Taipei Game Show 2012レポート

【Taipei Game Show 2012】Yeck Entertainment CEO Malo Huang氏インタビュー
MMORPGの後は、ソーシャル&モバイルゲームで新たにグローバル展開を目指す! PS Home向けにもコンテンツを提供


2月2日~6日開催

会場:南港展覧館

入場料:大人200元、子供100元


 Yeck Entertainmentは、2007年に発売された台湾初のPS3タイトル「台灣高鐵」(音楽館)の開発を担当した独立系の小規模デベロッパーだ。その後、大型タイトルとしてWindows用MMORPG「Legend of Glory」の開発を進めていたものの開発は難航し、予定していた2010年になってもβテストを開始できず、この間、当時パートナーとして同じオフィスで働いていたAgun & Milkが独立するなどの紆余曲折があり、結局、「Legend of Glory」の開発は中止となった。

 しかし同社は、2011年9月に台湾台北市で開催されたGamania Game Showに「便利商店Web(My Convinience Store)」を出展し、健在ぶりをアピールしていた。さらに今年のTaipei Game Showでは、SCETブースにPlayStation Homeのラウンジ「YECK LAND」を参考出展し、SCETともリレーションを復活させていた。今回は3年ぶりに同社を訪ね、最新動向について取材してきた。

【Yeck Entertainmentの代表作】
Yeckの代表作2タイトル。「台灣高鐵」は同社の知名度向上に大きく寄与したが、「Legend of Glory」はプロトタイプのままで終わってしまった 。



■ 新生Yeck Entertainmentはブラウザ/ソーシャルゲーム中心のデベロッパーに

Yeck Entertainment CEO Malo Huang氏
同社一押しのタイトル「Dungeon Viva」。タイからスタートさせ、ゲームの完成度を高めてから台湾や日本で展開していくという

 久々に訪れたYeck Entertainmentは、オフィスこそ変わりなかったが、その中身は、これまで同社の事業の柱としていた大型3DMMORPG「Legend of Glory」は開発中止になったことで大規模な変更を迫られ、ブラウザ/モバイル向けのゲームデベロッパーへと転身を果たしていた。

 開発スタッフは30人ほどだというが、先述した「便利商店」以外に、「Dungeon Viva」、「Atelier Fantasy(冒険者工房)」、「LOVE&PORK」、「Angel Poring」といったブラウザ/モバイルゲームを手がけ、さらにSCETと提携してPS Home向けのコンテンツ制作も行なっているなど、驚くほどの多作ぶりである。開発環境は基本的にUnityを採用し、Unityの習熟度に関しては台湾随一を自負しているという。また、クオリティだけでなく、速度にも自信を持っており、これが同社の多作や契約締結の多さに結びついているという。以下、簡単にブラウザ/モバイルゲームを紹介していく。

・「Dungeon Viva」

 「Dungeon Viva」は、現在開発を進めている新作ブラウザゲームで、トライアルとして2月2日からタイでクローズドβテストを開始したという。タイからスタートした理由は、もし失敗してもダメージを最小限に抑えられるためということで、このあたりの価値観は台湾独自のものがある。

 現在、タイ語のほかに、英語、スペイン語、フランス語、繁体字、簡体字に対応し、今後日本語への対応予定もあるという。日本展開は夏頃を目指しており、計画ではFacebookとmixi、ニコニコアプリに対応する予定としている。ビジネスモデルは基本プレイ無料のアイテム課金を予定。

 基本的なゲーム内容は米Electronic Artsの「Dungeon Keeper」を彷彿とさせるダンジョン経営シミュレーションゲームで、「Dungeon Viva」ではブラウザベースのソーシャルゲームとして、仲間を募って他のダンジョンに攻め入ったり、共同で自分のダンジョンを守ったりできる。

 プレーヤーはダンジョンの主となる“魔王”で、ダンジョン内でモンスターを集め、強い軍団と、強力なダンジョンを構築していくことがゲームの目的となる。他のプレーヤーのダンジョンを攻略することで占領することができ、領土を広げることもできるという。他のダンジョンへの侵攻は、もっとも近い場所で4時間待つ必要があるということで、その目で見ることはできなかったが、防衛戦だけでなく、ダンジョン攻略戦もあるところが楽しみなところだ。

 ブラウザゲームとはいえ、Unityベースで開発されているため、ダンジョンは3Dグラフィックスで描かれており、魔王やモンスターのアニメーションなども含めて実に良く動く。キャラクターのモデリングは可愛らしく、日本でも受ける余地があると感じた。なお、将来的にはPS3やXbox 360といったコンシューマーへの展開も視野に入れているという。


