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【CEDEC 2014】「アイカツ!」のダンスアニメーション制作事例

アニメ、ゲームの両面からアプローチ。進化するダンスCGアニメのこだわりを公開

9月2日〜4日 開催



場所:パシフィコ横浜



参加費:15,000円(デイリーパス)〜

「データカードダス アイカツ!」の筐体。女児だけでなく幅広い世代に人気

 女児向けのコンテンツに、「アイカツ!」というものがある。「アイカツ!」は、2012年10月より稼働しているアーケード用のアイドルオーディションゲーム「データカードダス アイカツ!」を原案として、アニメやグッズ展開を行なう一連のコンテンツの総称だ。

 「データカードダス アイカツ!」は、筐体からランダムで排出されるカードでキャラクターの衣装をコーディネートし、コーディネートの得点とゲーム中に行なわれるリズムゲームの得点の合計点を競うアイドル体験ゲーム。テレビアニメも2012年10月より展開されており、女児向けコンテンツでありながら幅広い世代の人気を得て、「アイカツ!」のゲームおよびアニメにハマるおじさんを指す「アイカツおじさん」なる言葉も生んだ。

 9月2日より開催されているCEDEC 2014では、コンテンツの中核を担う「アイカツ!」のCGアニメーションに関する講演が行なわれた。講演では原案となるゲーム側の視点と、それを受けた形で制作されるアニメ側の両方の視点から、CGアニメに対するこだわりが話されていった。

【データカードダス アイカツ!】
衣装をコーディネートして高得点を狙うアイドル体験ゲーム。なお「アイカツ」とは「アイドル活動」の略
【アニメ「アイカツ!」】
ゲームから派生してストーリーが描かれるアニメ版。毎回CGアニメによるダンスパートがクライマックスで登場する

先行コンテンツのゲーム版。ルールはわかりやすく、演出は印象深く!

ハ・ン・ド 札幌スタジオ開発部ディレクターの矢野祐治氏
ハ・ン・ド 札幌スタジオ開発部デザイナーの清野博揮氏
ハ・ン・ド 札幌スタジオ開発部チーフデザイナーの山下信男氏

 ゲーム側の講演では、開発元のハ・ン・ドより、札幌スタジオ開発部ディレクターの矢野祐治氏、札幌スタジオ開発部デザイナーの清野博揮氏、札幌スタジオ開発部チーフデザイナーの山下信男氏が登壇した。

 ゲーム版「アイカツ!」では、子供向け、カードゲーム、リズムゲームの3つの要素が組み合わさってゲームが制作されている。アニメ版やその他の展開のすべての原案となるゲーム版だが、「まずはゲームが面白いこと」を優先的に考えていたという。

 ゲームデザインでのこだわりは、「あまり戦うものがない」という女児向けのモチーフの中で、どこに競うポイントを持ってきたかにある。「アイカツ!」ではファッションがテーマであり、「キュート」、「クール」、「セクシー」、「ポップ」の4つの路線での“かわいい衣装”が用意されている。

 さらにこの4種類の中にも「ブランド」があり、衣装がさらに細分化されている。プレーヤー側は衣装を自由に組み合わせられるが、同じ路線、同じブランドで衣装を構成することによって得点が上がり、さらにゲーム内の演出も派手になる。難しいことを考えずとも、正しい組み合わせがなんとなくでもわかるように作られているのだという。

 また「アイカツ!」と言えば多種多様で質の高い楽曲に特徴があるが、これはセットになる衣装とステージのデザインが決定されてから発注・制作がスタートするのだという。衣装とステージのイメージに合わせて楽曲が作られるからこそ、ユニークなものが生まれるとした。

 そしてリズムゲーム(ゲーム内では「オーディション」)中のCGアニメについては、「初めて見た子供たちも何か記憶に留めてもらえる」演出が目指されている。モーションを担当している清野氏は、「楽曲とリンクする振付と演出」、「カメラパターンの創造と破壊」、「ステージギミックにこだわること」をポイントに置き、楽曲を深く理解しつつ、振付師やステージ制作担当と密に連携して全体の一体感を出している。またカメラパターンは激しめにしつつも、パターンを変えるなどで意識して起承転結を作っている。

 なお演出面で面白かったのは、「ファッションショーオーディション」について。最初は歩いてポーズを決める程度のものを考えていたが、歌やダンスのある「ライブオーディション」に比べてあまりに地味だったため、「前に出ながら踊るファッションショー」という「アイカツ!」独自のファッションショーが作り出されたという。

