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【ChinaJoy 2014】長谷川友洋プロデューサーが語る「三国志乱舞」
ゲーム開発で考えること、継続してもらうために必要なものは何か?
(2014/8/2 09:37)
ChinaJoyと併設して開催されている開発者向けカンファレンス、CGDC(China Game Developers Conference)。8月1日は、「Japan Game Developers Day」として、日本のゲーム開発者・関係者の講演が行なわれた。本講ではその中からiOS/Android向けシミュレーション「三国志乱舞」のプロデューサー、スクウェア・エニックスの長谷川友洋氏の講演をピックアップしたい。
「三国志乱舞」はタワーディフェンスタイプのゲームで、プレーヤーはカード化された武将を集め、武将を強化しながら戦っていく。カードイラストの美しさ、ゲームのカジュアルさと奥深さで高い評価を受け、中国でもテンセントからサービスが発表されている。今回の講演では、長谷川氏は「三国志乱舞」について、「ゲーム作りではなく事業作り」、「イノベーションとは何だ」、「長く運営を続けるために」という3つのテーマで語っていった。
ゲーム作りは曹操のような能力が求められるという。曹操は軍人だけでなく、政治、詩歌、人の使い方など様々な点が優れていた。そこからゲームに話を移し、「面白いゲームが成功するゲームではない。面白くても収益的に成功がしなかったゲームはたくさんある」と語った。「三国志乱舞」は常に事業的成功は常に念頭に置いて開発・運用を行なっていったという。
次に長谷川氏は「レストラン経営」と「三国志乱舞」を比べてみせた。メニューはゲームの内容、他の店との差別化はタワーディフェンスというゲーム性、立地条件はプラットフォーム、レストランでもお客が2度と行かない店はある。そうならないように継続して遊べることを意識したという。スタッフは絵が得意だったり、パラメーター調整が得意な人などを意識して起用、コストの部分も考えた開発を行なっていたと長谷川氏は語った。「ゲーム作りには広い視点を持ち、正確な順序で優先順位をきっちり決めて開発することが成功の可能性を上げる」と長谷川氏はまとめた。
次に、「イノベーション」。イノベーションを求める人、既存のコンテンツに近いゲームを要求する人、ゲーム開発者は常に上司から方向性の違う要求を突きつけられる。知っているルールの安心感と、新しいルールの面白さ、その中で長谷川氏は先行者利益や、目新しさの楽しさは認めつつも、「イノベーション議論には意味がない」と言う。新しさは入れる、しかし安心してプレーヤーが遊べる保守的な環境作りも意識するというのが、長谷川氏が得たバランス感覚だ。
「三国志乱舞」は事業的にもマネタイズ的にも成功している“ソーシャルカードバトル要素”を入れ、「三国志」という自分も好きで、メジャーなテーマを入れた。「三国志」は武将の個性、普遍性がある。タワーディフェンスは戦略性が高く、取っつきにくいところがある。そこに「呂布は強い」、「関羽はひげが長くてかっこいい」など、ぱっとすぐわかる特徴を盛り込めた。こう言った普遍的な要素を入れたのは、新規性をどうカバーするかを考えた結果だと長谷川氏は語った。
長谷川氏はこれまで話したコストを意識したゲーム開発の考え方、イノベーションに対する自分のバランスといった自分の経験は、開発の各チーフにまでしっかりと伝え、各員に全体的な視点を意識するように求めた。これらのことは結果として開発チームのモチベーションを維持するのに役に立ったという。
そして長谷川氏は最後に「長く運営を続けるために」というテーマを取り上げた。「三国志乱舞」は1年たっても高い売り上げを維持している。それは、最初に獲得したユーザーをできるだけ続けてもらうようにした結果だ。1年の運営で常に考えてきたのは「問題はどこか」ということだ。バグか、集積率か、継続人数か、売り上げか……考えることは多いが、“優先順位”は意識しなくてはならない。ゲームを常に遊び、自分のゲームの掲示板に張り付いてしまったりすると、その優先順位がわからなくなる可能性があると長谷川氏は語った。
「三国志乱舞」では“3カ月ごとの課金ユーザーの定着率”を1つの指標として持っているという。開発チームでは、このデータを元に、「プレーヤーのストレスの原因」を洗い出し、そこから様々なデータを考えていく。データとしては「ゲームをやめてしまったプレーヤーは、最後に何をしたか」ということも見ている。何をどう問題としているか、ユーザーのストレスはどこか、これを洗い出し、企画を立てて、内容をつめていく。離脱する前のアクションに対し改善していくのかがユーザーの定着率をもたらすという。
「敵を知り、己をしれば百戦危うからず」孫子の兵法は、曹操も用いていた。開発チームも常に意識している言葉だという。「皆さんも今日の話を聞いて、スクウェア・エニックスと何かできるかと感じた方は、お声がけいただければと思います」と最後に長谷川氏は語った。