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PS Vita「英雄伝説 零の軌跡 Evolution」インタビュー

アップデートでゲームがより快適に!
そしてキャラアニが次にPS Vita化する日本ファルコムタイトルは?

発売中

価格:6,090円(PlayStation Vitaカード版)

5,040円(ダウンロード版)

CEROレーティング:B(12歳以上対象)

「英雄伝説 零の軌跡 Evolution」

 キャラアニは、2012年10月にPlayStation Vita用ストーリーRPG「英雄伝説 零の軌跡 Evolution」を発売することでゲーム業界に参入した。参入第1作目として制作されたのは日本ファルコムの人気シリーズ「英雄伝説」だった。

 キャラアニと言えばゲーム業界と遠いようでいて関連グッズの制作・販売などを行なっており、実は近い存在だ。だが、コンシューマゲームの制作はなかなかに大変で、昔ならいざ知らず、なかなか簡単に踏み切れるものではない。どういった勝算があって参入したのだろうか? そこにはキャラアニの得意分野を活かした計算と、日本ファルコムとの深い繋がりがあった。また今回のインタビューでは、制作にあたってフルボイス化したことにより意外な事態がおき、移植の難しさに直面した話しなど面白い話題も収められている。

 また、発売直後に一部のユーザーにおいてゲームの進行に影響を及ぼす現象が発生したが、その時のユーザーからの反応を吸収する形で、よりゲームをプレイしやすくアップデートも同時に行なっており、今では快適にプレイすることができるようになっている。

 そして年があけ、なぜこのタイミングでインタビューが掲載されるのかと言えば、無料版の配信が開始され、Live Areaの更新もあり、次回作の足音も聞こえてこようかといった時期だからだ。今年は、日本ファルコムも「英雄伝説」シリーズ最新作のプレイステーション 3/PlayStation Vita用「英雄伝説 閃の軌跡」をリリースする予定だ。そんななかキャラアニのゲームへの想いを聞いてみた。答えていただいたのは、キャラアニの平賀忠和プロデューサーと、ゲームの制作を手がけたピラミッドの中野 賢代表取締役社長だ。

 無料版では序章がまるまる楽しめるかなりのボリュームを収録。「単に移植だから……」と思っているシリーズファンも、フルボイスの魅力をたっぷり楽しんで欲しいし、これをプレイし終え、キャラアニが予定している新作、そして日本ファルコムの新作へと繋がっていくと、より世界観を楽しめることだろう。PS Vita本体の価格も改訂された今がプレイする良い機会ではなかろうか?

キャラアニの平賀忠和プロデューサー
ピラミッドの中野 賢代表取締役社長

キャラアニの得意とするところを活かしてゲーム作りに参入

開発を振り返りながら、いろいろ話を伺った

――まずは諸々振り返っていただきたいと思います。キャラアニは、なぜゲーム業界に参入しようとお考えになられたのでしょうか?

平賀忠和氏(以下:平賀氏):キャラアニ.comは、元々グッズを作って通販している会社です。その時々でやっているアニメーション、コミックスから商品を作っていく流れがあります。これまで日本ファルコムさんとドラマCDやイベントグッズなどを作らせていただいていたとき、お客様の反応が強い作品をお持ちで、そういった意味でうちとシンパシーがありました。

 お客様としてとらえたとき、愛着度が強い方々が多いなと感じたんです。ゲームも当然、新作が発売されていくなかでお客様が安定していらっしゃる。そこで、キャラアニとして日本ファルコムさんと何か色々やってみたいと考えたんです。「ゲームのアレンジはできるものなのか?」というお話をさせていただいたところ「いいですよ」という返事をいただきました。ゲームはプレイに時間がかかることもあり、お客様の作品に対する愛着が強く、うちも展開しやすい。ゲームを基点にしてビジネスを考えてみようという意味合いで、ゲーム事業をはじめました。

――キャラアニさん側が日本ファルコム側におうかがいをたてたのでしょうか?

平賀氏:そうですね。日本ファルコムさんは色々な話をきいてくださる会社さんです。最近はFalcom jdk BANDのライブを企画しているんですけど、普通だったら専門業者に依頼されるのを、うちみたいなグッズ屋というか、eコマースをやっている会社でも話次第ではやらせていただける。面白い企画にのってきてくれやすい会社さんなんですよね。

――これまでの長いお付き合いから、日本ファルコムさんのキャラクターや作品世界を理解していると認めてもらっていることもあるのでしょうか?

