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【CEDEC 2014】グリーのヒットゲーム「消滅都市」半年間の制作秘話

過去の栄光を捨て、新ブランドで目指した「Wright Flyer Studios」の挑戦

9月2日〜4日 開催



場所:パシフィコ横浜



参加費:15,000円(デイリーパス)〜

ランナーゲームとカードRPG要素を組み合わせた「消滅都市」。わかりやすくも謎めいたキャラクターやストーリーも特徴的

 iOS/Android「消滅都市」は、グリーが創設したスマートフォン用ゲームアプリ専門のスタジオ「Wright Flyer Studios」の第1弾タイトルだ。

 「消滅都市は」、以前の記事でもお伝えしている通り自動スクロールで進んでいくランナーゲームにRPGの要素を加えたアクションRPGゲーム。画面手前ではランナーアクションが展開され、そこで獲得した「スフィア」によって画面奥側でのバトルが進行するというシステムが採用されている。

 5月に配信されてからは非常に好調で、配信1カ月で100万ダウンロードを突破し、9月4日には新章の追加やイベントの追加などのアップデートが実施された。

 CEDEC 2014では、この「消滅都市」について制作過程を紹介する「消滅都市のつくりかた -半年で素敵なゲームをリリースするには-」という講演が実施された。講演では「消滅都市」の制作に関わった5名が集まり、チームビルディングやゲームデザイン、またエンジニアリングなど様々な角度からその過程が説明されていった。

 本稿ではこの内チームビルディングやそのゲームデザインの話題を中心に紹介していきたい。

開発チームとしては決して大きな規模ではない。半年間の中での工夫が各立場に様々にあったようだ

市場調査、KPIは無視! グリー的セオリーの脱却とチームの結束が命

プロデューサーの澤智明氏

 「消滅都市」は講演のタイトルにもあるように、プロトタイプ制作から配信まで約7カ月の期間で開発されている。開発チームの合計人数は17名と小規模な人数でありながら高いクオリティのゲームを求められたため、それぞれが素早く開発を進めなければならなかった。

 プロデューサーの澤智明氏はその中で、「良いと思ったことは何でも実行する」、「チームワークを高めること」を重要視した。「良いと思ったことは何でも実行する」には、グリーのかつての成功体験からの脱却という意味合いも含まれており、市場調査や分析、KPI(重要業績評価指標)は無視してゲームの面白さを優先させること、グリーブランドには頼らずに新ブランドを立ち上げて勝負すること、また培ってきた技術やツールに頼らないことを実践したという。

 「チームワークを高めること」については、プロジェクト立ち上げ時にチーム全員が納得するまで話し合うという場を設け、その後はゲームに対する夢やビジョンを語るなどしてチームの意識を1つにしていったという。実は、企画当初は市場調査を反映した王道RPGを予定しプロトタイプまで作ったが、再度話し合うことで全く違う結果になったそうだ。

 また1週間単位で進捗の確認を繰り返す開発進行で、毎週結束を固めたという。メンバー同士で積極的にコミュニケーションを取り、積極的な行動と相手の意見を否定しないことを心がけたという。

 その結果、プログラマーがUIを改善したり、QA(品質保証)がステージ構成の改善を提案してレベルデザイナーとして参加したりと、全員が自発的なチームができあがったとした。

【「消滅都市」のマネージメント】
グリーのやり方を否定するところから制作がスタート。当初は「王道RPG」が企画としてあったのだという
チームを結束させることにより、役職を超えた自発的なクオリティアップに繋がった

ゲームデザインのコアは“感情”。ブレないコンセプトがタイトルの肝に

ディレクターの下田翔大氏

 ゲームデザイン面では、元スクウェア・エニックスで「消滅都市」のディレクターを務めた下田翔大氏が登壇した。下田氏は、本作を半年で作るためには「絶対にブレないコンセプト」を作ることが大事だったという。

 「絶対にブレないコンセプト」とは、ゲームプレイによってプレーヤーが感じて欲しい「感情」のこと。「消滅都市」では人と人との“信頼”がテーマとなっており、主人公たちがいくつものピンチを乗り越えて段々と信頼を寄せていく様子が描かれる。

 感情のコアは、ピンチの時の「なんとかしなきゃ」という切迫感となっており、敵の攻撃時はアクションパートが止まったり、HPがギリギリまで削られてから生き残るようなバランスになっていたりする。またピンチを乗り越えた時の爽快感も提供するように、連続して「スフィア」を獲得することで一気に有利になる「フィーバー」や、プレーヤースキルに応じてステージが変化する仕組みが採用されている。

 下田氏によれば、この目指すべき「コアの感情」が明確であれば、仕様書は最低限で良いとした。例えば1つの操作の仕様をプログラマーに伝えるときは、操作の受付時間や反応タイミングを話すよりも、どういう状況でどんな感情の流れを生むかを述べた方が意図通りになりやすいというわけだ。

 ほかにもシナリオとゲーム体験の盛り上がりを密接にリンクさせることで没入度を高めたり、セリフがひと目でわかるようにふきだし1つは平均20文字の内容にしたりと、コンシューマー出身のゲームクリエイターらしい発想でゲームをデザインしていった。

【「消滅都市」のゲームデザイン】
キャラクター同士の“信頼”が大きなテーマとして描かれる
ステージ中にも感情がデザインされているほか、ゲームプレイとシナリオの感情の起伏も巧妙にシンクロするようにしている
ほかにも様々な工夫が盛り込まれている
【「消滅都市」のアート】
リードアーティストの濱坂真一郎氏
「キャラクターデザインという楽しみを奪ってはいけない」との思いから、キャラクターデザインはコンペで選出されている
【「消滅都市」の開発】
リードエンジニアの渡部晋司氏
半年という制作期間はかなり苦しかったそうだが、常に最新のプロトタイプを作っておくなど「ホスピタリティ溢れるプログラマー」だったという
【「消滅都市」のサーバー】
エンジニアマネージャーの吉川毅氏
ネットワークにはAmazon Web Servicesを導入。ただし、トラブル発生時にスムーズな対応ができないなど、検証不足の面もあったそう

(安田俊亮)