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【OGC 2014】Supercellとの対比で語るガンホー森下一喜氏のゲーム開発論

ガンホーは「運営型」でSupercellは「運用型」? ガンホーの次の目標も明らかに

ガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長の森下一喜氏
4月23日開催

会場:ベルサール秋葉原

参加費:5,000円

 OGC 2014のトークセッションでは、ガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長の森下一喜氏が登壇した。インタビュアーは一般社団法人ブロードバンド推進協議会(BBA)理事の松原健二氏が務めた。

 セッションは松原氏が森下氏に質問をしていくという形式で、直前に講演されたSupercell CEOイルッカ・パーナネン氏の講演内容の流れを受けつつ、森下氏のゲーム開発に対する考えなどが質問されていった。本稿では特に面白かった点を抜き出し、一問一答形式で内容をご紹介する。

上手くいってもいかなくても、どちらにしても酒は飲んでますね(笑)

一般社団法人ブロードバンド推進協議会(BBA)理事の松原健二氏

――森下さんは上場企業の社長となっても、企画の最初から参加していますよね。

森下氏: それが1番楽しいですからね。頭を悩ますこともありますが、好きだからやっています。ガンホーを創業するときに、みんながびっくりするものを作りたいなと思って始めたので、自分で作っちゃおうという考えなんです。

 上場してから数年の間はそれができなくなっていたので、今振り返ると腐っていたなあと思いますね(笑)。

――OGCは今回で10周年ですが、ご自身の10年を振り返っていかがですか?

森下氏: 創業当時は世間のオンラインゲームへの理解がなくて、色々な会社に出資を頼みましたが、大体は「オンラインゲームが上手くいくはずない」、「ビジネスとして成り立たない」と言われて断られ続けました。

 スタッフ5、6人ほどで2002年に創業した時に、モバイルでオンラインが遊べる時代が来るとも話していたのですが、それも夢物語くらいの受け取られ方をしていました。

 当時はとにかくがむしゃらで、オンラインゲームでの成功事例もなかったですし、失敗事例もなかったので、正直言ってあらゆるものに対して地雷ばっかり踏んできた10年かなと思います。

――パーナネン氏が「失敗したら祝う」という話をしていましたが、ガンホーではいかがでしょうか?

森下氏: 上手くいってもいかなくても、どちらにしても酒は飲んでますね(笑)。タイトルがヒットするしないは、流れやタイミングもあります。作った本人たちが納得していれば結果がどうであれいいのかなと思っています。

 実は「パズル&ドラゴンズ」以外でも、モバイルのタイトルは全部黒字で、利益を出しています。1本1本は場外ホームランほどではないのですが、きっちりヒットを出せています。自分たちで納得してリリースして、それが共感されたかされていないかの違いではないかと。クオリティに対して徹底してこだわっているというのが大事だと考えています。

――ヒットが出るという話がありましたが、確実に力がついてきた感覚はありますか?

森下氏: 現場にとっては、1本1本を作っていくことに意義があると思います。みんなが経験を積み重ねていくことが大きくて、例えば、「パズドラ」で大きなサーバー障害があった時は、他の開発チームが手を止めて、全員で修正にあたりました。

 基本的にはチームで動いていますが、ガンホーには組織の壁がありません。また「パズドラZ」の制作には、ガンホーのスタッフのほかにゲームアーツのスタッフもいました。チームそのものが混成でものづくりをしています。

 それに対しては現場からのNOの声もなく、誰かが困っていたらみんなで助けるというスタイルができあがってきました。全てはスタッフのおかげですが、縦割りの組織よりは、フラットな組織のほうがやりやすいですね。

――Supercellのいいところは?

森下氏: コラボなどマーケティング面での関わりはあっても、直接的な開発での交流はないのでなんとも言えませんが、最大の違いはガンホーのタイトルは「運営型」で、Supercellは「運用型」ということです。

 よくガンホーは海外の展開が遅いと言われるのですが、ガンホータイトルは日々の運営がタイトルと一体化しているサービスモデルなんです。これはテーマパークと一緒で、日本で9割以上の継続率があるからといってそのまま海外に持っていけるわけではないものです。「ラグナロクオンライン」でも同じことで、サービスをちゃんとくっつけて展開するのがガンホーのスタイルなので、安易にカルチャライズや一朝一夕でできるものではありません。

 一方のSupercellは人数が少なくても一気にリリースできる、運用型モデルになっています。

 ただ、開発リソースが運営に時間を取られてしまい、新しいものを作りたいけどできないという「リソース足りない問題」が出てくるので、運用型のゲームも作っていく必要があるのかなと。同じものではなく、「運営」、「運用」の良いとこ取りができたらと思います。

――新規開発や運営など、スタッフのタイプに合わせた適材適所はどうしていますか?

森下氏: 運営が得意な人は運営より、というのはありますが、基本的には明確な区分けはありません。ネットワークはどこかで繋がってくるので、みんなに開発や運営を経験させていくようにしています。

――では最後の質問です。次のガンホーは何を目指しますか?

森下氏: スマートフォンでもタイトルの本数を重ねましたが、スマートフォンそのものにワクワク感がなくなってきたかなと思っています。

 UIを含めて、操作方法には一通りのパターンが出揃ったような印象があるので、ここで何か新しいアプローチを生み出したいなと考えています。そうしないと、結局は代わり映えしないものができてしまうのではないかなと。ゲームシステムとして面白く、さらにUIとしての新しさでサプライズを与えられるような、新しいアプローチのものを作れるといいなと思います。

 よくプレッシャーがあるのではないかと聞かれるのですが、プレッシャーを感じてたらゲームは作れません。そんなことは考える必要がないので、肩に力を入れずにやっていければいいですね。また新しいことにチャレンジしていくという意味では、チャンスはみなさんにもあります。向上心を持っていれば、可能性としてはヒットメーカーになれる可能性が十分にある時代ではないかと思います。

(安田俊亮)