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ドスパラPC工場・綾瀬事業所のプレス向け見学会が開催
100%ワンストップで実現する短納期・高品質の裏側を公開
(2014/7/19 10:00)
サードウェーブデジノスは7月17日、プレス関係者を集めた綾瀬事業所の見学会を開催した。サードウェーブデジノスというと耳なじみがないかもしれないが、一言でいえば、ドスパラのPCを製造している会社だ。
企業体としては、サードウェーブの傘下に、PCを販売するドスパラと、PCを製造するサードウェーブデジノスがあり、他に周辺機器を扱う上海問屋や、法人向けコンピューター製造販売事業、携帯電話リユース事業、放射線対策の機器導入やセミナー事業の、計6社がグループ会社として存在する。
今回は、サードウェーブデジノスの拠点となる神奈川県綾瀬市にある綾瀬事業所で、PCを製造する工場を見学するという趣旨で行なわれたもの。同社は昨年、綾瀬事業所に移転し、全ての機能を1カ所に集約。綾瀬事業所をプレス向けに公開するのは、今回が初めてだという。
綾瀬事業所の機能としては、「ドスパラ」ブランドのPCの製造から配送までを1カ所で集約して行なっている。ドスパラが顧客からの注文を受けると、綾瀬事業所に発注が行き、BTOされた内容でPCが組み上げられ、完成したものを発送する。ドスパラの店舗や事業所を介することなく、直接顧客とやり取りしている。
また綾瀬事業所には、ドスパラと上海問屋の配送センターも併設されている。サードウェーブグループの物流は綾瀬事業所が一手に担っている形だ。
松野社長が語る「100%ワンストップ」の綾瀬事業所
見学に先駆け、サードウェーブデジノス取締役社長の松野康雄氏より、会社の方針と綾瀬事業所の説明が行なわれた。綾瀬市のことを「電車の駅がない辺境の地」と呼ぶ松野氏だが、昨今は複数の運送業者が拠点を構え、一大物流拠点となりつつある。
サードウェーブのPC生産コンセプトは、「100%ワンストップオペレーション」だと言う。外からPC製造に必要な部材が入ってくるのはここだけで、外に出るのも製品として顧客に届ける以外にないという徹底ぶり(唯一、ドスパラの店頭に置くベーシックモデルだけが例外)。在庫回転率も1~1.5カ月と他社より圧倒的に短いと言い、「物流コストは世界一安い」と胸を張る。
PCの生産に関しても、100%受注生産の形を取っているという。それもある程度形になったPCにHDDやメモリを入れるだけの半完成品で作るのではなく、完全に個々の部品で取り寄せて、綾瀬事業所で組み立てている。松野氏は「本当の意味のBTOをやっている」と語った。
納期は完全受注生産でありながら、受注日から足掛け2日を実現。夜に発注したPCが、翌日朝には出荷準備に入り、夕方には宅配便に回る。個人向けの販売では、ほぼ100%の注文に対して納期通りの出荷を達成している。
松野氏は、PC製造において1番重要なことは、信頼性を上げることだという。短納期を実現する中でも、信頼性試験には個別に数時間費やし、高い信頼性を実現している。組み立てと検証のラインが同一フロアにあり、修理のラインも併設している。製造から検証、発送までを一元管理することで、少ない初期不良を実現するわけだ。
綾瀬事業所の狙いをさまざまな面から説明した松野氏だが、「見えるところに何も特異なことはない」とも言う。「大手と比べて、ラインが1mなのか100mなのかの違いはあっても、やっていることは同じ。何も新しいことはないが、私は魂と言っているものがある。今日ご覧になったものを他で話しても構わないが、魂をわかっていないものには、この魂は伝わらない」と、PC製造にかける並々ならぬ想いを語った。
PC製造現場を見学
ここからは綾瀬事業所のPC製造現場を、写真を交えながらご紹介する。部材が届き、PCに組み立て、箱詰めして顧客に発送する……という流れのイメージで、順に見ていきたい。
まずは1階のトラックドック。11トントラックが48台つけられる広いスペースに、PC製造に必要な部材が運び込まれる。270平方の広大なスペースに大量の荷物が置かれているが、スペースの6割は場所を取るPCケースが使うため、より大量に見えるのだとか。
届いた部材は2階に運び込まれる。2階は製造過程の全てが詰め込まれたフロアになっている。まず最初のセクションは、箱を開けて部材を取り出す。製造前の準備を行なうフロアだ。
