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GDC 2011レポート

CEDEC運営委員会委員長吉岡直人氏インタビュー
「家電業界や映像業界、組み込み屋さんにも“Gamification”を広げていきたい」


2月28日〜3月4日開催(現地時間)

会場:サンフランシスコ Moscone Center



 今年25周年を迎えたGDC。来場者数も世界中から2万人近くを数え、世界最大規模のゲーム開発者向けのカンファレンスの地位を盤石のものとしている。これに対して日本のCEDECもその約半分の13年を迎え、来場者数は半分とはいかないまでも、日本国内では突出した規模を誇る。

 今年のCEDECは、9月6日から8日の3日間の日程で、パシフィコ横浜を会場に開催されることが発表された。2月1日よりセッションの公募も開始しており、このGDCでも海外セッションの交渉が行なわれていると聞く。公募は締め切りは3月31日で、その後、4月5月に掛けてCEDEC運営委員会により選考が行なわれる。今年はどのようなセッションが行なわれるのか非常に楽しみだ。

 今回は、CEDEC運営委員長としてGDCを訪れていたスクウェア・エニックス チーフテクノロジストの吉岡直人氏に「CEDEC 2011」の意気込みを伺った。




■ GDC 2011の感想について

CEDEC運営委員会委員長の吉岡直人氏
GDCで講演を行なうngmoco CEOのNeil Young氏

編: まだ開催期間中ではありますが、GDC 2011の感想をお願いします。

吉岡氏: まだ半ばでの印象ですが、幅が広がっていますね。少し前まではコンソール系のテクノロジーがほとんどでした。昨年からソーシャルゲームやカジュアルが出てきました。今年はシリアスゲームの話が出てきました。プレーヤーの幅が広がってきているので面白いですね。逆に昔みたいにコアなゲームの話が聞きたい人にとっては少し薄まっているように感じられるかもしれない。

編: チュートリアルやサミットではやけに「Gamification」という言葉が聴かれましたね。

吉岡氏: やたら言っていましたね。「Gamify」、「Gamification」と。ゲームのビジネス構想を他のものにどのように応用するかということだと思うのです。

編: 何事かをゲーム化することとは逆ですか。

吉岡氏: 私のとらえ方では、ゲームが主語ではない気がします。ゲームはビジネスとして儲かりますが、その仕組みを利用して別の目的を達成しようという意味だと思います。それは良いことですよね。ゲーム屋さんにとって応用範囲が広がりますから。

編: 今回はスマートフォンやソーシャルゲームが百花繚乱という感じでした。

吉岡氏: スマートフォンはめちゃくちゃ多かったですよね。Androidはデバイスの種類が何種類あるのでしょうか。100とか200とかいってしまいますよね。デバイスごとにハードウェアの特性も違いますし、マルチタッチのものもあり、シングルタッチのものもあります。解像度が違えば、レバーがついているものもある。しまいには気圧計などがついているものが発表されたりしている。

編: GDCでは早くも、かつてのWindows PCの互換性テストみたいに、様々なAndroid端末にどう対応させていくかが議論されていましたね。

吉岡氏: 大変だと思います。操作系はミドルウェアでは吸収できないため、ゲームデザインに関わってきてしまうと思います。日本人が昔携帯電話で苦労したことの再現のように見えますので、うまくやれば日本人が活躍できるのではないですか。こちらの人はこの状況が初体験だと思います。

編: GDCはアップルが参加しないこともあり、Androidが一強の感があります。

吉岡氏: 面白いは面白いと思いますよ。ソニーさんもAndroid対応ですからね。でも、主戦場はOSがどうこう、ハードウェアがどうこうという時代が終わりとは言いませんが、割合としては少なくなってきていると思います。OSも今だけだと思います。それよりはビジネス構造をどうするかという話ですよね。

編: ソーシャルゲームでは依然としてマネタイズの部分の話が多い。

吉岡氏: それはもちろんソーシャルゲームに限らずそうでしょう(笑)。

編: ソーシャルゲームは基本プレイ無料ということもあり、無限のマネタイズの可能性を秘めていますが、この分野に関しては日本やアジアが数年先を行ってますが、欧米人はまだ手探りの感じがありますよね。

吉岡氏: ngmocoのCEOであるNeil Youngの講演が面白かったですよ。ngmocoは日本のDeNAに買収されましたよね。その流れで、日本は未来を走っているのだという話をされていました。日本では2002年くらいから携帯電話にカメラが搭載されるようになり、Webが見れるようになり、3Gに対応して云々かんぬんと。今でも日本が一番未来であるとおっしゃっているのです。iPhoneが出てきて、ようやくこちらの人が携帯電話でメールしたりWebを見るようになったけど、日本は始めから走っていると。携帯電話のパケット料金体系もそうです。我々は海外で携帯電話を使ったってパケホーダイは当たり前です。海外でもコンテンツを消費しまくるわけです。ですが、アメリカの携帯電話はそこまで行っていない。むしろ従量制に戻ったわけです。色々なインフラが整っていない状況で定額制に走った結果だろうなというのが外から見ている感想です。最終的には日本が未来だから、日本の動向を注視せよといっていました。

