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【GDC 2014】ウワサのValve「Steam Machines」を触ってきた!
コントローラーはまだまだ未完成? Steam OS機能「ホームストリーミング」は驚きの低遅延
(2014/3/23 19:18)
GDC 2014のエキスポ開場には、この場では珍しい企業のブースがあった。オンラインコンテンツ流通システムSteamを展開するValveだ。ブースでは、昨年末に発表され、今年1月のCES(Consumer Electronics Show)で参考出展された「Steam Machines」で実際に遊ぶことができたのでご報告しよう。
Steam Machinesは、Valveが2014年中の出荷に向けて準備中のゲーミングPC規格。Linuxベースの「Steam OS」を搭載し、ゲーム機ライクなインターフェイスでSteamのゲームを遊べるマシンだ。仕様はオープン化されており、Valveでは無数のPCベンダーと協力しながら製品化を進めている。
開場にはValve謹製のプロトタイプ機とGigabyte製の小型マシンがプレイアブル展示されており、これまたSteam Machinesの証となる謹製のゲームパッド、Steam Controllerの最新版プロトタイプを試せた。
慣れが必要、とはいっても、これはちょっと大丈夫? なSteam Controller
Valveのブースでちょっと面白いな、と思ったのは、8台ほど用意された全ての試遊機にValveスタッフが常時待機していて、試遊しにきた来場者に声をかけるでもなく、遠巻きに反応を伺っていたことだ。
その試遊機で触ることのできたSteam Controllerは、Steam Machinesを名乗るPCに対して、Steam OSと並んで搭載が義務付けられているゲームパッド。最大の特徴は、アナログスティックを廃止してトラックパッドに置き換えたこと。手応えのなさは“デュアルリニア共振アクチュエーター”によるフィードバックにで解決、精密で直感的なアナログ操作ができる、とされている。しかし最終仕様はまだ確定しておらず、Valveによる開発が続いている状態だ。
ブースで展示されていた最新のプロトタイプは、これまで発表されてきた外観からはずいぶん変化していた。コントローラー中央部に搭載予定だったタッチパッドが廃止された上、左右のトラックパッドの間に多数のボタンが追加されている。これらのボタンは標準的なゲームパッドにおけるボタン配置に準じたものになり、Xbox系やPS系パッドからの移行がスムースになるよう工夫したようだ。
Valveスタッフの視線を感じつつ、「ストライダー飛竜」、「DiRT3」、「Portal 2」といったゲームを遊んでみた。トラックパッドの上に親指をスルスルと滑らせて操作。その際、指にギュルギュルという振動が伝わってはくるのだが、スティックのようなはっきりとした手応えがないことが心もとない。
トラックパッドの面積が割と広いため、半端な量の入力は思い通りにできる。しかし、入力をニュートラルに戻すのがやたら難しい。どのへんがセンターか、体感的に掴みにくいためだ。「ストライダー飛竜」だと、立ち止まるつもりが余計に歩いてしまったり、「DiRT3」では、直進するつもりが蛇行してしまうような感じだ。
これを防ぐため、確実にニュートラルに戻したい場合はトラックパッドから指を離す。ところがこのやり方にも問題がある。指を浮かせているつもりが無意識に指の腹がトラックパッドに触れることがあり、この触れるか触れないかという段階でも反応してしまうのだ。
だから、入力が必要ないときには意識してしっかりと指を浮かせることが必要となり、想像以上に疲れてしまう。ちょっとした入力で大きな動きになる「ストライダー飛竜」のようなアクションゲームでは特に、こういった誤操作が思わぬゲームオーバーを招いてしまい、イラッとする原因に。「DiRT3」では数分で慣れて普通に走れるようになったので、ジャンルによって向き不向きが大きそうだ。
「Portal 2」でも同様の感覚はある。トラックパッドを使ったエイミングはアナログスティックよりもずっと素早く旋回できるが、微調整は大変だ。トラックパッド中央付近のデッドゾーンがどれくらい広がっているかわかりにくいため、恐る恐る、ちょっと動かしては戻し、またちょっと動かしては戻しという操作になりがち。それも手応えが少ないので、気を抜くとドカンと大きく動かしてしまう。確かにコンセプトは面白いけども、ウーン、という感じである。
新しい入力方式には慣れが必要だといっても、これはちょっとユーザーに多くを要求しすぎる気がする。現状の仕様のままスタンダードを目指すのは厳しそうだ。ただ、少なくとも今回のプロトタイプで物理ボタンが追加されたのは吉報で、右トラックパッドの押し込みによりABXYボタンの機能を表現していた旧モデルに比べたら、一般的なコントローラーに近い感覚でずっとプレイしやすくはなっている。
Valveスタッフに話を聞いたところ、今回出展されたSteam Controllerは3Dプリンタでガワを出力して組み立てた、わりとラフなプロトタイプであるとのこと。今後もユーザーフィードバックを受けつつたくさんの改良を加えていくつもりで、今年の秋までには製品版を出せるようにしたい、と語っていた。
Steam OSの「ホームストリーミング」は完成度高し!
ちなみに各試遊機では「SteamOS」の機能のひとつ、「ホームストリーミング」機能もデモされていた。これは、WindowsやMacで操作するゲームを、ローカルネットワークを通じてSteam Machineで遊べるという仕組み。試遊機の設定では、台の中に仕舞ってあるPCでゲームを実行してリアルタイムエンコード、それをLANを通じてSteam Machineにストリーミング&表示するという形になっていた。
これがなかなか出来がよい。「DiRT3」はもちろん、「ストライダー飛竜」のような即反応型のアクションゲームでも全く違和感無く、遅延が感じられない。モニター下部に統計的な数字がでていたが、それによるとフルHD、60fpsにて、遅延は15~20ミリ秒程度で安定。マウス操作のFPSでも許容できる遅延の小ささだ。映像のビットレートは15Mbps強で、有線LANならもちろん、Wifiネットワークでも十分にいけそうな低帯域である。
特におどろくのが遅延の少なさだが、スタッフによればPC側でハードウェアエンコード、Steam Machines側でハードウェアデコードしているとのこと。具体的にどのハードかは明かしてくれなかったが、1フレーム以下という遅延の低さと、Steam Machinesプロトタイプに搭載されていたビデオカードがGeForce GTX 670であった点から考える限り、NVIDIAのShadowPlayで使われているのと同じ、GPU内のハードウェアエンコーダー回路「NVENC」によるものだろう。
このホームストリーミング機能を使えば、1台のハイスペックPCのパワーを家庭内の各所で使いまわせる。リビング、寝室など巨大なPCを起きたくない場所でも、最小構成のSteam Machinesでハイエンドゲームを遊べるわけだ。ノートブック型やタブレット型のSteam Machinesが登場してくれば、使い勝手はさらに広がる。
Steam Controllerは今後の改良を期待するにしても、Steam OSの実装によりパフォーマンスを引き出されるSteam Machinesは、新種のゲーミングPC、あるいはコンソールマシンの第3勢力として面白い存在になりそう。参入してくるPCベンダーの動向も含めて、今後も注目していきたい。