東京ゲームショウ2010レポート

SCE Asia、「SCE Asia Media Conference」を開催
「ウィニングイレブン2011」中文/ハングル版を発表。「FF XIV」中文サービスは「ぜひPS3でもやりたい」


9月16日~19日 開催(16日、17日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料


 株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントのアジア部門Sony Computer Entertainment Asia(SCE Asia)は9月17日、アジア圏のメディアを対象にしたプレスカンファレンス「SCE Asia Media Conference」を幕張メッセ近くのホテルにおいて開催した。弊誌も参加する機会に恵まれたので、取材レポートをお届けしたい。



■ SCE Asia初のTGSイベント「SCE Asia Media Conference」

アジア地域では9月15日から発売が開始されたPlayStation Move。予想以上に好調だという
今回の目玉タイトルとして出展されていた「Winning Eleven 2011」中文/ハングル版
挨拶を行なうSCE Asiaプレジデント安田哲彦氏

 「SCE Asia Media Conference」は、SCE Asiaがアジア圏のメディアのために開催したプライベートイベント。SCE AsiaがTGSでこうしたイベントを開催するのは今年が初めてで、開催理由としては、SCE Asiaのビジネスが好調に推移していること、東京ゲームショウに対するアジア圏のメディアの関心の高まりなどが挙げられる。

 カンファレンスにはSCE Asiaに招待された香港、台湾、韓国、中国などアジア圏のメディア約70名ほどが参加。会場の左右には、イベント会場限定の中文版、ハングル版、英語版のプレイステーション 3タイトルとPSPタイトルの試遊台が並べられ、現地スタッフのガイドを受けながら試遊できる環境が整えられていた。

 出展タイトルは、まずPS3については「グランツーリスモ 5」(中文版、SCE)、「フリフリ! サルゲッチュ」(英語版、SCE)、「Beat Skech」(英語版、SCE)、「Little Big Planet 2」(中文版、SCE)、「KILLZONE 3」(英語版、SCE)、「Front Mission Evolved」(日本語版、英語版、スクウェア・エニックス)、「Winning Eleven 2010」(中文版、ハングル版、KONAMI)、「Fallout New Vegas」(英語版、Bethesda Softworks)。PSPは、「モンスターハンターポータブル 3rd」(日本語版、カプコン)や「クロヒョウ 龍が如く新章」(日本語版、セガ)などが出展されていた。

 ラインナップを見て一目で気づくのは、中文版タイトルが増えていることだ。SCE Asiaの今年の基本戦略は「大型タイトルの中文/ハングル化」である。今年2月に台湾で開かれたTaipei Game Showでは「ファイナルファンタジー XIII」の中文版を発表し、中文版だけで10万本以上、それ以前に発売されている日本語版と英語版を含めると20万本以上のセールスを記録している。

 この背景には、プレイステーション 3がアジア地域だけで出荷台数が100万台を突破し、手間の掛かる中文ローカライズを実施してもSCE Asiaとメーカーの双方に利益が生み出せるWinWinの関係が構築できるようになったことが挙げられる。現地語へのローカライズは、並行輸入品に対する大きなアドバンテージとなるため、SCE Asiaとしてはできるだけ多くの大型タイトルをローカライズしたいと考えているが、ローカライズ作業は新たなコストと手間が発生するため、メーカーとしてはそれなりの数が見込めないと火傷を負ってしまう。

 もともとコピーのないプレイステーション 3は、アジア市場では、“商売になるゲームプラットフォームの大本命”として発売前から有望視されてきたが、発売当初は価格の高さ、アジア地域への割当数の少なさがネックとなり、現地のゲームファンが待ち望むローカライズタイトルがなかなか生み出せない状況が続いていた。しかし、ここ1年で徐々に状況が変化し、欧米日の市場に数年遅れる形で、ゲームプラットフォームとして実りの時期を迎えつつあるわけだ。

 さて、カンファレンスは、SCE Asiaプレジデント安田哲彦氏の挨拶からスタート。同時通訳は北京語、広東語、韓国語、英語の4言語で実施された。安田氏の挨拶の後はスペシャルゲストとして、3タイトルのクリエイターが登壇し、アジア地域で発売するタイトルについて説明が行なわれた。今回紹介されたタイトルと登壇したクリエイターは以下の通り。なお、各タイトルの紹介については東京ゲームショウの各レポートを参照頂きたい。

「Winning Eleven 2011」
Konami Digital Entertainment Winning Eleven Productionシニアプロデューサー高塚新吾氏

「Little Big Planet 2」
Sony Computer Entertainment Europe SCEE XdevシニアプロデューサーLeo Cubbin氏