【Dungeon Viva】

・「Atelier Fantasy(冒険者工房)」

 「Atelier Fantasy」は、ガストの「アトリエ」シリーズの影響を強く受けたFacebook向けの工房育成シミュレーションゲーム。「便利商店」のエンジンをベースに、舞台をコンビニから工房に変え、錬金術に使う素材の採取のフェイズを加えているところが大きな特徴となる。錬金術を駆使してモノを作り、店員を雇って工房の棚に並べて販売して利益を上げ、工房を大きくしていく。素材は「アトリエ」シリーズのように、各地を冒険し、モンスターの襲来を防ぎながら、自ら採集していく。錬金術のレシピは秘密で、最大3つの素材を組み合わせて新しいモノを作ることができるという。

 現在は、台湾限定で有料サービスありのオープンβテスト中。有料サービスの部分は正式サービス後にすべてポイントで還元するという。日本ではあまり聞いたことのないβテストスタイルで、これもまた台湾独自の風景でおもしろい。


【Atelier Fantasy(冒険者工房)】

・「Angel Poring」

 「ラグナロクオンライン」(ガンホー)の人気モンスター「ポリン」をフィーチャーしたiPhone/iPod Touch向けパズルゲーム。傾き検知と物理エンジンを採用しており、操作方法は、タッチと傾きを変えることだけ。画面上部から降ってくる色の異なるポリンを、傾きを変えて一定数のまとまりを作り、タッチで消していく。すでに日本でもApp Storeを通じて販売されているが、Yeckが開発を担当しているとは知らなかった。


【Angel Poring】



■ 実はPS Homeの開発に携わっていたYeck。今後、継続的にPS Home向けのコンテンツを提供

Malo氏は、かつてPS Homeの開発に携わっていたという意外な事実を明かしてくれた
Taipei Game Showではボードに掲示されていた
PS Homeコンテンツは日本にも展開していく予定

 また、Yeckでは、「台灣高鐵」(音楽館)に続くSCETとの新たな共同事業としてSCEが展開するコミュニティサービスPlayStation Homeにも参入する。計画としては2段階にわかれており、1段階は、2012年1月から月に1回のペースで、YECK独自デザインのアバターアイテムを有料配信するというもので、2段階では、日本や欧米のゲームメーカーがPS Homeに展開しているラウンジを、SCE Asiaのリージョンで始めて開設する。展開地域はアジアと欧米を予定しているが、日本での展開も視野に入れている。

 モバイルゲームやソーシャルゲームを中心に扱っているYECKのPS Homeへの参入はいささか唐突感があるように思われたが、実はYECKは、かつてSCEA(America)の委託を受けてPS Homeそのものの開発の一部を担当しており、勝手知ったる存在だという。担当した分野はPS Homeの家具やアバターアイテムのモデリングとデザインを行なったこともあり、アバターアイテムやラウンジの作り方もすでに理解しているという。

 また、YECKとしても、PS Homeのソーシャル要素は、彼らが展開しているソーシャルゲームと親和性が高いため、学びの機会とも捉えているという。SCETとしては新規開発プロジェクトとして複数の選択肢を提案したということだが、最終的にYECKがPS Homeでの開発を選択したということだ。

 具体的なコンテンツとして、まずアバターアイテムについては第1弾がすでに1月11日から配信が始まっており、Toxic Doll Full Body SuitとMercenary Woman Full Body Suitの2つの配信を開始している。価格は1アイテム当たり2.49ドルで、1点で全身を覆う着ぐるみアイテムとなっている。

 今回の取材では2月実装予定のアバターアイテムDragon Year Toxic Doll Full Body Suit(龍年毒娃娃套裝)、Dragon Year Mercenary Woman Full Body Suit(龍年女傭兵套裝)も実機上で見せて貰うことができたが、どぎつい色をしたアメコミチックな“は虫類系アバター”で、あまり日本やアジアでは受けなさそうに感じたが、欧米圏をターゲットにしたもので、狙い通りの出来映えだということだった。

 続いて時期未定ながら今後実装を予定しているPS Homeのラウンジ「YECK LAND」は、YECKの「Dungeon Viva」等のキャラクターを使ったゲームセンターのようなものを想定しているという。レースやパズルゲーム、タワーディフェンス型のミニゲームを取りそろえ、従量制や売り切り型など何らかの形での有料サービスを検討しているという。

 ゆくゆくは現在ブラウザ向けに展開している「Dungeon Viva」のPS3版もPSNを通じて配信する計画を立てており、PS Homeへの展開を通じてグローバルでのYECKや「Dungeon Viva」の知名度を高めていく計画だ。他社と比べると、若干回りくどい形でコンシューマーゲーム市場への参入をもくろむYECKだが、その開発力はSCETも認めるところだけに、今後の展開が注目されるところだ。


【Dragon Year Toxic Doll Full Body Suit(龍年毒娃娃套裝)】

【Dragon Year Mercenary Woman Full Body Suit(龍年女傭兵套裝)】

(2012年 2月 6日)

[Reported by 中村聖司]