SCE Asia、4年ぶりの出展で中国ユーザーにPS3とPS Vitaをアピール

山内一典氏のイベントでは「GT6」開発着手にコアなファンが大興奮!


7月26日~29日開催(現地時間)



 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のアジア部門SCE Asiaは今回、4年振りにChina Digital Entertainment Expo(China Joy)へ出展した。期待されていたPS3やPS Vitaの中国国内での販売計画などの発表は行なわれず、参考出展という形でPS3およびPS Vitaのタイトルを多くの試遊台で出展していた。

 ChinaJoy初日の7月26日には、PS3「グランツーリスモ5」のイベントが開催され、プロデューサーを務めるポリフォニー・デジタル代表取締役社長の山内一典氏が登場した。中国のゲームファンは山内氏を大きな喜びの声と共に迎えた。さらに、イベントの後には中国メディア向けインタビューも行なわれた。本稿ではブースレポートと合わせて「グランツーリスモ5」のイベントと中国メディア向けインタビューをレポートしたい。





■ PS Vitaを中国初出展、HMD「HMZ-T1」で「グランツーリスモ5」を試遊可能

30近くの試遊台で、PS Vitaをアピール
「デッドオアアライブ5」はシングルプレイのみだったが、人気が高かった

 SCE Asiaブースは、青と白の涼しげでシンプルな色使いでブースをまとめ、他の装飾に力を入れた中国メーカーのブースとは違った雰囲気を出していた。前面に大きくPS Vitaの体験コーナーを設け、もう一方では、「グランツーリスモ5」のドライビングシートによる試遊コーナーを設置、そしてPS3タイトルの試遊コーナーと、PS Moveのコーナー、奥にイベント用のステージという構成だった。

 PS Vitaの出展タイトルは、「アンチャーテッド -地図なき冒険の始まり-」、「GRAVITY DAZE」、「メタルギア ソリッド HDエディション」、「Little Deviants」、「WIPEOUT2048」、「リトルビッグプラネット」、「モーターストームRC」、「ROCKET BIRDS」など、多くは英語版だったが、「みんなのゴルフ6」は中国語+英語、「真三國無双 NEXT」、「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」、「ラグナロクオデッセイ」は中国語版が出展されていた。中国語版は、香港で8月に発売されるという。

 PS3タイトルは、日本で9月27日発売予定の「デッドオアアライブ5」のシングルプレイが体験できたほか、「ストリートファイター X 鉄拳」が特に人気を集めていた。この他にも「FIFFA12」、「NBA 2K12」、「STARHAWK」、「DUST 514」が英語版、「ファイナルファンタジーXIII-2」、「真・三國無双6 猛将伝」が中国語版で、「JOURNEY」が英語+中国語版で出展されていた。出展タイトルに日本語版はなかったが、会場での紹介ムービーには日本語のものもあった。

 PS Moveタイトルでは、「SORCERY」、「リトルビッグプラネット」、「MEDIEVAL MOVES」、「CARNIVAL」、「スポーツチャンピオン」などが、英語+中国語版で出展されていた。PS3「グランツーリスモ5」のコクピット型の試遊台は5台設置されていたが、特に前面と左右に2画面の合計で5画面のモニターによる試遊台は、いつも黒山の人だかりだった。見ているだけでも楽しそうで、仲間と一緒に、集団でプレイ待ちの列に加わる人も多かった。

 全体的に、他のブースがステージイベントに力を入れ、的当てゲームや、グッズの配布に力を入れているのに対し、SCE Asiaブースは試遊台がたっぷりで、内容もしっかり楽しめるもので、“きちんとゲームが遊べる場所”として、会場の人気を集めているように感じた。コンシューマーゲームという、中国国内ではまだ馴染みの薄いジャンルが、ユーザーにどう響いたかは気になるところだ。

香港より先行しているものや、定番タイトルまで、PS Vitaは多彩なラインナップで出展されていた
PS3「グランツーリスモ5」は5画面筐体や、ヘッドマウントディスプレイでもプレイできる
PS3、PS Moveのタイトルも。コンパニオンも人気だ




■ 山内氏の登場に大興奮の中国ファン、「GT6」は現在構想中

プロデューサーを務めるポリフォニー・デジタル代表取締役社長の山内一典氏
ニュルブルクリンクでのレースの模様をまとめたムービーを公開
PS3本体にサインしてもらってはしゃぐファン

 SCE Asiaブースでは、7月26日にPS3「グランツーリスモ5」のイベントが行なわれた。イベントの前にから多くのファンが集まった。SCE Asiaは中国でのツイッター「Sina Weibo」を通じて、プロデューサーの山内氏が登場することをアナウンスしたところ、様々な中国メディアがこれを取り上げ、ファンの知ることになったという。

 ファン達の多くは、手に「グランツーリスモ5(GT5)」のパッケージを持っていた。中国ではPS3はもちろん、「GT5」も正規には流通していないが、ファン達は入手し、この時のために持ってきたのだ山内氏が登場すると同時に、会場から大きな歓声が上がった。「GT5」中には日本語で、「山内さんー」と呼びかけるファンも。

