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「METAL GEAR SOLID V」KONAMI小島秀夫監督インタビュー

自由度の高い本編への架け橋としての「MGSV:GROUND ZEROES」

2月16日開催

【METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES】

3月20日 発売予定(PS4、PS3、Xbox 360)

価格:
2,980円(PS4/PS3/Xbox 360 通常版)
2,480円(PS4/PS3 ダウンロード版)
2,600円(Xbox 360 ダウンロード版)
CEROレーティング:D(17歳以上対象)

 去る2月17日に、複数メディアによる小島秀夫監督への囲み取材がおこなわれた。

 その前日の16日には「METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES(MGSV:GZ)」のメディア向け体験会があり、今回の取材はその体験を踏まえたうえでのものである。「MGSV:GZ」そのもののプレイインプレッションは別記事にて掲載しているが、実際に製品版相当のROMをプレイしたうえでの今回のインタビューは、これまでの記事よりもさらに深いところへ踏み込めたように思う。

 小島監督のスケジュールの都合上、時間としては非常に短く、まだまだ聞き足りない部分も多かったが、プロローグ的な位置づけの「MGSV:GZ」だけでなく、本編にあたる「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN(MGSV:TPP)」についてもいくつかの新しい情報が得られたので、ぜひご一読いただきたい。

 なおインタビュー中に、これまでのシリーズ作品について触れている場面が多く登場する。シリーズ作品から正当系譜とされるものを抜粋して年表にまとめたので、そちらも参照されたし。

タイトル画面のスネーク
「iDROID」と呼ばれる小さな端末を使ってマップの確認やヘリの要請を行なうが、これをiOSやAndroid端末にインストールした「コンパニオンアプリ」から見ることができる。非常に新しい仕組みだ

【メタルギアシリーズ年表(抜粋)】

タイトル本記事での略称発売日ハード
METAL GEARMG11987/07/13MSX2
METAL GEAR 2: SOLID SNAKEMG21990/07/20MSX2
METAL GEAR SOLIDMGS11998/09/03PS
METAL GEAR SOLID 2: SONS OF LIBERTYMGS22001/11/29PS2
METAL GEAR SOLID 3: SNAKE EATERMGS32004/12/16PS2
METAL GEAR SOLID 4: GUNS OF THE PATRIOTSMGS42008/06/12PS3
METAL GEAR SOLID: PEACE WALKERMGS:PW2010/04/29PSP
METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROESMGSV:GZ2014/03/20予定PS4/PS3/Xbox One/Xbox 360
METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAINMGSV:TPP発売日未定PS4/PS3/Xbox One/Xbox 360

「MGSV:GZ」で表現したかったのは「陰影の中でのかくれんぼ」

ライトが当たっているかどうか、影に隠れているかどうかが重要な要素

――監督は、PS4が日本で発売されるというタイミングで、「MGSV:TPP」の序章として「MGSV:GZ」を先にリリースするという話でしたよね。

小島秀夫監督: 全部一緒に出せたらそれが1番いいんですけどね(笑)、「MGSV:TPP」のマップは「MGSV:GZ」の200倍以上ありますので、もうちょっと時間がかかります。

――そのプロローグとしての「MGSV:GZ」で、今回監督が1番表現したかったことは?

小島秀夫監督: 「MG2」のダクトからの潜入とか、「MGS1」のヘリポートでのサーチライトとか、本当にやりたかった陰影の中でのかくれんぼの怖さが、当時のテクノロジーではなかなか表現できなかったんです。

 今回(「MGSV」を動かすオリジナルゲームエンジン)FOX ENGINEを創るときに、「まずはそこをやってみましょう」と、テスト的にそこから始めました。「MGSV:GZ」のマップは「オープンワールド」と言えるほど広くないんですけど、リニア(1本道)じゃなく、ただフィールドがあって、プレーヤーがそこで自由に戦略を立てられるゲーム性、何回遊んでも毎回展開が違ってくるような、昔のゲームがもともと持っていたインタラクティビティをもう1度創ってやろうと。

 それに加えて、ビジュアル的には今までできなかったくらいのレベルにしようと。ただ、「MGSV:TPP」くらいの大規模なオープンワールドにいきなり放り込まれると、従来のユーザーは戸惑ってしまうと思いますので、まずは「MGSV:GZ」で新しいメタルギアの雰囲気に慣れてほしいという意図があります。「MGSV:TPP」では時間や天候の変化がありますが、「MGSV:GZ」では、時間や天候も固定されています。

KONAMI本社内にて、わずかな時間を縫って取材に応じてくれた小島監督。いつも微笑みをたたえた穏やかな表情ながら、こちらの質問を最後まで聞き終える前に先読みして答え始める姿に、頭の回転の早さがうかがえた

世界標準に合わせつつ、工夫された操作方法

――L2ボタンで構えてR2ボタンで発砲というPS4版の操作が、一般的なFPSやTPSでは見かけないスタイルですが?