編: 日本だと日本人の悪いクセで“ガラパゴスケータイ”といってすぐ自嘲しますが、海外から見ればむしろ新しいのではないかということですね。

吉岡氏: そうだと思います。おっしゃるとおりで、日本人は自信が持てていないのかもしれません。ネガティブなことを言われたときに振り回されすぎかもですね。ソーシャルゲームについても、DeNAがやっているモバゲータウンというのはとんでもない仕掛けで、とてつもない未来を走っているという話を、Young氏はしていました。

編: アメリカでもモバゲーのサービスはくるのではないのかと。

吉岡氏: そのまま行くのかどうかはともかく、彼ほどの男が自分の会社をDeNAに売る決心をしたわけですから。それなりの理由があるはずです。彼はEAでスタークリエーターで、きっと辞める必要なんて無かったのですからね。

編: Game Developers Choice Awardsではついに日本勢が完全に消えてしまいましたね。

吉岡氏: 日本のゲームのノミネートはありましたけど、3つにまくられましたね。「Red Dead Redemption」、「limbo」、「MineCraft」ですね。正直、今年は寂しかった。

編: うち2本がカジュアル系だったのは象徴的でした。「Angry Bird」みたいなカジュアルゲームがチョイスアワードを受賞する時代が来ているのかなと。

吉岡氏: 今回「Angry Bird」がノミネートされなかったのが不思議ですね。タイミングもあったかもしれないですね。今回日本人と話していてショックだったのは、「Angry Bird」が意外に知られていないことでした。今年の最大のヒット作品だと思います。ただまあiPhoneの普及台数は日本でたかだか100万台ですか。知らないですよね。

編: 認めたくないという部分もあると思いますよ。

吉岡氏: だって面白いですよね。

編: 「だって面白い」という論法で行くと、そういうゲームは世界にいくらでもある。しかし日本の場合、奥行きの長さ、リプレイバリュー、素材ひとつひとつのクオリティにも配点を置いてほしいと考える。そういう文化圏で育つと、なかなか評価はできにくいのではないですか。

吉岡氏: その文化はお客さんの文化です?

編: いえ、むしろ日本のメーカーが育てた文化だと思いますよ。

吉岡氏: こちらの話を聞いていて、ゲームを主語にしていないというのがアメリカの強さですよ。ゲーム自体に夢中になっている人はもちろん必要で、GDCのコアな部分です。ゲームを道具として使う人が増えています。ビジネスのための道具です。個人的な意見ですが、それは正しいと思う。そうしないと発展しない。ジンガの人のセッションで面白かったのは43歳の女性のゲームデザインで、すごく面白かった。冒頭が「We are spoiled」から始まるのです。「我々は甘やかされていた」。「今まではゲームが好きな人にゲームを作っていたでしょう?」というところが始まるのです。

編: Zyngaは本当に才能が集まっていますね。

吉岡氏: ええ、一時期のPOPCAPを越える勢いを感じます。

編: 昔は彼らが今更何をするのだと“老人ホーム”くらいに揶揄されたこともあったような気がしますが、いまや往年のゲームクリエイターが再び輝きを取り戻しています。

吉岡氏: 今一番集まっていますよね。ソフトバンクさんもジンガに出資していますよね。孫さんもiPad2の発表会でサンフランシスコに来ているなら、GDCにも来ればいいのに。この記事を通じてソフトバンクさんのスポンサーをお願いしたいです。基調講演も歓迎です(笑)。



■ CEDEC 2010ポストモーテム

CEDEC 2010の模様。CEDECの環境はGDC以上のものがある。開発者は恵まれた環境で最新動向を学ぶことができる

編: さて、CEDECについてですが、運営委員長としてCEDEC 2010についてどのような感想をお持ちですか。

吉岡氏: ポスターセッションをやったりして、GDCと同じく昔から比べて幅が広がりました。特にポスターで出られた東芝さんや産総研さんとか、従来だと直接重ならないような方々がああいった場に出てきてゲーム屋さんと話ができたのはすごく大きかったと思います。あれで自信を持って、今年から名前を変えることにも繋がっています。

編: CEDEC 2011では略称は依然としてCEDECのままですが、正式名称をComputer Entertainment Developers Conferenceに変えますよね。CESAがなくなり、Computer Entertainmentとした理由をもう少し具体的に教えてください。

