iOSアプリ情報ステージ「iLove iPhone in TGS」開催

カプコン、ゲームロフトが新作発表。「ネコミミ」の次作も登場


9月20日~23日 開催(20日、21日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料



 東京ゲームショウでは恒例となったステージイベント「iLove iPhone in TGS」では、今年もiOS向けの新作アプリやサービスが各社から発表された。今回は、株式会社カプコン、ゲームロフト株式会社、AppBankGames株式会社、neurowearの4社がステージに上がった。

 この日は最新機種のiPhone 5の発売日でもあった。それだけに本イベントも注目されるのか、はたまた本体受け取りでそれどころではないのかは定かではないが、会場には多くの来場者が詰め掛けた。




■ App Storeの4年間のランキング傾向を分析。当日発売のiPhone 5の実力も検証

スマートフォンコーディネーターの大野泰敬氏

 ステージでは最初に、コメンテーターを務めたスマートフォンコーディネーターの大野泰敬氏が、iPhone 3Gが発売された2008年当時から現在までのiOSアプリランキングの経緯を振り返った。

 2008年のゲームアプリ市場は、海外や個人のデベロッパーがランクインする時代だった。これが1年後の2009年になると、大手ゲームメーカーが徐々に上位ランキングを支配し、個人がランキングに入ることが少なくなってきた。そして2010年には大手ゲームメーカーが上位を独占する状態になる。

 ただこの時、もう1つの動きが見られた。それが無料のアプリ内課金モデルの登場だ。2011年は家庭用ゲーム機の人気タイトルの移植系が増え、有料アプリランキング上位の多くは大幅な値下げをしているものが多くなった。そして販売数ではなく売上額のランキングとなるセールスランキングでは、基本無料でアプリ内課金を使ったモデルが上位に並んだ。2012年現在はこの流れがさらに加速し、セールスランキングは基本無料のアプリ内課金モデルが独占した。有料アプリランキングも、上位の9割が最安値となる85円に値下げしているという。

 続いて大野氏は、本日発売されたiPhone 5と、旧機種となったiPhone 4Sを並べて、ゲーム機としてどう進化したかについて語った。テストに使用されたのは、ゲームロフトの「アスファルト7: Heat」。こちらはiPhone 5のワイド画面にいち早く対応したアプリとなっている。

 iPhone 5は画面が広くなったことで、より迫力ある映像が楽しめる。ここは当然なのだが、実際に並べて動かしてみると、ゲームのデータ読み込みがiPhone 4Sよりも圧倒的に早いのがわかった。同じゲームを起動しても、タイトル画面が表示されるのはiPhone 5がかなり先。その後のゲームの挙動も、ロード時間が短縮されており、かなり快適になっている。想像していた以上に大きな差があり、iPhone 5のゲーム機としての優位性がはっきりと見られた。


2008年からのランキングデータの変遷を紹介。さらにiPhone 4Sと5のゲームアプリの動作比較も行なった



■ ハイクオリティなゲームを届け続けるための「ペイミアムモデル」

カプコンの手塚武氏

 続いてはメーカー各社のプレゼンテーションへと移った。トップバッターはカプコンの手塚武氏。先日配信を開始した「ストリートファイター×鉄拳」について、以前配信して高い評価を受けた「ストリートファイターIV」と比較して語った。

 「ストリートファイターIV」は、元々のアーケード版は3Dグラフィックスだったが、iOSでは当時の端末では性能が足りず、2Dグラフィックスに落とし込んでいた。「ストリートファイター×鉄拳」は端末の進化に伴い、iOS版も3Dで作られている。これによって、「ストリートファイターIV」ではデータ量が大きくなりすぎるため実現できなかったRetina対応が「ストリートファイター×鉄拳」では可能となった。

 ランキングは有料アプリでは1位を獲得したが、セールスランキングでは18位に留まっているという。「以前は有料アプリランキングの1位は数だけで見られるため取りにくかったが、今は無料アプリが優勢で売り上げ1位が取りにくい」と状況の変化を説明した。その上で手塚氏は、「アプリを検索で探すのは難易度が高い。ランキングに乗らないものはこの世にないのと同じ」と厳しい言葉で述べた。

 それに対するアイデアとして、手塚氏は「ペイミアムモデル」を挙げた。これはアプリ内課金を使った「フリーミアムモデル」と、売り切り型の「プレミアムモデル」の間を取ったような形で、本体アプリを有料ながら低価格で販売し、さらにアプリ内課金も搭載するというモデルだ。

