「マイクロソフトXNAゲームソフトウェアコンテスト2010」授賞式レポート
「Xbox 360」「Windows」「Windows Phone」用のインディーズゲームが勢ぞろい


5月16日 開催

マイクロソフト新宿オフィス


 マイクロソフトは、新宿オフィスで16日、「マイクロソフト XNA ゲーム ソフトウェア コンテスト 2010」の受賞式を行なった。

 「マイクロソフト XNA ゲーム ソフトウェア コンテスト 2010」は、マイクロソフトがインディーズのゲーム開発者向けにサービスしている開発環境「XNA Game Studio」で作ったゲームを対象としたコンテスト。3回目を迎える今回は、従来からの「Xbox 360部門」、「Windows部門」に加えて、「Windows Phone部門」が新設された。

 審査は、マイクロソフトの社員で構成された審査委員会に、外部から3名のゲスト審査員を迎えて行なわれた。授賞式にはノミネート作品を作った、一般や学生のクリエイターが集まり発表を見守った。授賞式の後は、懇親会が行なわれ、参加者は受賞会場に設置された試遊台でプレイをしたり、用意された料理を手に交流を図っていた。




■ 携帯ゲーム部門を新設。3つの画面にエンターテイメントを展開する戦略

会場には、優秀賞にノミネートされた作品のクリエイターが集まった
冒頭に挨拶を行なった、マイクロソフト執行役常務の泉水敬氏。受賞式ではプレゼンターも務めた

 「マイクロソフト XNA ゲーム ソフトウェア コンテスト 2010」は、マイクロソフトがインディーズゲーム開発者を支援するために開催しているコンテストだ。募集対象はマイクロソフトが提供しているゲーム開発環境「XNA Game Studio」やXNAと提携しているゲーム開発ツールで制作された作品で、学生や一般から広く作品を募集している。一般の部門はプロ、アマどちらでも応募可能だ。

 昨今のスマートフォン向けゲームのブーを受けて、第3回となる今回からは、Windows Phone向けの携帯ゲームを募集する「Windows Phone部門」が新設された。

 募集期間は2009年11月17日から2010年3月31日までの5カ月間で、応募総数は89作品。その中から30作品が優秀賞へのノミネート作品として選出された。作品は、アイデアやコンセプト、アートデザインを評価する「独創性」、技術的なアイデアや表現方法を評価する「革新性」、感情に訴えかけてくる部分を評価する「面白さ」の3つの側面から評価され、部門別に優秀賞と部門賞が選ばれた。

 選考にあたったのは、マイクロソフトの社員で構成された審査委員会と、外部から参加した特別審査員の3名。最終審査に加わった特別審査員には「Xbox 360部門」に国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表の新清士氏、「Windows部門」に株式会社アスキー・メディアワークス アスキー総合研究所所長の遠藤諭氏、「Windows Phone部門」にケータイジャーナリストの石川温氏が名を連ねた。

 受賞式では、冒頭にマイクロソフト株式会社執行役常務でホーム&エンターテイメント事業本部長の泉水敬氏が挨拶した。泉水氏は、来場した応募者にコンテストへ応募してくれたことを感謝すると共に、マイクロソフトが現在推し進めている「スリー・スクリーン・ストラテジー」という戦略について紹介した。これはPCの画面、テレビの画面、携帯機器の画面という3つの画面でゲームなどのエンターテイメントを楽しめるよう積極的に推進していくという戦略だ。

 ノミネート作品については「これまで3回の応募作品のノミネート作品をすべて見せて頂いておりますが、間違いなくレベルが上がってきています」と絶賛。「これからもXNAを積極的に展開していきたいと思っています。みなさんもどんどんゲーム開発を行なっていただいて、さまざまなプラットフォームに作品を紹介していただき、ゆくゆくはビジネスへとつなげていただければと思います」と展望を述べた。

 ノミネート作品と、受賞作品は以下の通り。


「Xbox 360部門」特別審査員、国際ゲーム開発者協会日本代表の新清士氏「Windows部門」特別審査員、株式会社アスキー・メディアワークス アスキー総合研究所所長の遠藤諭氏「Windows Phone部門」特別審査員、ケータイジャーナリストの石川温氏
【ノミネート作品】
「Xbox 360部門」ノミネート作品一覧「Windows部門」ノミネート作品一覧「Windows Phone部門」ノミネート作品一覧




