コーエーテクモゲームス、「ネットワーク事業戦略発表会」を開催
「100万人の大航海時代」など新作ソーシャルゲーム3本や「myGAMECITY」のリニューアルなどを発表


8月30日開催

会場:コーエーテクモゲームス本社



 株式会社コーエーテクモゲームスは8月30日、本社会議室で「ネットワーク事業戦略発表会」を開催した。発表会ではコーエーテクモグループのオンラインゲーム、ソーシャルゲーム、ネットワーク事業に関する戦略と、「100万人のWinning Post」、「100万人の大航海時代」、「100万人の超WORLDサッカー!」という3つのソーシャルゲーム新規タイトル、そしてコーエーテクモゲームスのSNSサービス「myGAMECITY」のリニューアルなど、盛り沢山な内容が発表された。

 プレゼンテーションには、コーエーテクモゲームス代表取締役社長の襟川陽一氏、専務取締役でネットワーク事業部部長の小林伸太郎氏、常務執行役員でネットワーク事業部副事業部長の藤重和博氏、執行役員でポータルサービス担当の藤田一巳氏という同社のオンラインゲーム事業のトップが勢ぞろいし、外の暑気に負けないネットワーク事業への熱意と意気込みが感じられる発表会となった。



■ 今後はソーシャルゲームがネットワーク事業の中心に

コーエーテクモゲームス代表取締役社長の襟川陽一氏
ネットワーク事業の売上と営業収益の比率

 まず始めにコーエーテクモゲームス代表取締役社長の襟川陽一氏が挨拶を行なった。襟川氏は「コーエーテクモのスピリッツである“創造と貢献”を核として、いつも新しいことにチャレンジし、新しいものをお客様に提供していくために、通信やインターネットを使ったゲームにチャレンジし続けてきました」とこれまでのネットワーク事業を振り返り、さらに「今年はネットワーク事業が成長性と収益性を確保するための柱として非常に大きく伸びている。ネットワーク事業の中でも、ソーシャルゲームを中心的なジャンルとして力を入れていくために頑張っている」と現状を説明した。

 コーエーテクモゲームスはこれまでコンシューマやPC向けのオンラインゲームを主軸にネットワーク事業を展開してきたが、2010年8月にモバゲータウンにフィーチャーフォン用ソーシャルゲーム「100万人の信長の野望」を提供したのを皮切りに、本格的にソーシャルゲーム、ブラウザゲームの展開を開始した。2010年10月にはGREEにフィーチャーフォン用の「100万人の三國志」を、Yahoo!モバゲーにブラウザゲーム「のぶニャガの野望」を提供している。2011年にはFacebookにシンガポールで開発した「Jolly Wood」をローンチ、「100万人のモンスタファーム」の北米サービスも開始している。

 2009年度には売上345億中、約11%の40億がネットワーク事業関連を占めていたが、営業利益では8億の赤字だった。しかし2010年後半からソーシャルゲームを展開していった結果、売上に占める比率は320億中、約14%の46億まで上がり、営業利益では12億の黒字になるなど大幅に改善した。今期はさらに比率を伸ばし、売上見込み350億で、オンラインゲーム事業は73億、営業利益では全体の40%にあたる20億を目標として掲げている。



■ キーワードは「マルチプラットフォーム」と「グローバル」

専務取締役でネットワーク事業部部長の小林伸太郎氏
ネットワーク事業部の戦略のテーマ
現状と今後のマルチプラットフォームでのサービス予定

 具体的なネットワーク事業の戦略については、専務取締役ネットワーク事業部部長の小林伸太郎氏が「マルチプラットフォーム・マルチデバイス」と「グローバルソーシャルゲーム戦略」という2つのキーワードで説明。マルチプラットフォームについては「100万人の信長の野望」のスマートフォン対応や、「のぶニャガの野望」のフィーチャーフォン/スマートフォン対応をはじめ、PC、PSPなどあらゆるデバイスを通じてサービスを展開していくというもの。

 もう1つは「弊社の強みであるパッケージゲームとの強力な連携を図って、それぞれの相乗効果を上げていきたい。有機的な連携によって利益の拡大を図っていきたい」(小林氏)というプラットフォームを超えた連携にも力をいれていくという方針だ。直近の例では、GREEのフィーチャーフォン用ソーシャルゲーム「100万人の戦国無双」は、8月25日に発売したばかりのプレイステーション用の「戦国無双3 Empires」で相互にアイテムのプレゼントを行なっている。

