Game Developers Conference(GDC) 2010現地レポート

米Bethesda、「Hunted:The Demon's Forge」を正式発表
協力プレイを前提にした新機軸満載のダークファンタジーアクション


3月9~13日 開催(現地時間)

会場:サンフランシスコ Moscone Center


 「Fallout 3」や「Oblivion」などの開発/発売元として知られる米Bethesda Softworksは、GDC開催中の現地時間3月11日に、会場近くのホテルで、新作アクションゲーム「Hunted:The Demon's Forge(以下、Hunted)」の発表会を行なった。

 「Hunted」は、テーブルトークRPG「ダンジョン&ドラゴンズ」のような中世風のファンタジー世界が舞台のダークファンタジーアクションアドベンチャーゲーム。クラシックな雰囲気の中に、オンライン協力プレイや、シネマティックな演出が楽しめるクエストなど、最新の要素が盛り込まれている。今回の発表では、開発にあたったスタッフが実際のゲームをプレイしながら、ゲームに盛り込まれた要素を説明してくれたので紹介したい。




■ ファンタジー世界を舞台にした、モダンアクションゲーム

女戦士「E'lara」。弓による遠距離攻撃と、術攻撃を得意としている

 モンスターの潜むダンジョンに潜って秘密のドアを探す……。そんなクラシカルな雰囲気を、Unreal Engine 3の美しいグラフィックスで再現したのが「Hunted」だ。スタート画面からも重厚なハイファンタジーのムードが伝わってきて、パソコンゲーム黎明期に「ダンジョン&ドラゴンズ」や「マイト&マジック」で遊んだプレーヤーなら、きっと懐かしく思うようなノスタルジックさがある。

 プレーヤーキャラクターは耳の長いエルフの女戦士「E'lara」と、筋肉隆々の無骨なファイター「Caddoc」の2人。スタートすると、メインキャラクターのE'laraとCaddocのシネマティックなデモシーンが挿入される。操作はプレーヤーに任されているが、キャラクターがどんどんしゃべってストーリーが進行していく。2人のキャラは本当によくしゃべり、端から見ていると操作をしているのではなく、まるでカットシーンのムービーを見ているようだった。キャラクターの動きにはモーションキャプチャーが使われているので非常にリアルだ。街の雰囲気は、荒廃していてダークファンタジーらしい殺伐とした光景が広がっている。初めてすぐに挿入されたカットシーンでは、敵の心臓をえぐり出すような生々しいシーンもあった。

 本作は、ソロプレイももちろん可能だが、基本的にはオンラインでの協力プレイが想定されている。オンラインでないときには、操作していない方のキャラクターはAIが自動的に動かすことになる。今回のプレイデモでは、スタッフ2人が協力プレイを見せてくれた。本作にはいろいろと、今までにない要素が盛り込まれている。それをキャラクター、バトル、ダンジョンの3つにわけて解説しよう。

重厚なダークファンタジーの世界が、Unreal Engine 3で緻密に表現されている


1:キャラクターをチェンジしながら、2人でオンライン協力プレイ

 2人のキャラクターはそれぞれ近距離、遠距離、魔法の3種類の攻撃を随時使い分けることができる。得意分野としては、Caddocが近距離ファイター、E'laraが魔法と遠距離からの弓攻撃と特徴があるが、もちろんE'laraが前衛、Caddocが後衛という戦い方も自由にできる。というのも、詳しくは後述するが、本作では協力プレイで移動できるエリアが今までになく広いので、遠距離攻撃をしている場所にいきなり敵が襲ってくるなど、どちらのレンジも使いこなさなければならない状況が起こりえるからだ。

 キャラクターの性能は「クリスタル」というアイテムを集めることで系統別に成長させることができる。クリスタルは敵や宝箱から入手するようだ。

 そして、本作のもっとも大きな特徴がチャラクターをチェンジするシステムだ。ダンジョンの入り口など戦いの合間に、キャラクターチェンジのためのチェックポイントがある。ここでお互いの操作キャラクターを入れ替えることができる。E'laraを使っていたならCaddocに、またその逆に使用キャラが変わる。オンラインでマッチングした相手との協力プレイなら、まったく知らない相手のキャラクターを自らが使うことになる。