 プレミアムモデルのゲームは、高い品質が求められるため開発費が増大し、さらにターゲットとなるのはゲームファンだけで限定的。それでいて製品寿命は短く、価格も高価になるため購入をためらいがちになる。この弱点をそのまま裏返したのがフリーミアムモデルといえる。手塚氏は「フリーミアムモデルは今の市場に適している」としながらも、最初から本格的なゲームを提供するのが難しいことや、大勢の無課金者を支えるための設備投資が必要になることなど、デメリットがあることも示した。もちろんフリーミアムであっても注目されることがなければ、「ランキングに乗らないものはこの世にないのと同じ」状態に陥ってしまう。

 ペイミアムモデルであれば、プレミアムモデル並のクオリティの高いゲームを提供しながらも、本体価格はかなり抑えられる。さらに継続的に運営することで追加課金を得て、フリーミアムモデルと同様の高額課金者がゲームを支えるようなモデルになりつつ、長期的に露出することで低額課金者もそれなりについてきて、結果的に売り上げ増大に繋がるというロジックだ。

 「ストリートファイター×鉄拳」はこのモデルを採用したゲームで、「ストリートファイターIV」で実績のある高クオリティな対戦格闘ゲームを、現在は250円という低価格で販売。さらに時短効果のあるアイテムを追加課金で販売している。これでフリーミアムとプレミアムのいいとこ取りができる……といいな、というのが現状だそうだ。現時点で18位のセールスランキングをどこまで伸ばせるかが、その結果を示すことになる。

 またカプコンは、今年で25周年を迎える「ロックマン」シリーズのキャラクターが総出演する「ロックマン クロスオーバー」を今秋配信するとしている。こちらはフリーミアムモデルで展開され、「カイブツクロニクル」を手がける株式会社アドウェイズと共同で開発されている。


「ストリートファイター×鉄拳」におけるペイミアムモデルの狙いを解説。さらに新作となる「ロックマン クロスオーバー」も紹介された



■ 累計630万ダウンロードの人気シリーズがiPhone 5対応で登場

ゲームロフトの稲葉芳恵氏

 ゲームロフトからは、広報の稲葉芳恵氏が登壇。同社のFPSアプリ「モダンコンバット」シリーズの新作となる「モダンコンバット4」を今秋配信することを明らかにした。ゲーム内容についてはまだ詳細は明らかにされていないが、iPhone 5のワイドスクリーンに対応した高品質なグラフィックスのスクリーンショットが紹介された。

 なお「モダンコンバット」シリーズは、2009年の発売以来、累計で630万ダウンロードを記録。さらに現段階での最新作となる「モダンコンバット3」のみで、月間ユニークユーザーが150万人という高い人気を誇っていることも明かした。なお「モダンコンバット3」は、現在キャンペーン価格の85円で販売されている。


今秋配信予定のシリーズ最新作「モダンコンバット4」を紹介。iPhone 5にも対応している



■ 設立第1作目はファンタジーゴルフゲーム

AppBankの村井智建氏
AppBankGamesの宮川義之氏

 iOSのアプリレビューサイトとして知られるAppBankは、今年2月にゲーム開発会社AppBankGamesを設立した。そこで作られる最初のタイトルがついに発表となった。

 AppBank代表取締役の村井智建氏は、AppBankGames設立の経緯を説明。2011年8月にグリーの「探検ドリランド」がランキングで1位になった時の衝撃がきっかけだったという。「2008年の頃にiPhoneを手に入れた人たちは、そういうものにはあまり熱中しない傾向があった。ただiPhone 3GS、4とユーザーが拡大したことなどで、iPhoneはガジェット好きが飛びつくものではなく、普通の人が日常的に使うものになったということを実感した」という。

 村井氏はそれに対する不満はないとしながらも、「iPhone市場全体を考えた時に、このランキングは残念だと感じた。もっといろんな種類のアプリで遊びたい。しかしソーシャルゲームがランキング上位を占める傾向は強くなった。多くのユーザーがiPhoneでゲームで遊んで、iPhoneがゲーム機として認められるためには、まだゲームの数が足りない。市場が大きくなってほしいという気持ちが強くなった」ということから、自らゲーム開発会社を立ち上げることにしたという。

 AppBankGamesに集まった20名のスタッフで作られたのは、誰もが知っていて、据え置き機でもメジャーなゴルフゲーム。ただし、スイングでタイミングよくタップするゲームではなく、スマートフォンのタッチパネルならではのものを、半年間かけて作り出したという。

 続いて登壇したAppBankGames代表取締役の宮川義之氏が、そのゴルフゲーム「ダンジョンズ&ゴルフ」を紹介した。新しいゴルフゲームを作るに当たり、既存のゴルフゲームのコピーにならないよう、スタッフ総出で本物のゴルフをやってみたり、プロのゴルフを観戦するなどして、ゴルフそのものの面白さに着目。さらにゴルフは基本的なルールがシンプルでありながら、なかなか上達しない、なぜかクラブの種類が多いなど難しい部分もある。そこをあえてゴルフを知らない人に遊ばせて、詰まる部分を確認しつつゲームを開発していったという。

