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【CEDEC 2014】「新生FFXIV」の環境音はどのように録音され“配置”されたか?

実際にゲームで確かめたくなる、より自然な“音の聞こえ方”へのアプローチ

9月2日〜4日開催予定



会場:パシフィコ横浜



受講料:15,000円(デイリーパス)〜

 「俺らはこうした!FINAL FANTASY XIVのBGサウンド構築 〜次世代開発への橋渡し〜」というタイトルでCEDEC2014で講演を行なったのは、スクウェア・エニックスサウンド部テクニカルディレクター/プログラマの土田善紀氏と、サウンド部サウンドデザイナーの土橋稔氏。

 土田氏はこれまでも様々な講演で自社の取り組みを公開しているが、今回も軽妙な語り口と、土橋氏とのノリの良い会話を交えながら、「ファイナルファンタンジーXIV: 新生エオルゼア(以下、「新生FFXIV」)」でのBGサウンド(環境音)をどのように構築していったかが語られた。講演では「会社でのサウンド開発環境をそのまま持ってきた」として、5つのスピーカーが設置され、受講者は5.1chの環境で、サウンドを聴きながら、「新生FFXIV」での取り組みを聞くことができた。

自然界で生じる音を、より自然にゲーム内で再現するための様々な取り組み

スクウェア・エニックスサウンド部テクニカルディレクター/プログラマの土田善紀氏
サウンド部サウンドデザイナーの土橋稔氏
土橋氏がグリダニアの環境音を録音した森。実家の近くだという
土橋氏がマップ上に設定したスポット音源。かなりの作業量であることがわかる。「新生FFXIV」の全マップでこういった作業がなされていることを考えると、その作業量は気が遠くなるほどだ
増えていく作業量をAIや自動プログラムで緩和していく。今後のタイトルではこの取り組みの成果も見ることができるという

 最初に土橋氏が紹介したのは、森の中の写真。土橋氏によれば“実家の近く”ということで土橋氏はここで、「新生FFXIV」の黒衣森という森林地帯がある“グリダニア”の環境音を収録したという。

 土橋氏サウンドチームはまずほぼゲーム内で実装されるマップを渡され、そこにイメージに合う環境音を探していく。土橋氏は与えられたマップに対し、1日か、2日くらい時間をかけひたすらマップを歩き回り、どのような環境音が必要なのかを検証するという。そして環境音としてのデータがなかった場合などは、休日にいろいろな場所に行き、マイクを設置してその場でとるという。

 森の中では風の音や、木々や下生えが揺れる音、そして鳥の鳴き声などが収録できる。「新生FFXIV」は音を短いファイルでループで鳴らしているが、それを気づかせないように工夫をしている。収録した音声から鳥の鳴き声など特徴的な音を抜き出し、ピッチを変えたり、他の生き物の声などを混ぜることでアクセントにしいくつものファイルをつくり、これをランダムで繋げていくことでより自然な、ループだと気づかせない環境音を作り出しているという。土橋氏は地域を調べそこにいる生き物をピックアップし、混ぜ込むことで地域のリアルさを増しているという。

 次の説明は「配置方法」。作った環境音をどう配置していくかの実際の作業が公開された。「天候環境音」は、天候だけでなく、時間の変化にも対応しており、昼は鳥の声が聞こえるが夜は虫の声に変わる、といった形で時間・天候で実際に変化する景色を見ながら音声を入れていく手法が紹介された。天候は雷雨や、霧、晴れの他、“快晴”など多彩な項目が用意されており、幅広い環境に合わせた背景音の設定が可能となっている。

 「スポット配置音」は、建物の中に入ると周りの音が聞こえなくなるという現象を、実際にマップの建物の中に“背景音が小さくなるフィールド”を設定し、そこにキャラクターが入ることで周りの音が聞こえなくなる現象を再現している。音は実際には鳴っており、それが小さくて聞こえないという、自然の状態に近い環境をシミュレートしている。

 滝や川など音源がある場合では音を点で配置し、そこから球形のフィールドを広げ、音の聞こえる位置を設定する。さらに建物など“音が聞こえなくなる環境”も設定可能で、この作業を1つのマップで非常に多く設定していることが紹介された。「新生FFXIV」ではサウンドデザイナーが音の配置まで行なうことができる。まるで3Dグラフィックスのモデリングを行なっているような作業で、マップでの背景音の設定からは、土橋氏の強いこだわりが感じられた。

 その次に土田氏は「難しい遮蔽」として、様々な地形での環境音の設定を紹介した。円形のコロシアムの所々が崩壊しているという「壊れたコロシアム」に関しては、その崩壊した地形に合わせる形で遮蔽を設定するのが大変だったという。ソフトで設定しても鳴らないプログラム面で対応して欲しいという「発注書」そのものを紹介した。次が円筒形の塔で、さらに上が吹き抜けになっているという場所。ここでは屋上の遮蔽の上に、各フロアごとにも遮蔽を行なうことで対処したという。

 さらに複雑な壁があり、壁の向こうで音が鳴った場合どう音が聞こえるか? という場合、壁の設定はコンピューター上のアルゴリズムでは、壁の厚さが0だと認識し、現実に壁がある音とは違ってしまう。土田氏は、壁に音がぶつかった時、衝突判定で音を“はじき飛ばす”ことで自然な音の表現を可能にした。こうすることで現実に近い音の迂回を表現することができた。

 最後のテーマは「次世代に向けて」。メモリやCPUのパワーは増していき、表現できることへの制約はどんどん緩くなる、しかし一方で、できるからこそ自然現象を“作業”で表現するというその作業量は限界に近く、そしてツールでは追いきれないほどに例外的な現象も増えてくる。

 土田氏を初めとしたスタッフは、AIや遮蔽の自動算出を行ない、ここからデザイナーの手作業とのハイブリッドで進めようとしている。これは「新生FFXIV」ではできなかったが、基礎研究はできており、今後のタイトルで実現できるようにしていく。従来の人の通り道だけではなく、“音の通り道”も設定していく手法も構築されているという。土田氏は最後に「スクウェア・エニックスは成果を順次公表していくスタンスです。私達はサウンドも盛り上げていきたいと思ってますので、よろしくお願いします」と会場に語りかけた。

【環境音の設定】
マップでイメージをつかんでから、収録した音にアクセントをつけたファイルをいくつも作り、ランダムで繋げることで自然な環境音のループを作り出す

【音の配置】
天候や時刻によって変化する音を設定する
建物の中や、音源、遮蔽などをサウンドデザイナー自身が設定できる

【難しい地形】
ツールではカバーできない状況や、プログラム上で難しい問題も、様々な取り組みで自然な音の聞こえ方を目指していく

(勝田哲也)