 相手のキャラクターを使って獲得した経験値やアイテムは、後で自分のキャラクターに反映されるらしいので、安心してキャラチェンジして、人が育成したキャラクターの使い心地を試すのは楽しそうだ。もちろん、チェンジしたくない場合は拒否することもできる。


剣、弓、魔法。レンジの違う3つの攻撃を組み合わせて戦う


2:カバーアクションを駆使して、広大なバトルフィールドで自分の戦術を組み立てる

 攻撃は「Fallout 3」と同じように、画面中央にサイトが表示されるので、それを敵に合わせて攻撃する。魔法も同様だ。敵も弓や魔法をどんどん打ち込んでくるので、攻撃を避けなければならないが、その際、ガンシューティングのようにカバーアクションで物陰に隠れることができる。また、デモプレイでは見られなかったが、ステルスアクションもあるらしい。

 魔法は、味方の武器に使うことで属性を付与させることができる。デモプレイでは、E'laraでCaddocの武器にファイアー系の付与をして、Caddocが炎をまとった剣で戦っているシーンもあった。また、2人とも敵の動きを止める技を持っている。E'lara1は氷をまとった弓で敵を撃ち、敵を凍らせて動きを止める。Caddocは剣を地面に突き刺して、レビテーションスキルを使って相手を浮かせて動けなくする。その間に協力プレイをしているキャラクターが、反撃の心配なしに敵を攻撃できるのだ。

 バトルの演出も凝っている。「Fallout 3」ではとどめを刺すときにスローモーションの演出が入ったが、本作でも条件が揃えば、キャラクターがアップになり特別なアクションでとどめを刺すシーンを盛り上げていた。

 本作のバトルの特徴は、なんといっても使える空間の広さだろう。本作では戦闘に使う広大なフィールドを自由に移動して、位置取りを決めながらバトルをクリエイトすることができる。例えば、1人が囮になって、もう1人が見つからない高い場所から狙撃を行なったり、別々のルートから敵を挟み撃ちにしたりすることができる。敵の配置もFPSのように1つのエリアに集中しているのではなく、常にあちこちを徘徊しているので、どこで遭遇するかわからない。


魔法やスキル技の演出はかなり派手


3:謎に包まれたダンジョンを探索して、巨大なデーモンを倒せ

 ダンジョンはいくつかの小道に分かれていて、それぞれに違った宝やクエストが隠されている。小道は簡単に見つけられる者から、非常にハードなものまでいろいろと用意してある。デモでは、一見岩のように見える場所を攻撃すると、岩が顔になってしゃべり出し、その岩の奥にとらえられていた男を助けることでクエストが発生した。クエストを受ける、受けないはプレーヤーが決めることができる。

 フィールドには他にも大小様々なギミックがある。高い場所から弓を打ってくる敵を、石の柱を倒してやっつけたりといった、派手でシネマティックなギミックもあった。

ダンジョンの奥に進むと、巨大なボスがいる。ボスとの戦闘では「God of War III」(Sony Computer Entertainment America)のように目押し入力の内容によってバトルが変化していく形式がとられている。2人ともがタイミング良く正しいボタンを押せば、専用アクションで敵を倒す。とどめの演出はかなり映画的で、ドラマティックだ。

 本作は、見た目はクラシックなダークファンタジーだが、カバーアクションやシネマティックな演出、協力プレイなど最新の流行要素がすべて入っている。いままであるようでなかったゲームは、実際に目にするとかなり魅力的で楽しそうだった。

 「Oblivion」や「Fallout 3」といったRPGでは、少々もっさりしていた感のあるバトルだが、アクションゲームの「Hunted」では自由度は高いながらも、かなりキレのある戦闘を楽しめる。今回はPCでのデモだったが、PS3やXbox 360といったゲームコンソールでも発売が予定されている。日本への展開はまだ未定だが、ぜひ日本語版の発売に期待したいところだ。


ダンジョンの奥には巨大なボスが待ち受けている


(2010年 3月 16日)

[Reported by 石井聡]