平賀氏:そこはもう(そうである、と)おっしゃっていただきました。特に大きいのは、「イースvs.空の軌跡」、「英雄伝説 零の軌跡」のドラマCDをやらせていただいたこと。作品のストーリー性を理解したうえで、ドラマCDの脚本を作らせていただいているので、そこにおいては非常に信用していただいているのかなと思います。

――逆にいえば、それがないと! というところですね。1番重要なところですよね。

平賀氏:そうですね。「このキャラクターは、こういうしゃべり方をするよね」とか「こういう心情で語っているんだよね」をイチから説明するよりは、もう既にわかってるでしょ? 大丈夫ですよね? というレベルから信用していただいているところはあるのかな、と思います。

――制作はキャラアニさんとピラミッドさんで、日本ファルコムさんはチェックだけだったのでしょうか?

平賀氏:そうです。企画はピラミッドさんにも入っていただいています。1度他プラットフォームで発売されているゲームなので、当然色々な新しい要素を入れなければならない。そこで“餅は餅屋”というか、ピラミッドさんから「こういうゲームを作ったほうが面白い」というご指導をただいて制作を進めました。

中野賢氏(以下:中野氏):音楽はすべて日本ファルコムさんが手配されて、リミックス版などはご用意していただきました。それ以外の制作物……新規アニメーションの作り直しはキャラアニさんで、ピラミッドは開発部分を担当しました。実際のソフトウェアをいじるところ。そのなかにグラフィックスの評価も含まれているので、そこの部分を担当しています。どういうものを目指して作るのかは、長く話し合ってましたね。日本ファルコムさんの監修をいただいて、OKが出たところでスタートした感じです。

――ピラミッドさんとして、PS Vitaタイトルを手がけたのは初めてだったのでしょうか?

中野氏:そうですね。開発スタート時、PS Vitaはまだ世に出ていませんでした。NGPというタイトルで発表された直後くらいに、キャラアニさんから「うちでゲームを出そうと思っているんだけど、どう思う? 協力してくれる?」というお話をいただいて「喜んでやりますよ」と。そこから「日本ファルコムさんの案件なんだけど」みたいな話がありました。

――では、最初期の段階では何をやるのかわからなかったのですか?

中野氏:そのひとつ前に、キャラアニさんとは日本ファルコムさんの案件でAndroid OS搭載のスマートフォン向けライブ壁紙アプリを作らせていただいたのですが、具体的にどのタイトルという話はなく「ゲーム事業をやろうと考えている。ついては開発会社が必要だから、協力してくれませんか」というのが1番最初でしたね。

――要は“オリジナル”をやる可能性もあったわけじゃないですか。

中野氏:あぁ、それはたぶんないと思っていました(笑)。ピラミッドとしての最初のソフトウェア開発のお付き合いは日本ファルコムさん案件だったので、たぶんそうじゃないかと思っていました。

――話は少し戻りますが、多数のフランチャイズがあるなかで「英雄伝説」を選ばれた理由は?

平賀氏:当時ドラマCDを制作していた流れから「軌跡シリーズが1番人気があった」というのがあります。当時企画が出たとき「碧の軌跡」発売直前くらい。「碧の軌跡」が出るなら「零の軌跡」を出したほうがお客様も喜ばれるかなと。当時グループ会社さんのなかでもコミックスやノベル企画が進行していたんですけど、そこでも「零の軌跡」を扱っていたということで、リスペクトするというか、チャレンジしてみようか! という感じで社内で企画が動きました。

――それから結構時間が経ってしまいましたが……。

平賀氏:「軌跡」シリーズはこれからも続く作品で、どこから着手するかというと「空」になるのでしょうか? 当時ぼくらもどういう媒体で出していこうか考え抜いて……結局PS Vitaだったんですけど。ぼくらがやってきたドラマCDみたいな要素をつけくわえていくと、やはり容量的な問題がある。そう考えたとき、当時NGP(PS Vita)の発表があって「こっちだったらたくさん入るのかなぁ?」という話をした。そこでタイミング的に「零」という選択肢になりました。

――ドラマCDがベースであるからこそ、フルボイスは絶対対応しなければならないと考えられましたか?