「クロヒョウ 龍が如く新章」、「龍が如く OF THE END」
セガR&Dクリエイティブオフィサー 名越稔洋氏

 安田氏は、参加してくれたメディアとメーカーに感謝を述べた後、直近の話題としてアジア地域で9月15日から発売がスタートしたPlayStation Moveについて言及した。並行品対策として常に世界最速を狙うSCE Asiaは、今回も欧州と同日発売で世界最速発売を実現している。安田氏によれば、品切れの店舗が出るほどの好調なセールスを記録しており、新たなMove向けタイトルとして「Little Big Planet 2」、「Beat Sketch」を含む20タイトルを今期中に投入していくことを明らかにした。SCE Asiaは中文/ハングル化と、PlayStation Moveの両輪でPS3の普及促進を図っていく考えだ。

【スペシャルゲスト】
左より順に、Konami Digital Entertainment Winning Eleven Productionシニアプロデューサー高塚新吾氏、Sony Computer Entertainment Europe SCEE XdevシニアプロデューサーLeo Cubbin氏、セガR&Dクリエイティブオフィサー 名越稔洋氏。名越氏は、発表したばかりの「龍が如く OF THE END」について言及し、「東京の神室町という大きな繁華街を舞台にした大人向けのゲームです。今回はコラボレーションというか、ネタを掛け合わせて、ある日突然ゾンビが現われて、街がパニックに陥ります。普通の街にゾンビが現われるので、警察や自衛隊も黙っていませんし、そこからさらに事件やドラマが引き起こされます。僕自身常々エンターテインメントは“驚き”からだと思っています。それがあって感動、面白さ、嬉しさなどがある。そのことをぜひお金を払って、時間を使ってこれに触れてみてもいいなと思うものを提供していきたい」と紹介

【Winning Eleven 2011】
高塚氏は、実演を交えながら「Winning Eleven 2011」の新機能を紹介するなど最新作の魅力を丁寧に説明。中文/ハングル版は、韓国、香港といった地域で大きな売り上げが期待できそうだ



■ アジアメディアに高い関心を集めた「ファイナルファンタジー XIV」の中国展開

 ところで、アジア関係者でひしめくカンファレンス会場で密かな話題となっていたのが、スクウェア・エニックスが東京ゲームショウ初日の9月16日夜に電撃発表した「ファイナルファンタジー XIV」の中国展開である。

 既知のアジアメディア数名から「何か知らないか」と質問を受けたほどで、アジアメディアの並々ならぬ関心の高さを伺わせた。スクウェア・エニックスは、MMORPG「ファイナルファンタジー XI」において、日本に設置されたゲームサーバーのみでグローバル展開を行なっている。現在、日米英独仏向けにサービスを展開しているが、運営はすべて自社で行ない、世界中のユーザーは日本のサーバーに接続してプレイする。他社へのライセンスアウトは未だに行なわれていない。

 一時、スクウェア・エニックスの中国法人による中国サービスが検討されたこともあるが、中国でサービスを行なうすべてのオンラインゲームは中国国内にサーバーを置かなければならないというレギュレーションと、スクウェア・エニックスが求める“自社運営によるサービス”という2点がネックとなり、結局中国サービスは断念されたという経緯がある。

 「FF XIV」ではそれらが全部ひっくり返って、中国大手の盛大による独立したサーバーによる運営というのだから、アジア関係者が驚くのも無理はない。スクウェア・エニックスの宣伝部としては、「この件について現時点でお話しできることはない」ということだが、今後の進展が注目される話題である。

 前置きが長くなったが、今回個人的に関心があったのは今回の発表に対するSCE Asiaの動きである。「ファイナルファンタジー XIV」はWindows版が9月30日に先行リリースされるが、2011年3月にはPS3版がリリースされる予定になっているからだ。中国では依然としてコンシューマーゲームの販売が認められていないため、すぐに中国でPS3版をという話にはならないが、今回の発表を受けて色めき立つ中華圏のユーザーは少なくないだろうし、もしSCE AsiaがPS3中文版をアジア市場で取り扱うことができればそれは大きなビジネスチャンスになる。

 台湾のトップSCE Taiwan総経理の本間和彦氏に話を向けたところ、「我々も昨夜(16日)のニュースリリースで知って驚いている。まったくの白紙だが、本音を言えばぜひPS3でもやりたい。これからご相談させて頂くところです」と、予想以上にビビッドな反応が返ってきた。“8年越しの恋”を実らせた「ファイナルファンタジー XIII」に続いて「XIV」のアジア販売も実現するのかどうか。こちらもまたホットな話題と言えそうだ。


(2010年 9月 18日)

[Reported by 中村聖司]