 グローバルな展開については、オンラインゲームとソーシャルゲームで方針が異なる。オンラインゲームについては中国、韓国、台湾などですでにサービスを展開しているが、さらに現在伸び盛りの東南アジア市場に注目して注力していく。ソーシャルゲームはGREEやDeNAの戦略に沿った形での海外展開を考えていく。先日開催されたGREEのカンファレンスでは、「100万人の三國志」をGREEが協力関係を結んでいる中国最大のゲームプラットフォームTencentに向けて提供することが発表されている。

 グローバルなネットワーク事業への注力のため、日本だけではなく、シンガポール、上海、カナダの子会社をグローバルな開発拠点としてそれぞれの地域性に合わせたソーシャルゲーム開発に力を入れている。開発のための人員も、子会社を合わせた数が昨年末の200人から300人へと大幅に増加している。

 ソーシャルゲームの会員数は現在8タイトルで400万人。今後はオンラインゲーム事業や家庭用のパッケージ事業、ポータル、モバイル、メディア・ライツなどの事業と相互に連携をとることで「短期に1,000万人という総会員数を達成」(小林氏)するという目標を立てている。

 小林氏は「パッケージゲームでは、任天堂さんやソニーさんが展開したプラットフォームがグローバルスタンダードになりました。GREEやモバゲータウンも、同じように日本発の特徴的なプラットフォームだと思っています。コンテンツプロバイダーとして、新しいプラットフォームに積極的にかかわっていきたい。中国・東南アジアの伸びは著しいものがあり、乗り遅れることなく、ここに対するサービスを行なっていきたい」と語った。


【スライド】
サービス中のオンラインゲームと、月間アクティブユーザー数サービス中のソーシャルゲームサービス中のオンラインゲームやポータルサービス
アジアのゲーム市場規模世界の主要なSNSの会員数グループ全体の連携の流れ



■ GREE用2タイトル、モバゲータウン用1タイトルの新作ソーシャルゲーム

常務執行役員ネットワーク事業部副事業部長の藤重和博氏

 新規タイトルについては常務執行役員ネットワーク事業部副事業部長の藤重和博氏が紹介した。新しく発表されたソーシャルゲームは3タイトル。いずれもリリース当初はフィーチャーフォンのみの展開となるが、「なるべく早期にフィーチャーフォンでの展開も予定している」と藤重氏。そのほか、既存のオンラインやソーシャルのタイトルの今後の展開についても既に発表されている内容を含めて藤重氏が今後の方針を説明した。

 「100万人のWinning Post」は、同社の人気競馬シミュレーションゲーム「Winning Post」のIPを利用したソーシャルゲーム。ユーザーはブリーダーになってG1制覇を目指す。馬を育てて調教するだけではなく、育てた馬を種牡馬として友達の馬と交配させて、新たな血統の馬を作り出していくことができる。プラットフォームはGREEで、9月からβサービスを予定している。本日から事前登録が可能だ。


【100万人のWinning Post】
レースだけではなく、ブリーディングで友達ともコミュニケーションを楽しめる

 「100万人の大航海時代」は、「大航海時代」シリーズをモチーフにしたソーシャルゲーム。「戦闘や交易、探索というオンラインゲームでプレイしている要素をソーシャルでも楽しんでいただけるゲームデザインにしています」(藤重氏)という。様々な国が登場するテーマの汎用性ゆえ、グローバルな展開を狙っていく旗艦タイトルとして、この秋、モバゲータウンからのサービスが予定されている。


【100万人の大航海時代】
オンラインゲームの「大航海時代 Online」の楽しみを、ソーシャルゲーム化

 「100万人の超WORLDサッカー!」はコーエーテクモゲームスグループのCWS BrainsがPCとモバイル向けに運営しているサッカー情報ポータルサイト「超WORLDサッカー!」と連携したソーシャルゲーム。「超WORLDサッカー!」は世界のサッカー情報や国内クラブの情報などを発信して、ワールドカップの時には7,000人以上のPVを記録している。「100万人の超WORLDサッカー!」はサッカーの戦略的な部分をゲーム化したもので、タクティカルなサッカーゲームというジャンルでワールドワイドに展開していく。ヨーロッパのクラブとも現在契約について動きがあるようだ。