 「ダンジョンズ&ゴルフ」では、甲冑を着たキャラクターや魔法使いのキャラクターなど、ファンタジー世界を舞台にしたゴルフゲームになっている。特徴はその世界観だけでなく、ゲームプレイが常にマルチプレイであるというところ。ゲームを始めると自動的に他のプレーヤーと接続され、数人が同時にホールを回る。通信においてインターネットやローカルエリアといった用語がそもそも一般には通じにくいため、ゲームを始めた時点でインターネットに繋がって他のプレーヤーと常にプレイするという仕組みをとっている。またクラブ選択ではなく、飛距離をアイコンとして変更するというインターフェイスになっている。

 ゲーム中は他のプレーヤーとのコミュニケーションも可能。スイング後にでボールを空中で操作したり、バンカーに入ってもティーショットと同じコンディションで打てたりといったアイテムも用意されている。またプレイ中にロード時間を感じさせないような作りにするなど、クオリティにもこだわっている。同日発売のiPhone 5にも早速対応し、ワイド画面で表示するデモプレイも行なった。

 配信時期は、早ければ1カ月以内としている。さらに村井氏は「ゴルフの次も考えているので期待してほしい」と述べた。


AppBankGamesの第1作目となる「ダンジョンズ&ゴルフ」。スマートフォン向けに特化して作られている



■ 「ネコミミ」の次は「シッポ」も用意

neurowearの加賀谷友典氏

 昨年の東京ゲームショウで、感情に合わせて動くニューロコミュニケーションマシン「ネコミミ」を出展して大きな話題を呼んだneurowear。今年も東京ゲームショウに出展し、「ネコミミ」に続く新たな商品やサービスを提示した。ステージにはneurowearの加賀谷友典氏が登壇。

 「ネコミミ」は昨年の出展後、オランダの皇太子ファミリーから使ってみたいと連絡があったり、米TIME誌の今年のトップ50発明に選ばれたりと、世界的な話題となったことを紹介。製品化されたのは2012年4月29日。製品版は昨年の展示品とは異なり、耳の部分が取り外しが可能になったことで、さまざまなオプションが提供できるようになった。デコレーションを施した「デコミミ」や、内蔵した加速度センサーに反応してLEDが光るクリスマスバージョンなども登場した。

 ただこの「ネコミミ」、発表当初からあるリクエストが多数寄せられていたという。それは「尻尾が欲しい」という声。チームでは「耳を作ったから次は尻尾というのは安直過ぎる」といった意見もあったが、メインプランナーが当初のコンセプトに立ち返るため、コンセプトアートを確認したところ、そこには耳とともに尻尾も描かれていた。それで尻尾の開発が決まった。

 今回持ち込まれた試作品では、尻尾の動きにこだわってチューニングされており、小さな動きと大きな動きで感情の違いを表現している。それなりのサイズがある尻尾がふさふさと大きく動く様子は、見ていてかなり楽しい気持ちにさせてくれる。「ネコミミ」と同様に商品化も検討されているが、今回が初めての一般公開となるため、その反応をみながらラインナップを考えたいとしている。

 ただneurowearは、この尻尾の開発のみに留まらなかった。「脳波で動く身体拡張デバイスだけでは足りない。尻尾が動く時には気持ちが動く。その気持ちを記録してはどうか」。計測された気持ちと場所をワンセットで記録するというのが「neuro tagging map」というサービスだ。気持ちと場所のデータを地図上にタグとして打ち込むことで、他のユーザーのデータも参照できる。それによって、例えば多くの人がリラックスできる場所が、自動的に地図上で示されるというわけだ。このサービスは尻尾デバイスがなくても利用できるようにしたいとしている。リリースは2013年の予定。

 さらにneurowearは今回、身体拡張とは別のもう1つのコンセプトを用意した。脳波と音楽を組み合わせたもので、聞き流しがちな音楽を集中して聴くための仕組みとなる、「Neuro Turntable」だ。脳波センサーが、真剣に音楽を聞こうとしていることを掴むと、ターンテーブルが動く。集中することで音楽が再生されるというわけだ。こちらは実物のターンテーブルのほか、同様の機能を有するスマートフォン版も用意するとしている。今回はコンセプトモデルとしての展示で、スマートフォンを使った作品を今後も考えていくとしている。

 加賀谷氏はneurowearについて、「1番大切にしているのは、コミュニケーションのための道具であるということ。体験したことがないコミュニケーションツール、新しいコミュニケーションを今後も体験できるツールを作っていきたい」と述べた。


「ネコミミ」に続いて「シッポ」も開発。さらに地図と感情データを組み合わせたユニークなタグサービスも開始する

(2012年 9月 22日)

[Reported by 石田賀津男]