吉岡氏: CESAというとゲーム業界の業界団体なので、ゲームに限られているような誤解を招いているからです。今年のCEDECは、その名の通りコンピュータエンタテインメントの開発に関わる全ての技術が集まるカンファレンスとしての出発点にするつもりです。ビデオゲームは、ソフトウェアをはじめとする様々な技術の集合ですから、ゲーム業界の発展と、その波及効果を他のコンピュータエンタテインメントに及ぼし、総体的な強化を図るのが狙いです。これを明示的に宣言したという意味では、イベントとしては GDC のカバー範囲を超えたことになります。

編: ただ、うがった見方をすればCESAという枠組みから離れたがっているのかなという気もしますが。

吉岡氏: いまでもCESAが主催なのでそれでいいのですが、CESAという団体名はComputer Entertainment Supplier's Association なのですが、CESAという団体自体がComputer Entertainmentをカバーできていないのかも知れない。CESAから離れるというよりはゲーム業界という枠組みをはみ出したいというのはあります。

編: それはシーグラフのような純粋な学会系のイベントにしたいということですか。

吉岡氏: むしろ家電業界や映像業界、組み込み屋さんにも広げていきたい。実はシーグラフもそういった点で同じように問題を抱えています。あそこはコンピューターグラフィックスと、インタラクティブテクニックの学会ですが、実際は集まっている人が映像系とゲーム系の人に偏っているのです。例えば医療系や航空機設計系がどうこうなど、CGが重要な道具となっている分野の人はあまり来ないのです。シーグラフはそれに苦しんでいるはずです。

編: シーグラフもゲームとの親和性が高いイベントですが、コラボレーションも考えているのですか。

吉岡氏: シーグラフアジアとは場所も近いので色々やっているのですが、今年は情報処理学会のG-CADというグラフィックスとCADに関する分科会と組むことを考えています。お互いにどのようにセッションを乗り入れるかといったことです。中々接点がないものですから。CEDECで話ができるような場所にしたいですね。他に組み込み系でソフトウェアテストをテーマにしたカンファレンスを開いているJaSSTさんとも組みます。他にいくつか詳細を詰めているところで追って発表します。

編: ターゲットプラットフォームはどのあたりまで広がるのですか?

吉岡氏: そういう考え方はあまりした事がなかったですね。

編: コンピューターエンターテインメントなら何でも良いというのはわかりますが、スポンサーを探すときや参加者を呼びこむ場合に、ある程度明示した方がやりやすいのではないですか?

吉岡氏: そうでしょうか。CEDECは基本的にコンピューターエンターテインメントに関するカンファレンスであることが本義ですから、テクノロジーという風に考えたらハードウェアが何であるかはあまり関係ないですよね。ハードウェアに関する局地的な部分は当然いくつか出てくるのですが、そういう部分は各プラットフォームごとにやればいいという話と、本質的にテクノロジーについては基本的にどのコンピュータでも同じだという話があるわけです。そこにおいては去年のテクニカルアートというのがそうですね。ハードウェアに依存しませんから。

編: テクニカルアートに関して吉岡さんがずっと仰っていることでもありますが、昨年の取り組みは満足いく結果でしたか?

吉岡氏: 2008年に最初にスティーブ・セオドールに話してもらって以来、現場レベルでテクニカルアートという言葉が広く使われるようになって作戦成功という感じだったのですが、2010年の段階ではまだ「テクニカルアートってなんだろう?」とみんな言っていた状態だったのです。2010年のCEDECのあとからテクニカルアートという言葉が気になるという方があちこちで集まって勉強会が始まっていて、2011年で最初の成果が出てくると思います。

編: 成果というと、プロダクトという形ですか?

吉岡氏: まさか、人間です。CEDECがテーマにしているのは技術者であり人間です。テクニカルアートからプロダクトが出てくるというより、考え方であり、活動ですから。

編: 言葉の定義がまだふんわりしていると思いますので、吉岡さんが考えるテクニカルアートは何なのでしょうか。

吉岡氏: まず最初にどんなことがカバーされるかって考えるとシンプルです。必須なのはシェーダーのセットアップです。これはシェーダーコード云々の話も絡んでくるので、かなりテクニカルの話になると思います。もう1つは、リギングです。日本はまだまだかもしれないですが、これから発展していかなければならない。キャラクタ、アニメーションのリギングです。アメリカはすごく進んでいるように思います。それから、コンテントパイプラインの人間が触る側、つまりツールですね。

編: リギングについては日本もここ数年でかなり頑張っていますよね。

吉岡氏: ノウハウの蓄積が大事だと思います。やはり米国の場合、映像屋さんから来ているノウハウがありますね。彼らが昔からどうやって生産性をあげようかとやっている。日本の方々も頑張ってはいますが、プロダクト効率をあげるものを目指して奮闘中というところではないでしょうか。