■ 「Xbox 360部門」受賞作

・優秀賞:「Ninja360」 トライデント+

制作チームでの記念撮影

ゲームの概要:
 将軍の命を受け、悪代官の屋敷から小判を奪い、庶民にばらまくという任務に向かう84歳の隠密忍者ジジ丸。ステージ内に散らばる小判を全て手に入れるアクションゲーム。

 忍者が動くと、背景が360度回転していくダイナミックなパズルゲーム。ステージ数も豊富で、和風にまとめられたグラフィックスも美しい。足場は円形だったり、斜めになっていたりして、時には足場、時には壁となる。壁を登ったり、落下したりしながら小判を集めていくパズル性の強いゲームだ。


ぐりぐりと動く背景は、大きな画面でみるとかなりの迫力がある



・部門賞(一般):「Ninja Escape」 dot zo games

「これからもゲームを作っていきたい」とdot zo games氏

ゲームの概要:
 敵に追い込まれた忍者は、やむなくダイブ! 落下する忍者を操作し、無事に着地させるアクションゲーム。

 「XNA Games Studio」に対応したゲーム制作ツール「アクションゲームツクール」(エンターブレイン)で制作されたアクションゲーム。高速で落下していく忍者を左右に操作して、障害物を避けつつ、コインを取ったり敵の忍者を倒していく。着地の時にタイミングよくボタンを押さないと、落下してしまう。慣れるまでは、着地のタイミングがつかめずに落下死することが多い。ステージが進むとどんどん落下距離が長くなっていき、いまかいまかと地面を待ちうけるのが、だんだん楽しくなってくる。


スピード感溢れる落下していく感覚も楽しい



・部門賞(学生):「SAND CRUSH」 UWAY

「みんなで頑張って作ってきたので嬉しい」とチームで記念撮影

ゲームの概要:
 “挟んで潰す”をコンセプトにした新感覚操作のアクション&アドベンチャー。1人で2つのものを操作することで感じる面白さを演出。

 東京工芸大学でゲーム開発を学ぶ学生チームによる作品。アナログスティックを2本使って遊ぶゲームを作ろうというコンセプトの元、2つの玉を動かすゲームが出来上がった。当初はまったく雰囲気の違うゲームだったが、途中でグラフィックスを統一するために作り直し、現在の形になった。夏休み返上でがんばったという力作だ。


両手で2つの玉を動かす。ありそうでなかった操作感は、かなり新鮮だ



・特別賞:「REVOLVER360」 黒巣イーグレット

「締め切りに間に合ったのが奇跡というくらいぎりぎりまで作っていた」という力作。「これからもインディーズゲームを開発していきたい」とのことだ

ゲームの概要:
 美しい風景を楽しみながら破壊を楽しむシューティングゲーム。ゲームオーバーがなく、約3分間のプレイで点数を競うスコアアタック形式のゲーム。

 特別賞には、特別審査員による選評が添えられた。「Xbox 360部門」を担当した新氏は「ずいぶん悩みました」と前置きしつつ「このタイトルを選んだのは、360の性能を使いきっていた点です。シェーダ―の機能をフルに使った美しいグラフィックスと、見ための面白さ、スコアアタックは1回ハマルと延々と遊んでしまいます。伝統的なゲームではありますが、自分なりに消化できている点を評価しました」とコメントした。


Xbox 360の機能をこれでもかと使ってある。画面を16分割してプレイすることもできる




■ 「Windows部門」受賞作

・優秀賞:「アノソノコノミチャン」 芸夢中心(深見康人)

「ギリギリまで頑張った甲斐がありました」と喜ぶ深見康人氏(中央)