小島秀夫監督: PS4のコントローラの形状に合わせただけです。L1とR1よりも、L2とR2のほうが、銃のトリガーっぽいというか、押しやすいかなと。ただ、「メタルギア」シリーズってこれまでけっこう特殊な操作方法だったんですけど、世界的な潮流に合わせて、「MGS4」からは一般的な操作方法を採用してます。マルチプラットフォームなのでハードによってコントローラが違うわけですが、できるだけ操作感覚に差が出ないように工夫してます。

作品の時代背景と、テーマを伝える手法

フィールドにはあれこれ乗り物があり、乗り込むこんで走り回ることができる

――「MGSV」の時代背景を「MGS:PW」のあとにしようと思った理由は?

小島秀夫監督: ソリッドスネークの話は「MGS4」で終わってるので、あとは「MG1」に至るまでのビッグボスの話を描くしかないと。「MGS3」の時代が1964年、「MGS:PW」が1974年、「MGSV:GZ」がその1年後の1975年、「MGSV:TPP」が1984年になります。

――シリーズを通して「反戦・反核」というテーマを掲げられていますね。

小島秀夫監督: ビジネスとは関係ないところで、僕自身が伝えたいテーマとして「反戦・反核」がありますが、20数年やっても世の中はまったく変わってない。もう戦争の悲惨さを見せたりという映画の手法をそのまま真似しても仕方ないということで、「MGS:PW」あたりからやり方を変えています。

 「MGS:PW」をプレイされた方はわかると思うのですが、自分たちが軍隊組織として大きくなることで、他国から襲われる危険性が出てくる。その究極の抑止力が核を持つことだったんです。今まで「核を持つことはアカンよ」って言ってたシリーズの主人公が、自ら核を持つ立場になる。こういう考え方を、ゲームをやりながら感じてもらおうと。核を持った先に何があるかと言ったら、もう真っ暗というか、報復の連鎖しかありません。でも、核を持つ側の動機・憎悪もユーザーに体験してもらって、その先どうするか。最終的には、あっと驚く仕掛けも用意してるんですが、現時点では言えないので期待してもらうしかないですね。

オープンワールドならではのゲームデザイン

――今回体験プレイしてみて、鍵のかかった扉をスネークが針金か何かを使って開けるシーンがあります。従来作だとこういう扉は、どこか別の場所で鍵を入手してきて開ける必要がありましたよね?

小島秀夫監督: 別に鍵を探しにいくことって楽しくないんですよ。ただのお使いですし。それよりも針金で開けてる時間、敵に見つからないかソワソワするほうがスリルがありますよね。

――ある施設の仕掛けを作動させるかどうかで、難易度がけっこう変わるシーンもありました。

小島秀夫監督: 従来のゲームだと、兵士の会話を盗み聞きするイベントがあったりして、もっとわかりやすいヒントになってましたよね。でも今回は、一部のプレイヤーだけがたまたま気づいて「オレ天才や!」って(笑)。そういう、見つける喜びを味わってほしいですね。

――従来作では、必ず超人的な能力を持ったボスが場面場面で登場して、それを倒さないと先に進めないようになっていました。シリーズ初のオープンワールドということですが、そうしたボスは「MGSV」でも登場するのでしょうか。

小島秀夫監督: いい質問来ましたね(笑)。ボス戦は、あります。ただ、最後のボスはもちろん戦わなきゃいけないんですが、途中で通せんぼする敵、いわゆる中ボスとして登場する敵は、オープンワールドなので戦わずに通過することもできちゃいます。全部が全部じゃなくて、閉鎖された空間で戦わなきゃいけない中ボスもいるんですけどね。「MGS1」では特殊部隊、「MGS2」ではアメコミ風、「MGS3」では怪人、「MGS4」ではビューティ&ビースト、「MGS:PW」ではAI兵器、と出してきました。「MGSV:TPP」では、それらのさらに上を行くやつを用意してます。

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(不破 誠志郎)