編: プロダクト効率というと、まだ手付けが多いということですか。

吉岡氏: 変更に強いリグとかランタイムの負荷がここまで下げられるとか、何が最適かは色々考えようがありますよね。それは経験だと思いますのでこれからですね。でも、最近の日本におけるテクニカルアーティストの方々の勉強ぶりを見ていると、きっとうまく行くと思います。



■ CESA Digital Library(CEDiL)と“特許申請の優遇措置”について

CEDiLのロゴとページデザイン
吉岡氏はiPadでページを見せながらCEDiLについて説明してくれた

編: 2月18日にはCESA Digital Library(CEDiL)がスタートしましたね。

吉岡氏: 見ながら話したほうがいいですね。これだと中にはiPadアプリと勘違いされるかな(笑)。

編: これは無料サービスですか?

吉岡氏: 現状、そうです。どこかでお金をいただくことはあるかもしれません。継続した自立運営のためには、それこそマネタイズしなければね(笑)。今までこういったサービスが無かったので、全員が検索できるようになったところで、まずはというところです。

編: CEDECの予算で運営されているサービスですか。

吉岡氏: そうです。これはずっと続けます。長く続けることに意味があると思います。できれば今後は講演のビデオにリンクをかけたり、資料をベースにしたディスカッションをしかけてみたりしたいです。

編: 公開されている情報に関しては制限は無いのでしょうか。

吉岡氏: 無いです。著作権の尊重など常識的な話はあります。

編: この構想はいつからですか?

吉岡氏: 長い間議論はあったのです。ようやく、今年の東京ゲームショウの発表会のタイミングで公開しました。3月1日から検索機能が入りました。今はバージョン1.0といったところです。他にいろいろやっていきたいのですが、過去のCEDECの資料をここに載せて、検索できるようにするのが重要なマイルストーンでした。まずは2006年からの資料を載せて、以前の資料もなんとかしたいねといっていますが、99年とかの資料は散逸しているものがあったり、紙しか残っていないものもあります。

編: そこまでしてデータベース性を高めたい理由はなんですか。

吉岡氏: 全体の流れが見えるようにしたいのです。これまで自分達が何をしてきたのか、そういうことを見えるようにする。単なる教科書ではないのです。

編: 今後の機能強化についてはどのようなことを考えていますか。

吉岡氏: 色々やりたいですが、すぐにできるものでもないので順番にやっていきたいです。逆にどういったものがほしいですか?

編: メーカーさんはなかなか素材を公開したがらないので、ドキュメントだけではなく、映像やその場で公開されたゲームの資料やトレーラーやスクリーンショットが見れるといいですよね。

吉岡氏: それはゲームファンの人には良いかも知れませんが、開発者の人にはどうでしょう? 開発者さん向けが本義でどれだけ役に立つかということが大事です。中にはものすごく濃いお客さんがCEDiLを見て喜んでくれているケースもあるようで、それはそれで嬉しいのですが。

編: 無料公開にした理由は何でしょうか。

吉岡氏: まず、皆さんに全部見てほしいと思ったからです。

編: ソーシャル機能はつけないのですか?

吉岡氏: 付けたら面白いでしょうね。ディスカッションボードみたいなアイデアもあるのですが、どうやったら枯れさせないかという。テクニカルなディスカッションボードはできたら滅びできたら滅びではないですか。どうやって動かすかが未解決です。

編: ゲーム関連のニュースを拾ってそれを議題にディスカッションして貰うとか。

吉岡氏: 仕掛けの話だけではないと思います。各プラットフォーマーのサポート掲示板だって盛り上がってはいない。情報はどんどん出てくる。でもディスカッションするひとはほとんどしない。

編: それは情報の出し惜しみですか?

吉岡氏: 違うと思う。開発者だけが見られるものですが、シーンとしている。プラットフォーマーがやっているのはプラットフォームに関する技術情報がどんどん出てくるのですが、そのスレッドが続かないのです。それを僕らが見ている。

編: コーエーテクモさんが質問してスクエニさんが答えるようなシーンをイメージしているわけですか。

吉岡氏: そういった場所もあるのだけどぜんぜん盛り上がらない。まったく同じネタで、英語のほうは盛り上がっている。なぜですかね。そこが解けないのです。

編: 分からないことを恥ずかしがるのかもしれない。

吉岡氏: そうかもしれない。だとしたらそこをどうやってブレイクするかですね。2ちゃんねるも盛り上がっているかもしれないですが、アクティブに書いている人はそんなにいない。Twitterが盛り上がっているかもしれないけど、すべての人にはいきわたっていない。Facebookが日本ではやるかも微妙だと思います。