次はピッキングと呼ばれるセクション。開封された部材が並べられている場所で、発注されたPCに必要な部材を1つずつピックアップしていく。必要な部材はバーコードを使って管理されており、全ての部品を間違いなく揃えないと次のセクションへ部材を運べないシステムになっている。一通り揃った部材は、1つの箱にまとめられて次のセクションへと移される。
部材が集まったら、次は組み立てのセクション。ここでは装着する部材を担当ごとに分けて流れ作業で進める「ライン」と、1人のスタッフが全てのパーツを組み上げる「セル」の2パターンに分かれる。
「ライン」は基本構成に近いものを製造し、「セル」はカスタマイズが多いものを担当する。「ライン」での製造では、前のスタッフが担当した部分を次のスタッフがチェックするという方法でミスを低減。「セル」での製造は、PCの製造に熟練したスタッフが責任を持って行なう。「ライン」の製造では、通常時では1.5分に1台のペースで生産でき、トータルでの最大生産量は1日1,000台としている。
ノートPCに関しては別のラインで製造されている。こちらは女性スタッフが多いのが特徴。細かく丁寧な仕事をする女性の方が製造に向いている傾向なのだそうだ。
組み立てが終わったPCは、次の信頼性検査セクションへと送られる。ここではPCのあらゆる不具合を発見するためのチェックが行なわれている。大部分は自動化されており、複数のPCを1度にチェックするシステムが構築されている。それに加えて、スタッフが実際にチェックする項目も盛り込まれている。
テスト内容についての詳細は明かされなかったが、CPUやGPUに高負荷を与えるプログラムをバッチ処理的に走らせているのが見えた。人の手を加える部分としては、サウンドが正しくステレオやサラウンドで鳴っているかを、スタッフの耳でチェックしているという。これらのチェック内容はスタッフが話し合いながら、随時見直しているそうだ。
検査は自動化されている部分だけで2時間強。さらに人の手が入るものは長時間になる。特にBTOで大幅にカスタマイズされたPCや、最新パーツを使ったPCに関しては、熟練スタッフが直接テストする形を取り、念入りにチェックされている。
信頼性検査が問題なく進めば、次は出荷……となるが、不具合が見つかった場合は、隣にある不具合対策セクションへと移される。ここでは不具合の原因を特定し、パーツ交換やファームウェア更新などの対応を行なう。
ただ正常に動作するように直すだけでなく、不具合情報を製造側にフィードバックし、その後の不具合発生率を下げるための取り組みも行なっている。実際に信頼性検査で不具合が発見されるのは、およそ2%程度だという。
無事に信頼性検査をクリアしたPCは、OSのシリアルナンバーが書かれたシールなどが貼り付けられた後、キーボードやマウスなどの付属品をまとめ、梱包、出荷される。
一連の製造工程は、制作指示書という書類で管理されている。ここにはどの部材を使い、誰が担当したのかなどの情報が、番号やコードの形で記録されている。顧客の個人情報は書かれておらず、製造スタッフは発送先を知らないまま製造している。個人情報保護の観点でも適切に取り組んでいる。
さらに綾瀬事業所では、ドスパラと上海問屋の物流管理センターも併設している。通販で発注される製品は全てここで管理されており、中には数千種類におよぶ製品が所狭しと並べられている。受注するとここで商品がピックアップされ、顧客の元へと発送される。これもPC製造と同様、綾瀬事業所での一元管理となっており、ドスパラでは17時までの受注は当日発送を行なっている。
完成したPCや、受注したドスパラ・上海問屋の通販商品は、1階に送られ、トラックに載せられて運ばれていく。このほか、ドスパラのサポートセンターも綾瀬事業所内にある。可能な限り綾瀬事業所に機能を集約しているのがうかがえる。
綾瀬事業所の見学ツアーは以上となる。一般の利用者は完成したPC以外に目にする部分がないだけに、こういったメーカーの取り組みを見られることで安心感が増すだろう。早くて安いだけではなく、安心もできるという点も、ホワイトボックスPCに求められる要素となりそうだ。
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