータは、モーション班に渡され、実際のゲームのモーションに落としていく。
忍者でもっとも苦労したモーションは、意外にも「口寄せの術」の失敗モーション。アート班で最初に考えたのは、ドリフのようにたらいが落ちてくるというネタで、これはさすがにふざけすぎだろうということで、次に当時、ハウジングで畑を実装していた時期で、ちょうど畑でじょうろを使うモーションなども準備していたということで、じょうろを出そうということになったという。
最終的に企画チームから「FF」ならうさぎだろうということでミシディアうさぎで落ち着いたようだ。ちなみにキャラクターの頭部に表示されるこのウサギは、体が傾いても、ウサギは傾かないように調整されているなど「ミニオン同盟」的なこだわりの実装がなされているようだ。
そしてもうひとつは「終撃」。敵の頭部に飛び移りとどめを刺すという、いかにも忍者らしい攻撃で、E3での発表時も話題になったアクションだ。そもそも論として、頭に飛び移るためには、モンスターに“頭の上”というパラメータを設定しなければならず、このアクションのために全モンスターに新たなパラメーターを設定していった。
高井氏は吐き捨てるように「終撃は良い想い出がない」とつぶやいたあとその理由を説明してくれた。終撃は現場のアートスタッフが盛り上がり、初期仕様では攻撃時に脳髄をまき散らしていたという。これはさすがにCEROのレーティングに抵触するということで、最終的に修正したという。
そして2014年6月にE3での発表を迎える。E3では双剣士と忍者のカッコイイトレーラーが公開され、パッチでの新クラス/新ジョブ追加に沸いたタイミングだ。このトレーラーを作成した高井氏によると、まだクラスをどうするかすら決まっておらず、パブリシティ用の素材作成にも苦労したという。
この話を受けて鈴木氏は、昨日の「蒼天のイシュガルド」の発表についても、吉田氏の依頼を受けて、アート班のスタッフが機工城アレキサンダーを色々撮っていたというが、実はまだ作り始めたばかりで、現場は常にドキドキしているという。高井氏は、アートに関して一見できている様に見えて、ほとんどできていないことが多く、リソースをかき集めてそれらしい素材を作るのが自分の仕事だということだ。
この間、同時平行して、クラス/ジョブの設定、具体的には忍者のアジトや、双剣士ギルドなど、背景周りを肉付けしていく。クラス/ジョブクエストも同時に作成していく。アート班は、忍者アジトや双剣士ギルドのアートを手がけることになったが、当初の想定では忍者ギルドは、かなり派手で、忍の練習場や回転扉などがある秘密基地という感じだったが、シナリオ班から忍者ギルドはひっそりしている設定と伝えられ、当初の設計よりだいぶ落ち着いたデザインとなった。
ちなみにアジトの追加は、フィールドそのものを増やすことはできないため、現在のフィールドのどこかに置かなければならず、“リムサ・ロミンサのどこか”という条件で、空き地を探して走り回ったという。このロケーションの問題は、蛮族デイリークエストでもなかなか大変なようだ。
クラス/ジョブクエストは、カットシーン班の担当で、イベント・企画チームから送られてくるプロットテキストをベースにカットシーン班がどう見せていくかを決めていく。忍者については、NPCのカラスは、モーションキャプチャーを駆使したユニークなカットシーンを含め、見せ方にこだわったという。
こうしてようやく忍者が完成となる。高井氏によると、毎回なんかが起こるということで、今回も最終局面で、忍者はSTR系の近接アタッカーを想定して装備を準備していたところ、バトル班よりDEX系にしたいと要請があり、それに対応するために大変だったという。
高井氏は最後のまとめとして、ロンドンに続いて2度目の登場と言うことで無理を言って入れて貰ったということで「茶々を入れさせて貰ったが楽しんで頂ければと思う。忍者を振り返ることができて良かった。すぐ忘れてしまうんで懐かしかった」とコメント。
鈴木氏は、「新クラス新ジョブはユーザーさんも楽しみにしていると思うが、僕らも新しいことにチャレンジできるので楽しみです。3.0でも3つ追加されるので」と挨拶すると、高井氏が「次は“暗黒騎士ができるまで!”でお会いしましょうかな?」と無茶振りすると、鈴木氏は「3.0発売されてホッとしたら皆さんにお届けできるように頑張ります」とコメント。今後も続くと言うことで楽しみだ。
(C) 2010 - 2014 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.