編: 映画「ソーシャルネットワーク」公開と同時にすごく増えました。

吉岡氏: 最近フレンドリクエストがもの凄く増えました(笑)。

編: フレンドリクエストしたまま放置しているユーザーも多いです。ソーシャルありきでやると続かないと思います。

吉岡氏: mixiでもそうですよね。真面目なスレッドを立てても続かない。

編: 人が滞留して集まってみんなにつぶやきたいと思わせないとダメですね。そこの部分はソーシャル屋さんが日夜考えていることでもありますよね。どうユーザーのステイタイムを高めるかと。

吉岡氏: 今度意見を聞いてみます。しかし、これだけの情報量が集まれば何かできるのではないかと思うのです。

編: CEDEC 2011では、終了後にすぐセッション資料が見られるような感じになるわけですか?

吉岡氏: 中々そうもいかないんですけどね。オリジナルの資料の方が、公開されるならこうしたいといった調整事項が出てきます。できればなるべくはやくまわしていきたいです。

編: ちなみにこのタイミングで公開した理由は何ですか。

吉岡氏: 今年のCEDECの公募期間中の前半には絶対に公開したかったのです。公募する人がここで調べた上で新しいセッションのアイデアを出していただければ、さらにCEDECのクオリティが上がると思いました。GDCのタイミングともかぶるので、GDCで勉強したことを混ぜていただければ面白いと思います。

編: 公募という点では、昨年過去最多を記録したとのことでしたが、今年はいかがですか?

吉岡氏: できるだけ皆さんには早く出してほしいというのが本音ですが、現実的に最終日にどっとくるのです。GDCの人やシーグラフの人に聞いても同じだそうです。夏休みの宿題みたいですね(笑)。3月31日が締め切りですのでよろしくお願いします。

編: 次に、CEDECが指定学術団体に指定されたということですが、あの特許申請の優遇措置とはどういうことなのか教えてください。

吉岡氏: CEDECというイベントが、特許法の例外規定の対象に指定されました。普通、特許法はパブリックにしてしまったものについて出願権が喪失します。重要なのはそのように指定されたので、CEDECで発表されたことはパブリックなことにはなっているのですが、手続きに従って申請していただくと、その後の6か月間申請権が残るのです。よくあるのは特許申請をしてパテントペンディングにするのが間に合わないので発表できないというケースがあるのですが、そのリスクを下げる狙いがあります。

編: ちなみにGDCにもそういう規定があるのですか?

吉岡氏: 多分無いと思います。GDCのセッションアグリーメントを見ましたが、コピーライトは全部こっちのものだとか色々書いてあるのですが、無いと思います。各企業のパンテント戦略はかなり強烈にありますから。当たり前のようにパテント出しているのではないでしょうか。

編: 本質的にパテントに該当するような情報は、メーカーの理屈からすればマネタイズがしっかりできるまでは出せないと考えませんか?

吉岡氏: ゲーム業界がどのように考えているかは別ですが、私が昔いたソニーや家電業界の論理でいくと特許というのはマネタイズの道具ですから。どんどんパテントペンディングにしていきます。そういうやり方もあるということですね。

編: これによって何が変るのでしょうか。

吉岡氏: CEDECで講演したい人を、誰かが表に出すということを止める可能性を低くしたいのです。上司だったり、会社によっては知財部だったり色々でしょうが。間に合わない、面倒くさい、色々なケースはあると思います。もう一歩踏み込んだ発表が行なわれていることを期待していますし、発表者の負担を減らすということです。魔法の弾ではないので、発表したあとで特許を申請して、それが不成立になるというケースは当然おきてくるとはおもいますから、注意は必要です。

編: 特許は我々メディアには見えない部分ではありますが、ゲーム会社さんは年間どのくらい特許を出しているのですか?

吉岡氏: 各社それぞれではないですか。特許広報を調べればすぐにわかることです。僕なんかはゲームメーカーに入ってみて、特許に関してあまり頑張らないのでびっくりしているのが正直なところです(笑)。



■ CEDEC 2011について。今年もオリジナル企画を実施

GDCで人気を博した岩谷徹氏の講演。CEDECでも大物の講演が期待されるところ
会場の通路スペースを使って行なわれた特別企画「三日でゲームを作ってみる」。まさにDeNAの勢いを感じさせる企画だった

編: それではCEDEC 2011について伺っていきますが、運営委員長である吉岡さんが期待されている分野はいかがですか。昨年はテクニカルアートとコンテントパイプラインということをおっしゃっていました。

吉岡氏: 当然引き続き割いていく予定です。ゲームデザインを技術としてプレゼンテーションしてほしいです。感覚も大事ですが、感覚は作品にしないと伝わるものではない。CEDECのプレゼンテーションは技術として人に伝えられるかもしれない。

