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CESA Developers Conference 2010(CEDEC 2010)レポート

誰もがゲームを作りたくなるゲームエンジン「Unity」セッションレポート
25万人が利用する「民主的なゲームエンジン」。国内利用事例も紹介


8月31日〜9月2日開催

会場:パシフィコ横浜



 ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2010」の会期3日目には、Unity Technologiesによるセッションが行なわれた。このセッションでは、近年急激にユーザー数を伸ばし、現時点で個人開発者向けゲームエンジンとしてナンバーワンのシェアを誇る「Unity」が、CEDECの場で初めてプレゼンテーションを行なった。

 スピーチを行なったのは、Unity Technologiesの創立者CEOであるデビッド・ヘルガソン氏。ヘルガソン氏は今回が初来日。講演ではゲームエンジンの機能紹介はそこそこに、その哲学と現状についての報告が行なわれた。その他複数の国内開発者による利用事例紹介も併せて行なわれ、来場者が思わず「今すぐゲームを作りたい!」と考えてしまうような、大変刺激的なセッションとなった。




■ 「民主的なゲームエンジン」とは何か? 「Unity」が持つ巨大な開発者コミュニティ

Unity TechnologiesのCEO、デビッド・ヘルガソン氏
「Unity」の統合開発環境の画面
25万人の開発者が利用。ゲームエンジンのユーザー数としては桁外れだ

 Unity Technologiesは、2005年にスタートしたまだ若い会社。その唯一の製品となっている「Unity」は、多数のプラットフォームに対応するゲームエンジン兼開発統合環境だ。はじめWii向けのゲームエンジン兼開発環境としてスタートした「Unity」が熱い注目を集めるようになったのは2007年〜2008年。使いやすく安価、しかも実用的なゲームエンジンであった「Unity」は、AppleのiPhoneに対応するや独立系開発者を中心に、従来のゲームエンジンとはケタ違いの勢いで爆発的に普及したのである。

 スピーチを始めたヘルガソン氏は、まずはじめに「Unity」を「民主的なゲームエンジンである」と定義する。ゲームエンジンが民主的であるということは、どういうことだろうか。ヘルガソン氏はそれを「非常にパワフルで、誰でも使うことができ、洗練されて使いやすく、いかなるプラットフォーム向けの開発もできるもの」であるとする。

 パワフルという点では、現在β版の配布が行なわれている次期バージョンの「Unity 3.0」では非常に充実した内容となっている。最新のシェーダーアルゴリズムに対応したレンダラーをビルトインしているほか、NVIDIAの物理エンジン「PhysX」が統合済み。さらにサードパーティ製ミドルウェアとして高度なライトマッピングが行なえるソリューション「Beast」を内蔵。オクルージョンカリングの最強ソリューションとして知られる「Umbra Occlusion Booster」もビルトインしている。

 ライセンス費用が安く、誰でも使えるという点もポイントだ。「Beast」、「Umbra」といったサードパーティの単機能型ミドルウェアは、業界トップの企業も利用している優秀な製品だ。これらを個別にライセンスすると軽く1,000万円を超えるところ、「Unity 3.0」ではそれらを予め搭載しながら、そのライセンス料金はわずか1,500ドル(13万円程度)という破格となっている。それらを搭載しない無料版もあり、ひとまず「Unity」を使ってゲームを作るだけならタダだ。

 ターゲットプラットフォームは、現時点でPC、Mac、各種PC用ブラウザ、Wii、iPhone、iPadとなっているが、次期バージョンの「Unity 3.0」ではさらにXbox 360、プレイステーション 3、そしてアンドロイド端末もサポートする。「Unity」でゲームを作れば、これらどのプラットフォームにでもリリースすることができるのだ。

 こうして「Unity」は、民主的なゲームンジンと呼ぶための材料が揃った。ヘルガソン氏によれば、現在の利用者数は25万人。既に1,000以上のゲームが「Unity」を使って開発・リリースされており、PC、Mac向けのブラウザプラグインは全世界で3,500万台以上インストールされている。産学関係のノンゲーム開発プロジェクトも数百が走っており、開発コミュニティには既に400万以上のトピック、コメントが投稿されている。日本語ドキュメントの整備も有志の手によって進められているという。

 ヘルガソン氏が提示したデータのうち、非常に興味深いものがある。「Unity」を使用しているデベロッパーの業界構成だ。大手のゲームパブリッシャーはわずか4%で、ゲームデベロッパーを合わせても3割に満たない。大学などの教育機関での利用が15%にも伸びており、個人開発者も22%と大きいシェアを占める。さらに大きいシェアを占めるのが一般の産業分野だ。建築、広告、軍事、シミュレーション、医療、研究などの分野にまたがって、34%ものシェアを占めているのだ。

 ヘルガソン氏はこのような現状を紹介しつつ、これは時代的な流れに沿ったものだと語る。「かつてSGIというコンピューターグラフィックスの巨大企業がありました。しかし、やがてそれはNVIDIAという一般消費者向けのグラフィックステクノロジー企業にとって変わられました。メインフレームがPCにとって変わられたように、『Unity』もそういった必然の中にあるのではないかと考えています」。

