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【ChinaJoy 2013】Qihoo 360 Vice President Chen Jie氏インタビュー

セキュリティベンダーからゲームプラットフォーマーに転身を遂げた彼らの成功の秘訣とは?

7月25日~28日開催(現地時間)

会場:上海新国際博覧中心(Shanghai New International Expo Centre)

 すでにChinaJoyレポートでもたびたび触れているように、中国にも日本でいうDeNAやGREEのようなモバイルに特化したゲームプラットフォーマーがいる。中国ではGoogleの参入が部分的にしか認められていないため、Google Playが機能しておらず、その結果、Androidマーケットには無数のプラットフォーマーがひしめきあう状況になっている。

モバイル系のメーカーが目立った今年のChinaJoy

 その数は400とも500とも言われ、現在も毎日のように生まれている。そうした中でトップランクに位置するのがQihoo 360である。よほどの中国通でなければQihoo 360の存在すら知らないと思われるが、それもそのはずQihoo 360はもともとゲーム屋ではなく、セキュリティ分野で中国最大手のメーカーで、ゲームを含めたソフトウェアプラットフォーム事業を始めたのはたかだか5年前に過ぎない。

 Qihoo 360のモバイルアプリプラットフォーム「360 Mobile Assistant」は、アクティブユーザー2億5,000万人、登録アプリは20万以上、総ダウンロード数は150億以上、従業員数は3000人と、まさに桁外れの規模を誇る。課金ユーザー数は18.2万人と課金転換率の低さもまた驚きだが、今やゲームシーンの中心に位置するモバイルゲームの中国トップメーカーであることは間違いない。

 彼らはなぜ素人であるはずのゲームビジネスで大きな成功を収めることができたのか、なぜそれほど短期間で急成長を遂げることができたのか。今回はQihoo 360のVice President Chen Jie氏にインタビューし、その辺りの事情を伺ってみた。Chen氏は、Qihoo 360の創業メンバーのひとりで、現在37歳。中国メーカーのエグゼクティブとしては非常に若く、また女性でもあり存在感のある人物だ。

売りはセキュリティに強いこと。ゲーム開発は行なわず、プラットフォームビジネスのみに特化

Qihoo 360 Vice President Chen Jie氏
Qihoo 360は今回BtoCには出展せず、BtoBのみブースを置いていた
ChinaJoy期間中には、360タイトルの優秀作の表彰を行なうセレモニーも開催された
Chen氏は繰り返しセキュリティメーカーであったことが、プラットフォーム展開に役立ったと述べた

――まずChenさんのキャリアから教えて下さい。

Chen氏:Qihoo 360では都合7年働いている。その前はYahoo ChinaやSOHUなどに務めていた。

――中国のモバイルゲーム事情は現在どのような状況だと観察しているか?

Chen氏:2012年から中国のモバイルゲーム市場は大きなプラスの変化があって、その中で360は激しい成長を遂げた。弊社も月の売上が1,000万元(約1億6,000万円)以上のタイトルが沢山増えてきた。

――Qihoo 360の売上規模と現在の順位は?

Chen氏:Qihoo 360は中国最大のAndroidアプリマーケットを形成している。シェアは40%、売上は上場企業なので明かせないが、ユーザーは2013年4月時点で2億5,000万人、累計ダウンロードは150億に達している。

――Qihoo 360が提供しているアプリの数は?

Chen氏:PC向けのアプリケーションも含めて全部で20万アプリ。ゲームだけだと数万タイトルある。

――360はアンチウィルスの印象が強いが、ゲームプラットフォーマーとしてどのようなサービスを行なっているのか教えてほしい

Chen氏:360は中国最大のセキュリティソフト会社だが、現在はゲームプラットフォームビジネスに注力している。ゲーム開発はせずに他者の良いゲームだけを提供する。弊社はプラットフォームの運営だけに注力している。最近は日本のSAPも弊社のプラットフォームに来てくれるようになったので、中国のユーザーも日本のゲームに触れる機会が増えている。

――日本のSAPはどこが参加しているか?

Chen氏:Zynga Japanの「あやかし陰陽録」が、360のAndroidマーケットで良い成績を出している。セガの「キングダムコンクエスト2」も360のAndroidマーケットにアプリを置いて、これから本格展開していくところ。あとはDeNAなど。海外メーカーでは、日本より韓国が多い。

――他のプラットフォームと比較しての360の強みは何か?