編: しかし、個人的にGDC、CEDECの両方を取材していて思うのはゲームデザインセッションは減る一方ですね。GDCはそれでも多い方でしたが減りましたよね。

吉岡氏: ゲームデザインは収斂して分解していくと無くなってしまってそれぞれのテクニックに分割されていくと思うのです。あとはゲームデザインという言葉自体が大ざっぱですよね。

編: 人気タイトルのゲームデザインセッションは必ずありましたし、Will Wrightが参加していた頃の「Game Design Challenge」は大人気だった。

吉岡氏: あの頃は試行錯誤の時期でした。そもそも俺達何をやっているのという問いかけのようにも感じました。

編: CEDECでもゲームデザインの部分は薄いですが、日本ではより難しいですね。

吉岡氏: 薄いです。遠藤雅伸さんにお願いしているのはそこです。遠藤さんご自身もおっしゃるのは「ゲームデザインは自分が知っているゲームをうまく作ることだと思っていませんか?」ということをよく仰るのです。その気持ちも分かるし、そういう段階があってもいいと思うし、それでうまくやれれば良いという考え方もあるのですが、もうちょっとチャレンジしてみたらいいのにとも思うのです。Game Developers Choice Awardsで「MineCraft」があれだけ拍手喝采を浴びるのはそういう気持ちだと思うのです。「Limbo」がベストビジュアル賞を取ったりするのも今までに無いビジュアルだという事がものすごく評価されている。

編: 「Limbo」はグラフィックスとしてはシンプルで、複雑なシェーダーを使いわけているわけでもないですからね。

吉岡氏: そうだと思いますよ。しかし確かに美しいですよね。

編: ビジュアルとして選ぶアメリカのセンスはすばらしいと思います。単純に綺麗ということであれば、「Red Dead Redemption」の夕日が綺麗と思うのですが、そこに疑問を投げかけています。私は今回「limbo」が大賞を受賞してもおかしくないと思います。革命的に面白かった。

吉岡氏: こちらでの日本の開発者へのリスペクトは相変わらず衰えていない。

編: 確かに。「パックマン」の岩谷さんの講演でも凄かったですよ。彼らにとっては「パックマン」は30年前の過去の遺物ではなく、今はXbox Live向けやPlaystation Network向けにリリースされている「パックマンチャンピオンシップエディション」によって現役なんですよね。Metacriticsも93と、驚くほど高い(笑)。

吉岡氏: すごいですね。

編: 実際素晴らしいゲームなのですが、93はないだろうと。話を戻すと、「パックマンCE」で「パックマン」を知ったという若い開発者が昨日は結構いたように思ったのです。

吉岡氏: 私は、今年のGDCはちょっとノスタルジーに走っていないかなと思っていたのですが、そうではなかったのですね。今年は鈴木裕さんがフィーチャーされるなど、ちょっとリスペクトが過剰かなと思ったのです。

編: 25周年の特別企画として、クラシックゲームのポストモーテムをやりましょうということですよね。「ポピュラス」でピーター・モリニューが出てきますし、ウィル・ライトが何を話すかといえば「バンゲリング・ベイ」です。さらにジョン・ロメロが「Doom」を話します。懐かしの人が懐かしのゲームを語る。25周年企画として許されるのかなと思いますね。これを毎年やったら大変ですが。

吉岡氏: それなら納得ですね。CEDECは今年でやっと13年目です。

編: 企画という点では去年は3日間でゲームを作ったり、囲碁でAIの強さを競わせたりなど面白い企画がありました。今回はどういったことを考えていますか?

吉岡氏: 今年も色々やりたいと思っています。参加者が交わってくる企画をやると非常に活気が出ますからね。ああいったものを広げていきたいです。前回チャレンジものは囲碁のAIと、3日で作ると、Photoshopの3つでした。数は3つくらいが僕らが運営できる限界です。お客さんもメインセッションを聞きにいかれますので、3つくらいがちょうどよかったかなと思います。

編: 外野の意見ですが、各カテゴリに1つくらいほしいですね。私は個人的にオーディオ系のセッションが好きなので、3日で作曲しましょうといったものをやってほしいですね。

吉岡氏: 確かにそれくらいできるといいと思います。今は割りと大きなカテゴリです。プログラミングとビジュアルとゲームデザインです。最低限それはやりたいです。工科大学でやっていたグローバルゲームジャム(GGJ)といったものも、ああいったものもどうやればプロフェッショナルな場でやれるのだろうねという議論はあると思います。

編: 昨年好評だったライブ配信はどうなりますか?