【100万人の超WORLDサッカー!】
情報ポータルとの連携によって、タクティカルなサッカーゲームという新境地を目指す

 また、ソーシャルゲーム事業のフラッグシップタイトルである「100万人の信長の野望」についてはスマートフォン版をリリースすることが明らかにされ、8月25日からβサービスが始まっている「100万人の戦国無双」は、8月31日から有料サービスを含めた正式サービスに移行することが発表された。「100万人の戦国無双」では、PS3版「戦国無双3 Empires」と双方向連動を実現している。

 オンラインゲームでは9月28日に「信長の野望 Online」の豪華特典が付いたWindows用パッケージ「信長の野望 Online ~新星の章~ プレミアムボックス 決戦前夜」が発売になる。11月8日には「大航海時代 Online Tierra Americana」の大規模アップデート「Chapter 3」実装に合わせて「トレジャーパック 自由の大地」が発売される。また、「真・三國無双 Online」は2007年11月のアイテム課金転換から4周年を記念したパッケージを発売し、「NINJA GAIDEN Σ2」とのコラボレーションで、「リュウ・ハヤブサ」や「あかね」のアバターが出に入るお友達紹介キャンペーンを予定している。

 また、東京ゲームショウでは毎年おなじみの「ネットエンターテインメントフェスタ2011」を開催し、試遊やステージを行なう予定だ。


【スライド】
既存ソーシャルゲームの新プラットフォームへの展開「信長の野望 Online ~新星の章~ プレミアムボックス 決戦前夜」「大航海時代 Online Tierra Americana」の「トレジャーパック 自由の大地」
「真・三國無双 Online」のサービスパックキャンペーン東京ゲームショウの「ネットエンターテインメントフェスタ2011」



■ 「myGAMECITY」をゲームとして“遊べる”SNSにリニューアル

執行役員でポータルサービス担当の藤田一巳氏
「myGAMECITY」の新マスコット、ゆる系の「ニャブラハム・リンニャーン」と秘書(右)
リアル「ニャブラハム・リンニャーン」も会場に登場

 コーエーテクモゲームスが行なっているネットワークポータル「GAMECITY」は現在会員数200万人を突破している。さらに昨年9月から、市民IDを登録した人なら誰でも利用できるSNS「myGAMECITY」のβサービスを開始した。

 今回のリニューアルで、SNSとゲームが融合した新しいタイプのプラットフォームとして生まれ変わる。「myGAMECITY」への登録やSNSへの投稿など、ポータル内で行なうすべての行為にゲーム的要素が盛り込まれ、それ自体がゲームコンテンツとなるというのだ。

 目標の会員数は日本だけで1,000万人。なるべく早期に達成したいと藤田氏は語る。質疑応答では8年前にできて現在200万人という数字で、そこから800万人を早期に増やすのは難しいのではという質問も出たが、「昨今のプラットフォームはバイラルループが非常に際立った効果を発揮している。1人が5人を紹介してくれれば、1,000万人になる」と藤田氏は自信を見せた。

 この数字は奇しくもソーシャルゲームの目標総会員数と同じだが、「myGAMECITY」をGREEやモバゲータウンに対抗するオープンプラットフォームにしたいわけではなく、「あくまでもコーエーテクモゲームスのIPが集合したゲームコミュニティであり、これ自体が1つのゲームだと考えて欲しい」(藤田氏)という存在なのだそうだ。

 このリニューアルに合わせて登場する、「myGAMECITY」の新マスコット「myGAMECITY市長」のニャブラハム・リンニャーンもお披露目された。このキャラクターは今年「myGAMECITY」内で行なわれた市長選挙によってユーザーに選ばれた。大きな着ぐるみのリアル市長も登場。今後は様々なイベントに出没する予定だそうだ。

 リアルイベントとしては、株式会社SCRAPが実施している「リアル脱出ゲーム」とコラボレーションをした、戦国がテーマの「リアル脱出ゲーム」のイベントが今冬に開催される。リアル脱出ゲームは、参加者がたくさんの暗号や謎を解いて密室からの脱出を試みる実体験型のエンターテイメント。「すべてのものがゲームになるというコンセプトを、まずはリアルに体験してもらおうというコンセプト」(藤田氏)で開催される。


【スライド】
「GAMECITY」の歴史ニャブラハム市長のマニフェスト「リアル脱出ゲーム」とのコラボレーションイベント

(2011年 8月 30日)

[Reported by 石井聡]