【HANGAME EX 2011】FPS期待の新作「スペシャルフォース2」

脳科学に基づいたアプローチで総合的なクオリティを向上


5月13日~14日 開催

会場:韓国・済州島 新羅ホテル


 韓国NHNとNHN Japan株式会社の共同開催による発表会「HANGAME EX 2011」では、2日目となる14日に日本向けのパブリッシングタイトルについて発表された。

 NHN Japan代表取締役社長の森川亮氏は13日の発表において、今後力を入れるとした3つの分野のうちの1つとしてFPSを挙げている。その新作として発表されたのは、同社のFPSの看板タイトルである「スペシャルフォース」の続編、「スペシャルフォース2」だ。現在も開発中で、日本でのサービススケジュールは未定としている。




■ 前作の「分隊戦闘」を活かしつつ、反省点を多数改善

NHN Japan「スペシャルフォース2」プロジェクトリーダーの佐野亘氏(左)と、韓国Dragonfly「スペシャルフォース2」チーム長のコ・ソンウォン氏(右)

 本作のプレゼンテーションは、開発元の韓国Dragonflyで「スペシャルフォース2」のチーム長を務めるコ・ソンウォン氏と、NHN Japanで本作のプロジェクトリーダーを担当する佐野亘氏が行なった。コ氏は本作の開発において、多くのスタッフが「スペシャルフォース」の開発担当者で構成されていることを紹介。また開発手法にAgile開発方法論のSCRUMを採用することで、数年に渡る開発の中でも、周辺環境の変化に柔軟に対応していくプロセスをとっているとした。

 ゲーム内容は「スペシャルフォース」の続編として、「スピード感のある歩兵戦闘を前作から受け継ぎ、分隊戦闘の完成を目指している」という。プレーヤーキャラクターは、「スペシャルフォース」に続き、現代の特殊部隊が登場する。

 「スペシャルフォース」との違いについては、まず銃を撃つ打撃感が挙げられた。コ氏は「打撃感については、韓国で1番多くノウハウを蓄積していると言える。本作でもFPSの本質的な打撃感を追求し、更なるアップグレードを続けている」と自信を見せた。他には難易度の多様性や、外見的な個性を出すアイテムを含む武器のカスタマイズ、ユーザーを自然とチームプレイに誘導できる仕組みなどを挙げた。

 また前作の反省点をふまえた点として、「前作はライフルとスナイパーに偏重して使われていた。もっとさまざまな武器を使えれるようにし、ユーザーがもっといろんな武器で幅広く楽しめるよう誘導したい」という。システム面においては、一般的なアイテムのアップデート程度であれば、サービスを停止させずに追加できるエンジンを搭載する。パッチデータも変更点の差分だけ配布するエンジンを用意したいとしている。

 ここでコ氏は、韓国のゲームユーザーの動向について、「既にプレイ中のゲームからあまり移動しない傾向がある」と述べた。この理由としてコ氏は、「いろんな機能を持つゲームが成功できないものが多くあったが、それらはもっぱら新たな機能追加だけに集中していたため、ユーザーが慣れるまでのハードルが高かった。全てのユーザーは新規ユーザーと考え、最低限、ゲームにはまり込めるようにする環境が必要」と分析。本作ではそこにも注力しているという。


前作「スペシャルフォース」からの変更点・強化点。分隊戦闘の完成と、打撃感の向上を柱に、さまざまな要素で改良が加えられている



■ 脳科学に踏み込み、総合的なクオリティを引き上げる

ラスベガスでの銃器のサウンド収録は、それ以外の目的も持って行なわれた

 本物の銃器のサウンドはラスベガスで収録された。ハリウッドや一流ゲームタイトルのサウンドデザイナー、さらには「Call of Duty 4」の武器コンサルタントも参加したという。この収録の目的は、ゲームにリアルなサウンドを持ち込むことが主目的だが、コ氏は武器に触れることそのものも目的だったという。「ゲームはユーザーに経験を伝えるものだと思っている。単純に誰かを倒して快楽を得るだけでなく、ゲームを通じて自分の経験をより豊かにする。私は軍隊にいた時、いくつかの銃器を使ったが、ゲームに出てくる全ての武器を使えるわけではない。開発者がそれを経験していないと、ユーザーに経験を伝えられないと思った。収録にはかなりの費用がかかったが、そこで私が得た経験をゲームに溶け込ませている」と述べた。

 コ氏は本作の展開において、新たなアプローチが必要だと指摘する。「私がオンラインFPSの開発に携わるのは3作目。環境の変化は激しく、オンラインゲームにおいて大きなチャレンジがなされている時だと感じる。今のユーザーは数年前のユーザーとはDNAが変わった。ある機能だけを目標に作り、こんなモードを作ったと説明しただけで売れる時代は終わった。その機能をどのように使うかを伝えることが重要」と述べた。

 そして本作においては、無意識的な部分をコントロールするために、脳科学も学び、開発に取り入れているという。「視覚刺激が脳にどう働くかなどを検証している。我々はコンテンツのよさだけでなく、ユーザーがはまり込める環境を構築することを重視している」という。

 例えば、韓国版で行なわれたグラフィックスのアップグレードにおいても脳科学が取り入れられている。「人間が視覚や聴覚から受け止める情報はとてつもない量だが、実際に認識して受け入れられるのはごく一部。他は理性的にキャッチしていない、無意識の領域で処理している。このゲームではユーザーがもっぱら銃だけを撃って楽しめるのが重要なので、その部分だけに集中できるよう、ディテールの多様なテストを繰り返して、今も改善を図っている」という。

 先の銃の音についても、ただサウンドのクオリティを高めるだけが狙いではない。コ氏は、「ただ銃の音が大きいだけではユーザーに喜ばれない。銃の反動などのアニメーションも含め、きめ細かな部分を総合的な芸術としてとらえ、打撃感として伝わるものを作っている。幸い、韓国のαテストのユーザーフィードバックを見ると、間違えた方向に行ってはいないと思う。今の方向をより強化し、他のゲームより1レベル高いものを提供したい」と述べた。

 ただ新しい要素を追加するだけでなく、脳科学にまで踏み込んでテストしているというのは、FPSにこだわりを持つDragonflyらしいアプローチといえる。映像やサウンドを1要素としてみるのではなく、総合的に作り上げて、よりレベルの高いものを作るというのが本作におけるポイントとなっているようだ。それが実際にどういった形に仕上がってくるのか。日本でのサービスを楽しみに待ちたい。


こちらは会場で公開されたスクリーンショットだが、既に古いもの。現状の韓国版は脳科学に基づいた検証から改良が加えられているという

(2011年 5月 14日)

[Reported by 石田賀津男]