吉岡氏: 去年のような形でやりたいです。一部に限定するというのは単純に費用の問題と、あとすべてだだ漏れにしてしまうと会場に来てくれなくなる。私としてはやはり会場に来てもらいたいです。映像を見て、開発はこういうものかと頭で理解する人ばかりになってしまうと困ります。

編: ライブ配信そのものが矛盾をはらんでいますよね。時代的にはキャッチアップしてしかるべき取り組みではありますが、それは「参加することに意味がある」というCEDECの意義と相反する。

吉岡氏: そうですね。裏話をすると、昨年は部屋2つにカメラを付けたので、それだけ見ることができたということです(笑)。



■ CEDEC 2011について その2

CEDEC 2010でMIT石井裕教授は、「遅かれ早かれ2100年には皆死んでいる。その先の2200年の人々に何を遺すか、それが問題だ」と問いかけるなど、壮大な時空的スケールの基調講演となった
GDCではCEDECのパンフレットを配っていた。海外からの参加者は増えるだろうか?

編: 基調講演が気になります。個人的には東大の原島先生、MITの石井先生等、学会からの参加が非常に面白かった。ただ、クリエイターが期待しているのは、堀井雄二さんのようなゲーム業界からの参加でしょうね。

吉岡氏: 基本線は評判が良いのでこのまま行こうと思います。中の人と、外の人と、間の人です。外の人に関してはたまたま石井さん、原島さんとアカデミックが続きましたが、これに限る必要はないのです。中にはインダストリアルデザインや絵描きの人やいろいろな選択肢があると思います。その意味でかなりインパクトのある人を交渉している最中です。間が一番苦労するのです。間といっても軸の取り方で変るので悩んでいるところです。

編: そういえば、2009年の富野由悠季さんの「お前ら」と言いまくる基調講演は非常に印象に残りましたね(笑)。

吉岡氏: 富野さんのためにわざわざ来たという人がいましたね。ああやって、お互いの壁を越えることができた。正直、自分達でハードルをあげているので大変なのですが、今年も優先的にやっています。

編: 昨年のゲーム業界からの参加は松原さんでしたが、当初の予定ではどう考えても松原さんではなかったはずです。本当は誰だったんですか?

吉岡氏: さすがに言えません。難しかったね。いつか話してもらいたいな(笑)。でも松原さんの話は良かったでしょう?

編: そうですね。松原さんはCEDECフェローという立場ですが、現在はゲーム業界から身を引いています。CEDEC 2011に関して松原さんはどのような形で関与していますか?

吉岡氏: アドバイスを頂いています。今でも時間が合えば会合に参加されています。

編: 松原さんが力を注がれていたCEDECアウォードに関しては今年は何か考えていますか。

吉岡氏: 去年ちょっとやり方を変えたのです。一昨年のCEDECで各分野ごとのセッションでお客さんのアンケートで点数が高かった人を上から順番に何人か来て頂いてCEDECアウォードのノミネーションリストを作る委員会を作ったのです。非常にうまくいきまして、その結果PG分野はベーシックマガジンさんがエントリーされていたり、面白いねと。あのやり方を継続しようとしています。去年の評判の良かったスピーカーの皆さんが決めるノミネートリストに皆さんが投票する形で行きたいと思います。

編: 確かに初期の頃はとりあえずメジャータイトルをアサインしておこうという部分がありましたよね。

吉岡氏: 第1回は正直そうでした。注目度をあげることが大事でしたのであえてそういうやり方にしました。

編: 私としては名実共に日本を代表するアウォードにしてもらいたいとおもいます。

吉岡氏: ただGame Developers Choice AwardとCEDECアウォードとは違う性質を持っていると思います。前者はゲーム開発者が好きなゲームを選ぶ。言ってしまえば人気投票なのです。後者はゲーム開発者に役に立つアウォードなのです。そこが大きな違いです。賞でいうとアカデミー賞に対してエミー賞のような違いですね。

編: 今年のノミネートはいつごろ発表されるのですか。

吉岡氏: 昨年と同じです。チケットの発売時期に発表したと思うのですが、夏にならないくらいだと思います。

編: 毎年人気を博している学生版CEDECはいかがですか。

吉岡氏: まだ話せる段階ではないですが、やるなら継続したいです。ただ、就職フェアではありませんからね(笑)

編: 主催者側がどう考えているかではなくて、学生たちがどう捉えているかが大事だと思うのです。あのリクルートスーツ姿の集団は、彼らがどう見ているのか実態をよくあらわしていると思います。

吉岡氏: おっしゃるとおりで、我々は頼むからスーツを着てこないでくれと言っているのです。去年も書いたのですよね。ただ、それをどう受け取るかは我々の思い通りにはならない。我々がやりたいのは若い人にはゲーム業界がこういう仕事をしているということを知っていただきたいという点だけです。

編: その先を用意するつもりはないと?