平賀氏:キャラクターにしゃべってほしいな、と思ったんです。日本ファルコムさんのゲームも戦闘ボイスなど重要なものはあるんですけど、そこをつなげて聞いてみたいなという風に思っていました。ドラマCDは時間的にはしょらなければいけない、もっというとオリジナルストーリーを若干変えて展開させている部分がある。物語性を生かすとなると「フルできいてみたいね」というところから企画に着手しています。そこが1番売りになる要素じゃないかと考えました。

「英雄伝説 零の軌跡 Evolution」の戦闘シーン

――制作時は、最大容量から逆算して内容を決めるのでしょうか? それとも「これを入れたい!」と作っていき、入らないものを削っていくという感じでしたか?

平賀氏:今回は「これを入れたい!」というところから入りました。まだPS Vitaの容量がわからない時期で、どれくらい入るか正直見当もつかなかった。当初ボイスは今よりも少なくて「あれ、ここまでしゃべっていたのに、なんで急にしゃべらなくなるの?」と、フラストレーションがたまる部分がありました。「ちょっと、聞いてて気持ち悪いよね」と社内で検討して「せめてメインストーリーは声でおっかけてもらったほうがいい」と。全ボイスが入るという自信がないまま進めて、ピラミッドさんに「なんとか入れてください!」みたいな感じだった記憶があります(笑)。

中野氏:サブシナリオまでは容量的に不可能で、それは最初からわかっていました。メインシナリオだったら、まぁいけるんじゃないかという試算があって、実際収録に入りました。そこでデータ化したものが渡されて、どれくらいの容量かが見えてくるんです。そこから圧縮技術やPS Vitaのライブラリ構造に移行するのですが、それがPSPのものより格段に良かったんですね。そうでなければ入らなかったか、もっと小さいデータにして……音質が悪くなるのは嫌だなと思っていたんですけど。でも、いいクオリティを保てたのです。とにかく“量”を重視して入れていったという感じです。

――では、思ったよりはトラブルなく入れることができた感じでしょうか?

中野氏:できましたね。最後「ごめんなさい、ここだけ削らせてください!」と土下座する覚悟はしていたんです。でも、予定していた部分はちゃんと入れることができました。

――音質的にも十分満足いくものになったんでしょうか?

中野氏:はい。最後にそこをいじって、さらにデータを圧縮しようかと思っていたんですけど、そこには至らなかった。

――収録には、どれくらい時間がかかったんでしょうか?

平賀氏:「零の軌跡」のキャストって、みなさんお忙しい方々ばかりで……本当にスケジュールを抑えるのに難航しました。2カ月半くらいかけたかな? ちょっとした空き時間に録らせてもらったりとか。「あぁ、こんなにかかるんだなぁ」と思いましたね。

――ピラミッドさんはデータを受け取るだけで、収録に関してはキャラアニさんにおまかせという感だったのでしょうか?

中野氏:そうですね。音に関してはドラマCDの経験のうえで、他のゲームであればうちからサウンドディレクターを出さないといけないときもありますけど。たぶん、うちが(人を)出しても追いつかないほどのボリュームがありましたから。うちは「データをくれれば満足ですよ」ということで待っていました(笑)。

――ゲームの音声収録で、よく声優さんがおっしゃるのが「収録ブースでひとりきり」というのがあります。“かけあいができない”ことにフラストレーションがたまる。元のドラマCDは、みなさんかけあいでやられていたものが、今回はひとりでやらなきゃいけないじゃないですか。

平賀氏:今回はすべて個別です。

松岡綾乃氏(以下:松岡氏):最初にスケジュール出しをしたときに「このキャストでは(かけあい収録は)難しい」となりました。

平賀氏:ただ、既にドラマCDをやっていたので、キャストのみなさんはだいたいのストーリーや「前はこんな感じでからんだっけ」というのは覚えていただいていました。色々なところで「あのドラマCDの経験が役に立ちました」とはいわれました。

――他のゲームに比べると、かなりいい感じなんですね。

中野氏:すべてドラマCDにつながる(一同笑)。

松岡氏:収録時も「あのとき(ドラマCDのとき)こんな感じだったから、こういう返しがくるだろう」というのを想定してキャストの方々も演技されていたので「誰がやるんですか?」という感じでもなく、「誰々さんなら、こんな感じですね」とか、そういう形でした。

――すべてがいい方向に作用した、というところですね。

平賀氏:ドラマCDの制作とゲームボイスの収録に、さほど時間があかなかったのが良かったかなと思います。2〜3年空くと「あれ、なんだっけかな?」というのがあったりしますから。

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(船津稔 / 豊臣孝和)