Chen氏:3つある。まず1つ目は、セキュリティの高いプラットフォームであること。セキュリティに関して中国のユーザーは不安を抱えている。我々はアンチウィルスソフトを提供しているセキュリティに強い会社なので、360プラットフォームに載せているアプリの安全性には格段の注意を払っている。具体的には、載せているアプリは、厳しいセキュリティの検証を行ない、6回違うテストを行なっている。載ってるアプリを提供しているメーカーの中には悪徳商人もいて、通常ではないモードでお金を取ろうとしたりするが、そういう場合は被害があったユーザーに対して、経済的な賠償を行なっている。

 2つ目は、オープンな開発プラットフォーム、すべての権利をSAPに提供しており、我々は運営だけで、開発はしていない。Zyngaのあやかし、韓国のWeMadeのウィンドランナー、DeNA、EA、Rovioなどもアプリを提供している。開発環境の良いプラットフォームを提供することで、世界の実績有るSAPも360でリリースしてくれるようになった。

 3つ目は、中国の中小SAP、海外SAPに対して、中国市場での運営ノウハウを提供していること。ローカライズ、カルチャライズなどの部分で協力できる部分があるので、その都度ノウハウを提供している。

――いままでに行なったカルチャライズにはどのようなものがあるか?

Chen氏:WeMadeのウィンドランナーで、これが最初のケース。中国と韓国のネット環境が違うのでアドバイスした。具体的には韓国のWiFiは整っているが、中国のインフラはまだまだなので、アドバイスとしてはサーバーとの通信を減らすこと、必要な時だけ通信を行なう、そうすると成功しやすいとアドバイスした。

――中国は海外メーカーが成功しにくい印象が強いが、海外SAPで大ヒットしたタイトルはあるか?

Chen氏:WeMadeの「ウィンドランナー」は6月18日にリリースして初日100万人、いまは1,780万を超えている。「テンプルラン2」は初日のダウンロードは70万を超えている。リリースしてから累計5,000万DLを超えている。

――ユーザーはどのような端末を利用し、どのような料金体系の契約をしているのか?

Chen氏:サムスンやhtcが多い。中国は日本と同じように月額契約はあるが、ひと月に使える通信料は決まっているので、新たに使えるようになる月頭と、使い切りたい月末は、アプリをダウンロードするために通信料が増える。月頭は我慢してきたので沢山使う、月末は使い切らないともったいない心理が働くようだ。でも50%のユーザーはアプリのダウンロードにWiFiを利用している

 OSのバージョンはAndroid 2.3が39%で最大だが、Android 4.0以降も増えている。端末はサムスンのギャラクシーS3や9300が多い。サムスンのユーザーが多い。

――Qihoo 360の今後の方向性について教えて欲しい。

Chen氏:中国のユーザーは、ゲームに対する注目度はどんどん高くなっていて、中国のスマートフォン市場もハイスピードで成長しているので、我々としては今後も引き続きオープンな開発者向けプラットフォームを提供すること。それから優秀な開発者を獲得してはユーザーにとって素晴らしいプラットフォームにしていきたい。

 スマートフォンゲームとPCゲームは違いがあって、PCの場合はカジュアルゲームのマネタイズが非常に難しいが、スマートフォンはユーザーベースが大きいので、今後も色んなチャンスがあると思っている。

――「360 Mobile Assistant」の日本展開はあるのか?

Chen氏:現時点ではそこまで考えていないが、まずは、ステップ1として日本の良いゲームを中国に持っていくことから始めて行きたい。

――日本へのメッセージを。

Chen氏:ユーザーへのメッセージとしては、日本のユーザーにも、「キャロットファンタジー」や「フィッシングジョイ」など中国の素晴らしいゲームがあるのでぜひ遊んで貰いたい。ほかにも「我叫MT」や「王者の剣」などは人気があるので体験して貰いたい。

 日本のSAPに対するメッセージとしては、2013年は中国でスマホが爆発的発展が予想されているぜひ素晴らしいゲームに持ってきて、1日でも早く提供して中国の遊べるようにしてほしい。中国には様々なタイトルがひしめいているが、麻雀、トランプゲームなどは人気が高いので、こちらにも注力すれば成功できると思う。

――ありがとうございました。

(中村聖司)