吉岡氏: 今我々がそれをやる立場ではないのです。やるとしたらCESAの枠組みでしょうか。少なくとも技術委員会ではない。

編: 一昨年、昨年のような開催は考えていると?

吉岡氏: 1回始めたからには続けるのが正解だと思います。入場無料ということもまだ分からない。ただ学生さんの負担は下げていきたいですね。

編: 海外セッションはどうなるのでしょうか。去年ちょっと弱かった印象があります。ティム・スィーニーを筆頭に大物が来たりしたこともありますが。

吉岡氏: むしろ中身的には上向きだと思います。今発表しているのはクリス・ヘッカーです。基本的には現場の人に出てきて話してもらおうというのは変らないです。今の段階は海外のそういう人が来て話すというのがCEDECのやるべきことだということです。

編: ZyngaやChillingoといった気鋭のメーカーの参加もありえそうですか?

吉岡氏: それは分からない。ジュリアンが会場内をぐるぐる回って交渉していると思います(笑)。彼は現場レベルでコネがありますので。海外に関して有名人を呼ぶということはあまり考えていないです。

編: アジア方面はいかがですか。

吉岡氏: アジアは正直苦戦しています。アジアには凄い方々がいらっしゃるのは存じていますので、公募というものをアジアの人々にプロモートしていきたいのですが、中々難しいです。

編: ちなみに欧米アジアからのCEDECへの参加は増えているのですか。

吉岡氏: 増えてはいますが、十何人というレベルです。GDCの状況を見ると寂しいところがあります。中身を上げていくしか手はないと思います。絶対やってはいけないのはお金をあげるから来てくれというものです。それをやってしまうとブランドが落ちていきます。

編: 最終的にはグローバルが人が集まるブランドにしていきたいと。

吉岡氏: そうです。先ほど申し上げたコンピュータエンターテインメント全体をカバーするという風に変えた時点で世界には例がないはずなのです。そういう場所にしていきたいです。

編: ユニクロや楽天ではないですが、英語でセッションしたがる日本人が出てくるかも知れない(笑)。

吉岡氏: そういう人も出てきてくれたらうれしいですね。同時通訳代がかかってしまって、大変なのですが(笑)。中身次第だと思いますので、良いセッションが出てくれば出てくるほど目立つと思います。去年のCEDECを見ていますとTwiiterやWebで韓国系の人が注目しているのは分かりました。この流れが加速していると面白いなと思いました。

編: 参加者の99%が日本人という現状をどう変えていくつもりですか?

吉岡氏: 99%日本人という上に、99%はゲーム業界なのです。まずブレイクしたいのはゲーム業界だけではなくするということです。先日のニュースで、こんな話がありました。コンピューターの研究をやっている人で法律に興味を持ってしまった人がいて、先生なのだけど、大学に入りなおして法律の学位をとった。そこで何を作ったかというと、裁判の初期過程はパターンマッチングではないですか。それを人工知能の技術を使って裁判の最初のほうの論理で解決できる部分に関する人工知能システムを作った。

 僕はすごく良い話だと思っていまして、やっていることは一緒なので、思いつきそうですよね。なんでできないかといえば、法律のジャンルの人とコンピュータのジャンルの人がまったく交わっていなかった。それがたった1人の人が行き来するだけでそういうことが起きる。

 日本は家電のノウハウもありますし、自動車の製造工程も少なくとも世界一だった。お店におけるホスピタリティもそうです。サンフランシスコに来るとデニーズに行くとずいぶん差があるなと感じませんか?(笑)。日本のデニーズにいけば気持ちよく満足して帰ってこれますが、こちらはなかなかそうはいかない(笑)。ホスピタリティは大事だと思いますし、日本がせっかく持っている良いもの同士がCEDECで交わってほしいのです。異業種交流会などあるかもしれませんが、CEDECの利点は開発情報という実があるのです。実があるところでディスカッションを行なうことができる。

編: 家電や自動車様々な分野にGamificationがあるということですね。

吉岡氏: そうです。家電のかたがたが持っているノウハウも当然あるわけですから、それを学ぶことができる。そこからがエンターテインメントですよね。遊園地を経営している方から、デジタルサイネージ、電子書籍いろいろありますよね。日本も去年のCEDECでコンソール系とソーシャル系が1つの場所に集まりました。

編: そうなるといよいよコンピュータエンターテインメントですよね。

吉岡氏: そうです。その最初の年になればいいですよね。

編: 開発者に向けてメッセージをお願いします。

吉岡氏: コンピュータエンターテインメントに携わる人には技術者であれなんであれみんな来てもらいたいですね。あとCEDECのトップページにメッセージを載せているので読んでください。

編: ありがとうございました。


(2011年 3月 7日)

[Reported by 中村聖司]