 ヘルガソン氏が夢見るのは、高度なテクノロジーを簡単に利用して、思い描くゲームやアプリケーションを誰もが作れる、そんな未来だ。1億円のゲームエンジンを10社に売ることと、10万円そこそこのゲームエンジンを1万人に売ることでは、売上は同じ。すでに25万人ものユーザーが「Unity」を利用していることで、それは机上の空論ではなくなっている。そうしてエンジン開発はさらに加速し、やがて巨人達を倒すのかもしれない。それがUnity Technologiesのビジョンだろう。


大手ゲーム会社も利用する「Unity」。ヘルガソン氏はそれに加えて、「無数の個人や独立系の開発会社にサポートされていることを誇りに感じています」と語っている
iPhoneのAppStoreでは、「Unity」で開発されたゲームが300以上リリースされている。トップランクにあるゲームの10〜20%ほどを占めるという。親子で20本以上のゲームをリリースして月に1万ドル以上を稼いでいるという例や、医療、アート分野での使用例も紹介された



■ 国内の独立系開発者も続々利用。成功体験を語る

株式会社ゼペットの宮川義之氏
「LIGHTBIKE 2」での開発事例を紹介した

 続いて国内ユーザーの活用事例が紹介された。最初に登壇したのは独立系開発会社、株式会社ゼペットの宮川義之氏。宮川氏は2年ほど前からiPhone向けのゲーム開発をしており、AppStore向けにリリースした「LIGHTBIKE 2」というゲームでは50万件以上のダウンロードを達成したという。

 「ゲームには、良いグラフィックスとスムーズさが大事になる」という宮川氏。それらの特性は自前でエンジンを開発することによっても達成可能であるが、「Unity」を活用することにより遥かに簡単になったと語る。それに加えて宮川氏が強調するのが、「Unity」の開発コミュニティが非常に活発であり、あらゆる情報が簡単に手に入るということだ。

 「たとえElectronic Artsのような巨大企業が凄い方法で高いパフォーマンスを達成したとしても、『Unity』のコミュニティに行けば、同じ方法がわかります。開発を続ける中で思わぬ落とし穴があることもありますが、情報が簡単に手に入ることでそれを予測しながら開発を進めることができます」。

 もう1点、宮川氏がよかったと語るのは、「Unity」に物理エンジンが組み込まれていることだ。これにより「LIGHTBIKE 2」でのクラッシュ表現などが簡単にリッチなものにでき、目の肥えたユーザーも納得できる演出が簡単に実現できたという。また、物理エンジンはゲームエディタが統合されていないと使いづらいという点にも触れ、「Unity」では簡単にオブジェクトの配置や物理挙動の設定ができることが良いと評価した。




・「Unity」の柔軟性。足りない機能は自分でおぎなう

株式会社KH2Oの大前広樹氏
iPhone向けゲームのデータを外物ツールで編集、即座にゲームに反映させるデモが行なわれた

 次に事例を紹介したのは、こちらも独立系開発会社である株式会社KH2Oを経営する大前広樹氏。大前氏はiPhone向けのゲームを作るなかで、作成したデータがすぐにゲームに反映できる点を高く評価している。

 大前氏がデータ作成に使っているのは、Macの標準的な表計算アプリケーションである「Numbers」。キャラクターの名前や各種パラメータが記述されたスプレッドシートを編集し、ワンボタンで「Unity」の統合開発環境に同期するシーンがデモンストレーションされた。ボタンを押してからおよそ10秒ほどで、新しいデータを反映したゲームが起動する。大前氏はこのように、「Unity」と外部ツールとの連動で効率的なワークフローが構築できることを高く評価している。

 また、「Unity」の拡張性についても触れた。大前氏が作成しているゲームは日本語フォントを利用するのだが、表示のためにiPhoneの文字表示APIを利用している。しかし、デバッグ環境となるMac上では、フォントを出すためのAPIが共通ではないため、当初は文字が出なかったそうだ。

 そこで大前氏は、「Unity」の統合開発環境側でゲームのデバッグ版を実行する際、起動直前に自動的にMac用のフォントを作成するプラグインを作成。これにより、デバッグ時でもiPhoneと同じイメージが描画できるようになったという。「拡張性を活用することで、プロ向けのツールとしてもガツガツ使っていけるのでは」と大前氏。

 安価に利用できるため、無数の開発者が利用を開始している「Unity」。バージョンを重ねるごとに大幅な機能拡張を果たしてきており、すでにプロ用のツールとしても非常に強力なソリューションとなりつつある。よく整備されたゲームエディタ、高い機能性、かゆいところに手が届く拡張性など、実際に利用した開発者が評価するポイントは語り尽せない。このセッションを聴いて、「いますぐゲームを作りたい!」となってしまった聴講者も多かったのではないだろうか。筆者も少なからず刺激を受けた次第だ。


株式会社ワークスゼブラからは、車の外観、内装をカスタマイズしながら確認する「カーコンフィギュレーター」の作成事例が紹介された。これはPC用ブラウザ上で動作するアプリケーションで、従来は独自エンジンで開発。「Unity」版の作成はなんと2日で達成したという。独自のレンダリングエンジンの組み込みも1週間ほどで行ない、完全移行が達成された。結果的にコーディングなしに動作を変更できる余地が増え、全体的な開発工程が効率化できたという



【『Unity』のスクリーンショット】

(2010年 9月 4日)

[Reported by 佐藤カフジ ]