ベクター、ゲーム内有料ポイントの有効期限を“半年未満”に変更
資金決済法施行のため。追加購入でも有効期限の延長はなし
株式会社ベクターは、4月1日よりブラウザゲーム4タイトル(「ドラゴンクルセイド」、「まじかるブラゲ学院」、「熱血三国」、「NikQ」)の運営規約を改定し、各タイトルの有料サービスを受けるために必要となる「ゲーム内有料ポイント」について、従来の有効期間が延長可能な制度を廃止し、有効期間を「購入日から5カ月後の月末まで」に変更した。これにより、同社が運営するブラウザゲームの有料ポイントは、半年以内に使い切らなければ半年後に権利を喪失することになる。
ベクターの代表作である「ドラゴンクルセイド」の“ダイヤ”も規制の対象となる |
今回の利用規約の変更は、2009年6月に成立した「資金決済法」が4月1日より施行される影響によるもの。資金決済法は、これまで法の整備が追いついていなかったいわゆる電子マネーに関する法的な枠組みを定めたもので、利用者保護や安全性の観点から、電子マネー決済に関する様々な制度が整備されている。
オンラインゲーム業界にとってもっとも影響があるのは、電子マネー(=ゲーム内有料ポイント)を発行する際、未使用発行残高の1/2以上を供託することが義務づけられたことだ。これにより各種トラブルによってオンラインゲームの運営継続が難しくなった場合でも、供託金の中から未使用分の電子マネーの返金が受けられることになる。
しかし、現実問題として大手を除く多くのオンラインゲームパブリッシャーにとって、電子マネーの未使用発行残高の1/2の金額を常時供託することはビジネスを継続する上で非常に大きな負担となる。そこで注目されたのが、「有料ポイントの有効期限を半年未満にする場合は対象外となる」という規定である。
かくしてすべてのオンラインゲームパブリッシャーは、供託金を積んで従来のように有効期間を長く確保するか、あるいは供託金を諦めて販売した電子マネーの有効期限を半年未満とするか、二者択一を迫られている。中でもオンライン麻雀ゲーム「Maru-Jan」を運営しているシグナルトークは、供託金を納め、有効期限を2年とする決定を行なっている。
今回ベクターを取り上げたのは、他社と比べて若干意味合いが異なるためだ。他社の場合は、アイテム課金制のオンラインゲームが対象であることが多い。それらのタイトルは客単価が高く、電子マネーの使用頻度も高いため、「使い残し」はあまり問題にならない。
ところがベクターはブラウザゲームを主軸としている。ブラウザゲームは一般的に客単価が低く、購入した有料ポイントを数カ月掛けて消費することも珍しくない。その上、プロモーションの一環として、ボーナスポイントを増大するキャンペーン等も定期的に行なわれるため、影響のあるユーザーは少なくないことが予想される。現在保有している電子マネーの有効期限は一律2010年9月30日までとなっているので、利用者は1度利用状況を確認したいところだ。
資金決済法の施行は、オンラインゲーム市場にとって若干逆風気味に作用しているが、その多くは利用者保護が目的であり、基本的には歓迎できる話だ。今後オンラインゲームパブリッシャーが、どのようなアイデアでコンプライアンスとユーザーへの利便性の確保を両立していくのかが注目されるところだ。
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(2010年 3月 31日)