 ほかにも音楽に合わせてキャラクターが演技をする「ドラマオーディション」もある。今後も「マンネリにならないよう、色々と研究をしていきたい」と清野氏は話した。

楽曲は衣装とステージが決まってから作られている
衣装の方向性は4種類。いずれも“かわいい”は共通項
衣装には「ブランド」がいくつも存在する。ブランド衣装は得点が高く、同じものを揃えればさらに高得点が狙える
楽曲を理解した上でダンスシーンに演出を付ける。振り付けからステージギミック、小道具を使用したものまで様々
踊るファッションショーや音楽に合わせたドラマなど、「アイカツ!」独自の解釈も盛り込まれている。特にドラマには力が入っているそう
衣装は、それぞれの質感が大事にされている。まずはモデリングのことを考えずに、デザイナーに自由に衣装をデザインしてもらうことを心がけているという

アニメ版ダンスシーンは「観客視点」、「ライブ感」を重要視

サムライピクチャーズCGディレクターの北田伸氏
サムライピクチャーズリードモデラーの林和正氏
サムライピクチャーズ制作進行/CGモデラーの増子浩代氏

 アニメ版「アイカツ!」側の講演では、3DCG映像プロダクションのサムライピクチャーズより、CGディレクターの北田伸氏、リードモデラーの林和正氏、制作進行/CGモデラーの増子浩代氏が登壇した。

 アニメは、1話がアニメパートと3DCGパートの2つで構成されており、3DCGパートはストーリー中のクライマックスで挿入されるものとなる。

 放送開始当初はゲーム版のCGモデルを使ってアニメ側のCGモデルも制作されていたが、アニメはアニメで独自のクオリティを目指すという方針から、今では新しくCGモデルを作り直している。ただし手足の長さなどの体のバランスは「ゲーム版のCGモデルは女児に受け入れられる最適なバランス」と考え、大事にしている部分だそうだ。

 ゲームでもアニメでもCGモデルによるダンスシーンが挿入されるが、その最大の演出上の違いは、「アイドル視点であること」と「観客視点であること」にあるという。ゲーム版ではプレーヤーがアイドルと一体となってコンテンツを楽しむのに対し、アニメ版の視聴者はアイドルと一体にはなれないが、「観客としてライブを楽しむ」ような構造がある。

 サムライピクチャーズはこの違いに注目し、客席側からアイドルたちを捉えるようなショットをよく使って「観客からの視点」を演出している。また「ライブ感」も大事にしており、わざとキャラクターが見切れるようなカメラレイアウトにしてみたり、キャラクターがアドリブっぽい表情をしてみたり、ほかにもカメラの手ブレ、極端な例ではアイドルがカメラに激突するなど、「ライブとしての臨場感」が演出に盛り込まれている。

 一方で、アイドルのモノローグを被せるなどの踏み込んだ演出は控えめにしており、キャラクターが感動したり失敗したとしても、あくまで「カメラがとらえたショット」として客観的に見せることで、ライブ感を出している。アニメを見ること、ライブを見ることがひとつに重なるような演出がCGパートでは目指されているとした。

 「アイカツ!」は10月で3年目を迎え、ゲームもアニメも第3シーズンへと突入していくが、「10年愛されるようなもの」が目指されているという。これまでも個性的な楽曲やステージ、衣装が登場していただけに「マンネリ化しないことが大事」と制作陣も懸念していたが、今後もさらなるコンテンツの盛り上がりに期待したい。

アニメはアニメパートの絵を元にしつつ、独自のCGクオリティを目指す。左はアニメパート、右は3DCGモデルの星宮いちご
衣装もゲームの設定を参考に、改めて制作する
アニメでは、同じ楽曲でもストーリーによって状況が変わる。状況ごとの演出も見どころの1つ
もう1つの見どころ、アイドルオーラ。言わば「いかにアイドルであるか」を視覚的に表現したもので、キャラクターごとに違っている
左は初登場時の新人アイドル 大空あかり、右はシリーズ主人公の星宮いちご。アイドルオーラが全然違う
ユニット結成時のアイドルオーラも登場している
アニメパートでの最大のポイントは、「観客から見るライブパフォーマンス」が意識して演出されていること。改めて見直すと面白い発見がありそうだ

(安田俊亮)