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【特別企画】開発現場に“創造の時間”を生み出す「IncrediBuild」
“作業待ち”のロスを激減するグリッドコンピューティング
(2013/7/18 00:00)
7月19日に大阪の「KKR HOTEL OSAKA」、7月23日に東京の「秋葉原 UDX」にて開催されるゲーム開発者向けツール&ミドルウェアの総合展示会「Game Tools & Middleware Forum 2013」。その会場にゾレアックスジャパンが出展する「IncrediBuild」の最新バージョンに注目が集まっている。
ゲームをはじめ、プログラミング開発の現場には少なからずリッチリソースを必要とするプロジェクトがある。常にそこには、ビルド(ソースコードのコンパイルやライブラリのリンクを行ない、実行ファイルを作成する作業)にかかる“手出しできない待ち時間”というストレスが存在してしまう。あと数時間あれば、もっといいものができるのに……そんな開発者の切なる願いを現実のものとする高速化ソフトウェアが、ゾレアックスジャパンの提供する「IncrediBuild」だ。
今回は「IncrediBuild」の秘密に迫るべく、販売を行なっているゾレアックス ジャパンの、吉岡美奈代表取締役社長、世古口誠取締役、技術部の鳥居嶺司氏にお話を伺った。
作業締切と品質向上。開発現場につきまとう“ジレンマ”を解消
ゲーム開発の現場は、時間との戦いだと言われる。よりよいもの、より多くのアイデアを盛り込みたい一方、早く、確実に製品にしていかなければならない。ユーザーへの満足度向上とともに、常に他社よりも先に“新しいもの”を届けたいという思いもあるからだ。
少しでも早く製品にするには、優秀な人材が必要なことももちろんだが、相応の機材も必要だ。それでも時間短縮がままならないプロセスも存在する。それが、プログラムのビルドだ。
どんなソフトウェアもプログラムによって成り立っているが、Javascriptのようなインタプリタ型でない限り、環境に沿った実行型のファイル形態(いわゆる実行バイナリ)に変換しなければならない。それがビルド(あるいはMake)作業だ。
具体的には、テキストで書かれたソースファイル(プログラム本体)をコンパイルし、関連するライブラリやデータなどのリソースをリンクし、ひとつあるいは複数の実行ファイル形式にしていくプロセスだ。これをしないと“動かして試す”といったことができない。
大規模な開発になればなるほど、ビルドにかかる時間も増えていく。簡単なプログラムであればビルドもあっという間に終わるが、大規模なゲーム開発になればリソースの量は膨大となる。すると、いくら速いCPUや膨大なメモリを積んでいようが、必然的に数時間単位でビルドに時間が削られていくことになるわけだ。
新しいインターフェイスへの差し替え、モーションの計算式を変更、シェーディングルックを変更したなど、どうしても全体を通してチェックしなければならないものは、プログラム全体を再ビルドしなければならず、大きく時間が削られることになる。少しでもいい製品にするために欠かせない作業だが、同時にスケジュールも押していく。
もちろん、現場ではいかにビルドを効率化するか、こまごまとしたノウハウで対応しているわけだが、根本的な解決策はないに等しかった。プレイステーション 3やXbox 360などのコンパイラそのものが速くなってくれないことには手の下しようはなかったのだ。
最大約30倍。驚異の高速化を実現する「IncrediBuild」
そんな、どうにもならない重いプロセスを劇的に改善してくれるのが「IncrediBiuld」だ。どれだけ改善するかといえば、最大で約30倍。それまで15時間かかっていたものが30分で済んでしまうという驚きの速度だ。今まで寝落ちする前にビルドを投げていたものが、ちょっとご飯に行く時間ぐらいで済んでしまうほど。
「本当にそんなに早くなるのか?」と疑問に思われるかもしれないが、「『IncrediBuild』はイスラエルで開発された『XGE』というグリッドコンピューティングエンジンを使って、ネットワーク上の複数PCに対して分散処理を仕掛け、高速化を実現しています。スタンドアロンのPCで処理を行なうものではないんです」(吉岡氏)。
つまり、重い処理を複数のPCに少しずつ分散し、1度に処理することで高速化を図っているのだ。実際、セガのPS3用アクションアドベンチャー「龍が如く4 伝説を継ぐもの」の開発現場に導入され、劇的な効果を見せている。