ゲームの概要:
 「このみちゃん」というプレーヤーキャラクターが、独自の世界でゴールの惑星に制限時間内に到着するのを目指すアクションゲーム。

 小さな惑星を緑化しながら、制限時間内に目的地を目指すアクションゲーム。小さな惑星上を自由に走り回って、赤い部分を緑化したり、邪魔をする敵を倒していく。ネオンのような背景は不思議な暖かさがある。作者の深見康人氏は、XNAのインディーズ市場に将来性を感じて、脱サラをしてまで本作を製作したという。これからも企業には作れない、新しいゲームを作り続けていきたいとのことだ。


惑星の上をくるくる移動しながら、赤い星を緑いっぱいの星に変えていく



・部門賞(一般):「ナユタの重箱 For Windows Touch」 Roots

「これからも楽しい作品をたくさん作っていきたいです」とRoots氏

ゲームの概要:
 母の作ってくれたお弁当は特性の重箱弁当。その高さ、なんと9段重ね! 同じ種類の食材(牛・豚・鶏・魚)を4つ以上隣接させ、「たべる」ボタンを押すことで食材を消していくアクションパズル。

 Windows 7のタッチパネル機能を使った作品。タッチパネルで材料を回し、4個以上揃ったら右の女の子をタッチすることで、それを食べる。一定のスコアを獲得すると、ステージクリアとなって次のステージに進む。「お茶」、「スプーン&フォーク」などのお助けアイテムもある。


会場では唯一のタッチパネルを使ったゲームで、参加者の興味を集めていた



・部門賞(学生):「BOX」 α

「ノミネートの知らせを聞いただけでも驚いたのに、このような賞をもらえて光栄です」とコメント

ゲームの概要:
 キャラクターを操作して、上から落ちてくるボックスに潰されないようにするだけ。ボックスは押して移動させることも可能。ライトユーザーでも簡単にプレイできる新感覚の3Dアクションパズルゲーム。

 東京コミュニケーションアート専門学校の学生チームが制作したゲーム。下の土台を回転させたり、キャラクターを移動させて、落ちてくるボックスから逃げる。「モノクロモード」、「マニアックモード」など複数のモードを選択できる。ボックスの落下速度はだんだん速くなり、避けて獲得したスコアを競う。


直観的に遊べるタイプのパズルゲーム



・特別賞:「WORD's in BOOK」 MY☆STARS★

「チームみんなで頑張った甲斐がありました。嬉しい気持ちをバネに、色々なゲームを作っていきたいです」とのことだ

ゲームの概要:
 悪い魔法使いによって、本の単語がバラバラにされてしまいました。魔法使いの攻撃をくぐり抜け、バラバラにされた文字を集めて単語を完成させていくキャラクターアクション。

 新潟コンピュータ専門学校の学生チームが制作したゲーム。動きまわる文字を、画面右のしおりの言葉通りに並べていく。特別審査員の遠藤氏は「1つのゲームの中に、いろいろな面白さが入っていて、その総合的な面白さが評価された」とコメント。


動きまわる文字をくっつけて単語を作り、右下の魔法陣へ運んでいく




■ 「Windows Phone部門」受賞作

・優秀賞:「かなスナイパー」株式会社スマイルブーム(小林貴樹)

「大人げなく賞をとって大変申し訳ありません」と恐縮する小林貴樹氏。今回唯一の法人での受賞だ

ゲームの概要:
 窓を照らすスポットライトを頼りに、暗闇の奥に隠れている平仮名を当てる。なるべく早く沢山当て続けて、高得点を狙うゲーム。

 小さなスポットライトからチラチラと見える形を頼りに、隠れた平仮名を当てる。最初は簡単だが、文字が反転していたりとだんだん難しくなっていく。小林貴樹氏によると、「実はもっとエッチなものを作ろうと思ったら、社内の人間に止められました(笑)」とのことで、途中に現われるハート形のスポットライトはその名残らしい。


非常に単純ながら、夢中になれるゲーム



・部門賞(一般):「ikria」 kuni
・特別賞:「ikria」 kuni

予想外の特別賞まで受賞してしまい、照れながら「光栄です」と挨拶していた

ゲームの概要:
 色のついた粒々に紛れて出てくる白い粒々を、画面の左右まで持っていくことが目的。白い粒々が画面下の縁まで達するとゲームオーバー。

 白い粒粒が下のラインを越えないように左右に吹き飛ばしていくゲーム。粒々の動きが楽しい。特別審査員の石川氏は「暇な時間に遊べること、シンプルであること、マニュアルを見なくても遊べることという審査基準をすべて満たしたうえで、シンプルだけど意外とハマれるという理由でこの作品を選びました」と講評した。


画面は地味だが、意外とハマれるゲーム



・部門賞(学生):「Number Shooter」K.S.