 山内氏は会場を見回し、「これだけ暑い中、来て下さってありがとうございます。私は上海に来るのは初めてですが、これだけ多くの人が『GT5』を遊んでくれていることに驚いています。『GT5』を通じて、車の魅力に触れて下さい」と挨拶。そして、山内氏は「グランツーリスモ」シリーズの特徴を、たくさんの車種が収録され、世界中のコースを走れるドライビングシミュレーターであると説明した。

 次に山内氏は、事前に寄せられた質問のいくつかに応えた。「Sina Weibo」を通じて寄せられた質問は1,000,以上もあったという。最初の質問は、「グランツーリスモ5(GT5)」をPS3というハードで発売したことに関しての感想で、山内氏は「高いパフォーマンスを持つハードだからこそ、その性能をフルに活かすための開発は難しかった」と語った。また、山内氏はインターネットを通じてユーザーとコミュニケーションをとっている事について、「これまでのゲーム開発とは違い、感想をユーザーから直接聞ける、話を聞けるのは刺激になりますね」と答えた。

 そして、上海には上海サーキットがあり、こういった中国の施設を「グランツーリスモ」シリーズに取り入れるか? という質問に山内氏は「明日(7月27日)に、上海サーキットを見に行きます。そこでどんな要素をゲームに活かせるか考えたいと思います」と答えると一際高い歓声が上がった。さらに、「グランツーリスモ6」に関しては、「GT5」の開発が終了してから直ぐに構想を練っていることがあきらかにされ、会場はさらに大きく盛り上がった。

 次に山内氏は自身がレーサーとしてコースを走ったドイツ・ニュルブルクリンクの模様をムービーで紹介した。山内氏は「このドイツ・ニュルブルクリンクで乗った青いGT-Rは今後DLCとして配信する」と新情報を発表した。配信時期は明示されなかったが、「GT」ファンには楽しみな情報だ。会場のファン達は本当に山内氏の声を一言も漏らさず聞こうとしていて、山内氏が何か話すとそれだけで楽しそうに声を上げる。ファンはドンドン興奮してきて、その熱情のままプレスと一般参加者をわけている柵から身を乗り出し、少しでも山内氏の近くに行こうとにじり寄り、柵を体で前に押していった。イベント後半は、筆者達プレスはファンに押されて、とうとうステージにはさまれた状態になってしまった。

 イベント終了後のサイン会では、満面の笑顔のファン達が、嬉しそうに山内氏にサインをもらっていた。メーカー側から配られたサイン用の紙を差し出す人だけでなく、パッケージ、さらにはPS3本体を持ってきた人も数人いた。彼等は自分が尊敬するクリエーターに会えた喜びで、とてもテンションが高く、見ているだけでこちらも思わず笑みを浮かべてしまうほど、「嬉しい」という気持を全身から発していた。

 続いて会場を移して、中国メディア向けの山内氏のインタビューが行なわれた。山内氏は、今回の感想を求められ、「こんなに大きな規模のビデオゲームのショウはないと思います。驚きましたし、ユーザーの熱気も世界一だと思います。この熱気は元気にさせてくれますし、来年も来るんじゃないかと思います」と早くも来年の再登場を約束した。

 重ねて「『グランツーリスモ』シリーズに中国の要素は入るのか」と言う質問に、「香港のサーキットは入っていますし、今後は入ってくると思います。中国の車に関しては、何が一番クールなのか、教えてもらえればと思っています」。また、「GT5」の“満足度”に関しては、「開発に5年かかりましたが、PS3の枠内ではほぼ満足です。もちろん細かいところでこうすれば良かった、と思う部分もありますが、全体としては満足しています」と山内氏は答えた。

 さらに、「中国のユーザーはMODのように、既存のゲームにユーザー達が自由に改造しています。『グランツーリスモ5』はPCゲームのようにユーザーが手を加えられる会報を刷る予定があるか」という質問が上がった。ここに関して山内氏は、「うまいバランスが見つけられれば、ユーザーが手を入れられるところはできるだけ増やしていきたい」と答えた。また、現実のドライブにかかる重力の再現は、例えば直径50メートルの装置を作ればそこそこリアルなものができるかもしれません、そういったトライもやっていきたい、とのことだ。また、「アドベンチャーや、ロールプレイングなどのゲームも作りたいと考える事がある、SNSに対するアイデアも持っている」といった発言もあった。

 そして、「GT6」に関しては、「僕らは常に最先端のものを、最先端の表現で目指していくが、現時点では明確にはわからない」。また、PS Vitaで「グランツーリスモ」シリーズが出るか、という事に関しては、「もし作るなら、いつでも遊べる、いつでも3G回線が利用できる、こう言った点を利用したい」とのこと。「GT5」は開発者としてオンラインで早い友達と腕を競うのが、駆け引きやコミュニケーションを覚え、一番楽しいのではないか、と語った。

 今回、山内氏は、「GT6」の開発に向け、「GT5」開発終了直後から取り組んでいることが語られた。上海サーキットの経験が、今後の「GT5」、そして「GT6」にどう活かされるのか、期待したい。

イベント中、ファンはどんどん興奮していき、ついにはステージ間際まで、囲いを突破して迫ってきてしまった。サイン会でもとても嬉しそうだった
ニュルブルクリンクの模様をムービーで紹介、その後中国メディア向けインタビューが行なわれた

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(2012年 7月 27日)

[Reported by 勝田哲也]