Game Developers Conference 2012レポート
【GDC 2012】EA/Maxis、シリーズ最新作「SimCity」発表会を開催
十年ぶりに蘇る衝撃の進化を果たした都市育成シミュレーション
米Electronic Artsは、GDC2日目の3月6日の夜、GDC会場のMoscone Center近くのW Hotelにてプライベートイベント「Game Changers」を開催し、そのオープニングイベントとしてEA/Maxisの人気シリーズ最新作「SimCity(シムシティ)」を正式発表した。発売時期は日本を含む全世界で2013年を予定し、価格は未定。発売プラットフォームは現時点ではPCのみ。
「SimCity」については、発表会に合わせて全世界でプレスリリースが発信され、弊誌でも紹介したとおりだが、改めて発表会の模様をお届けしたい。なお、「SimCity」で採用されているMaxis製のゲームエンジン「GlassBox」についてはGDCにおいて個別にセッションが設けられたのでそちらも後ほどお伝えしたい。
【「SimCity」トレーラー】 |
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「SimCity」のゲームコンセプトをプリレンダー映像で表現したトレーラー。トレーラーの最後に「Image not representative of actual gameplay(実際のゲームプレイの表現ではありません)」とあるとおり、このクオリティで「SimCity」が遊べるわけではないので注意したい |
【コンセプトアート】 | |
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「SimCity」のコンセプトアート。発売はまだ来年ということもあって、現時点ではスクリーンショットは1点も公開されなかった |
■ PCゲーム界の金字塔「SimCity」が10年ぶりに復活
会場の様子 |
あのMaxisが復活! |
スピーチを行なうMaxis Senior Vise PresidentのLucy Bradshaw氏。Will Wright氏の“Sim Everything”の構想を受け継いでいる人物だ |
EAのプライベートイベント「Game Changers」は、世界を変えるために活動している著名人を招き、モデレーターと共にディスカッションして世界をよりよいものに変えるための知識を共有するというアメリカらしいイベント。招待状だけ見ると、まったくゲームとは関係なさそうなイベントだが、「SimCity」の新作が発表されるとあって、多くのゲームメディアが詰めかけた。
会場に入ってまず印象的だったのは、お馴染みのEAのロゴに加えて、「SimCity」シリーズのもともとの開発元であり、EAが買収した後も開発部門として独自の存在感を放っていたMaxisのロゴが輝いていたことだ。Maxisは、EAファンならご存じの通り、Will Wright氏のライフワークとして位置づけていたシミュレーションゲーム「SPORE」の商業的な失敗と、MaxisトップのWill Wright氏のEA退社と時期を合わせて解体され、EA GamesやEA Sportsと呼称パターンを合わせた「EA Play」という無機的なブランドに改称されていた。
Maxisもまた、Peter Molyneux氏退社後のBullfrog ProductionsやRichard Garriott氏退社後のOrigin Systemsと同じように、EAに完全吸収されてしまう危機にあったわけだが、近年のEA Mobileが展開するiOS/Android向けの「The Sims」や、子会社PlayFishが手がけるFacebook向けソーシャルゲーム 「The Sims Social」で温故知新的な人気を集めているためか、今回の「SimCity」発表を機にMaxisの名前が復活することになった。往年のPCゲームファンにとってはこちらもまた嬉しいニュースだろう。
さて、発表会ではモデレーターの紹介を受けて登壇したのはMaxis Senior Vise PresidentのLucy Bradshaw氏。長年Will Wright氏の右腕としてMaxisを支え、特に「The Sims」シリーズで大きな功績を残してきた人物だ。なお、ステージには「Game Changers」用に物々しい椅子が2脚置かれ、ひょっとするとWill Wright氏も登場するのかと思われたが、それはなかった。
Bradshaw氏はEA恒例のリークによって事前に情報が漏れていたことを意識して、「噂は本当です。『SimCity』が帰ってきました!」と笑顔で語り始め、「『SimCity』は1989年に始めて登場し、ゲーム史に唯一無二の位置を確保しました。100万の人たちがプレイし、100万の人たちに衝撃を与えました。それは、自分が思い描く世界を作ることができる素晴らしいゲームだからです。シムシティーを通じて、人々は自分の影響力を表現できました。そして、『SimCity』は人たちに感激を与えました。アメリカでの今宵、この場に集まっていただいたのは、『SimCity』はMaxisによって復活し、2013年にPCに発売することをアナウンスするためです」と報告した。
Bradshaw氏によれば「SimCity」は、Maxisで「SimCity 2000」や「SimCity 3000」、そして「SimCity 4」の開発に携わったベテランスタッフが開発を担当しているという。10年ぶりということで、ゲームエンジンは「SimCity 4」とはまったく別の完全新規開発の3Dゲームエンジン「GlassBox」を採用し、10年間の進化を実感できるような表現力の高い演出を実現しているという。ちなみに完全3Dの「SimCity」は意外にも今作が初となる。
特に強化しているのはシミュレーション要素と演出周り。シミュレーション要素については、今回も「SimCity」の中核的な要素として位置づけられ、都市の構成するすべての要素がお互いに関係性を持ち、たとえば、あるSimが仕事に行く場合、特定の渋滞に巻き込まれ、会社に行く時間が遅れたりすることもあるという。
また、演出については、家を建てるときに、わざわざホコリが舞う演出をしたり、地形を削るときは物理演算に基づいて削るなど、ゲームとしての楽しさと、リアルなシミュレーションを両立させているようだ。Bradshaw氏は、「巨大なトカゲが現れて建物を壊すかも知れません。新しい物理エンジンはあなたの想像を超えるでしょう」と自信たっぷりにコメントした。
また、時代の進化、遊び方の進化に合わせて、当然ながらマルチプレイにも対応する。フレンドの都市と区域を分けて共に存在することができ、ソーシャルゲームのように物資を送って助けたり、あるいは火事の延焼や公害などの悪い影響を与えることもできるという。また、世界のプレーヤーの都市は、リアルタイムでランキングされ、常に自分の順位が何位なのかを知ることができる。ランク付けされるのは、現金、健康、自然、教育力、憂鬱、怠惰、不潔など、善し悪し両方の様々なポイントとなる。「SimCity」の最新作らしく“ゲームの目的は無数に用意されている”。
あと、詳細は不明ながら、「SimCity」シリーズ、「The Sim」シリーズでお馴染みのMaxis UIも進化するという。これによりいま自分が何をやり、そしてSimたちにどういう影響を与えているかを把握でき、さらに街で何が起きているのかをビジュアル的にシミュレーションし、即時フィードバックを受けられるという。MaxisのゲームはUIも優れているだけに、この点も非常に楽しみだ。
ひととおり説明を終えたBradshaw氏は、トレーラーを公開し、「我々は本物の『SimCity』を作るべく、開発を続けています」と挨拶し、30分ほどの短い発表会を終えた。なお、最後に補足しておくと、今回公開されたトレーラーの映像は、実機によるリアルタイムレンダリングされた映像ではない。あくまで「SimCity」風に都市建設のダイナミズムを伝えるプリレンダー映像だ。GDCでは「GlassBox」のセッションで、「SimCity」の実機映像も公開されたが、ビジュアル的には「SimCity4」からさほど進化はなく、シミュレーションエンジンとして作り込んでいることが判明した。こちらのセッションの模様は後ほどお届けしたい。
□「GDC 2012」のホームページ(英語)
http://www.gdconf.com/
(2012年 3月 8日)