「受賞できたことにとても驚いていますが、すごく嬉しいです」とK.S.氏

ゲームの概要:
 画面内に9つある数字が書かれたターゲットを、数字の小さい順にタッチで消していくゲーム。上位5位までランキングに登録することが可能で、短時間でクリアするほど高得点となる。

 応募をした時点では都立八王子桑志高等学校の学生で、晴れて大学生となっての受賞になったK.S.氏。「来年もここに立ちたちです」と意欲を見せていた。


パズルゲームというより、動体視力が必要なアクションゲーム




■ 年々レベルは上がっている。来年は携帯向けゲームに期待

マイクロソフト、ホーム&エンターテイメント事業本部デベロッパー ネットワーク グループ グループシニアマネージャーの田代昭博氏

 授賞式の後、特別審査員による各部門の講評があった。新氏は「今はインディペンデントゲームの製作者にとっては黄金期。世界に自分の作りたいゲームを発信していけるチャンスは、少し前にはまったくなかった」とインディーズゲームの可能性を語った。遠藤氏は、世界の市場ではダウンロードゲームが人気を博しつつあることや「今回は募集要項になかったかもしれませんが、オンラインのコミュニティとつながったものなど、まだまだ可能性はあると思います」と述べた。

 今回から新設された「Windows Phone部門」について石川氏は、「応募者が少なかったことが残念」だと言いつつも「来年はスマートフォンを売っていくという話をいろいろな人から聞ききます。新製品の半分くらいがスマートフォンになるという話もあるくらいなので、市場が広がってクリエイターの方にとっては作りがいがあるのではないかと思います」と激励した。

 懇親会の後、マイクロソフト、ホーム&エンターテイメント事業本部デベロッパー ネットワーク グループ グループシニアマネージャーの田代昭博氏が挨拶で締めくくった。「ノミネート作品以外も本当にレベルが高くて、年々レベルが上がってきていることを実感しています。プロの方は今後も一緒にこの業界を盛り上げていきましょう。学生の方には、我々も支援させていただいて、ゆくゆくは一緒に仕事ができるように頑張っていきましょう」と語り、会場にいた人間全員で、会場に来られなかったすべての応募者へねぎらいの拍手を送った。

 懇親会の中で、泉水氏に話を聞くことができた。以下、ミニ質疑応答の形でお送りする。

・今年の作品の傾向について

 毎回毎回レベルが上がっていくのです。今年は本当にゲームとしてまとまった作品が多く、遊んでいて楽しかったです。最初の頃はどちらかというと技術に偏った作品が多かったり、去年はいろいろなゲーム性にトライしてみるという傾向が強かった中で、今年はその両方を持ってまとめた感じがありますね。自分たちが遊んで楽しいゲームを作るという原点に戻ってきたのではないかと思いました。本当に楽しかったです。

・XNAの活動について

 賑わいはありますね。比較的欧米のクリエイターの方の作品が多いですけれども、日本のクリエイターの方も頑張っていますね。後はユーザーの皆様に盛り上げていっていただく仕組みなので期待しています。

・来年の応募者に期待したいこと

 今年から「Windows Phone部門」を設立しましたけれど、ぜひ「Windows Phone部門」にも多く応募していただきたいなと思いますし、「Xbox 360部門」、「Windows部門」を通して、何か新しいアイデアをゲームにしたものをぜひ見てみたいと思っています。


懇親会の会場では、料理やジュースもふるまわれた受賞会場の試遊台では、ノミネート作品や受賞作をプレイすることができた人が作ったゲームをビデオに収めたりと、研究熱心な様子が見られた


(2010年 5月 17日)

[Reported by 石井聡]